
岡崎 油彩
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、岡崎さんの油彩作品です。前回ご紹介した絵はこちらですが、パズルの様に隙間なく建てられたビルの街の風景から一転、森の拓けたキャンプ場を描いています。3つのテントに群がる3頭の鹿と、側にがワゴン車が停まっています。
前作に比べると、都会の息苦しくも感じられるビルの喧騒から離れ、穏やかな時間が流れている様に思います。しかし、ビルや崖の代わりに、周囲が森で壁のように囲まれている光景は、作者の根底にある心情が反映されているように感じました。柔らかな寂しさや閉塞感のある空間で、消えかけの小さな火や大人しい鹿達が描かれているのは、ひと時心の安寧を感じさせます。
ワゴン車やテント、焚き火といった人の存在を感じさせるモチーフが多く配置されていながら、そこに人は描かれておらず、野生の鹿だけが集まっているのも興味深いですね。鹿たちは、消えかかる焚火からのぼるほのかな煙を見つめているのでしょうか?それとも、新月を見上げているのでしょうか?
私は大学で絵画による心理テスト(バウムテストなど有名ですね)の授業をほんのさわりだけ受講したのですが、それによると左は過去、真ん中は現在、右は未来を表すそうです。右側で見切れて配置されたワゴン車は、未来に向けて今ここから走り出したい!といった前のめりの姿勢にも思えます。左側、特に左上は思想や哲学が表れるそうで、星ひとつない夜空の三日月は、満ち足りない何か、もしくは消耗を連想させます。(岡崎さんが意図したものとは全く違うものかもしれませんが、私はこちらの作品でこのように鑑賞を楽しませて貰いました!)
厚塗りにならないように、おつゆ描きを重ねている為、一見テンペラ画のようにも見えます。その厚みを持たせない質感によって森閑とした空気を作り出しているのでしょう。三日月だけが浮かぶ吸い込まれそうな夜空の色合いも、色を少しずつ重ねて深みを作っていったのでしょう。シンプルな描写ほど、魅力的に見せる為に気を遣う必要があります。
前作は「乾杯」というタイトル(タイトルの由来も面白いです)でしたが、今作はどんなタイトルを付けられたのでしょうか?とっても気になります。
常に自分の世界観を深め、追及していく制作は、産出の悩みや苦しさも伴う事でしょう。イメージした通りに手を動かす事は難しく、きっと岡崎さんも苦労されたかと思います。しかし、自分のイメージを出力したいという欲求は、研究や上達の為の原動力にもなり得る燃料です。是非ご自身の欲求を燃料に、どんどん手を動かしていって欲しいと思います。











紙風船 