暗中模索


愛美 中3 岩絵具・銀箔/パネルに和紙

一気に高温多湿!という感じの気候が増えましたね、ホノカです。今回ご紹介するのはそんな暑さも忘れてしまうくらいの冷たいキリッとした印象のある、愛美の日本画です。
大きな銀の月が輝く夜に遠吠えをする狼。現実では考えられませんが、月を大きく描くことで神秘的な雰囲気や孤高といった雰囲気が感じられます。月と狼といえば人狼の話が浮かびますが、実際には狂犬病に罹ってしまった人が正体なのだとか、閑話休題。

今回の彼女の絵の一番の特徴ともいえるのが、ドライブラシです。ドライブラシは水彩画などの技法の一つであり、筆の水気を切ることでザラザラとした感触や掠れた質感を表現できるものとなっています。こちらの作品では狼の体毛に存分に生かされており、岩絵具をドライブラシで重ねていくことで体毛の細さや、寒い時期を過ごす毛皮の密度がありありと伝わります。なんとこのやり方は自身で独自に行なっていたそうなので、彼女の勘の良さではないでしょうか。また、全体に色を多く重ねるのではなく、下塗りの薄い紫を少し見えるくらいにおさめている部分や、少し密度が高く毛が描かれている部分など、全体が均一にならないような工夫も見られます。

そして絵の半分程度は銀箔で飾られた月が占めており、狼をその光で引き立ててくれています。ですが一方で箔は強く光を反射するため、メインのモチーフが埋もれてしまう可能性もあります。今回の作品では先述のドライブラシで描かれた毛並みの質感があることで、平面的ながらインパクトをもたらす月、そして立体的で存在感のある狼という二つの要素が絡み合い面白い作品になっていますね!

扱いが難しく、学生クラスの中でも苦戦する生徒が多い日本画ですが、その中でも彼女なりに方法を模索してとても良い形で完成させられたのではないでしょうか。新しい画材を使うときは楽しさと同程度に難しさもありますが、今後も模索しながら楽しさを見出せるといいですね!

遊んでから作る・作ってから遊ぶ

火曜親子クラス担当の伊藤です。5月は、『粘土遊び・オブジェ』と『電車と街作り』です。柔らかくてとても良く伸びる粘土を使ったので、2歳児でもいろいろな形を簡単に作ることができます。粘土を手でぎゅっと掴むと、粘土が細くなるので、それを少しずつ手をずらしながら粘土を伸ばしていくと、背の高さ位の長さになりました!!これだけでも十分楽しいですが、長くなった粘土の先をお友達の粘土と連結してみると、更になが~い粘土になりました。写真のように大きな輪ができたので、粘土を道路に見立てたり、線路に見立てたり、遊びが展開していきます。粘土遊びは、お友達とコミュニケーションがとれて楽しいですね!

たっぷり遊んだあとは、個人制作に集中。木の台座にワイヤーを巻き付けて、そこに粘土やおはじき・貝殻などを使ってオブジェも作りました。ワイヤーは、道具を使わなくても手で曲げることができるので、材料で装飾する前でも後でも自由自在に変形できます。

そして電車と街作り。こちらは、制作の後に作った作品で遊べるものです。直線・曲線の線路を繋いで、グルッと一周できる線路になりました。ローラーに絵の具をつけてコロコロ転がすと、長い道になりました。線路や道路の周りには、お母さん達が踏み切り・池(錦鯉)・駅など描いてくださったので、電車ごっこでは色々な景色を見ながら目的地まで出発進行~!まだまだ遊び足りない感じで、皆さん線路はお持ち帰りでした。

6月の予定 7日・21日 10:30~11:30 (お申し込みはメールでお願いします)

ヘッドトロフィーって何だ?

久しぶりにアトリエの前にあるクレープ屋さんでクレープを食べたそうきです。
店員さんは毎度のことながらぶっきらぼうで怖かったけど、とっても美味しいかったです!

今回のブログでは先週のブログの『動物イラストの描き方』からヒントを得た、設計図を描き立体にする様子を報告していきます!
設計図は、正面の顔・横向きの顔の2パターン描きます。4月のカリキュラムの成果があって、みんな上手!

ヘッドトロフィーを作る時に使う芯材は新聞紙です。オリジナルの太陽の塔の時(こちら)に使った紙粘土とは全く違い、自分がしたい形にはなかなかならないのが今回の壁です。大きな球体を作ることから始まり、これは顔の土台となります。

左  新聞紙3枚くらいを丸めて、マスキングテープ(以下マステ)でぐるぐる巻きにします。
   ポイントー新聞は固く丸めず、ふわっと大きく包むこと。新聞紙を強く潰し過ぎてしまうと、後で自分の好きな形を作ることが難しくなってしまいます。柔らかく丸めることで力が弱い低学年の子たちも、あとで簡単に顔の形を変化させやすい土台ができます。また角を差したりする時に穴が開け易かったり、口をカッターで切り裂く時にバクッと大きな口が開けやすくなります。

中央 短い角や耳などを作り、形をキープする為、マステで整えます。
   注意点ー頭部に接続する部分は、のりしろとして余分な新聞をぴらぴらさせておくこと。

右  頭部に角をつけます。
   注意点ーのりしろの部分を頭部の丸にかぶせるようにしてからマステで留めましょう。

これで顔の大雑把な土台が完成です!僕も、紙を使って物を作るのが小さい時から好きですが、この完成が少し見えたかな…?って瞬間がたまらなく好きです!
来週はもう少し細かい部位の作り方をご紹介します。

場のリアリティを感じさせる作品


野中 油彩

岩田です。今回は野中さんの作品をご紹介します。

こちら流鏑馬を描いた油彩です。この時期の代表的な行事としてこの季節にぴったりの作品です。
深緑が良いですね。清々しく、五月の風を感じさせてくれます。

野中さん、今までも人物をモチーフに多く描いています。
今回も人物ではありますが、主役は馬。故に馬の顔ははっきり描いていますが人の顔はあまり描いていません。
でも、顔をはっきり描いていないからこそ、これから矢を放つ前の緊張感を感じさせ、対照的にまっ直ぐ走り来る馬との静と動の対比が恰好良いです。それと同時に背景の緑と馬の飾りの赤も対照的に描かれドラマチックに演出されていて、その場のリアリティすら感じます。

そして、見て頂きたいのがサイン。頭文字のKとNの上部がシュッと伸びていて文字にも拘っているのです。全体の筆のさばき方も相まって完成度の高い一枚です。

今後、こうした人物と動物などを絡めた作品も描いていって欲しいです。

ユーチューブでは、画面に作品を近づけたりしながら詳しく解説しています。是非ご覧になって下さい。
野中さんのYouTubeはこちら

鏡とにらめっこの末に

急な暑さに耐えきれず、既にクーラーガンガンの軟弱者な大竹です。
そんな私を尻目に、暑さにも負けない元気モリモリの幼児達のクラスでは、版画で自画像を制作しました。見てくださいこの自由でのびのびとした線を!左右非対称な目、ムニっとした唇、まだまだ若い頰に走るほうれい線…これには思わずピカソも嫉妬してしまう出来栄えですね。私も幼児期にやってみたかったなぁと羨ましくなってしまいました笑

鏡をにらめっこしながら、版画用の発泡スチロールの板に鉛筆で溝を入れていきます。柔らかい発砲スチロールを使えば、木版画のように硬い木に彫刻刀を使わずとも、幼児の手で簡単に版を作ることができます。ただし力を入れすぎると貫通してくり抜いてしまうので、穴を開けないように気をつけて線を作ります。間違えても消しゴムで消せないので一発勝負!いつもは目をまん丸に、鼻を三角にと単純な形で描いていますが、今回は唇までリアルな形で描いています。睫毛や眉毛もフサフサです。

版ができたらいよいよ印刷です。インクろローラーで塗ったらバレンで擦り、版を写し取ります。版から和紙を剥がす時はワクワクしますね。和紙にそっくり転写された自画像にみんなビックリ!お家や幼稚園ではなかなか出来ない体験だったのではないでしょうか。

キリンと画材と表現と


操希 高2 岩絵具・顔彩/パネルに和紙

気づいたらもう5月が終わりそうで驚いています。マユカです!

今回ご紹介するのは操希の日本画です。3匹もキリンが描かれたこちらの作品、1匹でも絵として映えるほど特徴だらけのモチーフなので、画面がゴチャゴチャとしないよう、空間を大切にしているのが伝わってきます。例えば1匹として同じ方向を向いていないことや、1番背の高いキリンの顔は見えないようにトリミングされていることなど、構図に工夫が見られるよく考えられた1枚です。また、平面にすると単調になりがちな首の模様の中に数種の違う色を入れ、見飽きないようにしています。特に背景は、黄色の補色に近い青系の緑で塗り、キリンの美しい黄色を一層目立たせることに成功しました。

そして日本画?と疑ってしまうほど、ムラなく塗られた画面はさながら平面構成のようです。岩絵具でここ まで発色よく、均一に塗るのはとても大変!物凄く苦労していました。基本平面構成はムラになりにくいアクリル絵の具やポスターカラーなどを使うのですが、それを岩絵の具や顔彩でやってみるというのは逆に新鮮です。平面的ではありますが、こちらをじっと見つめる1匹だけほかの二匹に比べて写実的に描かれていたり、キリンの頭のパースがしっかりととれていて立体感があることや、頭の高さの差によって遠近感も出ています。立体と平面が混在している感じがとても面白い表現ですね!

今回、操希が選んだモチーフや構成は、写実的に描くとむしろ画面がうるさくなってしまうので、平面的な表現にしたのは良い判断だったと思います。画材によって適材適所な技術こそあれど、必ずそうやって描かなければいけないということはないので、たまには色々な表現方法を用いて画材で遊んでみるのも楽しそうです!

いきものクリエイター

夜はまだまだ肌寒いですね、ナツメです!先月の小学生クラスのカリキュラム、オリジナルキャラクターデザインについてお話しします!

小テキストなどを中心にお手伝いしたのですが大学の都合で初めの週だけしか担当することができなかった(その分ポケモンTシャツを着て全ての曜日にお邪魔しました)ため、完成した作品の写真を見て私も感激でした!授業の流れは今までソウキ先輩がたくさん紹介してくれたのでそちらをご覧下さい!

写真の説明をする前に動物の描き方のコツについて少しお話しします!描く上で1番重要になるのは骨格です。動物の中にも数多くの種類のいきものがいますが、基礎の骨格はどれも共通しています。脚や腕の曲がり方などの基本的なポイントを押さえれば、あとはいくらでも省略することができますし、「動物らしさ」の説得力も格段にアップします。テキストではここを徹底的に解説したため、小学生もそれぞれが考えたキャラクターにも対応して描けたのではないでしょうか!

 

さて、本題の写真です。こちらは先月の小学生クラスのカリキュラム「オリジナルキャラクターを作ろう!」にあたって、私が見本として描いたものです。

このカリキュラムは4月で終わりましたが、いまだに教室の壁にこのイラストが貼られています。窓1枚分の大きさの紙で目立つ為か、大人クラスの20~30代前半の男性の生徒さんから、よくこのイラストについて話し掛けられました。「こんなに強そうなのに、主食が魚なんですね!」「翼が大きいほど強いんだぁ!メスにモテるとかのアピールじゃないのか?」など、気になることが多いようです。意外性を狙いすぎたと若干反省していましたが、今は引っかかりになるならいいか!と開き直っています。

オリジナルキャラクターを作る際、0から考えようとするととても難しいので、元となる動物やモチーフを決めるのがおすすめです。ピ◯チュウやドラ◯もんなど、世間のキャラクターも改めて見てみるとモチーフがあることに気付くと思います。ベースが決まったらそこから色々足し引きをします。自分の考えた子がどんな生活をするのかなど、細かい設定を考えるのが1番楽しいのではないでしょうか?その設定に合わせた器官を付けたり、装飾を足せば、自分だけのキャラクターの完成です!

簡単な様でメチャクチャ難しいキャラクターデザインですが、その辺りは小学生たちにはお手のもの。私のギガバーンより個性豊かでしっかりとした設定のある生き物たちが生まれました。(余談ですが多少由来のある名前の方がいいよな!と思いデカいワイバーンということでギガバーンと名付けたのですが音も字面もそこそこダサく、学生クラスの生徒に姿負け()していると言われてしまいました。名前も大事です!)

小学生の創造力に基礎の力がつけば最強!授業内に留まらずこれからも沢山のいきものを生み出して欲しいです!

最後の一点まで


海良 高1 岩絵具・顔彩/パネルに和紙

もう梅雨入りしている地方もあるそうで、季節の流れる速さに今年も驚いています、ホノカです。今回も学生クラスから海良の日本画のご紹介です!カワセミの躍動感が素晴らしい作品ですね。

日本画は岩絵具や水干を使ったものがそう呼ばれますが、線を生かした描き方があるのも日本画の特徴と言えます。今回の作品は写実的に描くのではなく、線を意識した塗り方がされていることでよりカワセミの動きや、それに連動する水の勢いがデザイン的に伝わってきます。カワセミが餌を狩る際には、自らの体ごと水の中に突っ込み魚などをくわえて戻ります。このシーンでは餌を狩り戻る瞬間ですが、水を体に纏う流れとカワセミの体のラインが曲線になることで流線型のような、一瞬を捉えた素早さが表現されていますね。

また、絵全体を見たときにシンプルな背景と、細かく描き込まれたカワセミで密度が異なっていることでバランスの良い画面になっており、落ち着いた雰囲気は崩さずに見応えのある絵になっています。羽も注視してみると、手前側と奥側で細かく色が異なっており、写実画とは違うポイントとして一味加えられています。そして、写真では伝わりづらいポイントですが、ついばんだ魚の質感や、頭の辺りの羽も一枚一枚描くように丁寧な描写があることで、シンプルながら生き生きとした生き物の様子に繋がっています。
そしてこの作品の雰囲気にさらに一役買っているのが、左下に書かれた雅印です!中学生の時に篆書(てんしょ:現在使われている漢字の元になった書体)で印鑑を彫ったとのことで、それを思い出しながら書いたものだそう。小さくはありますが、これがあることで彩度も高く元気になりすぎてしまいそうな作品が、落ち着きを備えた作品に感じられます。

線を生かして描くことは日本の絵画の特徴ですが、それが可能になるのは常に画竜点睛を欠かさない様にする意識があってこそではないでしょうか。この作品は描いた彼の几帳面さもあったことで完成した作品だと思います。今後の作品にも細かい部分へのこだわりが活かされるといいですね!

小学校受験の制作

こちらの写真は、年長対象『小学校受験クラス』の制作風景です。
 ①一枚の帯状の紙を、折ったり丸めたりして立たせるには、どのような方法があるか試してみましょう。
 ②お友達の立たせ方を見て、どれが丈夫で倒れなそうか、話してみましょう。
 ③一枚の帯状の紙を、誰が一番早く高く立たせることができるか競争しましょう。
 ④今度は7枚の帯状の紙とセロテープを使い、高いタワーを作りましょう。
 ⑤倒れてしまう子は、原因を考えましょう。
 ⑥安定している子は、理由を言えるようにしましょう。
 ⑦お友達の意見を聞き、3枚プラスした合計10枚の帯を使い、更に格好良く倒れにくいタワーにしてください。

かなり薄く弱い画用紙を細長く切って使いましたが、縦に半分に折ったり、筒状にしたりすることにより、長さと強度を併せ持つ材料となります。
下の方を大きく・重く(たくさんの紙を使う)、また足が広がらないように留めることによって、土台がしっかりします。
土台さえうまくいけば、上は多少ヘロヘロでも高さが出しやすくなります。

誰かの真似ではなく、一人一人が自分なりのやり方を導き、このようなオリジナリティー溢れる建築物になりました。子ども達の発想力を引き出すカリキュラムで、受験合格という目先の成果だけではなく、考える楽しさを知ってもらえれば嬉しいです。  小原

どこかにいそうな生き物達

前回のブログはすっぽかしてしまってごめんなさい、そうきです。3回目のワクチンはかなりしんどかったです…

今回は先週ブログで少しお見せした絵についてお話します!

動物の描き方を1ヶ月掛けて学び、その集大成として最後の週に『オリジナルの生き物を考えよう!』という制作をしました。
まず、一番に見てもらいたいのが不自然なところがないところです。足の関節、頭の向きなど、これはナツメ先生の作った動物イラストのテキストを、しっかり理解して応用することができている証拠です。何度も描き直しをした甲斐がありました!
あまりにも自然すぎて、実在している生き物なのでは?と錯覚してしまいます!

そして次に注目してほしいのが、生き物一匹一匹のデザインです!『ポケモンのようなキャラクターを自分のものに落とし込んで、新しいものを作る』ナツメ先生の進化したドラゴンのような生き物を見本として見せてもらい、頭ではイメージができましたが、それを1から新しいアイデアを湧かせて紙に描き下ろす…とても難しいことでした。が、そんなことも難なくこなしているような完成度に見える生き物たち。ミオスっ子たちの技術力の高さがわかります!

ここで終わりかと思いきや、実は今月来月とはりこ製作として取り組んでいる『ヘッドトロフィー(ドラマなどで金持ちの暖炉の上に飾ってあるやつです…)』の設計図として繋がっているのでした!
ハンターになったつもりで「飼いたい!捕まえたい!」と思う動物たちの頭部だけ作ります。

来週は、設計図を立体にしていく様子を報告していきます!