自然の美しさと力強さ

福嶋 油彩

大志です。今回は福嶋さんの油彩による風景画をご紹介します。夕焼けに染まる海と、その奥にかかる橋を描いた作品です。

黄色を基調とした空の色合いの中に、グレーや青みを帯びた雲が重なり、夕方特有の刻々と変化する刹那的な時の流れ、光や空気が表現されています。海の表情も単調にならず、光の反射と水面の揺らぎが丁寧に描き分けられており、静かな時間の流れを感じさせます。
さらに、雲の柔らかさと、その雲の隙間から放射状に降り注ぐ太陽の光が対比しており、自然の力強さと美しさを同時に象徴しているようにも感じられます。

ヨットに乗る趣味をお持ちの福嶋さんは、これまでにも海の風景を繰り返し描かれてきましたが、本作では特に空と水面の関係性がうまく整理され、画面全体の構成が安定してきているのが分かります。水平線に描かれた橋も主張しすぎることなく、自然(海)の中に、あえて人間が作り出した幾何学的な人工物(橋)を配置することで、その美しさが引き立つ視点風景となります。とは言え橋を、海のスケール感や奥行きを自然に支える要素として機能させ、観る人の視線を無理なく画面の奥へと導かせるアイテムとして活用することができたのは、これまでの積み重ねが確実に力となって現れているからでしょう。

現在は人物画という新たなジャンルに取り組まれており、こうした風景表現で培われた観察力や色彩感覚が、今後どのように別の題材へと生かされていくのかも楽しみです。

グレートーンの緊張感

星川 油彩

サトルです!先日の僕の展示会へ御高覧頂きました皆様、ありがとうございました!僕の作品に興味を持って頂けて本当に嬉しく思いました。
今回は日曜クラスの星川さんの油絵をご紹介致します。

左方向へ歩いてゆくフラミンゴの群れを、ペインティングナイフを多用した大胆なタッチで描いていますね。彩度を落とした絶妙なグレートーンで塗られた背景の水辺と、フラミンゴの鮮やかなピンクが響き合い、生き生きとした生命力を感じる画面に仕上がっています。

細部を見てみると、表現の多彩さに驚かされます。フラミンゴの羽毛は絵の具を厚めに盛り上げて、荒々しいタッチで描きながら、しっかりと立体感が出るように陰影もつけています。柔らかなフレッシュピンクから鮮烈なマゼンダまで使用し、多様なピンクのトーンで優雅さの中から、明るいエネルギーがあふれ出てくるようです。
次に足の反射に注目してみましょう。中央のフラミンゴの足の反射は大変丁寧に描かれているのに対し、脇役となる足の反射は少しブレたような線になっています。これによって主役と脇役の差がはっきりとして、見やすい画面になっていますね。

水面の描写もお見事。羽毛の表現とは打って変わり、盛り上げずにナイフを水平に引っ張りながら混色しています。近景から遠景まで繊細な色調の変化も完璧です。
実はこのバック、以前に描いた油絵を潰したもの。何が描いてあったか見えなくなるよう鈍い色味で厚塗りをしました。通常は絵の具を塗る前にパレットで色調を吟味してから塗るのですが、画面の中で混ぜるようなタブー(濁ってしまうので)をあえて犯しました。しかしそれに星川さんならではのエッセンスを加え、主張しない美しい下地を作っていったのです。

これだけ様々な技法を使って描いているにも関わらず、全体の色調に統一感があってリアルな雰囲気を生み出すのは至難の業ですが、絵は実験の連続です。星川さんの前向きな遊び心がなければこの雰囲気は出せなかったでしょう。美しい楽園に心をときめかせてくれる一方、フラミンゴの整然とした様子と相まって、凛とした緊張感をも感じさせてくれる作品です。

のどかな時間

服部 油彩

春休みにかまけて昼夜逆転生活を送っています、ナツメです。本日は大人クラスより服部さんの作品をご紹介します!

ドイツ・フランクフルトのマイン川にかかる橋の上からの景色を描かれました。画面の半分以上を空が占めており、開放感のある構図が印象的です。画面手前には川幅の広いマイン川がゆったりと流れ、大きな教会や木々が並ぶ岸の右奥には橋や高層ビルの姿も見えてきます。視線が自然と奥へと導かれる構成で、実際にこの場所で風景全体をゆっくりと眺めていくような構成になっています。

川の表現も見どころのひとつです。濃い青や緑、黒に近い色を幾重にも重ねて、川の流れや波の様子が丁寧に描かれています。全てを均一に塗るのではなく、手前は細かく波の形を追い、遠くになるにつれ簡潔になるよう色味や筆致に変化をつけることで、空間の奥行きもうまく表現されています。

全体を通して、特定のモチーフを主役にするというよりも、その場に流れている空気や時間を留めるような描写が印象に残ります。街並みも細部を描き込みすぎず、形と色のまとまりで捉えられています。輪郭を強く主張しないことで空気を含んだようなやわらかさが生まれ、旅の途中でふと立ち止まり、景色を眺めながら深呼吸をしているような気分になります。遠い場所の風景でありながらもどこか身近に感じられる、そんな魅力を持った作品です。

評価に対して

箕輪 アクリル

岩田です。今日は久しぶりに土曜日の教室へ。皆さんの作品に対する意気込みは変わりませんね。
本日は、箕輪さんの作品をご紹介します。蜂をテーマに描いたこちらの絵。ハチの絵コンクールにて佳作に入賞したたものの、ご本人は、もしかしたらちょっと悔しい思いをされているかもしれません。

養蜂場に咲くあざみの花畑で飛び回る蜂。そんな自然の中で養蜂家が蜂蜜を採取している様子です。緑と紫の色を主体に、全体的にも良くまとまっていて、とても美しい作品に仕上がっています。
確かにコンクールで賞を取ることは、ある意味認められると感じられると共に、描き続ける上でも自信にも繋がると思います。箕輪さんの作品は、今回のコンクールで目立った賞ではありませんでしたが、輝かしい賞を獲得した作品に対して決して引けをとることはない、素晴らしい作品であることを最初に述べておきたいと思います。

様々なコンクールにおける審査員によって、作品の見方、捉え方が異なり、それによる評価の仕方も変わってくることが実際のところです。人によっては、先ず審査員を調べ、その審査員がどのような絵を描いているかを調べ、評価を受けやすい絵を描いて応募するといった方も少なくないでしょう。しかしながら、そんなことをして評価を得ても自分自身が腹落ちするような経験はできませんね。

賞を取る取らぬというよりも絶対的に大事なのは、前述の通り、自分にとって、その時に腹落ちする作品が描けたかどうかということです。確かにコンクール等の出品に向けて描くことはモチベーションを維持する上でも積極的にやって欲しいし、評価を得たいと思うことも当然と言えますが、それよりも、忙しい中で頑張って、ここまでの作品を描いた自分を先ずは褒めて欲しいのです。「私って偉い」と。
でも後で見れば、ああすれば良かった、こうすれば良かったと重箱の隅をつつくがごとく、様々な後悔や反省が立ち現れてくることでしょう。例え描いた時に腹落ちしていなかったとしても、逆に「ああ、ここは自分で凄く好きだなぁ。」とか「絵の具でこんな綺麗な効果が引き出せたんだなぁ。」といった見方をしてあげることです。そういうところを更に自分でどんどん伸ばし広げていってみて欲しいのです。
そして自分で心の底から腑に落ちる絵が描けた時、どんな評価も気にならなくなっているかもしれませんよ。

土曜午後クラスの生徒さん達に誘われて、小原先生と新年会に参加させて頂きました。土曜午後クラスの方達は、他人の評価を重要視しない人、己の納得できる絵をひたすら追求している方達です。それゆえ私がどんなに褒め称えても、自分が納得しない作品は価値がないと考える強さ・潔さがあります。4時間の宴会を楽しませて頂きました!ありがとうございました。

愛車を描く

高橋 油彩

大竹です。今回ご紹介させていただくのは、高橋さんの油彩作品です。今回で三作目となりますが、回を重ねるごとに絵の具の扱いにも慣れ、画面全体に落ち着きと余裕が感じられるようになってきましたね。(前作はコチラ

こちらの作品では、ご自宅の車庫から少し顔を出した愛車の姿が描かれています。車種はフォルクスワーゲンのニュービートル・カブリオレ。2003〜2010年頃に販売されていたオープンカーで、丸みを帯びたフォルムがどこか愛嬌を感じさせます。
長く大切に乗られてきた車ですが、そろそろ新しい車へ…という節目を迎え、「最後にこの姿を残しておきたい」という思いから制作されました。

淡いクリーム色の車体に、コンクリートの無機質なグレー、そして紅葉のシェンナや赤褐色が重なり、全体としてとても心地よい色のバランスが生まれています。コンクリート部分には、単なるグレーではなく、薄く緑や青の色味を重ねることで、周囲の植物や車体の色と自然に馴染むよう工夫されています。そのため、硬質になりすぎず、全体の柔らかいイメージを損なわずに仕上げられています。
油絵具は乾くまでに時間がかかる分、グラデーションが作りやすい画材ですが、その特性がニュービートルの丸みを帯びたフォルムと相性よく活かされています。淡いクリーム色のボディには、硬い反射ではなく、やわらかく空気を含んだような光沢が与えられていますね。何度も繰り返し絵の具の層を重ねていく事で、新車のように均一で完璧な輝きではなく、長年家族の一員として使われてきた年季が滲んでいるのも魅力的です。

紅葉が色づく秋は、華やかさと同時に、これから訪れる冬への静けさや寂しさを含んだ季節です。そんな季節の空気と重なり、お別れ前の車への哀愁や名残惜しさが伝わってきますね。長年寄り添ってきた愛車を描くという行為そのものが、ひとつの感謝であり、区切りであり、次へ進むための儀式のようにも感じられます。

洗練された美しさ

高山 油彩

ひとみです。今回は大人クラスの高山さんの作品のご紹介。なんとこちらの作品の2枚目の油絵です。
2つ並べられたものと手前に置かれた断面の見える梨。この奥、真ん中、手前という明快な構図がシンプルでありながらも計算された配置が心地良いリズムを与えています。通常、逆光はモチーフの色味が暗くなり、魅力が失われがちなため避けられがちですが、あえて光源を左上に設定したことにより、オレンジ色が影の暗さに馴染み、違和感のない色彩に落とし込まれています。そして背景の紫。上に乗る薄い紫の布を奥側にすることで光のふんわりとした柔らかさを演出し、下に重ねられた明快な紫を手前にすることで画面を引き締める効果を発揮しています。

また梨のへたの部分や影面の一部分には青色が差し込まれている点から、梨を暖色に偏らせないということを丁寧に意識していることが伺えます。質感の違いを見せ描きわけようとするこだわりも感じました。それぞれの色が独立せず画面の中で調和しているのはこの細かな知覚が生きているからと言えるでしょう。

色彩の配置によって画面の密度や奥行きをコントロールした構図と色彩。計算された要素の積み重ねが、この洗練された美しさを成立させているのです。

願いを込めて

室橋 油彩

大竹です。今回ご紹介させていただくのは、室橋さんの油彩作品です。お孫さんの七五三の晴れ姿を描かれています。以前も油彩でお孫さんを描かれていましたが、今回は女の子の七五三。華やかな着物に身を包み、少し照れたような表情がなんとも愛らく、成長の一瞬が大切に切り取られています。

制作にあたっては、子供らしい顔のラインやバランスを捉えるのに苦労され、何度も描き直しては丁重に整えていきました。温かみのある柔らかな肌の色合いと、黒く艶やかな髪の質感もよく表現されています。

厚みのある着物の質感は、皺の入り方をよく観察し、絵の具の層を重ねる事で布の重みを出しています。ほのかに光沢感も感じさせる上品な描写ですね。黒い地に金糸を織り込んだ帯の表現も美しく、作品全体を引き締めています。
油彩では金属の様な光沢を表現する際、明暗をハッキリと描写する必要があります。暗い部分はこちらの作品の様に思い切って色を乗せる事で、輝きがより際立ちます。

背景には、着物や髪飾りの赤色を引き立てるためにグリーンを選ばれています。顔周りはスポットライトが当たっているかのように明るく、着物周りは落ち着いたトーンにする事で、鑑賞者の視線が主役へ導かれるようになっています。

七五三は子供の健やかな成長と幸せを祈願する行事です。こちらの作品の一筆一筆にも、お孫さんへの祈りが込められているのでしょう。写真とはまた違う、描く事でしか残せない願いの形が感じられる一枚です。

指先で語る

野中 油彩

2日続けて大竹です。2025年最後にご紹介させていただくのは、野中さんの油彩作品です。
富山県富山市・八尾町で毎年9月1日から3日にわたり開催される、おわら風の盆を描かれています。約300年の歴史を持つ伝統行事で、編み笠を深くかぶり顔を隠した踊り手たちが、ゆったりとした所作で歌い踊り歩く情緒豊かな祭だそうです。

こちらの作品は、参考にされた写真よりも明暗のコントラストを少し強めて描かれています。それにより、二人の踊り手が夜の闇からほのかに浮かび上がるような印象が生まれ、一目で何が主役なのか分かるようになっています。背景には大勢の観客が描かれているものの、主張しすぎない筆致によって舞台の空気だけが静かに残り、あくまで踊り手たちの美しいシルエットに目が導かれます。
画像では見えにくいかもしれませんが、編み笠には網目の密度を出すために、油彩の表面をボールペンで引っ掻くように線を重ねたり、絵の具を削って質感を際立たせるなど、細かな技術が施されているのがお分かりになるでしょうか?厚みのある着物には絵の具をたっぷりのせ、絵の具の厚みで踊り手の二人がより前に出てくるように工夫しています。
紺一色の股引に法被姿の男性の腕はしっかりと太く、逞しい存在感を放つ一方で、白い着物の女性の指は、しなやかで柔らかく、わずかな動きに宿る情緒が描かれています。顔の見えない踊り手の感情が、指先で表現されているのでしょう。踊りという絶えず動き続けるものを留めた画面からは、鑑賞時の余韻から三味線や草履が地面を擦るかすかな音さえ聞こえてくるようです。

野中さんはご多忙な中、月に1〜2回という限られた時間で制作を進められていました。限られた時間だからこそ、その着実な一筆が、深く抒情に満ちた一枚につながっているのだと思います。

今年も1年間、大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願い致します。

強烈な色彩・不安定なリズム

坂井 油彩

いよいよ年の瀬が迫ってきましたね。今日と明日、2日続けて大竹が作品紹介をさせて頂きます。
こちらの油絵は、大学の課題として提出するために描いていました。白い陶器のものを明暗または色彩を重視して絵画制作するというもので、キャンバスも30号とかなり大きなものとなっております。

カナコさんは色彩に対する感受能力に優れているので、今回は色彩を重視した構図で制作することになりました。エネルギッシュな暖色の配色の中に影として寒色が使われているのがなんとも魅力的で強烈な印象を与えます。

一定ではない筆使いもまた面白いですね。それぞれ物として形を与えられていながらも、その色彩だけを見ていると別の景色が見えてきそうです。テーブルや陶器は細かい色の変化と筆使いに対して、背景は単調な平面に仕上げて対比となっており、全体のバランスが取られています。この背景の色幅も一定ではなく、歪みを持って描かれています。力強い色彩と、この不安定にさえ見えてくるようなリズムの組み合わせが不思議と調和しています。

今後も色彩をテーマに制作を続けていく予定ですので、来年はどのような作品が出来上がっていくのか楽しみです。 

大迫力!ゴジラ上陸

林 油彩

年末ですが通常運転のマユカです!今回は林さんの作品をご紹介していきたいと思います。
大迫力のアングルでゴジラを描かれました。炎によって照らされた表皮と、真っ黒に輝く影が生み出したコントラストがハッキリとした力強い印象を与え、ゴウゴウと燃え盛る炎によって逆光になることで「大怪獣」というモチーフのなんとも言えない怖さとかっこよさを際立たせています。映画のワンシーンのような迫力は、背中側、さらには下から映したアオリの構図を用いているからこそ出るもので、あえて目立つ正面をメインにしなかった林さんの思い切りの良さがとてもいい方向に作用しました。どうしても「メインは顔」と思ってしまいがちな気持ちを抑えて、描きたいものをより魅力的に表現するために一番いいアングルを選ぶ…それはモチーフを多面的に捉えている証拠だと思います。

ちなみにこちら、なんと林さん初めての油彩です。ペインティングナイフを多用し、大胆なマチエールを付け、ごつごつした表皮や炎の勢いを表現しました。「描き方を教わっていないから分からない」といった指示待ちの姿勢ではなく「まずはやってみよう!」という前向きな度胸がないとできない技法です。油彩特有の、失敗しても上から何度だってやり直せるという特徴と林さんのチャレンジ精神が合っていたのかもしれません。

アトリエ内で乾燥中のこの作品を最初見た時、私は「かなり絵を描き慣れた人が制作しているのだろう」と思っていたのですが、まさか初挑戦の画材だったとは驚きでした。初めてでここまでのびのびとした書き方ができるのであれば、使い慣れてきた時にきっととんでもない作品を生み出してくれるのではないか…と、今からワクワクが止まりません。これから林さんが制作する油彩画はどう進化していくのか、目が離せませんね。