
大竹です。今回ご紹介させていただくのは、石田さんの自画像の鉛筆デッサンです。
普段、私たちは身だしなみを整えるために鏡を見ることはあっても、自分の顔を何時間も観察し続けることはほとんどありません。しかし、描くためにじっくり見つめてみると、人の顔というものが驚くほど複雑な形でできていることに気づかされます。私自身、デザイン科の高校、そして美術大学へ進学しましたが、どちらでも最初の課題は自画像でした。美術を学ぶ入口として、まずは自分自身と向き合うことが求められるのでしょう。
額から鼻筋へと続く骨格の起伏。頬を支える筋肉のふくらみ。唇のわずかな厚みや、目の周りに落ちる陰影。それらが少しずつ重なり合うことで、その人らしい顔が生まれています。デッサンでは、単に輪郭をなぞるのではなく、皮膚の下にある骨や筋肉の存在まで意識しながら、光と影の変化を捉えていくことが大切になります。
自分の顔は誰よりも見慣れているはずなのに、これが描いてみると似せることがとても難しい。毎日見ているからこそ、ほんの少しの目の位置や口元の形の違いにも敏感に気づいてしまいます。自画像の難しさであり、面白さでもありますね。
本作でも、顔全体を包む柔らかな陰影によって立体感が丁寧に表現されています。額から鼻筋、頬へと続く光の流れが自然で、奥行きを与えています。髪の毛も大きな束として明暗を捉えてから細かい毛先が描き込まれているので、自然なボリューム感が生まれていますね。
描いているうちに、自分が思い込んでいた顔と、鏡の中にある本当の姿との差に気づくことも少なくありません。観察することは知ること。そして知ることは、描くことへとつながっていきます。
だからこそ、多くの美術学校で最初の課題として自画像が選ばれるのでしょう。この一枚からも、対象を丁寧に観察しようとする真摯な姿勢が伝わってきます。そうした姿勢は、あらゆる作品づくりの大きな土台になっていくことでしょう。








