
大竹です。今回ご紹介させていただくのは、原さんの油彩作品です。
まず左の風景画。水辺に並ぶ街並みはヴェネチアのものでしょうか。深い青をたたえた水面に、周囲の建物や空が映り込み、美しい揺らぎを生み出しています。水面の揺らぎを表現した点描のような筆跡と、フラットな建物の壁の質感の違いが油絵らしく魅力的ですね。水辺や空の青、街路樹の緑、建物のオレンジが互いの魅力を引き立てています。
遠近のパースが大きくついた構図のため、形を整えながら奥行きを出すのは苦労されたかと思います。奥の空間の抜けが出なかったり、水面が濁ってしまったりと、何度も描き直しを重ねられたことでしょう。心が折れそうになりながらも歯を食いしばって完成まで持っていった、まさに努力の結晶です。その苦労の積み重ねが、油彩ならではの深みのある色合いとなって現れ、建物の年季や空気感までも感じさせる一枚に仕上がりました。
そして右のリンゴを描いた静物画ですが、こちらは以前別の絵を描いていたキャンバスを塗りつぶし、その上から制作されています。偶然生まれた美しい下地がベースとなり、その上にリンゴを大胆に描きました。実物大ほどの小さなキャンバスですので、二回の授業で完成させています。以前、私が開催した講座に参加してくださっていたので(その時の記事はこちら)、その際のポイントを思い出しながら制作されたそうです。(講座の日付を見たら7年前!再び実践して下さって嬉しいです)
暗い背景から浮かび上がる赤いリンゴは艶やかで、まるで宝石のよう。鮮やかな輝きを際立たせたいときは、その周囲にあえて抑えた部分をつくることが効果的です。本作では、落ち着いた下地があるからこそ、リンゴの赤が一層鮮烈に映えています。
作品を制作していると、普段何気なく見ている風景が絵のモチーフとして立ち現れたり、実際に描いてみると「思っていた色と全然違う」と気づいたり、さまざまな発見があるかと思います。絵画制作は幅広い年代の方々が取り組まれていますが、それは制作を通して自分自身のまだ知らない一面に出会えるからではないでしょうか。そこには小さな驚きや感動が確かに存在します。
制作中の苦労は、まさにまだ気づいていない知識や発見へと近づいている証です。なかなか完成しないもどかしさもあると思いますが、そう考えると試行錯誤の時間さえも、少し楽しく思えてくるのではないでしょうか?