
サトルです!去年は6月中に梅雨明けしたので、今年は遅く感じますね。涼しい日々が続いています。汗をかかなくて過ごしやすいのですが、ふとした時に青空が恋しくなります。
今回ご紹介するのは増村さんの油絵です。10号と少し大きめのサイズ。アフリカと思われる路地で、小さな弟を思いやるお兄ちゃんの優しい姿に心が温かくなります。細かい砂をふんだんに油絵具に混ぜ、マチエールを効かせた壁面に囲まれた画面を作りましたので、過酷な環境に対する子ども達の小ささ、健気さ、逞しさを物語っているように見えます。
建物の間から差し込む光がドラマチックですね。その分、影が子供達を引き立てながら、手前の暗がりへとつながり遠近感を生み出しています。画面の外側の世界から差し込む様に描かれた光は、子どもたちの頭上まで広がる際限のない壁の閉塞感の中で、未来を感じさせられる素晴らしい情景描写です。
ほぼ生の白絵の具と同等の明るさで、普通でしたら抵抗感が無くなってしまう所ですが、砂のマチエールを敷いておく事で壁らしい重厚な質感と強い光を両立しています。
奥の光に対する手前のモチーフの描写は緻密ながらも抑揚があり、それぞれの建材の微妙な質感の差が上手く表現されていて、見れば見るほどその深みに吸い込まれていきます。特に足元の道は非常に良く描けており、水たまりの反射とタイルの微妙な変化、その横の砂地の表現がとてもカッコいいですね。
個人的に、こちらの作品で一番魅力的に感じているのは、画面全体の配色です。青みの光から道の黄色やオレンジへと繋げるため、間に薄紫が塗られていたり、子ども達の下の道をターコイズブルーにしていたりと、現実にはあり得ない様な色で塗っていますね。しかしそれをリアルな風景に見せるテクニックがあり、自然と世界の中へ入り込めます。
ただ写真通りに描いてしまうと人を惹きつける作品にするのは難しく、風景が魅力的に見えるように形や色調を操作することが、描き手に求められる最大のスキルでしょう。すごく難しい事ですけれど、増村さんのように思い切って異素材(砂や砕いた貝殻・セラミックなど)のマチエールを利かせてみたり、非現実的な色を使うなど、一度自分の殻を破って自由に絵を描き始めると、作風の幅が無限大に広がって新しい絵の楽しみ方を知れると思います。また、描くだけではなく作品を鑑賞する時の視点の幅も広がります。「なぜこの画家はこんな色、形に描いているんだろう?」「現実の風景とはどの様な違いがあるのだろう?」と、画家が何を考えて描いていたのか想像する事が容易になり、幅広い視点で作品を見られる様になりますので、最近自己模倣気味な皆さんには特に新しいことに挑戦して頂きたいです!