キャンバスとの対話

金 油彩

夏波です。色鮮やかな鯉たちが群れている様子を描いた油絵です。さまざまな色や模様の錦鯉が画面に広がり、賑やかで生き生きとした雰囲気が感じられます。

鯉たちが一箇所に集まっているのを見ると、「ここに何か餌があるのかな?」と想像してしまいます。鯉の食べ物には興味のない我関せずの亀が、またいい味を出していますね。
描写の粗密の関係がとてもお上手です。 鯉たちはいっぴき1匹、はっきりと描いているわけではありませんが、筆やナイフの動きを残しながら描くことで、画面全体で見た時に水面を揺らし動いていると伝わってきます。対比させるように、手前の蓮の葉や亀の描き方を変えました。こちらは細かなところまで丁寧に描かれていて、筆致も抑えられているため、静かにそこに佇んでいるような印象があります。こうしたコントロールが、鯉の躍動感をより引き立てているのです。

描いていく中で、作品の様子が何度も変わっていかれました。ご自身で取られた他のアングルの写真を何枚もプリントアウトし、描き途中の画面と見比べ「ここは残したい」「ここにはもう少し加えてみよう」と、良いと思ったことを少しずつ取り入れていったそうです。写真や描き途中の絵から新しい発見を得て、キャンバスとのやり取りを重ねた分、見応えのある絵画となりました。

油絵は、キャンバスに向き合った時間が絵具の厚みや筆致として残る画材です。完成した絵を見ると一枚の作品ですが、その中には描き手が迷いながら選び、手を動かしてきた痕跡があります。そうした時間まで含めて作品として残っていくところに、油絵の魅力があるのではないでしょうか。