自分の道を切り開く


立野 油彩・銀箔/木製パネル

岩田です。今回は立野さんの作品をご紹介します。ここ1週間のブログは箔の貼られた日本画紹介が続いていますので、こちらの作品も日本画に見えてしまいますね。しかしジャンルで言えば油絵。支持体は木枠にキャンバスを張ったものではなく木製パネルですが、板に直接油絵を描き、箔を貼っています。

電柱の後ろに大小様々な建物が建ち並ぶ、どこにでも見かける何気ない風景。そうした日常をモチーフにした今回の油彩ですが、立野さんならではのちょっと変わったアプローチで描き上げることで、単なる一風景画から脱却し、シャープで現代性を帯びた作品へと昇華させています。

通常は、空を塗るであろう青色を敢えて建物に置き、その上から線描でディティールを描いていく。その線も単色ではなく、何色かを合わせながら繊細な線を重ねていきました。
変圧器を主体に、手前に鎮座する電柱はしっかり描写していて、風雨を受け、その少し古びた質感が何とも哀愁を誘います。背景が青とシルバーの2色と至ってシンプルなぶん、そうした味わい深い表情が強調され、クールな中にもどこか昭和を思わせる感覚が宿っているのが何とも良い感じなのです。

更に銀箔を貼ることで、箔足やそれらが微妙に剥げてできた模様が、油絵具で塗っただけでは出せないある種屏風絵のような雰囲気を与え、作品をより一層美しく、オリジナリティ溢れるものに仕立てています。

時に迷いながらも自分なりの道を切り開こうとするその姿勢、とても素晴らしいと感じています。是非これからも立野さんならではの作品を追求していって欲しいと思います!