下色で思い切り遊ぼう


箕輪 『おもちのようせい』 アクリル

岩田です。もうすっかり春でした。

今回は、箕輪さんの作品をご紹介します。
こちらは、見ての通り赤ちゃん。アップで撮影したお子さんの写真を元に描きました。F10号(455×530mm)サイズのキャンバスで制作されたこちらの作品。目を閉じた顔が実際の3倍以上!静かな雰囲気と共に、やはりこの大きさには圧倒されます。

描く前に、どういう完成にしようかということをしっかりイメージワークした上に、アクリル絵の具ということで、かなり効率よく仕事も進んだ様子でした。
とはいえ最初は、こちらに掲載した完成作品と同じような、かなり明るい色を全体に置いていたのですが、もっと最初は色で遊びましょうということで、一度方向転換し、パーマネントレッドやオレンジといった彩度の高い色を思い切ってガンガン塗っていきました。

けっこう戸惑いもあったように感じましたが、アクリルのよう不透明水彩は、透明水彩に比べ、下に置いた絵の具を覆い隠すことが容易で、落ち着かせることが簡単なので、最終的に地の色を活かして仕上げる為には、むしろ慎重に上から絵の具を置いて良いくらいなのです。
そういう意味でこの作品の肌の仕上げ方は、ジョンブリアンなどの白の分量が多い不透明色を水で薄めて隠ぺい力を弱め、それを上からグレーズして地の色を活かして仕上げた成功例と言えるでしょう。

不透明色でグレーズした場合、透明色でグレーズした場合、全くその印象が変わってきます。皆さんもモチーフによってそうした表現方法を色々試してみて下さい。

こちらはコンクールに出品する為に制作されていたのですが、第28回越後湯沢全国童画展に入選されたそうです!『童画』の公募で、そのままズバリ赤ちゃんの顔を描くという素直な感性もお母さんならでは。

箕輪さん、おめでとうございます!

小原先生と行く!~銀座画廊巡り~

マユカです!本日は小原先生の作品の展覧会に学生たちと行って参りました。

ブログを遡ってみましたら、私が最後に小原先生の個展にお邪魔させていただいたのは2019年のようで…当時は学生として画廊巡りに参加させてもらっていたことを思い出し、もう…5年も経っている…?!と、流れた歳月の速さに驚いています。いつの間にか、引率として生徒たちを連れていく立場になってしまいました。

さて、まず先生の展覧会に行く前に、銀座にある奥野ビル内の画廊を回りました。学生たちが「ホグワーツみたい…」と言うほどに内観はレトロで少し寂れた雰囲気が歩いているだけでワクワクさせてくれます。手動で開くエレベーターも、映画でしか見たことが無いようなレトロさ!雰囲気がとても素敵なため、ビル内を歩いているだけでも楽しいです

様々な人の作品を見て回れるのも楽しいポイント。一つ一つの部屋は狭いですが、その分展示されている作品の世界観に浸れたり、作品の雰囲気を肌で感じることが出来ます。

さて、本題の小原先生の展覧会の様子の話です!
小原先生の作品について、学生たちで感想を言い合ったり、先生がどういった意図で作品を制作されたのか。素材や描き方なども聞かせてもらいました。
先生の作品はベニヤ板に古い絹を水で張り付け、水彩絵の具を乗せて描かれています。ふんわりと滲み、具象的なモチーフを描きつつも抽象画のように見えてくる作品は、はっきりとした形を描かないからこそ人によって受け取り方が異なったり、受け取る情景が異なったりと、実際に作品を見ることでしか体験できないものがあるように感じました。遠目から見てみたり角度を変えてみることで、違った側面が見えてくるのも魅力の一つと思います。

展覧会に来てくれた学生たちには毎回恒例で、自分が一番気に入った作品と、それを見てどう感じたかの感想を述べてもらうのですが皆真剣に悩みながら作品を鑑賞していました。
自分の体験を交えて話す子や、作品から見えて来たものを話したりと様々でしたが、「えー!」「なんて言えばいいかわからない!」と言っていた割には身振りや手ぶりなども交えて話をしていたので、自分が学生の頃はこんなにしっかり話せていただろうか…なんて考えながらみんなの解釈を聞いていました。小原先生自身も、そんな解釈もあるんだ!と頷いていたのが印象深かったです。

最後に、引率としての参加だけれどもしかしたら話を振られるかもしれない…!と考え、実はも好きな作品と感想を言う用意をしていました!言うタイミングが無かったためここで言います!
DMにも載っている「枝垂桜」が一番素敵だなと感じました。写真で見ただけでは水滴をにじませて桜の形を描いているのかと思っていたのですが、間近で見ると桜の花の繊維や花粉まで描かれており、花の輪郭のみの場所と色のみの場所が相まって、前景 中景 背景の3つで成り立っている「空間の立体」を平面に表したような表現がされているように見えました。絹に描かれているということもあってか、1週間程度で散ってしまう桜の儚さを体感できるような作品でした。

小原先生の展覧会は4月6日まで開催しています!良ければ是非いらしてくださいね

物語は続く

大竹です。昨日・一昨日に続き、手彩色リトグラフ第三弾、水曜クラスのご紹介です。まるで絵本の1ページかの様な作品ですが、よくよく見てみると奇妙な光景と出来事が描かれています。今回の制作では題材はくじ引きでランダムに組み合わされたものですが、着彩し仕上がった作品に更に不思議な物語を付け加えていきました。例えば2段目右の女性が二人で踊っている作品、実は奥の人は校長先生なのだそう。なぜ校長先生と?なぜ夜の橋の上で?もしかしてダンスの授業?…皆さんならどんな物語を思い浮かべますか?

着彩すると、より描かれたものが分かりやすくなりますね。下段左から2番目のお侍さんが切り捨てているのは、なんと地球!(よく見ると、断面にマントルや内核が見受けられます)そのお隣の絵は、雨の日に逆立ち?隣の犬も楽しそう。後ろには黒塗りの車が横断しており、賑やかな場面になっています。今回はアトリエの透明水彩と顔彩を貸し出し、うすーく着彩しています。(べっちゃり塗るとインクの黒が潰れてしまう&紙に穴が空いてしまう為…)また、背景と手前のもの(人物や動物)の色が被らない様に気をつけて塗っています。

また、こちらがイメージしていた色とは全然違う仕上がりになった子もいて、良い意味で予想を裏切られた作品も。下段、左・中央の作品などは、「隣にいた人は、殺人鬼だったのか!」「顔が緑だからゾンビ?」など改めて分かったりして面白かったです。物語を書いたメモも作品と一緒に持ち帰らせておりますので、是非読んでみて下さいね。前後の場面を4コマ漫画の様に描いている子もおりましたので、版画の場面の続きを知る事も出来るかも…笑

二ヶ月の成果

暖かい日が増えてきましたね、ナツメです。比例して花粉も増えており泣きそうです。

月曜クラスに続き、火曜クラスの手彩色版画のご紹介です。
昨日は春休みと大雨警報の為12人も欠席しましたが、なんとスタッフ4人に加え、春休みで暇な新高校1年生が2人もボランティアに来てくれました!生徒24人に対して先生+先輩6人…つまり4人の生徒に一人補佐がついてる状態で、子どもたちの話をたくさん聞いてあげられました。たまにはそんな日もいいですね。

色が入ると途端に印象が変わりますね!子供達がどんな世界を想像していたのかもグンとわかりやすくなりました。以前の記事で白黒の状態のものも見れますので、ぜひ見比べてみて下さい。

今までにもいくつかご紹介してきたのですが、今回は「お話づくり」をテーマにしているため前後のストーリーが存在しています。くじ引きでお題をランダムに決めたことも功を奏して、絵も話も含めてこのまま一冊の絵本を作り上げて欲しいくらいのクオリティになりました。

右の2枚は、欠席などで最終日に刷り上がった版画です。隣のカラフルな作品と比べても引けを取らず、どちらの良さも伝わりますね。二ヶ月分の成果、ぜひじっくりとご覧下さい!

まるで絵本?!

サヤカです!先日大学の卒業式があり、別れの季節を実感しました。今回は、先週紹介したリトグラフの手彩バージョンを紹介します!こちらは月曜クラスの作品です。

版画の良さを消さないように水彩や顔彩で淡く着彩をしました。一気に華やかな印象になり、まるで絵本のような仕上がりですね!2枚刷った内の『うまくいかなかった方』に着彩したのですが、そうとは思えない程見事な完成度です。

子供達に「リトグラフで何が1番楽しかった?」と聞くと、大多数が「くじ引き!」と答えていました。ゲームをしながらアイディアを膨らます体験や友達が書いた未知のお題にワクワクしたそうです!他にも、リトグラフの不思議な仕組みに驚いた子や物語を想像する時間が楽しかったという子もいました。

下段は、欠席などで最終日に刷り上がった3人の版画です。(刷りたてなので、ベッタリしたインクがギラギラ光っていますね。)

子供達の想像力たっぷりの絵がリトグラフの手法を使うことでなんとも言えない味を持って生まれ、着彩することで、より子供達の世界観が伝わってくる作品となりました!

小原展示会

小原です。昨日、銀座あらかわ画廊に搬入して来ました。私の作品は11点、展示してあります。テーマ『早春賦』という画廊オーナーのリクエストに応え、冬から春に移り変わる季節を描きました。
私は墨絵のような雰囲気が好きなのですが、同じくらい桜色が好きです。ウキウキした気持ちでたくさんのピンク系の絵具を使いました。
明日から開催ですので、ぜひご高覧頂ければ嬉しく思います。
詳しくはこちらのブログをご覧ください。

銀座画廊巡りツアー


過去の画廊ツアーの様子 ブログはこちら

土曜日ですが、小原です。

学生クラスの皆様へ  
春休み、皆で一緒に私オバラの展覧会(銀座)へ行きませんか?高級ブティックのような画廊という場所は、美術館ともまた違う少々敷居の高い感じで、緊張しつつもワクワクしますよ!

あらかわ画廊向かいにある、レトロなビル『奥野ビルー昭和7年竣工・築92年』内には、沢山の画廊があります。作品は元より、年季の入った手動式エレベーター、重厚な階段など、まるでタイムスリップしたかのような建物自体も一見の価値あり。場違いな学生が一人で入れるような場所じゃない(勇気がないでしょ?)ので、オバラとマユカ先生で連れて行ってあげます。

3月29日(金)11時に元住吉改札集合(前日21時までにメールで申込み)解散は15時前位
保険料500円のみ頂きます。PASMOに交通費を入れておいてください。
保護者は参加不可ですが(楽しくなくなるから!)、兄弟や友達は誘って構いません。その旨をメールに添えてお申込みください。

テーマ決めの悩み

リトグラフのバトンアンカーのオオタケです。今回は描く題材をいつ・どこで・だれが・なにとをくじ引きでランダムに組み合わせたものでしたが、そのおかげで同じ絵は1枚もない個性豊かな作品が出来上がりましたね。実はこのテーマ決め、悩んだ末のくじ引き方式でした。描きたいものをじっくり描くのは毎年恒例の夏休みの油絵でやりますし、モチーフを見ながら描くのだったらリトグラフよりも向いている画材があるし…。ちなみに私の経営するアトリエでは、くじ引きではなくかねこみすゞ詩をいくつか読み、好きな詩の場面を描いていく、という風にやっていきました。
ミオスでも13年前にこんなカリキュラムをやりました。『その日の前に』・『タイトルから想像した絵

実は最終週にもう一度刷り直さなければいけない子などもいて、これで全部ではありませんが、ひとまず白黒の純粋な版画の紹介はここまでとさせて頂きます。どんなストーリーが込められているのか、その子が引いたクジはなんだったのか、想像するだけでも楽しいですね!

画面を作る際、主役を大きく描く・ものとものと重ねて描く(重ならないようにバラバラに描いてしまうと、商品カタログや図鑑のようになってしまう)・見切れる部分を作っても良い(むしろ作って画面外にも風景を広げる)等、構図についても指導しました。その甲斐あってか活き活きとした作品が多く生まれたのではないでしょうか。1人2枚刷ったので、1枚は着彩を試みる予定です。うまくいきますように!

発想力は無限大

リトグラフのバトン4番目のマユカです!名前は聞いていたものの、実物や制作風景は見たことが無かったリトグラフに、このような形で触れることになるとは思っていませんでした。
描き方や塗り方で工夫を凝らし、白と黒だけではなくグレートーンも使うことでより見やすく、より表現の幅を広げた作品が生まれます。こうして並んだ版画を見てみても、白黒だけではない色の幅が、版画らしからぬ深みを出しているのが分かるかと思います。しかし、そんな表現技法なんかより、何より今回は物語性の強い作品を作るカリキュラムだったため、イラストが描けると喜んでいる子が多かった印象でした。
動物のお題や季節のお題が多く見られたため、おそらく描きやすいものも多かったかと思いますが、中には「アトリエミオスで」や、「暖かなスープとビーチボールが」というような、描けても一枚では表現が難しいお題が出てしまうことも多く、その度に一緒になって悩んだり、簡単な描き方を一緒に模索したりしました。見本を描いている途中で「どんなお話にするの?」なんて話をしていたら、語っているうちに止まらなくなって、どんどん新しい設定が生えていくのを見て、子供たちの想像力に底は無いんだなぁ、なんて思いました。

今回のカリキュラムで作ったお話を少し読ませてもらい、子供たちが版画でどんなことを表現したかったのか、版画で切り抜いたワンシーンがどんな状況だったのかなどを詳しく知ることが出来たわけですが、中には「このワンシーンはそんな意図だったの?!」というものも。
例えば、一見すると悩みながら絵を描いているように見えたヒマリの作品。実は家に帰ろうか悩んでいるうちに日が暮れて、結局帰り道を探すのが面倒くさいからと、帰ることをあきらめてしまう子のワンシーンを描いていたようでした。
また、デパートの上でお菓子を漁る鳥を描いていたと思ったミツルの作品は、実は遠い国へ冒険しに行く途中のワンシーンを描いていて、大男やスズメバチなど、版画では描かれていない場所にまでお話を広げていました。

子どもたちは、世界観やお話を画面の外までいっぱいいっぱい広げるのが得意なのでしょう。その独特な発想や、型にとらわれないようなお話の広げ方は、少し見習いたくなる場所があるくらい、大人には真似のできない芸当です。あのピカソだって、晩年は子供が描く絵の表現を追い求めて何枚も何枚も作品を描いていたといいます。
リトグラフという特殊な版画を通じて、ランダムに渡されたお題で子供たちが作り上げたお話を想像しながら見るのも良いですね。
リトグラフバトンも次回でいよいよ最後です、明日もどうぞお楽しみに!

工夫を凝らして

リトグラフのバトン3番目のナツメです。今回のリトグラフでは、くじ引き形式で引いたキーワードを元にお話を作り、そのワンシーンを描きました。(詳しくは小原先生のブログをどうぞ!)友達が書いた無理難題?なカードの言葉からイメージしてお話を作るなんて、「馴染みのないモチーフや、描けないモチーフが出たらどうするの?」と大人なら心配してしまいますよね?私も今回見本を制作しましたが、突拍子もないお題になかなか物語のイメージが湧かず、全く関連性のない単語同士を組み合わせてワンシーンを作る難しさを痛感して挑んだ授業でした。側で見ていて一体何を描くのかなと心配になるお題も多々あったのですが、頭を悩ませながらも創意工夫に溢れた場面作りをしていました。

例えば『春』『公園で』『自分と』『犬』というお題が出たら、「犬を連れて一緒に花見に来た」のようになんとなくシチュエーションの想像が出来ますが、実際に出たお題の一例を紹介すると、『4月』『宇宙人の胃の中で』『自分と』『飛行機』や『真夜中』『友達の家で』『ロボットと』『猫』などがありました。こういう難しいキーワードの場合は、「いつ・どこで・だれが・だれと(なにと)」のお題に「なにをした」という動作の言葉を自分で付け足したり、単語の中で優先順位を決めるなど各々で想像しやすくなるよう知恵を絞った末にこれらの素晴らしい絵が生まれました。

実際の印刷作業では、版の上に乗って踏む作業が楽しかったのか、肝心の刷れ具合に興味を示す子が想像よりも少なかったのが面白かったです。2枚目を刷る際に「1枚目はうまくできた?」と質問しても首を傾げられることが多発し、先生的に番の感動ポイントには関心がない様子でした。全然綺麗に写らないという悲しい結果にならなかったことを考えると、嬉しい状況ではありますね。どの子も綺麗に刷れたので、先生たちは満足していますよ!リトグラフバトンはまだまだ続きます。明日もお楽しみに!