
大竹です。秦野さんはご自身で撮影された風景写真をもとに描かれていますが、実際の風景はここまで紫ではありません。作者の目と思考を通じ、キャンバスの上で再構成された風景と言えるでしょう。
画面全体を支配するのは、青紫と赤紫が溶け合うような色調です。黄昏時という、昼と夜の境目の時間を描きながらも、その空気はどこか夢のような静けさを帯びています。見慣れたはずの日常の風景が、この絵を通して見ると、不思議な感覚を呼び起こされるようです。そこには哀愁や不安、そして望郷のような想いまでもが滲み出ています。
夕陽に照らされた家々の黄色が、青紫の中で印象的なアクセントとして輝いています。空はほとんど描かれていませんが、川面へ反射して白く輝いており、手前の堀の陰とのコントラストが画面に奥行きを生み出しています。
また、奥へ注目してみると、山々が赤みを帯びて描かれています。通常、遠景は青く霞ませて空気の層を表現(空気遠近法)しますが、ここではあえて赤を用いる大胆な選択が、作品全体の独特な空気感を形づくっています。元のお写真の風景がどのようなものだったのか、気になってきますね!
展覧会では色彩の美しさにほれぼれと立ち止まっているお客様を何人も見かけました。見るたびに異なる感情が立ち上がるような、穏やかな余韻を残す1枚です。