遊び心満載!


  詩哉 高1 色鉛筆

ようやく今日から夏休みです、ナツメです。本日は月曜クラスよりうたやの作品をご紹介します!

今回は人で賑わう横浜中華街を描きました。色鉛筆画はこれで3枚目ですが、段々扱いにも慣れてきて濃淡やタッチの向きなどへの気配りを感じます。中華街特有の黄色と赤のカラーリングが目立つよう他の部分は人を含めてほとんど無彩色にしているほか、手間をしっかり、奥は優しく塗ることで画面がごちゃごちゃしすぎず遠近感も出るよう工夫しています。

そして何と言っても各所に描かれた小ネタが楽しい!といってもブログの写真サイズでは細かいところが潰れてしまうので実際に見ていただけないのが大変惜悔やまれます。一見何気無い中華街の日常を描いたように見えますが、実はこの絵の中の文字やポスターはほとんど中身をオリジナルに変えているんです。よく観察するとマンゴーかき氷の表示価格が2円になっていたり、中華まんのラインナップに紛れてアンンまんが販売されていたりと、細かな文字の部分も含めて一切手を抜かず描き込まれていて見れば見るほど面白おかしさに引き込まれます。写真通りに描いてあるのは氷の旗とテントの創業の部分だけという、恐ろしいほどの変化に脱帽です。詩哉は毎回隙あらばとばかりにこのような遊び心を加えていますが、とりわけ今回は中華街の雑然とした光景とうまくマッチして非常にユーモアのある作品になりました。

情報量が多く描くのが億劫になってしまいそうな部分も自分でアレンジしてどんどん楽しい作業に変えていく力、細部までこだわって描く意欲が本当に素晴らしい!今後の制作でもぜひ大切に、そしてそのまま突き進んで下さい!

居酒屋のポスター!?


瑛太 高3 アクリル

サヤカです!あっという間に七月末ですね…!今回は、暑い夏にぴったりな学生クラスの瑛太の作品を紹介します。

先週『遂に完成!水のデザイン』としてアップしてしまいましたが、実は41人目の本当の最後の人がいました!小原先生の言い訳では「この絵は私の中では居酒屋のポスター制作だったから、水のテーマのデザイン課題が全員終わったつもりだった。だから本人の許可を得ず、ちょっと趣向を変えて暑中見舞いということにしてみた。」とのこと。また「完成して本当に良かった。毎週制作中の絵を見る度に、授業後にレモンサワーを買いに行きたい気持ちを止められず、現在売っている全メーカーのレモンサワーを飲み比べ、語れるほどになってしまった。不謹慎極まりない絵だ!」と、理不尽なことまで言っていました。(笑)

小原先生の言うとおり、躍動感ある水飛沫とレモンのカラーが爽やかで、炭酸を一気飲みしたくなる作品ですね!荒々しい着彩の仕方が、よりダイナミックさを際立たせています。水飛沫の荒々しさとは対極に、ジョックの厚みの表現や、レモンの陰影や反射からは丁寧な観察力が伺えます。実際にジョッキとレモンを組み合わせてよく観察している姿が印象的でした。また、周りに縁(白く残す部分)を取らせましたが、枠からはみ出るデザインにしたのは彼一人。与えられた枠に囚われず、選んだモチーフの魅力を最大限に引き出しています。勢いがあって実に豪快!乾杯!

小学生 夏休みワークショップ

小学生対象の油絵ワークショップが始まっております。日によっては空席もございますので、駆け込みでお申込も可能です、メールでお問合せください。ワークショップの詳細はこちら

油絵は下塗りが重要です。物理的に筆が滑りやすくする為にも必要ですが、見えている色(写真と同じ色)を塗った時に発色を良くする為、また深みを出す為に必要です。が!小学生の場合はまた違う理由が。塗り方が雑なので、塗り残しがあっても白地が見えない=完成度が高く見える、という利点が一番ですね。
上の作品は低学年の絵ですが、上段と下段で下塗りの色数が違います。下段は1色しか塗っていませんが、単に下描きに時間が掛かり、下塗りに多色を使い塗り分ける暇がなかっただけ。上段の子は余裕があったので、場所によって色を変えました。肌は元気に見える赤、洋服は補色、背景は類似色を選択しています。本人たちはまだ理解できる年齢ではありませんので、講師が選んで塗らせています。高学年には説明して自分で考えてもらいますが、難しい子には無理せずこちらの指示に従ってもらっています。
下塗りについては、過去のYouTubeが分かりやすいのでどうぞご視聴ください。こちら

長い道のりを経て


松尾 油彩 /板・紙

岩田です。今回は、松尾さんの作品をご紹介します。

近頃はひたすら実験を試みながら、色々な素材、道具を駆使し、新しい展開を作り出そうとしている感が伝わってきます。
板に紙を貼って描いて、又その上に紙を貼って・・・・。という具合に、今回の作品の下には幾つもの絵が重層的に存在していて、表面には常に新しい実験が乗っかっているというかたちです。

支持体は紙なのだけど、描画材は油絵具がメイン。
今回も松尾さんが追ってきた、二つの世界を一つの画面に落とし込むスタイルで、黒い面には蜘蛛と蜘蛛の巣。明るい面には大きく蝶が描かれています。

蝶は、紐を貼った上から、希釈した油絵具で背景を作っているので、その部分だけ白く残って蜘蛛の巣を拡大して描いたような、面白い効果を生んでいます。
蜘蛛を描いている面は、一度塗った黒い絵の具をニードルで引っ掻き、下の紙白でモチーフを表現しています。

この二つの世界が混然一体となり、更に面白い世界が画面上に展開しているのが見て取れます。

とはいえ、興味深いのが、これはあくまでも「実験」だということです。
こうした幾度にも積み重ねた試みから、真の作品が生成されていきます。失敗と成功を繰り返し、自分で納得した結果を得られるまでの長い道のりを経て、どんな作品が制作されるのか楽しみでなりません。

チャレンジを楽しむ


當山 油彩

大竹です。夏休みだからか、街中で学生を沢山見かけますね!
今回ご紹介させて頂くのは、當山さんの油彩作品です。最初はアカデミックに描かれていた正統派な油彩の静物画でしたが、楽しい事・面白い事・チャレンジしたい気持ちに貪欲な當山さんは、どんどん絵や色が変化していったそうです。キャンバスを横から見ると、塗り重ねのマチエールで盛りモリです!最終的な完成形がどうのという小さなことにはこだわらず、いかに今後に活かせる実験ができたかに焦点を当てていらっしゃいます。

背景にも油彩のチャレンジの後が見受けられますね。適当に塗るのではなく、モチーフで使われている色(ポットや無花果の赤、マンゴーの黄色、マスカットの黄緑)が使われています。沢山の色を使われているにも関わらず、まとまった印象に仕上がっているのはお互いに関連する色を入れているからなのでしょう。果物の中にも様々な色が使われていますが、隣り合うモチーフの色を交換するように入れていたり(いちじくの色が隣のマンゴーへ)、アクセントとしてお皿の色が入っていたりしています(ポットやいちじく)。
ポットの蓋の右部分を見てみますと、背景の黄色で輪郭を浮かび上がらせるかのように描かれています。ポットそのもので形を作るだけでなく、背景から輪郭を削り出すように描く事で、輪郭が強調され、メリハリが生まれています。背景から輪郭を描くテクニックは、絵の具を使われる方は一度やってみるのをお勧めします。當山さんはポットを目立たせるために描かれていますが、例えば遠くにあるものを描く際に外側から輪郭を作る事で、存在感を出しすぎ無いように描く事も可能です(文章で説明するのが難しいので、気になる方は講師にお尋ね下さい!)。
メインのモチーフが華やかで目を引きますが、その下に敷かれている布は彩度を落とし、引き立て役に徹しています。模様もかっちり線を引くのではなく、少し曖昧なチェック模様になっていますね。どこを細かく描き入れ、どこは大まかに描いて省略するか、よく考えられて描かれていると思います。

油絵は乾けば幾らでも上から加筆できますので、途中からあれも試したい、これも加えたいと試行錯誤をしながら製作するのに向いている画材だと思います。ぜひ色々と試しながら制作を楽しんでいって下さい。

穏やかな空間に工夫された絵作り


鈴木 油彩

マユカです!今回は鈴木さんの作品をご紹介していきたいと思います。

お孫さんが持ってきた本を一緒に見ている時の様子を描かれました。かなり長い間「ああでもない、こうでもない」とじっくり悩みながらようやく完成まで持ってきたほど、こだわりぬいた一枚です。鈴木さんの優しいまなざしと、お孫さんの楽しそうな表情、ハリのある肌と皺の刻まれた肌との対比も美しく、描き分けがしっかりとされています。手指のこまやかな仕草もいいですね。油彩特有の重厚感のある質感が、選ばれたシーンによく合い肖像画のような印象を受けます。

この絵を見て、先に目が行くのは中央二人だと思うのですが、その2人にフォーカスを当てるために様々な工夫が画面内に散りばめられています。まずは光。奥の大きな窓から入った光が2人に影を落とすように逆光気味の構図になっているのですが、顔周りには明るい色を配置し、身体の周りには暗い色を配置することで「明るい」「暗い」が人物の中に交互に存在しているんですね。こうすることにより明度に差が生まれ、視線が滑って行かず、人物でピタリと止まるようになっています。未来あるお孫さんにバトンを渡していくイメージで、お孫さんには光を多く当て、鈴木さんには影が多く乗るように気をつけて明暗を調整されました。

更にもう一つ。ソファ以外に家具が存在しないことに気が付かれた方はいますでしょうか?鈴木さんはこの作品を制作する際、参考として写真を見ながら描いていたのですが、窓際には観葉植物がありました。この観葉植物、確かに部屋の色どりという意味ではあっても素敵なのですが、描きたいのは人物、お孫さんとご自身の関係性や明暗に込められた印象…人物を邪魔してしまうという理由で観葉植物は描かないという判断をされました。また、中央に大きな面積を占めるソファが寒色系の緑で、人物の肌色の暖色を際立たせるという所にも、主役を目立たせる工夫を感じられます。

一番見せたいのは何か、何を描けばそれが目立つか。逆に何を減らせばより効果があるか…込めたい思いによって構図や明暗を調整するのも、すべて『絵作り』です。何かを参考に絵を描いていると、どうしても忠実に描きたくなってしまいますが、光だけでなく色味や置いてあモチーフを大きく変えても良いんです。皆さんもご自身の作風に会った取捨選択をしていってくださいね!

好きを貫く


佐藤・Y アクリル

少し外を歩くだけで汗だくの毎日ですね、ナツメです。今回は土曜大人クラスより佐藤さんの作品をご紹介します!

佐藤さんは油絵でもライダーを描かれています。生徒作品展に出品されていたので、異才を放つ油絵が記憶にある方も多いのではないでしょうか?こちら 前回に続き、今回アクリル絵具でもライダーを描かれました。

月をバックにスカーフをたなびかせる姿には思わず惚れ惚れしてしまいそうな魅力がありますね。こちらは変身直後の決めポーズらしく、夜もこうして人知れず街を守ってくれているのかな、と想像が膨らみます。背景の暗さに合わせ、一見明るく見える緑や赤などの有彩色も思い切って暗くされています。また、周囲の色相を限定して色の差を減らし、仮面ライダーに強いコントラストをつけたり多くの色数を使用することで、パッと主役が目に飛び込んできるような画面になっています。

パーツ毎の質感もとても良く観察して描かれていて素晴らしい!質感によって描き込み方を変えているため、メタリックなスーツや少し透けている目、シワのある手袋などどんな素材なのかが一目で伝わり、愛を感じる一枚になりました。

油彩、アクリルと挑んできた佐藤さんですが、次第にこのライダーはこの画材、このポーズはこういう画面にしたいというような、モデルやポーズに合わせた画材の選択も楽しめるのではないかと思います。好きなものを表現するために、適した画材や描き方をぜひ今後も探求していって欲しいです!

前のめりな姿勢


左 夏葵 中3 / 右 瑞希 中2 どちらも油彩

サヤカです。夏休みが始まりましたが、あまりの暑さに早速絶望しています…今回は学生クラスの油彩をご紹介します。2作品とも中学生の作品とは思えないほど緻密に描き込まれていて、見応えのある作品です。

夏葵
2匹の愛らしい表情に惹かれる作品です!前回の作品と同様に、観察力が光っています。2匹はどちらもダックスフンドで同じ犬種ですが、表情の違いから性格の違いまで想像できますね。また、奥のワンちゃんは背景と同化してしまいそうなところを、境界にハイライト入れたり、毛並みに黄色を入れたりと工夫が見られます。

瑞希
ダークな雰囲気と赤い薔薇がマッチしていますね!赤と黒の組み合わせは、刺激的、挑発的な印象や、力強いメッセージ性を与える組み合わせです。赤と黒の組み合わせを使ったロゴを思い返すと、身近にかなりたくさんありますよね。そんな赤と黒の組み合わせを効果的に使い、見た人に与えたい印象がよく表現されています。

二人とも、無駄なおしゃべりはせず、描きたい気持ちが強い子達です。(他の子ももちろん美術が大好きなんですが、おしゃべりも同じくらい好きなので(笑)絵に対する前のめりな姿勢が作品からも伝わってきます!これからも2人の作品を楽しみにしていますね。

ワークショップ始まります

明日から夏休みワークショップが始まります。空席のあるイベントもございますので、ぜひメールにてお問合せ下さい。
mios@ace.ocn.ne.jp


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透明水彩デモンストレーション解説

岩田です。暑くて暑くて、ほんとにこれからどうなるの?って感じですが、皆様お元気にお過ごしでしょうか。

先日、しんちゃん先生の着彩のデモンストレーションが行われました。
今年、東京藝大の日本画科に進学した学生で、モノを描くセンスと技術はピカ一です。今回は、彼の描いたプロセスを追いながら、解説を加えていきます。

透明水彩も扱い方で、進め方も様々ですが、対象を立体的、空間的にリアルに描くことを目的とした描き方です。画像では、花の陰が黒っぽく写っていますが、実物は、光を感じさせる美しい陰色です。

先ずは、構図決め。
セットされたモチーフの中で、主役は間違いなく花です。この花を中心に構図を組み立てています。
花をできるだけ見やすい位置に描き入れたいので、上端ギリギリにならないよう、間を空け、左右の空きもどちらかに大きく偏らないよう配慮されています。左にジョッキを置いたので、全体のバランスを取るように貝を右下に配置しました。その為、下が多少詰まるのは仕方ありません。だからといってモチーフを小さくしてしまうと、こじんまりした印象になるので、そこは描き方で、収まりの良い構図に持っていきます。

透明水彩を始められた方からよく聞く質問で 
「どのくらい下描きするべきですか?影は付けた方が良いのでしょうか?鉛筆の線が汚く残りそうで、おっかなびっくり描いているのですが…」という答えとして、
鉛筆での下書きは、デッサンという言葉で置き換えることができます。リアルに描く場合は、それほど鉛筆における仕事を重視して良いのです。
絵の具を乗せるので、鉛筆で塗り込める必要はありませんが、この時点で、形は勿論のこと、そのものらしさ、質感、空間性等をしっかり感じられる位、入念に描きます。
とは言え、見て分かるようにそこまで黒々した線でないのが分かるでしょう。最後に練り消しを転がして、余計な鉛筆の粉を取ってあげても良いでしょう。

しんちゃん先生も時間が許せば、本当はもっとデッサンを描きたかっただろうと、見ていて感じました。

透明水彩を始められた方からよく聞く質問2 
「最初にどのくらい濃く絵具を乗せたらいいか分かりません。消せないと思うと怖いです。」
「どこから描いた方が良い(もしくは楽)など正解はありますか?」
の答えとして、濃い色のモチーフは始めから濃く、薄い色のモチーフはどちらかというと慎重に絵の具を乗せていって下さい。
色の暗い葉っぱなどを描く場合、先に鮮やかな下色を置いた後は、その上からは、濃度の高い絵の具を思い切って乗せてみましょう。
とは言え、これも加減がありますから、失敗を繰り返して丁度良いところを知るということになりますが、一番やって欲しくないのは、怖がって水っぽい絵の具を何度も何度も重ねることです。
そうしたやり方をしていると、出来上がった絵の発色が悪く、個々の質感も失われ、湿っぽく重い感じになってしまい、カラッと軽やかな印象がなくなってしまいます。

今回はデモンストレーションということもあって、花を他よりも、かなり先に進めていった経緯があると思いますが、基本的に全体的に進めていくのがベストです。とは言え、あくまでも主役の花をある程度先行して描いていきながらというのは間違っていません。
基本はデッサンと一緒で、空間や個々の関係性を確かめながら、全体的に進めることで、短時間で合理的な仕事ができ、私が良く言う、最小限で最大限の効果を生むことが可能になります。大きい仕事から細部へという流れがムダのない描き方をする為のベースです。

皆さんも、しんちゃん先生のプロセスを参考にしながら、同じモチーフを描いてみてはどうでしょう。凄く勉強になると思います!