県展、3人受賞!


【横浜市会議長賞】 鈴木『バレエ カルメンの一場面』
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【優秀賞(マツダ絵具賞)】 増村 『或るチェリスト』
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【奨励賞】 香月 『孫』
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今日のブログは紙版画を続けるつもりでしたが、ニュース速報が入りました!先週の金曜日にご紹介しました【第92回県展】にて、鈴木さん、増村さん、香月さんが受賞されました!本日4月30日(水)から展示が始まっておりますので、記事を差し替えてお届けします。

3人が一気に受賞なんてこと、ありえるでしょうか?快挙です!天晴です!
新作を出品した香月さん以外のお二人は、少し前に描いた作品でしたが、未発表でしたので思い切って出してみたそうです。やってみるものですね!
全く知らない人に自分の世界観が認められ賞賛されるというのは、何にも代えがたい喜びだと思います。
私もこれ以上嬉しいことはありません。
本当におめでとうございます!
ますます精進して頂く為に、もっともっと厳しく指導させて頂きます。(笑)
オバラ

増村さんと香月さんは2枚出品し、そちらは入選しておりますので下にアップします。


増村 『楽器職人の空間』
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増村さんの声 「光の中の影、暗闇の中の光として対比すると同時に、絃楽器を共通テーマとしてセット作品として応募してみました。」


香月 『ダンス』
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会期 : 2025年4月30日[水] 〜 5月5日[月・祝]
開場時間 :10:00〜18:00 (※最終日は14:00まで)
会場 :横浜市民ギャラリー展示室(全室)
〒220-0031 横浜市西区宮崎町26番地1(桜木町駅より徒歩10分)
JR桜木町駅と横浜市民ギャラリーを無料で巡回する、お身体の不自由な方・ご高齢の方に配慮した送迎車サービスあり 詳しくはこちら

小学生自画像 紙版画2

昨日に引き続きひとみです。本日も小学低学年で実施した自画像紙版画について、もう少し細かく書かせて頂きます。

〈パーツの切り貼りの順番〉

・顔の輪郭を写し切ります。
額は髪の毛を上から貼るために、糊しろ部分として大きめにしておきます。

・歯、舌を写して切り、貼り付けます。
唇を重ねて貼るために必要な糊しろ部分(歯茎)を作っておきます。また、歯を一つ一つ作ると大変なので、上の歯と下の歯でそれぞれのまとまりで作ります。

・唇を写して切り、貼り付けます。
重ねる順番は、舌、歯の順で、一番上に唇を重ねて貼り付けます。

・黒目を写して切り、貼り付けます。
瞼を重ねて貼るために、瞼で隠れている部分も作ります。つまり〇に描きます。〇の上下が必要な糊しろ部分となります。

・瞼を写して切り、貼り付けます。
黒目の上に重ねて貼り付けます。

・眉毛を写して切り、貼り付けます。
前髪でほとんど隠れている場合でも作ります。

・鼻を写して切り、貼り付けます。
小鼻以外の鼻の稜線も(△のような形になるように)描きます。難しい子は先生がアドバイスしながら見本を見せます。

・鼻の穴を写して切り、貼り付けます。
鼻の上に重ねて貼り付けます。

・耳を写し切り、輪郭の後ろに貼り付けます。
輪郭の後ろに貼るために必要な糊しろ部分を切らないようにします。

・耳の中の造形(内耳)を写して切り、貼り付けます。
耳の上に重ねて貼り付けます。

・顔のシワを写して切り、貼り付けます。

・ある子は眼鏡や、髪飾りなどのアクセサリーを写して切り、貼り付けます。

・髪の毛を写して切り、貼り付けます。

・首を写して切り、輪郭の後ろに貼り付けます。
顔の輪郭の後ろ・洋服の後ろに貼るために必要な糊しろ部分(上下)を切らないようにします。

・洋服を写して切り、首の前に貼り付けます。

・襟やフードを写して切り、貼り付けます。
洋服の上に重ねて貼り付けます。

〈切るもの一覧〉

・顔全体のシルエット
・顔パーツ
    ↳唇×2
        歯×上下
        舌
        ※口の中の暗い部分は作らない
        まぶた×2(二重は4)
        瞳×2
        眉×2
        鼻
        鼻の穴×2
        耳×2
        内耳×2
・細かいシワや影、髪
・首
・服
・ある子はアクセサリー(眼鏡やリボンや矯正器具)

私の説明でお分かりになりましたでしょうか?小原先生に伺うと、面白いカリキュラムの時は、全国の小学校の先生から電話で質問されることもあるとの事でしたが、こちらに書き出したことで作り方の全てが分かって頂けるよう尽力したつもりです。上手に作ってもらい、図工が大好きな子が増えてくれたら嬉しいです。

小学生自画像 紙版画1

ブログはお久し振りです、ひとみです。今回は2・3月に小学生クラスで実施していました、自画像紙版画について書かせて頂きます。

紙版画は、コシのある厚手の画用紙を重ねて貼ることで凹凸のある版を作り、その版を油性インクで刷り版画が出来上がります。画用紙の積み重ねをレリーフとして考えると、高い場所(鼻の頭など)を上にしたくなりますが、版の上にくるパーツほどインクが付きやすく黒くなるので、暗くなるパーツ(鼻の穴など)が一番上になるように作ります。最初は理解するのが難しい子が多く苦戦している様子を見られました。しかし作っていくうちに理解できて「次に暗くなる所はここだから、これを作るんだよね!?」と混乱せずに進められ、頼もしく思いました。

そんな紙版画の詳しい作業手順を紹介しようと思います。

①自分の写真にトレーシングペーパーを重ねて線で顔のパーツを描き写します。(撮影はできるだけ面白い顔をポーズしてもらいました。)
この時の注意点としては細かいシワは描きますが、頬などの大きく暗い面はなぞらないようにすることです。
影になっていない上のまぶた、鼻は鼻筋もなぞることで後々の切る作業で、パーツごとに分けやすくなります。

②トレーシングペーパーを裏返して描いた線の上を全て黒く塗りつぶし、カーボン紙状態にします。
(写真では分かり辛いですが、右のトレーシングペーパーの裏は、濃いかきかた鉛筆で塗りつぶしてあります。)
塗り忘れがあると次の画用紙に写す作業の時に線が写らないのでしっかり丁寧に塗ります。

③画用紙の上にトレーシングペーパーを重ねて顔を写し、お面を作ります。
ズレないようにマスキングテープで画用紙とトレーシングペーパーを貼り付けて固定すると良いでしょう。
顔の輪郭だけでなく、目や口などの全ての線を画用紙に写しておくと分かりやすくなり、貼り付ける際に福笑いにならずに済みます。
また額は髪の毛を上から貼るために、糊しろ部分として大きめにしておきます。
先生が事前にカラーペンで糊しろ部分をトレーシングペーパーに描き、前髪の形の糊しろを切ってしまわぬように気を付けさせました。

④画用紙にパーツごと線をなぞり、写したパーツの線を切ります。
この時、例えば歯などは唇の下になるよう重ねて貼るので、のりしろ(写真では見えていない歯茎まで)を作る必要があります。これは難しいので、一人ひとり切る前に、先生がのりしろを描き足しました。また、歯を一つ一つ作ると大変なので、上の歯と下の歯でそれぞれまとまりで作ります。

ここからは、パーツの線をなぞって、切って、貼るの繰り返しの作業になります。先生が「次は左の眼の上瞼を作ろう!」など細かく声を掛け、「最初に切っておいた目玉(黒目)と瞼をくっつけちゃおう!」と切ったパーツはすぐに貼り付けることで、紛失を防ぐことができます。20人以上の低学年の一斉指導なので、確認しながらパーツごとに繰り返し作業することが大切です。

⑤切ったパーツを貼り付けます。耳ともみあげの関係など、前後関係が人によって違う場合もあるので、先生が一人ひとり確認します。
貼り付ける際にボンドをつけすぎるとはみ出してしまい、刷る時に影響が出てしまうので注意が必要です。

⑥完成した版画にインクをつけて版画用和紙の上に重ねて刷ります。
バレンで力を入れてこすることで転写が均一に綺麗にできると言われていますが、6歳の子に使わせると力が足りず薄くなりがちです。ミオスでは手をバレン代わりにし、掌や指先で凹凸を感じながら擦らせています。
転写できたかどうか角を少しだけめくって確認しながら行います。転写できていない部分があったらその部分を重点的にこすります。

⑦和紙を剥がし、乾かします。版画インクは油性ですので、完璧に乾くまで3日間ほど掛かります。(すぐに乾く水性インクだと、刷っている最中に版と和紙がくっついてしまうので、忙しない作業となり低学年には不向きなのです。)
本当は広げて乾かすのが一番良いのですが、一人で数枚刷る為1クラス100枚近くになりスペースが足りないので、ボロ布と新聞を挟み重ねて保管。夜間大人クラスが終わってから朝まで、教室中の床に広げ乾かしました。

作業が多くて大変ですが、低学年でも簡単に写真のようなリアルな版画を作ることができます。小学生クラスの皆も自分とそっくりな版画に喜んでいました!ミオスで開発した技法との事で、私が学習指導案を作らせて頂きました。ぜひ皆様も真似して紙版画に挑戦して頂けるよう、明日はもう少し細かく書き出します。

距離感が近い作品達


松野 油彩

岩田です。今回は、松野さんの作品をご紹介します。
入会時から続けて動物を描き続ける松野さん。「風景や人物より、やっぱり動物を描くのが好き。」と仰るだけあって、どの作品からも対象への愛情が伝わってきます。

その中でも特に馬は、描く頻度が高く、また描くたびにクオリティも上がってきています。
今回、掲載した作品は、森の中で朝日を浴びる白馬。木漏れ日の光線は、最も手を焼いたところだったようですが、光を受けた白の中での絶妙なコントラスト、馬の優しさ溢れる表情など、見どころの多い作品に仕上がっています。

子犬も松野さんにとっては大事なモチーフの一つ。
幼いものが持つ無垢な印象を引き出すのが上手いなといつも感じさせてくれます。こちらの絵も、特に目を描くことに注力しているのが分かるでしょう。

そのつぶらな瞳からも伝わる、あどけない表情が本当に可愛らしい1枚。中々こうした表情って描けないなぁと思います。動物が持つ感情や想いを作者が自分を通して画面に投影させているような、動物たちと非常に近い距離感が感じられる作品達です。

今回、掲載した作品も交えた松野さんの個展が開催されます。ゴールデンウィークの暖かな陽気の中、どうぞ足をお運びください。

『松野君枝展』
日程 : 5月2日(金)~  6日(火)
時間 : 12:00-18:00(最終日は17:00まで)
場所 : ひかり街 40号
     自由ヶ丘駅正面口より徒歩2分

大切な人を描く喜び

大竹です。今回ご紹介するのは、香月さんの油彩作品です。

まず1枚目の作品。こちらの女性は香月さんの奥様です。フォーマルなドレスに身を包み、優雅に舞う様子が、まるで映画のワンシーンのように美しく描かれています。(香月さん曰く「綺麗に描かないと怒られる…」そうです…一層気合いが入りますね!)華やかな衣装の装飾や布の流れ、肌の陰影に至るまで、ひとつひとつが丁寧に描かれており、油彩の重厚な魅力がふんだんに詰め込まれています。特に陰影はメリハリをつけて描かれる事を意識されたのではないでしょうか。強いライトの逆光で人物のシルエットが浮かび上がる事で、大きな画面の中での存在感に繋がっています。
また、黄色いライトと紫の影が会場の独特な雰囲気を作り出していますね。煌めく舞台の光を浴びながら踊る姿は、観る側も自然と心を奪われることでしょう。

そして左の作品。こちらはお孫さんを描かれているそうです。なんと幸福感に満ちた光景なのでしょう、観ているこちらの顔も綻んでしまいそうですね。油絵の特性を生かした、柔らかな肌のグラデーションと温かみのある色彩で、幼い頃ならではの無邪気な笑顔と、柔らかな空気感を見事に表現しています。子供らしいまんまるの顔や、小さな手足が可愛らしいですね。作者の深い愛情が、一筆一筆に表れている様です。背景の木の温もりや、敷かれた布の質感も、重ねた絵具の厚みと透明感のバランスが絶妙で、油彩だからこそ生まれる「空気ごと描く」感覚が味わえます。

右の作品は1枚目に続き、奥様をモデルにされています。しなやかな動きの一瞬を切り取ったかのような構図が素晴らしい!より躍動感と重力を感じさせますね。衣装のスパンコールやビジューは星の様に煌びやかで、ますで夜空に舞っているかのよう。ダンスの表現で重要な指先や目線にも気を使い、切り取られた一瞬を情熱的に描写しています。背景に広がる紫と藍のグラデーションも、油彩らしい深みがあり、二人のシルエットをより一層引き立てています。皮膚の下の血の通いを感じさせる肌の色使いも美しいですね。きっと奥様もご満足な筈です!

1枚目とお孫さんの作品は、第92回の県展に出品されています!
会期:4月30日(水)〜5月5日(月・祝)10:00~18:00(最終日は14:00終了)
会場:横浜市民ギャラリー(桜木町駅)

ぜひ会場にて、油彩ならではの豊かな色合いや、息遣いの伝わる筆致を直にご覧ください!

夏の暑さにコントラストを添えて


冴妃 高1 油彩

最近見たミュージカル映画の曲がずっと頭から離れないマユカです!今回は冴妃の作品をご紹介していきたいと思います!

波打ち際で遊ぶ2人の女の子。押し寄せる緩やかな波と追いかけっこをしているかのような躍動感の溢れる一枚です。こちら、実は彼女にとって初めての油絵ですが、画材に対する勘の良い人で、波の透明感なども一人でどんどん描き進めてくれました。乾かし中に壁に掛けていますが、それを見た大人クラスの生徒さん達からすこぶる評判が良かった作品です。水の表現は私でも参考にしたいほどで、透明感だけではなく波の厚みや立体感までもが美しく描写され、どのくらいの深さなのかまで想像することが出来ます。潮風の心地よい涼しさが画面越しに伝わってくるようです。

海の奥の方は青や水色だけでなく紫や薄い緑、よく見ると赤っぽい色も入っていますね これだけのたくさんの色を塗り重ねることで、海がのっぺりとせず、深みが生まれて見ごたえのあるものになっています。海が寒色なので、これだけの面積を青で埋めるとどうしても少しだけ寒そうな印象に寄りがちなのですが、黄色い砂浜や強く光の当たったメインの女の子2人の楽しげな雰囲気や小麦色の肌、強く落ちた影によって明るい印象が強く、良く晴れた暑い夏の日を想起させてくれます。青と黄色は補色に近く、コントラストが強くなることで印象的に映る効果があるため、一度見たら忘れられない作品に仕上がっているなと感じます。

強い影や色相のコントラストの差は、強い印象を与えてくれます。暑さや明るさ、楽しさなどを伝えたい場合はとても効果的で、逆に淡い色や近似した色相は優し気で落ち着いたイメージを与えます。モチーフや各々のイメージに合わせてコントラストの調整をするのも、絵作りにいい効果を与えてくれるかもしれません。

夜闇を照らす


万里菜 高1 油彩

ナツメです。昨日は中学生、今日と明日は高校1年生の作品が続きます。本日はマリナの作品をご紹介!

高校受験が終わり、好きなものを描いていいよ!と言ったところ、油絵に挑戦してみたいとのことで、初めて臨みました。そんなマリナがモチーフに選んだのは小原先生の写真から海外の夜の路地裏。イタリアのヴェローナという街でシェークスピアの「ロミオとジュリエット」の舞台になった街だそうです。観ていると少し怖いような、ワクワクするような、そんな気持ちになってきます。

まず目を惹くのは、光と影のコントラスト。街灯に照らされた壁面のレモン色が周囲の暗がりを怪しく照らし出し、夜の静けさを破ります。路地へ誘うかのように建物の奥へ進むほどに光が増えてゆき、ほんの少し見える夜空の青との補色効果も相まって、まるで芝居を盛り立てる背景のような夜の妖艶さも感じます。

敢えて斜めにデッサンを狂わし安定感を奪う手法は、見る人にめまいがするような不安を煽る効果があります。石畳は少し厚めに絵の具を盛り、壁面は色彩に大きく変化をつけることで、それぞれの質感を伝える工夫をしました。丁寧なグラデーションではなく、少しざっくりとしたタッチで色の移ろいを重ねていくことで、ゴツゴツとした面の硬さや時間の経過を想像させます。単なる風景ではなくどこか物語性のある画面に仕上がっているのが印象的です。

長い間受験対策のデッサンをしていたので、絵の具を扱うことが久々だったと思いますが、先生に怒られない分描いている姿は生き生きとして見えました。筆の置き方や色の選び方も堂々としていて、何よりも楽しんで描いたことが伝わってきます。長い受験期間を終えて、ようやく筆を持つことができた嬉しさが、そのまま絵の開放感として表れているように感じました。 自分で写真を選んで、初めての画材で一枚を仕上げた経験は、これからの制作にきっと繋がっていくはずです。夜の路地に灯る明かりのように、この絵がこれからの道を照らしてくれるものになれば嬉しいです。

魅力を引き出す背景


左 咲歩 / 右 心寧  共に中3 油彩

サヤカです。今日は学生クラスの油彩作品をご紹介します。二人とも初めての油彩に挑戦しました。

咲歩がモチーフに選んだのは、こちらを大きな瞳で見つめる猫ちゃん。くりっとした瞳やダンボールに引っかかった頬の毛のふわふわ感など、咲歩がかわいいと感じたであろう箇所がとても魅力的に描かれています。猫の描写もさることながら、背景の描き込みも素晴らしいですね。緩衝材の紙のくしゃっと感、ダンボールのディティールなど丁寧に観察したことが伝わってきます。背景を丁寧に書き込むことで、この猫ちゃんに対する解像度がより高まり、作品に説得力が生まれます。

心寧は、怪しげな目元が印象的なフクロウをモチーフに選びました。真っ白の動物を描く時は、模様で誤魔化せないので、体の形を再現するのは大変ですが、絶妙な色使いで影を表現し、フクロウのフォルムをしっかり追っています。また、主人公であるフクロウと背景のタッチに差をつけることで、フクロウの存在感が強くなっています。描き込みやコントラストにおいても、背景とフクロウにきちんと差がついていて、よりフクロウにスポットライトが当たったように視線が誘導されます。色使いも知的なフクロウの魅力を引き出しています!

二人ともモチーフに対する印象を作品に落とし込むのがとても上手です!ただ模写をするのではなく、モチーフのどんな魅力を描きたいのか、どんな雰囲気を描きたいので背景や色彩を決めることが大切です。これからも二人の作品を楽しみにしています!

夜道の記憶


木村 油彩

日曜クラスのサトルです。今回は木村さんの油絵をご紹介させて頂きます!

煌びやかな灯りに照らされた夜道を犬を連れながら歩く3人の家族の姿から、懐かしさを感じます。僕は子供の頃は夜道を1人で歩けず、必ず家族と手をつなぎながら一緒に歩きましたので、夜道の記憶は大人になっても忘れない思い出の一つです…。沢山の灯りと家族の温もりで、小さな頃に感じた暗い夜道の怖さを包んで消してくれる素敵な作品だと思いました。

散りばめられた灯りが明るく光っているのに対し、空や屋根などにはしっかりと暗さが入っています。かなり明暗の対比が効いていますが、見ているとなんだか穏やかな気持ちになります。

木村さんは薄い絵の具の層を重ねて複雑な色味を作る油絵の達人です!提灯やランプの色を、白いハイライトの上から薄く黄色を重ねる事でぼんやりとした光を表現し、さらには重ねる色を少しずつオレンジに変える事によってハイライトの色調が単調にならないように工夫されていますね。暗い色も完全な黒を使うのではなく、最初は暗い茶色で描写した上から濃い透明色のウルトラマリンを重ねる事で深みのあるグラデーションを作っています。特に夜空の表現は魅力的。下界からの光や月明かり照らされてうっすら明るい夜空と、それを隠す雲の影には絶妙なぼかしが独特の奥行きを生み出しています。

画面右下の寝転がった猫や、看板の下にあるのれんは後から描き足していました。最初に決めた構図に囚われず、臨機応変に描き進める姿勢は今まで積み重ねた経験から来るものなのでしょう。

現在は木村さん、鶏を日本画を描かれています。鶏は古くから日本画で描かれてきた伝統的なモチーフですが、木村さんの様な油絵を長年描かれてきた方が日本画で描いたらどの様な作品になるのでしょう?僕は藝大で日本画を勉強していますが、まだまだ経験不足なので、生徒さんの描かれる作品からも新たな発見があります。日本画だからこうしなきゃいけない!なんてことは考えずに自由な表現をしてください。心から楽しみにしています!

一枚一枚、納得のいく作品を


箕輪 アクリル

岩田です。今回は、箕輪さんの作品をご紹介します。

アクリル絵の具を使って描くようになって、今回で何枚目ぐらいになるのでしょうか。絵の具を使い始めた当初に比べ、今では、かなり自由に自分の世界を表現できることに、喜びを感じながら描いてる気がしています。

薄塗りで全体感を作りながら、その後も重層的に絵の具を重ね、下に置いた色を透過させながら徐々にモチーフを浮かび上がらせていく。そうした方法論を構築できてきたことで、自分にとって無理のない描き進め方ができているようです。

今回掲載した作品を見ても分かるように、人物、風景などモチーフも多義にわたってチャレンジしていますが、私は特に、水車小屋の絵に見られる雑木林のような、緑がうっそうと茂る様を描くのが上手いなあと感じています。

現在進めている絵もそうなのですが、前景、中景、後景を自分の中で整理しつつ、加えて植物などもアレンジを施しながら、自然な空間を作っていく。本来、これ結構難しいことですが、途中経過を見ていても破綻のないかたちで進行しているのが分かるし、ちょっとした方向転換も実に合理的に処理できています。

作者と話していると、オリジナリティということに話がいくことがあります。コンペにも頻繁に応募し、ご自身でも多くの作品を制作しているが故に、そういうことを意識されてもいるのかなあと感じているのですが、普段、出来上がったものを見ていると、仕上がりの風合いには一定の統一感を感じることができるので、いっそ前述したような、うっそうとした森林の風景などを立て続けに描いてみてはどかなと思いました。

一枚目の童子を描いた作品をこうして客観的に見ると、特に顔のデッサンがもう少し自然だったらとあらためて思わせます。人物デッサンも進めていく必要がありますね。直近のコンペでは、悔しい結果を経験しているとのこと。でもそれをしっかりバネにできることが作者の強みです。ご自身でも「これが私かも」と腹落ちするようなオリジナリティが滲みでてくるのは、もしかしたら、そんなに遠い先ではないかもしれません。

とはいえ、そこはあまり焦らず、じっくり自分で納得する作品を一枚一枚作り上げていって欲しい。それが何よりも大切であり、私の願いです。