慶應初等部合格者の絵画

小原です。昨日、慶應横浜初等部の発表があり、今年の小学校受験に幕を下ろしました。
早稲田や幼稚舎など難関校がありますが、私が毎年緊張するのはなんといっても慶應横浜初等部の受験。なぜならお勉強などの一次試験を突破し、二次試験として見られるのが『絵画・制作』だからです。二次で不合格だったら、美術を教えている私の責任ですから。

今年の思い出深い生徒さんは、上記の絵を描いたお嬢さん。早生まれということもあり、人体を画面に大きく描くのが難しく、動きを表現しようとするとバランスが悪くなってしまうのが難点でした。
しばらくプライベートレッスンを続けましたが、最終的にたくさんの事を覚えるのを諦め、『同じポーズで全ての題材を描いてしまう』という作戦に変更しました。
また手が遅いのをカバーする為、自分以外の人物は必ず見切れさせるように徹底的に教え込みました。

上の3枚の絵はいかがでしょうか?「カブの収穫」「クッキー作り」「カマキリ捕り」、全て同じポージングですが、言われないと分からないでしょう?よくご覧ください。手前の肩の出かた、奥の腕の角度、前かがみの上半身、全て一緒です。
今年の慶應横浜初等部の試験内容は『家族で自分の好きなおかずを食べている絵』だったそうですが、おかずを取ろうと手を伸ばす自分をこのように描いたのは言うまでもありません。自分がこんな動きのあるポーズで描けていれば、自分以外の家族は人数が描けていれば十分です。見事合格を勝ち取りました。

今年小学校受験をされた年長さんのご家族の皆様、本当にお疲れ様でした。長引くコロナに翻弄されましたね。私も長かった小学校受験生や親御様との伴走が終わりホッとしています。楽しい小学校生活を送られてください。

お知らせ 1月からの新年長対象の小学校受験クラスは、水曜クラス(15:00~16:15)のみ空きがございます。
新年中さん対象のキッズ受験クラス・4月からのプレ受験クラスは、キャンセル待ちの方が数名控えていらっしゃいます。
プライベートレッスンのみの受講生は募集しておりません。
詳細はメールにてお問合せくださいませ。

グレーの世界


三原 グレーデッサン/コンテ・チャコールペンシル・パステル – グレーのボード

お久し振りです!グレーデッサンの話題を繋げようということで、月曜ですが一平です!卒業制作に没頭する為、1ヶ月もお休み頂きありがとうございました!
本日は、先週末の岩田先生の記事に続き、水曜クラスの三原さんのご紹介をします。

岩田先生の説明に少し加えさせて頂きますが、グレーデッサンが普通のデッサンと1番違う、かつ勉強になる部分は「光を描ける」というところでしょう。普段のデッサンは白い紙の部分が1番明るい部分になります。つまり描いていない所が1番明るいのです。
ですがグレーデッサンはベースがハーフトーンなので、「光を描く」という普通のデッサンとは違う感覚が味わえるのです。言い方を変えると既に中間色を塗っているような状態なので、形を取って暗い部分と明るい部分だけ塗ればそれなりに見えてくるというのも、中々面白い特徴かなと思います。

その点、三原さんの今回の作品は手数は少ないですが形がしっかり取れているので存在感、色の雰囲気などが伝わってきます。グレーの中に黒い布でしっかりと暗さを作っているので、レンガやウクレレなど中間色のモチーフが多い中でも白けて見えません。むしろ黒い布のお陰でよりはっきりと見えてきますね。黒い布と影以外は実はそこまで描いていませんが、立体感や実在感を感じられます。つまりグレーデッサンのコツを掴んでいるという事!
ちなみに言い方をめちゃくちゃ悪くすると、『サボるのが上手い人が得をする』のがグレーデッサンです!勿論悪い意味ではなく、ここを描けばそれらしく見える、という「モチーフのポイント」を見定める力が、グレーデッサンを通じて三原さんに身に付いたのではないかと思います!普段のデッサンにも活かしてくださいね〜!

グレーデッサンを描く


當山 グレーデッサン/コンテ・チャコールペンシル・パステル – 左は墨で塗った紙をパネル貼り、右は灰色のミューズコットン紙を揉み紙にしてパネル貼り

土曜日といえば私、岩田です。今回は、土曜午後クラスの當山さんのグレーデッサンをご紹介します。

グレーデッサンは、一般的な白い画用紙に鉛筆と練り消しを使って描いていくデッサンとは異なり、中間色のミューズコットン紙などにチャコペンやコンテなどの白と黒の描画材を使って描くデッサンです。
描く紙はニュートラルな明るさであれば良いので、グレーの紙だけではなく、赤や青、茶色といった紙を使っても良いのです。

通常のデッサンは白に暗さを足していく作業。グレーデッサンは中間色に明るさと暗さを足していく作業です。
一見、仕上げるのにとても時間がかかりそうですが、意外にグレーデッサンの方が進みが早いです。とはいえ、いつものデッサンに慣れていると、最初は進めるのに少し苦慮するかもしれません。

當山さんが今回描いたグレーデッサンは2点。以前描いたものを含めると4点ではありますが、モチーフの質感表現がとても素晴らしいです。
※前回ご紹介した當山さんのグレーデッサンも、どうぞ合わせてご覧ください。こちら

アマゾンの顔を描いたものも良いですが、静物のランタンに細工された模様の凹凸や葡萄の艶を帯びた表情は中々のもの。いつも柔軟な思考で描画材を扱う當山さんならではです。
ここまで描くことができれば、次は剥製などの更に複雑なモチーフを描いても良いかもしれませんね。

まるでオフィーリアのような


八木橋 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、日曜クラスの八木橋さんの油彩作品です。写真集からピックアップした、寝転がる女性のモデルさんを描いています。
絵の全体を眺めていると、地面、肌、髪、服といったそれぞれ異なる質感を、全て手を抜く事なく描き分けられている事が分かります。制作の際の、作者の丁寧な姿勢が作品から感じられますね。
女性のまろやかな肌を引き立てる為に、床や花弁にはナイフを使ったマチエールが厚めに作られています。キャミソールの薄い布地の質感と、その下にある身体を感じさせる表現もお見事です。日なた部分にエメラルドグリーンが使われているのも、画面の中に明暗のメリハリを作ると共に、女性の肌の色をより綺麗に見せています。そして髪の毛のふんわりとした柔らかさは、細かな描き込みよって作られているのでしょう。髪の毛全てを細かく描くのではなく、顔付近や光が当たって明るい部分に書き込みを絞る事により、粗密のバランスも取れていますね。

初めてこちらの作品を拝見した時、ミレイの『オフィーリア』を連想しました。散らばる花弁と豊かな頭髪、眠っているかの様な女性の姿が、詩的な死を迎えたオフィーリアと結びついたのかもしれません。恐らく意図して描かれたのではないでしょうが、オマージュにも見えてきて面白いですね。

 

大きいに挑む


詩琪 中1 鉛筆・画用紙 / 梨愛 中1 木炭・木炭紙

湿度が高い方が部屋が暖かいと知り暖房と加湿器を合わせ使いし始めました、ホノカです。
今回は木曜学生クラスに通う中1女子2人のデッサンをご紹介します!一緒に同じ時間をかけて鉛筆、木炭と異なる画材で牛骨にチャレンジしました。紙はどちらも木炭紙大(油絵のキャンバスだとF15500×650mmくらい)とかなり大きめなサイズなので、実物大で描きました。2人とものびのびと描けているだけでなく、骨の質感や量感にまで迫る描き込み量です!

私自身牛骨を見た時の第一印象は「なんだこの細かくて難しそうなの!」でした。(恐らく彼女たちと同じくらいで学生クラスの時に描いた記憶が)実際に牛骨は骨というだけあり、細かい関節や歯、ヒビなど人工物には無い複雑さがあります。また形も鼻先に向けて細くなる形となっており、角度によっては奥行きと細くなる形で混乱しかねないモチーフとなっています。2人のデッサンは側面側から捉えたものですが、隙間から見える奥側の骨や骨の厚み、眼窩の暗さなど様々な要素がしっかり描き込まれていることで立体感がもたらされています。

また牛骨はアイボリーのような明るい色となっていますが、その固有色だけに捉われ描き込みが少なくなると牛骨のずっしりとした重量感が失われてしまいます。ですが描き込みを重ねすぎても絵全面が暗くなり立体感が失われてしまいます。そのため描き込んだ後に、練りゴムで上面の明るさを調整する作業が重要な難しい部分です。

大きいサイズということで、手を動かす量も小さいものより必要になりますが、その中でもきちんと形を捉え、明暗が描き込まれたボリュームのあるデッサンになりました。紙のサイズや画材、普段のデッサンとは少し異なる環境でしたが丁寧に描かれたことが分かります。2人ともお疲れ様でした!

ひんやりと温かな


秦野 アクリル

出来るだけ長く布団にいたくて毎日遅刻ギリギリの時間で登校してます、ナツメです!

水曜夜間クラスの秦野さんの作品をご紹介します!2005年の11月に入会とのことで、アトリエ歴丸16年!私が2歳の時から描かれているんですね!(秦野さんの過去の作品はこちら
一平先輩が1カ月お休みしている為、私が水曜夜間クラスを引き継いでいますが、『穏やかで超絶上手いミオスのベテラン』と一平先輩からの日誌に評されているような方ですので、それは上手くなって当り前ですよね。(そもそも元々お上手です!入会して半年後の作品はこちら

今回は明朝の港の風景!写真では見辛いのですが、船の上の方のアンテナみたいな細ーいところ(名称が分からなくてすみません)のような幅1mmにも満たない細部まで丁寧に描かれていて、細部への気配りが質へと繋がっています。暗さの割合やピントの合わせ具合、まだ日が登っていない明け方の暗さや少し冷たくて静かな港の様子など空気感の表現がとても気持ちいいですね!

私はデザイン科なので受験生時代にアクリル絵具を使って平面構成を制作していました。パキっと分割した色面や高い彩度でムラなく綺麗に塗られた画面に親しみがあったため、1番はじめに秦野さんの作品を見た時にパステル画ですか?と尋ねてしまった覚えがあります。確かにそんな温もりを感じるのですが、もしパステルを使った場合は画面の上で色が混ざっていくため海の光の反射や雲など、暗い色の隣の鮮やかな色はここまで綺麗に描写できなかったのではないかと思います!先程と言ってることが逆にも聞こえますが、アクリルならではの画面に仕上がっていて、画材の扱い方も流石ですね。

水曜クラスでも、ふむふむ、こうやって完成していくのかとこちらが経過に学んでいます。最早何を言っても今更なのでは!?とドキドキしながら書いているのですが、私は秦野さんがこの絵にどんなタイトルをつけるのか気になるので、是非今度教えて下さい!

幼児たちの熊手

大竹です。小学生クラスに続いて、幼児クラスでも二週間かけて祝い熊手を制作しました!小学生が1ヶ月かけて制作したものを2週間で仕上げますので、いくつかは幼児でも作りやすい物に変更(祝い鶴は扇子、張り子のオカメは折り紙で制作など)して進めましたが、仕上がりは負けていませんね!たくさんの飾りを制作しながら、お絵かきの方も並行していきましたのでご報告させて頂きます。

1日目の10分お絵かきでは招き猫を制作しました。「招き猫は右手を挙げているとお金が増えて、左手を挙げているとお友達があ増えるけど、どっちで描く?」と聞いたら「お金!!」と即答で9割の子が右手の猫を描いていました。笑 きっとお友達は既にいっぱいいるのでしょう…。それぞれ顔に個性があって可愛らしいですね。小判の百万両の難しい漢字にもチャレンジしました。

2日目の10分お絵かきでは来年の干支にちなんで鳥獣戯画の虎を描きました。以前はカエルとウサギを描きましたが、今回はもっと複雑で難しいものでしたね。しかし、子供達の描く線のなんと魅力的なこと…このギリギリ虎に見えるか見えないか、抽象と具象のせめぎ合いは大人にはとても狙って出せないものです。(本人達は本物に似せようと必死で描いていますが)スケッチブックに練習した後は、細長い和紙に油性ペンでもう一度描いていきます。頑張って描いた虎は、熊手の真ん中下に貼り付けて干支のお札になりました。
2週間かけて制作した立派な熊手、是非高い場所に飾って福を掻き込んでください♪

 

向き合い続けて


杏夏 4年 / 璃子 5年

きな粉にハマって永遠にきな粉牛乳を飲んでいます、ホノカです。
8月23日に小原先生が「いつ完成?」というタイトルのブログで、この2枚の下塗りの様子を紹介していましたが(その記事はこちら)ようやく仕上がりました!
杏夏は確か10月に入る前には完成していたと記憶していますが、璃子は先週ようやく完成しました!足掛け4ヶ月!君は大人クラスの生徒か!?
2人とも同じサントリーニ島の街を描いていますが、比べてみるとやはり雰囲気が全く違いますね。それぞれご紹介します!

杏夏ーウルトラマリンという色名がぴったりすぎる海と、建物の純白の対比が綺麗ですね!また海の色をそのまま映したような屋根にも、海辺の街という雰囲気が表れています。絵の半分程が青ですが、建物には幅の広い色彩を混ぜ込んだグレーの影、海は明度の違いで遠近を表現することで、しっかりと対象物の違いが分かります。杏夏の観察力の高さや丁寧さの賜物です!ですが海の部分は下塗りのマチエール(絵具の盛り上げ)が影響して、どこか自然の強さのようなものも感じられる、繊細なだけではない絵となりました!

璃子ー璃子は丁寧さ・慎重さなら小学生クラス随一なのでは?という感じで、特に手前側の石畳は小さいながらも石の凹凸まで分かる細かな描き込みがあります。そして杏夏の絵は海と街並みでしたが、璃子は白壁の街並みをデリケートな色調の変化と、パキッとした色味を使い分けて描いているので、似たモチーフでもこちらは反射の眩しさを感じる絵となりました!また建物が坂に沿っていて、遠近感だけでなく高低差もある難しい写真でしたが、下書きの時には定規も使いつつ描いたため、建物の安定感・人工物ならではの硬さが表現されています。さらに所々の植物や背景の雲といった自然物が曲線的でぼんやり描かれているのも、それらの対比・強調の効果に繋がっています。

以上アトリエ・ミオス小学生クラスで、慎重かつ丁寧さ12を争う2人の油絵でした!作品を決められた時間内に完成させることも重要ですが、同じ絵に時間をかけて向かい合えるのもまた重要です。私自身「ここはまだ良くなる気がするけど飽きちゃったしもういいや〜」と諦めてしまうことが多いので、この2人の精神力は見習いたいくらいです!
やっと完成した油絵です、ぜひ色々な人に見せびらかしてね!

コツコツと、油絵完成です!


麗 / 颯馬  二人とも5年生 油彩

最近は朝晩が冷え込みますね、ナツメです!小学生クラス6月・7月のカリキュラムだった『油絵』ですが、なんと10月に完成した子達の絵をご紹介します。
もちろんただ長く掛かった訳ではなく、この二人は休会期間もあった為ですので、念の為。

まずは麗。山や木々囲まれた湖という癒しのある自然豊かな風景です!色と色の境界はトントンと叩くのみにして、混ぜすぎないことで油絵ながら水彩の滲みのような表現が魅力的です。草原と木、そして山と植物ばかりでそれぞれの描き分けがし辛い難しい景色ですが、使う色や筆の置き方を変えることに挑戦して上手く差を出していますね!!空と湖の青と周りの緑、と全体的に寒色の画面の中で、イエローオーカーなどの暖色をちょくちょく差し色に使用している緑チームに対して青い部分は青〜紫を使っているため、色幅の変化の違いも見所です!

そして颯馬。こちらは迫力のある立派な大阪城!エメラルドグリーンの屋根と絢爛な飾りが特徴的ですが、その特徴をしっかりと捉えていますね。城部分の明快な形や色遣いを支えるように空や石垣、手前の木などはそれぞれお互いが馴染むよう微妙な色の変化をつけたりタッチを変えて描かれていて、お城を見せたい!という気持ちががはっきり伝わるのが素晴らしいですね!梅でしょうか、右下にある赤いお花も面積としては小さいですが画面をきゅっと引き締める効果を発揮しています。

時間こそかかりましたが、ここまでコツコツと積み上げて一つの作品を完成させた根気強さに感心します。ご家族も今か今かと楽しみに待っていたと思うので、ぜひ見せて自慢してね!!

来年の予定表

2022年度の予定表の配布が遅くなっていて申し訳ございません。
何人かの生徒さんより催促されていますので、取り急ぎ1月分の予定表のみこちらにアップさせて頂きます。

・年始は1月8日(土)より、授業が始まります。
・1月10日(月)はお休みです。
・小学校受験クラスは、1月12日(水)が、月曜クラス・水曜クラス合同の授業となります。
・プライベートレッスンは、1月6日(木)よりご予約承ります。
・美大・美術高校受験冬期講習(年始)は、1月4日(火)より開講予定です。