忠実に描くことで


茂木 油彩

岩田です。
今回は茂木さんの作品をご紹介します。こちらはマティスの『金魚』という油彩を模写した作品です。
この作品は、細部を描き込むというより、どちらかというとその佇まいを大事にした作品。
茂木さんは元の絵にアレンジを加えて、というより、出来るだけ元の絵に忠実に描いていくタイプです。

近くで見ると、背景を筆をくるくる回転させて描いていたり、テーブルも平面を意識して筆を動かすのではなく、敢えて水槽の形に添って筆を動かしていたり。
元の絵を良く観察しながら描くことで、色も含めご自身がそこから様々なことを吸収しているのだと推測されます。

以前は、ステンドグラスの作品を油彩で模写したこともありましたが、デッサンの勉強も熱心にされているので、それらの経験を活かし、オリジナルの作品にも是非チャレンジされてください!
楽しみにしています。

茂木さんのYouTubeをぜひご覧ください。こちら

夏らしいモチーフ

大竹です!子供達の肌が日に日に黒くなっていくのを見ていると、夏休みだなぁとしみじみしてしまいます。そんな日に焼けた幼児達の夏の工作とお絵かきをご紹介します。

上の画像はお魚を題材に粘土工作とお絵かきをしたものです!お魚はカラー粘土を使用し、自立する様に工夫して作っています。ヒレの名前(尾びれや背びれなど)を確認しながらくっつけていき、体を少しS字に曲げて自然なポーズになるように仕上げました。元から色が付いている粘土を使用したので、カラフルなおもちゃのような可愛らしい見た目になりました!お絵かきの方では、大きなマグロを抱えている姿を描きました。魚と体と腕の重なりが難しいポーズでしたが、みんなしっかり抱えているように見えますね!大きなマグロ、どんな風にして食べようかな?

そしてもう一つ、保護者様方から頂いたお中元で、絵を描きました!
奥に大きなスイカ、手前にメロン、こちらも重なりを意識して描きました。
スイカのシマシマ模様だったり、メロンの絶妙な色合いが素晴らしいですね!メロンの茎の毛茸までよく観察して描かれています。皮越しでも中の果実の甘さや瑞々しさが絵から伝わってくるようですね。美味しそう!

その後のスイカは学生クラスで渋川の川辺に行き、スイカ割りをして楽しく美味しく食べました!ご馳走様でした〜!

楽しむ気持ち、かける情熱


千佳 中3 アクリル

課題漬けの日々から解放されました、マユカです!今回は千佳の作品をご紹介します。

自然に関するポスターのコンクールに出品する為に描いていた作品です。
遠くから見ても、細かく描かれていることが分かりますが、実際に近寄って見ると、目を疑うほどの細密さで全体が描かれています。(私が撮らせてもらった写真がピンボケしてしまいました…。これを読んでくださっている皆様に良さを伝えきれず、ごめんなさい。)
どこを見ても写真のようで、奥の木々や茂みなんかは、葉の複雑な色の移り変わりすら丁寧に描きこまれています。水面の透明感や、周りの風景が鏡のように映り込んでいるのも美しいですね。その描きこみに目が行きますが、構図もかなりしっかりとしており、木の連なり方や枝に不自然さを感じないあたり、千佳のデッサン力の高さを感じます。
そして、木々の間から差し込む太陽光はまるでスポットライトのように、中央のボートと女性を照らし出しています。背景がびっしりと描きこまれている分、主役であるこの2つのモチーフを目立たせるのに苦労していましたが、ボートに強く暗い色を入れたり、女性が着ているドレスのコントラストを上げてみるなど、様々な工夫を経て見やすくわかりやすい画面作りが出来ました。

しかしこのポスター、アトリエでそこまで長い期間描いていたという訳ではないのです。部活動の時間などにも描いているのかな、と思い聞いてみたところ、どうやら学校の授業がオンラインで時間があったため、家でひたすら描いていたそうです。なるほど。納得の描きこみ量、千佳がこの作品にかける熱意が伝わってきます。以前の入賞作品なども見せてもらいましたが、それらと遜色ないどころか、かなり高いクオリティで仕上げられているのがわかりました。一つの作品にストイックに取り組む姿勢は私も見習いたいです。

ポスターを作る、それもコンクールに出すとなるとどうしても審査員のことを気にしてしまい、正解を探してしまいますが、今回、千佳の制作中の姿を見ていると、悩みながらもなんだか楽しそうに筆を動かしているように見えました。作品制作で大切なのは、整っているか、正しいかどうかではなく、楽しんで制作できたかだと私は思います。今後の作品作りも、是非めいっぱい楽しんで!

愛ある筆運び


杉本 アクリル

期末レポートが終わりません、ナツメです!今回は水曜大人クラスの杉本さんの作品をご紹介します。飼われている愛鳥の写真模写をされました。

前回はお料理自体が主役だったので全てを鮮明に描かれていたのに対して、今回は主役+背景というように画面が構成されているため主役の小鳥に注力し、それをより目立たせるために背景はざっくりと描写しています。手前と奥の見え方の関係も強調され、金網までの距離感が伝わってきます。

魅力的なのはやはりなんと言っても小鳥!羽ばたいているような動きのあるポーズではなく木に止まっており静止している状況ですが、非常に生き生きとしていて温もりまで伝わってくるようです。表情や少しの動き、少し笑っているように見える口元も、いつまでも見ていたくなるほど愛らしいです!

模様や毛並みだけでなく嘴一つを取っても黄色みがかった赤から紫色まで、微妙な色の違いに良く反応されていてどれだけの観察をされたのかは言うまでもありません。また、羽もくっきりとした線の他に少し掠れさせたざらざらとしたタッチで描くことで情報量が多くなり、羽毛のふかふかとした柔らかさが表現されているところなど、アクリル絵の具の使い方にデッサンの経験が上手く生かされているように感じます。

私も家で猫を飼っているのですが、家族の撮った写真が家の壁という壁に飾ってあります。かわいく撮られた瞬間をいつでも見れるのは嬉しいですし、「こんなこともあったなあ」と懐かしい気持ちにもなります。ご自分で描かれた絵だと、筆を動かしている時の心情も相まって尚更思い出深いものになるのではないでしょうか?ぜひ額縁などに入れてよく目にする場所に飾って下さいね!

姿勢を正して


左 楓 中1 / 右 花穂 中3  鉛筆デッサン

晴れの日で暑かったり雨の日で寒かったり、冷房で寒かったりと体温調節機能が試されていますね、ホノカです。
今回は学生のデッサンのご紹介です。
同じモチーフを異なる角度から見た2枚。楓はまだ入会したばかりで描き上げた一枚。花穂はこれが4枚目のデッサンになります。

楓のデッサンはもちろんまだまだの部分もありますが、モチーフの位置関係や全体の陰影のバランスなどが素直に捉えてあるところがよいですね。集中している時にはどうしても全体を俯瞰しながら描くことが難しくなりますが、コースターが一番暗く、ジョッキやその中のピンポンボールは明るくという差がしっかり描かれています。また、ジョッキのフチが少し暗くなっていることや、ガラスの分厚い部分に反射した光が当たっているなど、細かい特徴も丁寧に捉えてあり、目の前にある物を正確に描こうという気持ちが伝わってきます。

花穂はこれまでのデッサンの経験も生かされ、モチーフごとの質感の違いにもよく目が向けられた作品ですね。薄く軽い敷布やコースター、透明感がありながらも分厚く重いジョッキ、水に浮かぶ軽いピンポンボールなど、それぞれの重さにも注意が向いている印象を受けます。デッサンでは形を正確に取るだけでなく、モチーフごとの位置関係が分かるか、またモチーフが置かれる部分に安定感があるかという点も重要になります。その中で需要なのは影ですが、接地面が一番濃くなっていることや、さらに布全体でしっかり明暗の差が付いていることで、奥行きも感じられます。そしてジョッキのロゴも避けずに描く食らいつき具合!他の細かな描写にも表れています。

2人とも目の前のモチーフに忠実に目を向けて、画用紙に描いていく姿勢がとても感じられます。技術はどんどん進化するものですが、目に写ったものを描く心意気はいつからでも持てる力だと思いますので、これからもその気持ちを忘れずに様々なモチーフに挑戦してみてくださいね!

徒労と思うな!


操希 左/2012年・小学1年生  中央/2019年・中学2年生  右/2020年・中学3年生

オバラです。昨日のブログを書いてくれた高校2年生の操希。
3年前の話ですが、小学生クラスのカリキュラム【靴作り】を見て、「俺も昔作ったヤツだ!また作りたい!」と、今度は自分の靴の模倣ではなく【オリジナル足袋ッ靴】を作りました。
幼稚園児の頃から、立体工作が大得意なだけあって、クオリティーが高いです。

右の油絵は中学校の英語の先生の肖像画。「なんでその先生を描くの?」と尋ねると「前期の成績、英語2でヤバかったから、自分なりに成績を上げる方法を考えたんです!俺の得意な美術で頑張りをアピールしようって!」普通に英語の勉強しろよ!とツッコミたくなりますが、あざといと分かっていても大人は意外とほだされますからね。世渡り上手で結構。

そんな彼に、「彫刻科に行っても就職先ないって聞いたんですが…」と進路相談されました。美術では食えない、文学部だから就職に不利、なんて質問自体がもう腹が立つ!努力する前に結果を仮定し徒労と決めつけるとは!「そうやって自分の頭で考えないで、聞きかじったことを鵜吞みにするな!高卒とか、どこの大学出とか関係ねぇ!いつも指示待ちで自分が出来る事を探さない奴、言い訳ばかりで努力をサボる奴が、この世から一番必要とされねーんだよ!」と怒鳴りました。

美大の彫刻科を目指して、夏から大手美術予備校に通わせることにしました。外部で泣くほど厳しくされて、成長して欲しいです。自分のダメさ加減に打ちひしがれた時だけはフラッと帰って来てヨシ。でも陸上部とミオスで精神的に強くなったので、きっと大丈夫と信じています。未来を応援しています。

恵まれた出会い

スイカをかじり麦茶を飲み、勉強して絵を描いて、またスイカをかじる。夏ですね、そうきです。


操希 高2 水粘土『ミオスでの最後の作品となった彫塑』

今月一杯で1年半続けた水曜小学生クラスのアシスタントと、生徒として11年通った火曜学生クラスを、美術予備校に転校する為しばらくお休みしますので、その報告をさせていただきます。

僕が初めてアトリエ・ミオスに来たのは5歳の幼稚園年中の頃。紙を切って貼って折って部屋を散々散らかす僕に痺れを切らし、アポなしで連れていかれたのがアトリエ・ミオスです。(当時の幼児クラス担当の先生がノリ先生ではなくエリ先生だっだのでよかったですが、ノリ先生だったら突然訪問したことをボロクソに言われて母の心はズタボロに…あ、いや、ノリ先生は保護者や大人クラスの人には外面良かったんだった!くっそー!弱い者イジメばっかりしやがって!)

そんな出会いから始まったミオス。
持って帰ってくる作品が木製の椅子だったり、ハロウィンパーティーで顔中ゾンビメイクでめちゃくちゃだったりでも通わせてくれた両親に頭が上がりません。お陰で美大を目指すほど美術が大好きになりました。ブログを私的に利用して申し訳ありませんが、面と向かっては絶対言えないので、この場を借りてお礼を言わせてください。「お父さん、お母さん、本当にありがとうございます。これから全力で受験勉強を頑張ります。応援してください。」

自分の中ではアトリエ・ミオスに行かないのは、歯を磨かなかったり風呂に入らないくらいムズムズするだろうし、想像もできないです。すぐにめげて、フラッと来てしまいたくなるかもしれません。でも次にミオスに来る時は、立派な美大生になって皆さんの役に立つ講師として!と決意を固めています。
今はまだ歴代の先輩方の足元にも及びませんが、自分の長所を冷静に把握し無限に伸ばし、大きく成長して戻ってきます。それまで僕のことを覚えていてくださると幸いです!

国語能力を鍛える為、ノリ先生に無理矢理書かされていたブログも今日で最後となります。幾度となく書き直しを命じられたのも、今となっては懐かしくさえ思います。拙い文章にお付き合いくださった皆様にも、この場をお借りして御礼申し上げます。

PS小学生クラスの生徒の皆さんへ
僕も君達と一緒に成長します。みんなから安心して頼られるような存在になって戻って来るからね!また会える日を楽しみにしています。みんなのことが大好きです!

勉強会を開催しました!

岩田です。
先週の土曜日は、私の受験時代の作品を教材に一枚の絵を構造的に分析しながら、鑑賞者に楽しんで貰うかといった少しプロ志向の内容を座学でお伝えした後、墨や茶色の絵の具などを使って、スパッタリングやポーリング、ドリッピングといった、普段では部屋の汚れを気にしてできないような絵の具の偶然性を活かした画面作りをしました。

座学でお伝えしたことは予備校時代に講師から教えて貰ったことを元に、色々な絵を見ながら自分で分析し、そこから得ていった事柄なので、他の教材には載っていないオリジナルな視点の気づきも多く含んでいます。
参加者の皆様には、絵を描く上で、少しでも役立てて欲しいです。又こうした皆さんに喜んで頂ける勉強会を開催できたらと思います!

「見せる絵を描く為に、絵を構造的に作る」
〇ひとつのエンターテイメントとして
・自分の絵は見てくれないという前提に立つ。
・鑑賞者をいかに楽しませるかの仕掛け作り。( 今回は特に視点の誘導について)
・人を如何に釘付けにできるか、如何に長い時間、画面を見てもらえるか。
〇構図、構成について
・モチーフの良い所を惹き出す。(描きたいものを良く観察する。描く対象との対話。)
・ドラマや演劇の監督のように登場人物などの序列を設定し、関係性をつくる。
 (主役、ヒロイン、ライバル、友達、親、上司、職場、環境、都市、国、季節のように。)
・第一印象を意識する。(見せ場、アイキャッチの場所や置き方、見せ方が先ず大切。
 全体の色使い、明度バランスの美しさ、インパクト、画風など。)
・始めと終わり、奥行と平面性を意識し目を誘導させる道を作っていく。
 (アイキャッチを皮切りに、奥行に変化を持たせながら、どういうルートを通って部屋(画面)
 を回遊させるか。奥行についても、モノ同士にどれ位の距離があるのかをちゃんと設定する。)
・光の設定(光源の方向、角度、強弱、シチュエーション。)
・オリジナリティー、アイデンティティの投影。
 (自分の得意なこと、好きなもの、描く意味、画風、設定の面白さ、色使い、特徴、強味。)
〇色、描き込みについて
・画面の明暗バランス(彩度や色相より、構成バランスを明度で考えることが、先ず一番。)
・cmyk+w( シアン、マゼンダ、イエロー、ホワイト)、
 明度対比、彩度対比、色相対比、補色対比
 (1枚の絵を総体的に見た時に、主役は明度、彩度、色相共にコントラストを付ける、
 脇役はその逆。部分、全体に補色対比を取り入れ、互いの色を引立て合う効果を使う。
 ハレーション(高彩度、同明度、異色相)も面白い効果を生む。)
・同じ空間に存在しているように演出する。
 (モチーフや背景などが個別バラバラにならないように、モチーフ同士や背景の色を
 反映する。)
・描くべきところ、そうでないところを見極める。メリハリを付ける。
 (あくまでも主役を中心とした構成と心得る。震源地から離れる程、震度が低くなって
 いくように。)

90分の講座の内、約1/3の時間を使い解説した、見せ場『アイキャッチ』についてのみ、動画でアップしました。
興味のある方は、ぜひご覧ください。こちら

あらゆる角度から見ること


優 高2 水粘土

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは学生クラスの優の作品。水粘土を使い、自身の手を制作していきました。
上記の作品写真は正面・上・後ろ・横からと様々な角度から撮影しておりますが、粘土のような立体物はあらゆる角度から見ても正しい形でないといけません。平面のデッサン等とは大きく違う部分ですね。私も大学の彫塑の授業でモデルさんの顔を水粘土で制作しましたが、正面から見たら整っていても、真横から見ると形が歪んていたりしてかなり苦戦しました。一定方向からではなく、常に様々な角度から対象を観察し形を捉えていく必要があります。(ですので大学の授業では、モデルさんの座る台座が回転式になっており、15分ごとに回転させて見る角度が変えていきました)
全体の形(シルエット)の他にも、皮膚の下にある骨や筋肉なども表現しなくてはなりません。優が手をこの形にして作ったのは、手の甲の筋が浮き上がらせて表情をつけやすくする意図があったのでしょう。ただなんとなくポーズを決めるのではなく、どこに面白さを持ってくるのか、どこに見せ場を作るのかまで考えて制作していく事が重要ですね。

 

命を感じる表現


原 油彩

先日台湾カステラを食べました、マユカです。とても美味しかったです!
さて、今回は原さんの油彩画をご紹介します。

流し目がとてもセクシー、それでいてふてぶてしい表情の猫ちゃん。カメラを意識したような視線の投げかけ方と、凛としたその姿はまるでゴヤの傑作『裸のマハ』のようです。
どうしてもお顔に目が行きがちな、メインモチーフが一つという構成ですが、一番その質感と生命の息遣いを感じるのはその身体でしょう。お腹周りの毛の質感は、触りたくなるようなふわふわ加減。スリムな足先は、お腹の毛並みとはタッチを変えて描くことで、猫特有のふんわりとした丸いフォルムを残しつつ、セクシーさを演出しています。この二つの要素が相まって、まるで呼吸をしているかのような空気間と、いまにも身をよじって動き出しそうな現実感が生まれています。また、背景色や寝転んでいるシーツの色を暖色でまとめることにより、猫ちゃんのグレイッシュな毛並みがとてもよく映えています。首飾りも上品で、高貴な雰囲気が伝わってきますね。

実はこちらの作品、新聞の切り抜きから描かれました。デフォルメしているように見えて、かなり忠実に描いています。リアリティと抽象化のバランスがうまくとれているため不自然な感じは一切せず、むしろデフォルメによるかわいらしさとリアリティのある質感の混在が、この作品の魅力へと昇華されています。ふわふわの毛皮の下にあるもっちりとした肉感すら感じさせる細やかな描写や、ひげや耳の細い毛から伝わる繊細さは見ていて飽きません。

新聞や雑誌などに載せられている写真は見やすいものが多く、チラッと見ただけで情報が伝わる、余計なものを省いた写真を掲載してくれています。構図の勉強にもなるので、題材選びに迷ったときは古い雑誌などの写真から絵の題材を探してみるのもオススメですよ。