機転を効かせて


風音 高2 岩絵具・金泥/パネルに和紙

大学内のパン屋に入り浸っています!マユカです。

本日ご紹介する作品は風音の日本画です。なんと彼女も川総デザイン科!学年間の交流が少ない高校だったので、彼女達とほとんど交流できなかったことが悔しいほど、才能ある絵を描いているなと思います。

こちらへ振り向こうとしているこの女性は何をしている最中なのでしょうか。
顔が見えそうで見えない絶妙な角度によって、どんな顔なのだろうと自由に想像できる楽しさがある一枚です。
あえて平面的に描かれた着物が、白く透明感のある肌を際立たせており、女性らしい肌の感じが美しく映えています。
背景も単に一色にせず、明るい色から暗い色へのグラデーションにすることによって、画面全体が明るくなり、かなり奥行きが出ます。試しに画面の上の方だけ隠して見てみると、受ける印象がガラッと変わって見えてきませんか?たった一枚で色々な見方ができ、考えることができる作品は見ていてとても楽しく、長く愛されるものになると思います。
そして背中に彫られたタトゥーを見せるように大胆にはだけた着物がとてもセクシー!実はこのタトゥー、肌にシミのような跡がついてしまい隠す為に入れたのですが、失敗を感じさせないどころか、むしろ失敗する前よりかっこよくなっています。機転の利かせ方がとてもオシャレです。

誰もが一度は作品を制作している途中で失敗してしまうことがあるはずです。失敗なくして成功はないのですが、あと少しで完成!というときにミスするとどうしてもやる気が失せてしまいます。そんなとき失敗を成功に変えることができたら素敵ですし、失敗というのは偶然の産物ですから自分では思い浮かばなかった新たな発見があったりもします。
風音も今回の制作で学んだことがたくさんあったはず!次の作品も楽しみにしています。

お知らせ 明日よりミオスはゴールデンウィークのお休みを頂きます。それに伴い、ブログも5月8日までお休みさせて頂きます。

安らぐ微笑み


三原 鉛筆

慌てて夏服を引っ張り出してます、ナツメです。今回は水曜大人クラスの三原さんの作品をご紹介します!

優しい笑顔が印象的な鉛筆画。おばあさまに渡すために描かれたそうで、困ったような眉毛とにっこり笑った口元から覗く歯がとってもチャーミングです。 

紙の目を残して素朴な雰囲気を出しつつ全体を暗めのトーンにしていて、その中での少しずつの陰影の差を繊細に読み取って描いているためコントラストが弱めになりふわっとした柔らかな印象に繋がっています。また、その中でも体の下の方にさらに暗さを置いており安定感が出ています。安定感というと絵に関しては避けられることが多いのですがこの絵の場合はゆったりと構えている重さを感じ、どこか安心させてくれるような表現になりました。着ている浴衣もゆとりがある分、布が余って大小のシワが多くなり少し着崩れている様子が描きづらいところを浴衣に入っているストライプの模様を上手く使い、布の起伏に沿った形を丁寧に描写することで立体感により説得力を持たせています!

私事になりますが、つい先日祖母が自宅に遊びに来た時に、小学生の頃にアトリエで描いた油絵を待ち受けに設定してくれているのを発見しました。三原さんの作品もきっと喜ばれることと思います。おばあさまにとって宝物になること間違いなしです!

空気の変わり目


あかり 中2 岩絵具・銀箔/パネルに和紙

暖かい日が増えましたが不安定な時もあり服選びが難しいですね、ホノカです!今回も学生クラスからあかりの日本画をご紹介です!

白く丸いフォルムが特徴のシマエナガが少し雪も積もる枝に佇む可愛らしい作品です。パッキリと明度の異なる色が置かれた背景や、枝の表皮を表すような大胆な塗り方がされていることで、シマエナガの毛なみの柔らかさがより強調されています。また少し黄色みのある色や赤みのある色が使われていることで、動物らしい暖かみのある印象にもなっています。真っ白さが特徴のシマエナガですが、その特徴を潰さないように配色が考えられた構図が素敵ですね。主役は小さな鳥1匹ですが、画面全体でしっかりとその主役が引き立てられています。

そして背景は、景色を描き表すのではなく、空気感という目に見えない部分を感じたように表しています。雪も残る寒い空気の中ですが、陽の光が差し込むような、はたまた再び雪の時期が近づくような空気の冷たさにも感じられます。そんな空気の違いがあっても、枝の様子が変わらず横断しているため、変化が徐々に訪れ始めているのだと分かります。ですがよくよく見てみると、右側の枝の端は闇に溶けているような暗さもあり、立体感もしっかりもたらされています。そして顔の向く方向が明るく示されていることで、暗さの中にいても光を見出すようなストーリー性も感じられます。

アトリエ入会後2枚目のデッサンの途中で、他のクラスメートの流行りに乗っかりこの日本画の製作に取り掛かりました。いきなり慣れない画材を使用することや、構図を考えること、様々難点はあったかと思いますが、色々な画材に触れる楽しさを感じていてくれたら良いなと思います!

はじめの一歩は造形あそび

火曜親子クラス担当の伊藤です。4月から新メンバーになりました。2歳児さんの制作をご紹介します。

最初はクレヨン遊びからスタートです。お母さんとお子さんがそれぞれ1本ずつクレヨンを持って、どちらかが先に画用紙の上をクレヨンでかけっこします。(長い線を描きます)次にもう1人が、先に描き始めたクレヨンの後を追いかけるように線を描くと、まるで鬼ごっこしているようです。遊びながら長い線やクネクネ線を描いていると、どんどん楽しくなって、いつの間にか1人でお絵描きが始まりました。

大きな画用紙いっぱいにダイナミックな線を描くお子さん。たくさんの色を次々試したり、色を重ねるのが好きなお子さん。普段自宅で親子二人で描いていると、自分のこどもの描き方しか分からないけれど、お友達と一緒に制作すると、1人1人違う描き方を見ることができて、お互いの魅力が発見できます。

絵の具の使い方も全く違っていますが、それぞれが楽しいな!という気持ちが伝わってくる制作でした。2歳児さんの場合、その日に出会った材料と画材で遊んでみることが最初の一歩です。遊んだものをアレンジして作品になります。このクレヨン遊びと絵の具制作は、魚の形に変身して『鯉のぼり』作品となりました。ご自宅での飾り方のアドバイスも参考にしていただけたようです。

こちらは、4月に入園されたお子さんの親子クラス最後の作品です。カラフルな短冊状の画用紙に、スタンプで模様を描きました。丸いスポンジは、使い方次第で色々な線や模様を描くことができて楽しいです。沢山スタンプを重ねていくと、色が混ざり合って新しい色も増えて賑やかな模様になってきます。思い切り絵の具を楽しんで制作した様子が伝わってきますよね!

新年少児さんなので、画用紙の四隅をハサミで斜めに切ることができました。角がなくなっただけでも少し丸みを帯びた形になり、それを組み合わせて絵本「はらぺこあおむし」に出てくる蝶をイメージしてコラージュ。蝶はクレヨンで描いて、その周りを綺麗に飾った使い方も素敵ですよね!

来月の予定 5月10日・24日 (火) 10:30~11:30 

頭の中の動物たち

寝巻きはもう半袖短パンのそうきです!小学生クラスは前回の続きで走ったり飛んだり動きのある動物たちを描きました!

動物と触れ合う機会といえば…「動物園でシマウマを見たよ!」「犬猫飼ってる!」「移動動物園でウサギを触った!」などの声も聞こえて来てきましたが、きっとその動物たちは、寝てたりじっとしていることがほとんど、走ったりしていたり飛んだりしてる動物を見たことは少ないはず。「前足はどうなってたっけ?どこをどっちに曲げて描けばいいんだ?ひじ?ひざ?もも?あれ?」「足が重なってる奥の足は、こんなに見えないよね?」ヒントになるのは己の想像力…と言いたい所ですが、描くための記憶の材料が少なくても自信を持って描けるように、骨格についての勉強で知識を深めていきました。これは前回も話したなつめ先生の冊子がめちゃめちゃ役に立ちます!

しかし、なつめ先生の冊子で僕もバッチリ事前勉強していたとは言え「今回は難しいから、どうやってみんなにアドバイスをしよう…」という心配が募ります…が、そんな不安とは裏腹に、座学の授業でしっかり説明を聞いた後は黙々と描き進めるみんなに圧倒されました。せっかく得た知識を披露する間もなくただみんなを見つめる始末。さすがミオスっ子です。甘く見ていてごめんなさい!
そしてあまりに上手な為に、高学年の子たちは紙の中に違う動きの動物を12匹描くようにノリ先生から高難度のお題を追加されてしまいました!最初から、どこにどのくらいの大きさで描くかを考えないと、描くスペースが足りなくなってしまったり、余白ができたりしてしまうのです。これも訓練ですね!
小学生クラスの皆さん、今回の技術を活かして学校で一番動きのある動物画が得意な人になってください!

光と影をテーマに


八木橋 油彩

岩田です。

今回は八木橋さんの作品をご紹介します。こちら朝日が差し込む朝食の風景を描いた油彩です。

以前、ブログでご紹介した作品は横たわっている女性に窓からの光が差し込んでいる油彩。こうして見てみると八木橋さんの作品には光と影といったテーマが通底しているのかもしれません。

今回の作品は画集から横位置の写真を選びましたが、陽光が差しているところを中心に据え、左右を切っているものの収まり良くトリミングしています。
逆光を表現しようとする故、途中手前の面が全体的に黒っぽくなってしまいましたが、その後修正を重ね鮮やかな色や質感を感じさせながらも、その逆光である様を見事に描き切りました。

これからも八木橋さんの持っているテーマや世界観を大切に描いていって下さい!
ユーチューブでも画面に作品を近づけて詳しく紹介しています。

是非ご覧ください。

YouTubeはこちらをご覧ください。

思い出を覗く


佐竹 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、佐竹さんの油彩作品です。佐竹さんが持参された古い写真を元に制作されています。

時代は1985年頃、お仕事でアフリカのサンビア又はマラウィへ電気通信ネットワークの敷設工事に携わった際の風景です。当時日本の無線技術は世界トップレベルで、その最新デジタル通信設備を設置しに現地へ向かわれたそう。そのための局舎電源を含めて日本の某大メーカーが受託したもので、その他の人は現地業者(イギリス系)の人たちだそうです。また、調査時は岩場も多く毒蛇に遭遇もされたそうで、中々に過酷な現場だった事が伺えます。足掛け3年、一度現地へ行くと3ヶ月ほど滞在されていたそうです。

当時の思い出を振り返りながら、記憶を絵筆に込めて1つ1つ描かれていかれたのでしょう。顔がハッキリと書かれておらず曖昧に仕上がっているのも、何十年も前に会った人たちの顔をぼんやりと絵の上で思い出しているかのようです。真正面からではなく、少し下から見上げるような構図も良いですね。
空の色合いも、綺麗な青色ではなく薄いグレーがかった水色なのがまた良いですね。くすんだ風合いが画面全体の雰囲気にぴったりです。下地にはイエローオーカーを使用したので、地面の色はその下地を所々残しつつ仕上げています。
作者の頭の中にある思い出の風景を、そっと覗かせて貰えるような1枚だと思います。

色数を増やすと…


彩音 高2 岩絵具・金箔/パネルに和紙

早くも大学の課題に追われています!マユカです。四月も既に後半…時間が過ぎるのはあっという間ですね。

さて、本日ご紹介する作品は彩音の日本画です。彼女も川総デザイン科!この視点から座っている猫を描くのは難しいのですが、ちゃんと地面に足がついて見えるように描けているところから彼女のデッサン力の高さがうかがえます。よく観察できている証拠です!
また、背景と花の色が補色の関係になっていることもあり、黄色がメインの背景に白い猫がメインモチーフの明るめな画面になっていても、手前にある花が画面をすっきりとまとめてくれているので、全体的にとても見やすく、スッと心に入ってくるような一枚です。

彩音が今回選んだモチーフの猫は彼女が実際に飼っている猫だそうで、その描きこみ具合からも彼女の猫に対する愛が伝わってきます。絵の下にある「Mina」のサインは猫の名前とのこと。こちらを向いているかと思いきや、ほんの少しそっぽを向いている大きな目の視線の先にいるのは彩音でしょうか。じっと見つめている顔がかわいらしいです。また、顔周りと体の毛の生え方の違いも筆のタッチを変えて差を出したことにより、絵におけるリアリティと猫の愛らしさがより一層引き立っていますね!
そしてなんといっても影に使われている色数の多さ!よく見ると、主役の猫にたくさん色をのせてあげているため、白い猫でも目立ってくれています。様々な色を入れましたが、ベースには暖色の赤系を使っているため、やわらかで生き物の温かさを感じる毛並みになっていますね。色の種類を増やしても白さを損なわずに描けていて素晴らしいです!

色数を増やすと表現の幅がとても広がりますが、その分画面がごちゃごちゃとしがちになってしまいます。一番見せたいポイントにのみ色数を増やす色彩計画をすると、自分が思い描く主張ができますよ!

空間を彩る


大澤 油彩

4月も折り返しましたがまだ肌寒い日が続きますね、ナツメです。今日は水曜大人クラスの大澤さんの作品をご紹介します!

木机に置かれた春らしい色彩のバラ。赤や濃いピンクのものが多い中で、硬い質感をもつ金属の花瓶に黄味の柔らかな色味がとても映え、キャンバス内の空間を彩っています。モチーフのバラ自体がカラフルな分今回のような単色の背景を合わせるのは難しく、ただ灰色一色で塗るとのっぺりとした単調さが目立ってしまうのですが、今まで数々の油絵を描かれてきただけあって、バラを邪魔しない絶妙な程度に色味に変化をつけているのが素晴らしいですね。

F4号の小さな作品ですが、気品と大人の色気みたいなものを感じますね。薄い花びらが幾重にも重なった時の段階的な影が繊細に描かれていて、触れた時の瑞々しい感触まで表現できています!

私はバラと聞くと1番に赤を思い出して強さや凛々しさをイメージするのですが、今回の大澤さんの作品では黄色・オレンジのバラが写真を元に描かれていて、暖かさや春らしさが伝わってきます。花だけではありませんが、もつ色が変わるだけで途端に想起する季節や温度は大きく変化します。皆さんもぜひ制作の際には、作品にどんな印象を持たせたいかをイメージして色を吟味してみて下さい!

穏やかな迫力


蒼惟 中2 岩絵具・顔彩/パネルに和紙

やっと授業が始まり安心しています、ホノカです!今回は学生クラスから蒼惟の日本画のご紹介です!猛獣と呼ばれる虎ですが、こちらの作品では少し開いた口も相まってネコ科の動物らしい可愛さもありますね。

今回のメインモチーフであるトラは画面全体を横断するほど大きく描かれ、その身一つで絵を支えています。それが可能なのはやはり私たちが持つイメージとして、トラが強いというものがあり、それがしっかりと色使いや正確な描写で現れているからではないでしょうか。墨も使いハッキリと描いた黒の模様と、オレンジと黄色で描かれる体毛のコントラストが色からも危険性を感じさせてくれます。また、トラの鎮座する岩のような場所は、実際に岩絵具を用いて表面のザラついた質感や自然の物特有の複雑に重なる色が表現されています。ただ塗るだけではなく、色の種類を多く使うことや、黒も恐れずに入れることでトラや岩の重みや存在感が生まれています!

そして背景は、沢山描きこんであるトラ、岩とは反対に青一色で塗られており、画面がうるさくなり過ぎず、トラに自然と目線が向いていきます。青と黄色は補色の関係にあり、使い方によってはちぐはぐな印象になることも有り得ますが、青は後退色(反対に黄色や赤色の暖色は前に飛び出してみえる進出色や膨張色などと呼ばれる)のため主張しすぎず、トラを強調していますね。しかしこの作品の魅力はそれだけではなく、構図にもあります!描き始めた時はもう少しこぢんまりとトラが収まっていましたが、前足を斜めに大きく伸ばしたり、頭の上が少し収まりきらないくらいにしたことで、くつろいでいる姿にも迫力が生まれました。

彼女の少し前の作品も、トラをモチーフにしたものを描いていましたが、それだけあってよく見ているな!と感じる部分も多くあります。例えば顔は正面から捉えた分バランスの崩れが気になりやすかったり、左右対称にしすぎてしまうと人工物のようになってしまうため非常に塩梅が難しいのですが、細かい模様の形を押さえつつ黒の濃淡を使い分けることで立体感もある顔になっています。

全てを写実的に描くだけではなく、平面的になっている部分も面白くなるのも日本画の魅力ではないでしょうか。この作品には彼女のトラへの愛だけではなく技術もしっかり詰まっていますね!完成までのペースはゆっくりでしたが、このクオリティには本人も大喜びで私も嬉しいです!