線路歩いているような


松下 油彩

岩田です。本日は日曜クラス松下さんの作品をご紹介します。

まっすぐに続く線路を描いた作品。
こういう電車のいない線路を見るとスタンドバイミーの映画などを思い出したりして・・。まるで夏休みの青空の元、友達と線路を歩いている1シーンのよう。少しドキドキしながら永遠と続く線路を歩き続ける。何かとてもワクワクします。

私は鎌倉在住ですが、子供の頃なんかは、海沿いのプールに行くのに鎌倉駅から江ノ電の線路を友達と歩いて、時々後ろから警笛を鳴らされていった非常におおらかな時代でした。今は中々線路をこうしたアングルで見ることもありません。

松下さんの今作は、基礎のデッサンが終わって初めての油彩。植物に使っている色合い、枕木の色、とても活き活きとしていて、影の色も実に美しい。心から描くことを楽しんでいらっしゃる。
そんな気持ちが手に取るように伝わる素敵な作品です。

2枚目からはご自身で道具も用意され、ますます気合の入った一枚となるはず。楽しみにしております。

画面の向こうから拾えるような


綱島 油彩

最近運転の練習で寿命が縮んでおります、大竹です。今回ご紹介させて頂くのは綱島さんの油彩2点です(記事中央にもう1枚が掲載されています)

アメリカのシアトルの風景です。ブログにはご紹介していませんが、以前にもシアトルのスノコルミー滝を描かれていました。ご夫君と海外暮らしをなさっていた時に飼っていた犬と一緒の写真を元に制作されました。以前より綿密な描写で柔らかな雰囲気の作品を制作されてきた綱島さんですが、今回もまた暖かな陽の光を感じる作品になりましたね。斜面の微妙な起伏による緑色の変化、まだほんのり残る雪の白の組み合わせも美しく、ほぼ黒に近い濃い緑で描かれた木々も画面を引き締めてくれています。画面全体は少しくすんだ色合いでまとめられ、調和も取れていますね。奥に連なる山々の遠近感も見事で、灰色の中にほんのり青色が感じられる空も素晴らしいですね。隅々まで手を抜かず、描ききっているのが分かります。

そして2枚目の作品ですが、1枚目の作品と並べるとサイズが小さくなってしまうのが勿体無いので、上下で分けて掲載させて頂きました。そのおかげで、手を伸ばしたら画面から拾えてしまうのではないかと思うほど、1枚1枚丹念に描かれた落ち葉が見えるかと思います。これまでの作品もそうでしたが、こうした細やかな描写が見る人の心を掴みます。イチョウの緑から黄色の色の移り変わりもとても綺麗ですね。日本から出た事のない私からすると、イチョウや紅葉は和のイメージがありましたが、こうした海外の街並みに黄色い絨毯がある風景もまたお洒落で面白いですね!中央の道も手前から奥に行くにつれて濃い色から明るくなっており、自然と視線を奥へと誘導してくれています。

最近の秋を通り越して冬になってしまったかの様な寒さの中で、綱島さんの作品はじんわりと芯から温めてくれる様な優しさがありますね。色使いやタッチ、制作への姿勢もあるのでしょうが、何より作者の人柄が表れているのでしょう。そうした部分は、技術を磨くだけでは表現できないものなのだと感じます。

 

縁起モリモリで!

もう既に朝布団から出るのがしんどいです、ホノカです。
小学生クラスの1011月のカリキュラム『祝い熊手』制作も、かなり完成してきました!今回のブログでは主要な飾りを解説していきます。

まずは「おかめ」です。おかめとは「おたふく(お多福)」や「お福」とも呼ばれ、縁起が良い顔とされています。古代においては太った福々しい体躯の女性は災厄の魔よけになると信じられ、ある種の「美人」を意味したそうです。
そしておかめは「張り子」の作り方で製作します。張り子は粘土で作った型に、紙を貼って形を作るもので、今回粘土は銅像を作る際に彫塑家が使用する『水粘土』という、細部まで作り込めるよう微粒子を水で練り上げた粘土を使いました。
粘土でおかめの立体的な型を作り、その上に水で濡らした新聞紙を何層か貼り付け、さらにその上に接着剤+和紙の層を重ねて乾燥させます。しかし水粘土はかなり硬く固まるのが特徴なので、翌週まで乾かしていたら外す事はできなくなります。そのため翌日の曜日の子が、前の日の子の粘土を張り子から外し、くっついている新聞を剥がし
という様に曜日間で協力して出来た作品になります。外している最中は人の作ったものに触る緊張感がクラス中に巡っていましたね。粘土も外してしっかり乾燥させた後は、ジェッソで白粉を塗り、おかめらしくまろ眉、細い目、小さい口、真っ赤な頬紅を描き完成です!

他には赤い粘土で鯛も作ります。お祝いの宴席にふさわしい縁起もの「めでたい」。鯛を向かい合わせに置き、まるで一つの丸におさまるように見えることで、より縁起が良いとされています。鯛はミニたい焼きを焼く型を使い、紙粘土で作ります。お腹を向かい合わせて飾る為、左右を間違えないよう2匹作ります。

餅花、扇の鶴の解説もする予定でしたが、かなりの文章量になってしまいましたので、次回に続きます。しかしそれくらいさまざまな縁起物が熊手に飾られますので、見応えも福も増し増しになることでしょう!来週のブログもお楽しみに!

心安らぐ景色


釘宮 透明水彩

寒くて布団に入るとうっかりそのまま寝てしまうことが多いです、ナツメです。今回は日曜クラスの釘宮さんの作品をご紹介します!

基礎デッサンが終わって、初めての水彩画ですが、とても丁寧な仕事を積み上げ完成されました。一見、苦労なく仕上がったように見えますが、立ち枯れした木の遠近感が出せず試行錯誤されました。遠近法にも多くの種類がありますが、ただ背が高い・幹が太い・下の方にある、というだけでは手前に感じません。濃淡の強弱が必要です。空気遠近法といって遠くのものほど大気の影響で霞んでいくことから、手前を濃く、奥にあるものを淡く塗ると遠近感が出ます。あまり強弱をつけすぎてしまうとうんと遠い場所にあるかのように見えてしまうためその調整が難しかったようですが、細やかな仕事によって見事に木で構成された空間を表現されています!

晴れた空や周囲がくっきりと映るほど風もなく静かな様子に、この場所に立って深呼吸したくなるような澄んだ空気を感じますね。くっきり、と書きましたが水面に映っている木は虚像ですので、少しぼんやりしていて暗めになり、そのポイントもしっかりと抑えられているため実像の木にすっと目がいきます。そしてその木や雲の影など、僅かな色の違いや変化に反応されているのも見事です!例えば模写やデッサンなどでそっくり同じものを描きたい時も右から左へと機械的には写せず、一度自分にインプットしてからそれを出力する、という作業になります。自分が認識した分の情報しか描けないため、この絵からは釘宮さんが情報の読み取りに長けていることまで伺えます!

一作目の今回は透明水彩でしたが、ぜひ色々な画材に挑戦して好きな絵の具や表現方法を見つけて欲しいです。今後の作品にも期待大ですね!!

今にも羽ばたきそうな


璃 高3 鉛筆デッサン

ついに冬到来ですかね?!一平です!本日は水曜クラスの璃のデッサンをご紹介します。

力強いキジの剥製を描いています。コンクリートのレンガにキジの剥製が乗っかっていて、デッサンが上手い人でも描く前にちょっと構えてしまいそうなモチーフですが、しっかりと平な面の上に重なっているように見えますね。この重なりが意外と難しく崩れがちな部分なのですが、こういった基本的な部分はしっかりと抑えられています。コンクリートの質感、布のシワ感、木目、羽根の毛束感などそれぞれのモノの表情も丁寧に追っていて素晴らしい!いつも陰影が薄くなりがちでしたが今回はそんなこともなく、重いものはズシっと重く見えてきます。下の方が安定しているので、対照的に動きのあるキジや掛かっている白い布がより魅力的に表現されています。

現在は高校生の彼女、大抵そつなくこなしますが今回は普段よりも描き込みの量が多いような印象を覚えました。いつも僕や小原先生に「描き方が良くない!上手いけど!」「描く順番を考えなさい!上手いけど!」「もっと積極的に描きなさい!上手いけど!」と描き方の注意の後に雑に褒めるという謎のアドバイスを受けまくっている彼女ですが、今回のデッサンで、ただ楽をしようとしているのではなく、見えたものを見えたまま表現している、ある意味すごく純粋な描き方なのかもしれないと感じました。描くものに対して、めんどくさがりながらもあまり億劫にならない(矛盾していますが)のも彼女の良い所です。良い意味で物に対して「このくらいなら描ける」と冷めた目線で見ているような気が個人的にはしています。まぁ結局のところ描きたいように描くというのが、今のところの彼女が上手くなる方法なのかもしれません。(勿論我々は口酸っぱく小言を言っていきますが!)

絵が好きじゃなかった少年の絵


一志 中3『トーキョー』ペン画

どうも幸介です!!お久しぶりです。本日ご紹介するのは、学生クラスより一志のペン画です。

彼との付き合いは、もうかれこれ何年になりますでしょうか。幼児クラスから数えると10年近いのでしょうか。小学校1年生の時の授業中、「絵が好きじゃない」と言われ、じゃあ何しにアトリエに来てんだ!?と憤った記憶があります。いつもアトリエや僕ら講師達にさほど興味が無いふりをしつつも、たまに気まぐれに「これあげる」と公園で拾った石に自分で絵を描いたものをプレゼントしてきてドキっとさせる、そんな人の心をつかむスキルを持った人間です。

彼の作品スタイルですが、真面目なペン画を描いてみせているものの、基本的にはマッチョ・人面の動物・つやのあるお尻、などを描いています。もしくは描くのが好きです。彼の持つコロコロコミック的な美的センスに、個人的にはとても親近感を感じています。最近はしっかりと作品を作っているようですが、彼本来の持ち味を感じる作品にも今後期待しています。

今回の作品、緻密に描かれた線が素晴らしいですね!こんなに丁寧に絵を描く人だったんですね。ここまで成長したのか、と個人的に感慨深いものもあります。

P.S.一志へ。
幸介先生は自分の年齢を言いたくないがために、君が小学校低学年の時に10万才であると言いましたが、あれは嘘です。ショックを受けたのならごめんなさい。この場を借りて謝ります。なので、いまだに毎週のように「10万と何歳になったの?」と聞くのをやめてください。お願いします。ちなみに先生の本当の年齢は二十歳です。よろしくお願いします。

その衝動が気持ちいい


桂吾 高1『緊褌一番』不透明水彩・金箔 / 波那 中1『DOG WAVE』油彩

はい、岩田です。
本日も川崎市美術展の出品作品をご紹介します。。

DOG WAVEと題した波那の作品。サーファーならだれもが憧れるチューブライディング。犬が真っ赤なサーフボードに乗って軽々とそれをしちゃってます!私も以前サーフィンにチャレンジしていた時期がありますが、波に乗って立つことにも一苦労、センス無しと悟り辞めてしまいましたが夢はこの犬みたいにチューブをカッコよく乗ってみたかった。富嶽三十六景、神奈川沖裏波を彷彿させるような力強い表現が素晴らしい。チューブを形成した水面同士の反射も美しいなあ。波に乗ったはいいけど、大丈夫か?岸まで無事にたどり着けるか?!って犬自身がおっかなびっくりしているような感じがとても可愛いらしい作品です。

桂吾の作品は「緊褌一番」。どんな意味かと問えば、心を引き締めて発奮し、十分の覚悟をもって事に当たることらしい。その語はどうやらこの絵の中に出てくる店の屋号らしい。でもその店は何屋と又問えば、特に明瞭な設定はないらしいのだ…。実に不思議な空間、乱立する建物。金箔を散らしたビルの明かりきらきらと浮かび上がるその様が何とも美しいのです。この場所はスカイツリーらへんから鳥瞰図的に見た品川ということだけど彼の中での近未来図なのか?謎は深まるばかりである。それにしても自由に世界を構築し、ここまで描き切るそのバイタリティーに敬服するばかりです。

学生の発想は実に自由で見ていて楽しくなる絵ばかりです。理論立ててあれこれじゃなくて、正に衝動というか、こうやりたいという欲望に正直なところが気持ちいい。こうした絵を描く彼らがどんな大人になっていくのかな?絵を見ながらそんなことを思わせてくれるとても魅力的な2つの作品でした。

スマート、クール、スタイリッシュ


健一郎 高2 左 油彩『文明の利器』 / 右 水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは学生クラスの健一郎の作品。左の油彩が最新作です。

過去の作品もそうでしたが、彼の作品はどれもスマートな印象を受けます。彼自身も見た目がクールでスタイリッシュで(いつも着ているシャツがお洒落で可愛い)、作者の性格・内情が制作によく表れていると思います。最新作のタイトルの皮肉の効かせ方も講師陣からは好感度アップでした笑 
潰れた車をアップで描くのではなく、日常の風景の中にポトンと置いた感じが良いですね。参考資料には周りに警察官が何人か現場検証をしており、最初はそれらを入れるか入れまいか悩んでおりましたが、最終的に人物を排除した事でひとさじの”違和感”が加えられています。普通なら警察官の他に周りに野次馬もいるのでしょうが、それらを排除した事で生まれる違和感がこの作品のアクセントになっているのでしょう。背景の街並みも、画面右側は日光を受け明るくなっていますが、車が向かっていったであろう左側の画面は薄暗く、なんだか暗示的。
油彩の使い方も流石慣れているだけあって、大人も思わず唸ってしまう描写力です。ひしゃげた文明の利器と、古くから存在している煉瓦造りの建物との対比が光りますね。地面もただ黄土色を乗せるのではなく、ほんのりピンクが透けて見えるのがオシャレです。

右側のギリシャの風景も、空のブルーと街のホワイトやグレーの対比が美しいですね。空の色もムラなく均一に塗られており、画面全体に丁寧な仕事が行き届いています。奥の建物は白ではなくクリーム色に塗られているのも良いですね。こちらもしっかりと描いていながらも、見る側には制作時の苦労や努力を感じさせません。
作品からもスマートな印象を受けるであろう健一郎ですが、実はこちらが1つ質問したら向こうから3つ答えが返ってくるようなお喋り好きな一面もあります(そのギャップもまた魅力的でニクい奴…笑)次の作品も楽しみにしております。 

宝箱


上段左から 蒼惟 『好きなもの』中1 / 陽飛 『アフリカ』中2
下段左から 明日菜 『桃源郷』中1 / 七海 『サバキング』中1

毎年なのですが今年も寒暖差アレルギーでくしゃみが止まりません、ホノカです。
今回のブログも引き続き市美術展に出品した作品をご紹介します!
今回の彼らは好きなものをテーマとして描いたので、それぞれこだわりに溢れた作品になっていますよ!

蒼惟 ー 今にも狩りを完遂しそうな獰猛なトラといちごの可愛いらしさが、ちぐはぐな雰囲気で面白いですね!不透明水彩を生かしたしっかりした塗りも、トラの強さを引き立てていています。また手前側のトラやいちご、木はしっかり描き込み、奥側の森は遠近法を生かしたぼんやりした描き方にすることで、よりメインが分かりやすくなりメリハリのある絵になっています。それにしてもトラが狙っているのがいちごというのがいつも穏やかな蒼惟らしいですね!

陽飛 ー 目を引くのは黄土の大地、一目でそこはサバンナということが分かります。動物を描く作品は動物をメインに据えることが多いですが、こちらは引きの目線で描かれていて、サバンナの動物たちの生活を見るようです。ですが全体を見渡す構図ながらも動物の描写は細かく、模様やポーズ、表情も様々に描かれていることで引きの構図でも見応えのある作品になっています。陽飛は好奇心旺盛!という感じなので、色々な動物を描きたくこの構図にしたのでしょうか!?

明日菜 ー ネコ、スイーツ、沢山の本といかにも好きなもの集めました!!!と見ているこちらも楽しくなってくる作品ですね!こちらも不透明水彩を使用したものですが、蒼惟とは反対にふんわりとした繊細なタッチが柔らかい雰囲気に。手前側にはどっしりとした印象を受ける透明度の低い暗めの色の本があることで、動きのあるネコがより強調されています。明日菜はよくネコを描いているので、やはり可愛さのツボを捉えるのが上手いですね!ネコの体も絵の外側にもはみ出していることで、写真を撮っているときに入ってきてしまうネコが浮かびます。

七海 ー 思わず「どんな世界!?」と聞きたくなってしまうインパクト抜群の作品です。超巨大サバに食べられる蒸気機関車?でもサバは王冠を付けていて、まるでヒエラルキーの頂点にいるかのよう。そんな生命の臨場感溢れるシーンですが、機関車はおもちゃの様にポップな色合いで、もしかしたらミニチュアの世界なのかもしれません。また上部にある海のような空のような青が、もしかしたら水中の世界かも?と色々な想像を働かせてくれる楽しい作品です!七海はザ天然でぽや〜っとしている不思議な生徒なのですがそれが出まくりです。

以上市美術展に出品する作品たちの紹介でしたが、好きなものを描いていたのでこだわりも垣間見え、時間をかけた分いつも以上に色々な物が描けたのではないでしょうか?
私も学生クラスに在籍していた際に市美術展に向けて作品を制作していたのですが、その時はとにかく世の中や人に対して恨み辛みを述べていた時期で、作品がやけに暗かった記憶があります。なので今回のテーマで楽しそうに描いている彼らを見て、純粋に「羨ましいー!」となっていました。どんな絵を描きたいかはまず初めにぶつかる問題ですが、たまには好きなものを沢山詰め込んで描いてみるのも楽しいはずです!

曝け出してけ!


左から 千佳 『再生』中2 / 月咲 『ドバイ』中1 / 雪奈 『道』中2

寒すぎて冬用の服を引っ張り出しています、ナツメです!昨日に引き続き市美術展に出品した学生たちの作品を紹介します!!

まずは千佳の作品。奥まで延々と続いている階段や街灯など、浮遊感が不思議な空間ですね!背景や仮面も相まってファンタジー小説のワンシーンのような光景です。全体的な色味や後ろの光は暖かいですが、仮面から2人の表情が読み取れないからでしょうか、どこか切ないような気持ちにもなってきます。頭蓋骨を被った人が語りかけるように座っている狐面の人の肩を叩いているところを見ると、顔が見えずとも彼らなりのコミュニケーションの取り方があるのでしょうか。待っていた人を迎えに来たようにも去り際にも見えますが、真相はいかに!?

続いては月咲の作品。ドバイといえば高層ビルや高級リゾートが立ち並び活気に溢れているというイメージが強いですが、この絵では人が1人もおらずビルだけが立ち並ぶ閑散とした光景が描かれています。右上の色遣いが変えられている部分では画面が切り替わっているようにも見え、SFのような不思議な印象も受けますね。描かれているビルですが、もしすべてが直線でかっちりと描かれていたら整頓されすぎて近寄りがたい雰囲気のある絵になっていたと思います。しかしこの絵ではぴしっとした線を使わないことで、人を近づけさせるような魅力を出しています!

雪奈の作品はショッキングピンクが印象的ですね!ピンクと黒の組み合わせは画面が強烈になり安っぽくもなりがちなのですが、この作品では黒を3箇所に抑えてガツンと入れることでかっこいい画面にしています。写真だとわかりませんが絵の具の上からジェルメジュームという画材を使っているため、表面はツルツルしています!彩度の高いピンクと黒を使っている分、踏み出している足のくすみのある肌の色も映えていますね。足元だけを映す構図も大胆!タイトルは「道」ですが、果たしてどんな道なんでしょうか?進んだ先に何があるのか、どこへ一歩踏み出そうとしているのか見る人の想像も掻き立てられますね。

描いているモチーフや構図、色使いから塗り方まで全く違う3枚ですが、どれも自分が絵で表現したいことを明確に持っていることが感じられる作品です。絵を描くこと、特に自分の世界観を描くことは自分自身を曝け出す行為になります。取り繕ってもいい絵は描けませんし、それでも自分は絵に現れてしまいます。大人になっていくにつれて段々必要な勇気も増えてきますが、そんな抵抗も今回のように若いパワーでぶち破って今後もたくさんの表現をしてほしいですね!!