
大竹です。今回ご紹介させていただくのは、山本さんの油彩作品です。
こちらはF3号という小さなキャンバスに描かれていますが、画面から感じられる空間の広がりや情報量に驚かされます。小さな画面の中に、部屋の奥行きだけでなく、窓の外に広がる夏の気配まで閉じ込められているかのようです。
ここは和室でしょうか、畳の上にはペルシャ絨毯のような敷物が置かています。窓から差し込む真夏の光が電気のついていない室内を柔らかく照らしており、部屋の中に夏特有の空気が漂います。
窓の外の葉は、一枚一枚の形を克明に描いているわけではありませんが、明るい黄緑や深い緑をざっくりと重ねることで、陽の光を受けて揺れる木々であることが伝わってきますね。細部を描きすぎないことで、遠近感を出すと共に、色そのもので外の気温が感じられるように表現されています。右下の床に明るい光が入り、それがさらに壁へ反射している描写もすごく良いですね!この小さな描写がある事で、絵の中の光が熱を持ちます。
開け放たれた窓からは、蝉の声や、どこか遠くから聞こえてくる夏休みの子どもたちの声まで聞こえてきそうです。絵の中に音は描かれていませんが、視覚的な情報から鑑賞者の記憶が呼び起こされるのでしょう。
画面の中央の女の子は窓からの光を背中から受け、逆光気味の姿です。こちらには顔を見せていないため、表情から彼女の気持ちを読み取ることはできません。しかし、椅子に深く腰掛け、少し行儀の悪い姿勢で足を伸ばしている様子から、なんとなく彼女の置かれている状況を想像してしまいます。夏休みの暑さで、外へ遊びに行くのも億劫なのかもしれません。あるいは、一日が長い夏、特にすることもなくぼんやりと過ごしているのかもしれません。もしかしたら、誰かを待っているのかもしれません。顔を見せないことで、作品が答えを決めるのではなく、鑑賞者それぞれが少女の物語を想像できる余白が生まれているのでしょう。
油絵というと、絵具を重ねて細部まで描き込むことを想像しがちですが、必ずしもたくさん描くことが豊かな表現につながるわけではありません。あえて筆数を抑え、一番見せたい部分を引き立てる。その為には、自身の作品を客観視して、画面のバランスをコントロールする必要があります。休憩がてら、この少女の様に力を抜いて、作品を眺めてみるのも良いかもしれませんね。



