経験がモノを言う


左上 彩音 高1(うちの猫) / 右上 梨愛 中1(おばあちゃんちの犬)
下段 波那 中1(仲良しの家の犬)

昼間は暖かくても夜はめっきり涼しくなりましたね、ホノカです。
今回は学生クラスの生徒達の油絵をご紹介します!どの絵も彼女らの可愛がっている犬猫を描いたもので、その可愛らしさを絵に現そうという気持ちがひしひしと伝わってきますね。

彩音ー手を重ねて涼しげな顔をした佇まいが印象的な猫です。それだけだと冷たい印象になりそうですが、畳のように温かみのある背景が家でくつろぐ様子を効果的に表しています。また同じ焦茶の毛色も光の当たり方によって色が異なっていることで、絵の外からも光が差し込むような空間の立体感が感じられます。

梨愛ー腕の中に収まってしまうくらいの子犬が深い草むらの中にいるアンバランスさが目を引きます。背景の草むらの描き込みがシンプルで色味が抑えられている分、色味たっぷりに丁寧に描かれた子犬の毛並みがしつこくならずにまとまっていますね。油絵具は色を重ねることで色に深みが生まれるのが特徴ですが、子犬の影になっている部分も繊細に描かれることでしっかりと重みのある存在感があります。

波那ー元々は一枚の写真でしたがあえて二つに分割した作品に。片方だけでも完成して見えるように、また二つ並べても揃いの作品に見える様に色味や大きさのバランスを細かく調整していました。そして上の二人より鮮やかな色使いが爽やかで澄んだ空気をもたらしてくれるこの作品。思い切り入れられた白がその場所の明るさだけでなく、犬たちのボリューミーな毛をインパクトと共に目立たせていますね。

油絵の完成度は画力だけでなく、画材への慣れが非常に重要です。梨愛と波那は小学生クラスにいた際に油絵のカリキュラムを経験していた二人ですが、彩音は今回が初めての油絵だったため、経験者二人に比べ時間もかかり苦しんでいる場面もありました。慣れることで、油絵具の色の作り方や絵具を重ね理想の色に近づけていく楽しさを知ることができます。

乾くまでに時間がかかることや油絵具特有の匂いなど、家で油絵を描くのはハードルが高く思われますが、アトリエに通っていることを生かしてこれからもぜひチャレンジしてほしいと思います!(私自身小学生クラスの時油絵を持ち帰った際に家族から「油絵の匂いが臭い」と言われた記憶があるので、家で挑戦するのは控えています

優しい強さ


大澤 油彩 / 鉛筆デッサン

半袖パジャマも流石に寒くなってきました、ナツメです。水曜クラスの大澤さんの作品をご紹介します!油絵と人物のデッサンの3枚です。

油絵で描かれているのはどこかの海外でしょうか、暖かな光と優しいのどかな雰囲気に包まれたオープンテラスが魅力的な1枚です。ざらっとした粗さのある地面や張っているカフェのテントなど質感によって色の置き方やタッチが変えられているため、それぞれの表情が巧みに表現されていますね。椅子の影などの暗くなるところもグッと暗くしているのでしっかりと空間が存在しています!ものが多いとごちゃごちゃした画面になりがちなのですが大きな色分けでまとめてあるためとても見やすく、暖色の中にところどころ入っている青や緑色のアクセントなどの沢山の明るい色彩に散歩したくなるような心地よさを感じますね!

鉛筆デッサンではふんわり笑った笑顔が魅力的な3人の人物を描かれていますが、それぞれの特徴が抑えられていてその人が持つ空気感が伝わってきますね。左の絵は一番暗いところと一番明るいところの差が大きいため画面にメリハリがついていて力強い印象があり、右の女性と赤ちゃんの絵では背景も含めて全体的に色を置いているためしっとりとした優しい雰囲気になっています!明暗のつけ方もですが構図も対照的な2枚なので、並べて見ることでさらにお互いを引き立て合っているのも見どころです!

油絵とデッサン、一見かけ離れているように見えますがどちらも力強く、上の油絵紹介でも思わず散歩したくなります!と書いてしまうようなエネルギーが伝わってくる作品です!

深呼吸したくなる様な作品!


八木橋 左 油彩 / 右 透明水彩

ついに髪を切りました!一平です!本日は日曜クラスの八木橋さんの作品をご紹介します!朝日の中に佇む教会と地面に落ちたリンゴの2枚。どちらも派手な絵ではありませんが光が美しく、静かで力強い作品となっています。

まず、リンゴの方は人間に育てられたものというよりは、豊かな森などに実っており自然に落っこちた様な感じが見受けられますね。奥のリンゴから少しずつ腐っているのも時系列を感じられて面白いです。油絵の方にも共通する所ですが、参考にしていた写真よりも魅力的な色彩が素晴らしいです!緑をただ緑で描くのではなく、少し青や赤を混ぜていたりなど一部分を描くのに凄く手間をかけてらっしゃいました。僕も皆さんにいつも言っていますが、いざやろうとすると意外と魅力的な色が作れなくて結構大変なんですよね。八木橋さんはそんな色彩の勘所が非常に冴えております!

続きまして教会の作品。こちらもやはり光が素晴らしいですね。海や川などの水辺は光が反射しているのが視認できるので、意外と頑張れば描けるのですが、この作品の様に光を直接描けない、つまり光が視認しづらい風景でここまで空気感を演出できるとは八木橋さんの力量の底がしれません。家に落ちる木漏れ日などはありますが、それだけでは勿論光を感じさせることは難しい。ですが強く照らされている葉っぱと、コントラストで強く生まれる影の部分の葉っぱの差異。街の向こう側にそびえる朝日の中の山のなんとも言えない白んだ美しさが、朝の繊細な光を我々に感じさせているのです。光を当てるところにはしっかりと当て、影の部分にはしっかり暗さを与える。そんな光の基本はもちろん、光で遠い場所にある山なんだなと距離感まで伝わってしまうとはもう何も言う事はありませんね。こんな場所で朝を迎えたいと思うような素晴らしい空気感です。

どちらの作品もマイナスイオンが出ていますね、深呼吸したいです!

窓が大きくなりました

明日より10月14日まで、横浜「台湾×日本 漆交流展」に岩田先生が出品します。入場料も無料ですので、ぜひ皆様ご高覧ください。
 下記、美術館ホームページより抜粋
この一年は 家族の大切さ、人間としての生き方、生命の尊さ、動植物との共存の仕方など、あらためて考える良い年になったのではないかと思います。
漆は自然と人間を繋げ、自然の鼓動に包まれた、ゆったりとした心地よい時間を与えてくれます。脈々と繋がる漆の歴史の中で、新世代の作家は漆作品の創造において、伝統に囚われない表現を模索しています。漆も生きている、人間も共に成長していきます。
今回も台湾の漆作家も交え、創造的な交流が継続され、伝えられ、次世代への友情が育まれる展示になっております。

日時:(火)~(木)10:00~19:00(最終日17:00)
会場:FEI ART MUSEUM YOKOHAMA(横浜駅西口より徒歩6分)

オバラです。生徒の皆様はお気付きでしょうが、保護者様はアトリエに入室されない為ご存じないかと思いますので、ちょっとアピールさせてもらいます。
長引くコロナで、換気をもっと効率よくできないかと、4ヵ所の窓を写真下段のような窓に変えました。上下段分けて開くようになりました。ランダムに空けることができるので、暑い日も寒い日も室内の温度をそれほど変えずに換気できそうです。
また中からは見えませんが、外壁に大きなひさしを付けたので、風が強くても雨が中に入りません。これからは雨の日も窓を開けていられます。
まだ「安心して通学ください」と言える状況では決してございませんが、これからもできる限り善処していく所存です。教室の事で何か気になる事や、心配な事がございましたら、ご遠慮なくお申出ください。

気持ちがオーバーラップしていく


河内 油彩

秋の気配を感じます。岩田です。

本日は、土曜午前クラスの河内さんの作品をご紹介します。

こちらの作品、正しく私が住む鎌倉の海を思い起させるような一コマ。
卒業という日を迎えた解放感に溢れつつも、未来への希望と不安、まだ学生生活を名残惜しむ十代ならではの心の機微を感じさせます。

こちらの絵を見ていると自分自身の気持ちがその頃へとオーバーラップしていくと共に、描かれていない情景までもが目の前に広がっていく不思議。
鑑賞者にそうした思いを抱かせるのは、作者自身の心が作品中にしっかりと投影されている証であり、絵が持つ力というのはつくづく凄いものだと感心します。

シンプルな絵でありながら、中々難しいモチーフに溢れています。
靴、しかもローファーを通常こうした角度で見ることはあまりなく、その形状も複雑ということで、描くのにはかなり苦労していたと記憶しています。砂地の空間も見事に表現されており、ある意味河内作品の一つの集大成となりました。

河内さんはお引越しで今日が最後となりましたが、またお会いできるのを楽しみにしています!!

やめ時の見極め


西山 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは西山さんの作品です。いつもサラッと描いていつの間にか水貼りを剥がされているので、なかなか写真が撮れずブログアップを逃していましたが、この度ようやくチャンスに恵まれました!

絵画は中々やめ時を見極めるのが難しく、描きすぎるとかえって台無しになってしまう事もあります。水彩画は特にその傾向があり、絵の具を重ねすぎてしまうと色が濁ってしまいます。西山さんはミオスでもベテランで、長い間透明水彩に取り組まれているだけあり、そのやめ時がしっかり見極められていますね。どこを沢山描いて、どこをサラッと仕上げるか、その画面のバランスの取り方もお見事です。
例えば左の絵は、見所でもある小屋と近くの木は色を濃いめに乗せ、地面や背景は色を薄く滲ませて塗っています。サラッと塗っているだけでも、奥に木々がある事や平ではない地面の質感がよく伝わってきますね。これを11本すべてしっかり描たり、べったりと地面を隅まで塗ってしまうと、この空気感は損なわれてしまっていたでしょう。何より、絵の中で何が主役なのかがハッキリとしています。
また、右の絵も紙の白を残し方が非常に上手いですね!水面の煌めきや、少し雲がかかった空の様子などが紙の白という描いていない部分から伝わってきます。水の青色や奥の山々も色の滲みと感触がとても美しいですね。透明水彩の良さが引き出されています。川の流れる水音や、澄んだ空気の匂いまでも感じられるようです。奥にかかる橋の赤色も、自然物の柔らかい色合いの中でアクセントになっており、画面を引き締めてくれています。その橋の描写も、遠くにある物なのでハッキリと描きすぎず、けれど橋と分かる絶妙な描き込み具合になっていますね!

冒頭でいつもサラッと描いて、と書きましたが、サラッと描いて1枚の絵として完成させるまでに西山さんは何十枚も練習と下準備を重ねられています。本番よりも練習と下準備の方が長いくらいです。描くのにある程度慣れてきた方も、今一度西山さんのように1枚の絵の為に下準備に時間を掛けてみてはいかがでしょうか?

アトリエ探検隊報告書

日の入りがグッと早くなりましたね!ホノカです。
今回は先週のブログでお知らせしたように8月のカリキュラムである昆虫標本の製作をご紹介です!ナツメ先生も新たにブログを書いているのでこちらも合わせてどうぞ!

(ニス塗り乾かし中ーくしゃくしゃになった紙と無造作にいる感じがより昆虫感を増していますね…)

初めに製作したものはクワガタやチョウと言う同じ形でしたが、色には生徒それぞれの個性が溢れた作品になりました。そしてそれぞれの制作が終わった生徒から、オリジナルの昆虫を作り始めます!図鑑や標本を見ながら自分の力で紙に起こすもヨシ、クワガタやチョウの作り方を思い出しながらそれをベースにツノや羽のパーツを足していくもヨシ。更に普段の性格が出る作品が生み出され、一番カッコよく作れた昆虫でバトルしよう!と言う声も聞こえました。

また普段のカリキュラムでは机に向かって制作することがほとんどですが、今回は写真でも分かるように自由な場所に座って制作したので近くにいる友達に質問したり、少し遠くにいる人でも気になったら見に行く!と出来たので新しいアイデアも浮かびやすかったのではないでしょうか?その結果かいつも以上に活気が凄かった気がしますね!
さらに床にある誰かが使った紙の切れ端を使ってこの形は羽っぽくない?何個かかさねると鎧みたいになるなー!など紙の思わぬ使い道が発掘されていて、ここでも皆のアイデアマンさが光っていましたね。

昆虫制作は一見して簡単そうな工作ですが、その実、紙を無駄なく使う方法や左右対称に切る方法を学ぶことができます。さらに昆虫を立体にするために切り込みを入れたりしたこれらの知識は、今後どんな紙工作でも生かすことが出来るので、ぜひ忘れずにさまざまな活用方法を試してみてくださいね〜!

はなまる標本

ナツメです。アップが大変遅くなり申し訳ございません!
昨日は十五夜でしたが満月は見ましたか?中秋の明月が満月なのは
8年ぶりだそうですね。

先週に引き続き昆虫標本制作の紹介です。作り方はYouTubeホノカ先生のブログの記事で詳しく解説しているので是非見て下さいね!

はじめは真っ白だった一枚の画用紙がカラフルで多種多様な昆虫に変身していく様子は壮観でした。クワガタだったらアゴ、チョウだったらハネなどの特徴的なところを大きく強調して作ったため、一目見た時のインパクトも抜群です!

余った紙もドンドン使って脚やツノを増やしていたのですが、一見やりたい放題に見えても説明を聞くと、こっちは毒針でこっちは獲物を刺す用で用途が違うんだ!などと細かい設定までしっかりと決めていたのも印象的でした。

虫が苦手な身としては個人的には結構見たり触ったりするのに抵抗のある昆虫が多いのですが、世間にいるのがこんな昆虫ばっかりだったら触れる!むしろ好き!こんな昆虫だらけになって欲しいですが、実際にこれくらいカラフルで魅力的だとすぐ小学生に見つかって捕まっちゃいますね。

基本的な形は同じでも色を塗るとどの子が作ったのかがわかるくらい個性が溢れていて、もはや毎カリキュラム恒例になりつつありますがこどもたちの発想力に驚かされます。チョウの羽を色んな時間帯の空の色で塗り分けたり、体が変形するギミックを加えたオリジナル昆虫を作るなど、それぞれの中でどういう昆虫にしたいかのイメージが強かったからこそのこだわりも感じました。

超絶クオリティの標本、夏休みの工作の宿題もはなまる間違いなしでしょう!

鮮やかな街、モフモフの一匹


植松 油彩

微妙に忙しいです!一平です!本日は日曜クラスの植松さんの油絵をご紹介します!

カラフルな街並みの中に犬が1匹窓に前足をかけている様子が魅力的ですね。首輪をしているので誰かに飼われているのでしょうが、人を1人も描かずに犬だけを描いているのがなんだか不思議さを醸し出していて、建物の鮮やかな色も相まって童話の挿絵のような可愛らしい雰囲気があります。犬の毛束感や建物のパースなどの基礎は流石です!違和感なくしっかりと奥から続いて見えます。普段は風景画を描く事が多く、主にアースカラー(葉っぱや土、海など自然に由来する色)をよく使われていたような印象なのですが、今回は子供達が喜びそうなポップな色彩を使っていて普段の作品とはまた違う顔が見えています。そう考えてみると明らかに人工的なポップな色味なのに人がいないところがなんだか不思議に感じさせるのかもしれません!ここから作品の色幅が増えてより次の作品が魅力的なっていくのでしょう。また、地面の色味を落ち着かせる事で建物の彩度の高い色が綺麗に、より鮮やかに見えてきます。全てを派手にしてしまうのでは無い、鮮やかな色を引き立たせる為の絵の引き算の塩梅が素晴らしいです。実はここまでポップな色を鮮やかな色味を作り出すのに植松さん自身、かなり苦戦していたのですが、僕の「色混ぜない方が鮮やかな色になりやすいっすよ!!」みたいないい加減な言い方からここまでしっかりと絵を作り込まれていったので、やはり流石!と思ってしまいました。(小原先生にちゃんとしなさいって怒られてしまいそうですが)

何はともあれ色彩豊かにも関わらず、立体感もしっかりと見えてくる。それだけに留まらず、しっかりと毛を感じられる犬まで描かれていて絵全体のクオリティが素晴らしいです!