頭で考える絵

オバラです。「自分の顔なんだから、良く見て観察して、触りながら描きましょう」と言ったところで、子ども達は見たつもりにしかなりません。事前に「どのような特徴があるか」きちんとしつこく説明する必要があります。
まず最初に、一年生を私の隣に立たせ「さぁ、身長差は何センチだろう?」と測りました。
定規を見せながら、「おおー!50㎝も差があるよ!ちっさ!」などと馬鹿にして笑わせます。
次に「じゃあ、顔の大きさの違いはどのくらいだろうね?身長がこれだけ違うんだから、顔だってメチャクチャ小さいはず!」と縦の長さを測ります。「私24㎝だ。ええー!?一年生は22㎝!?噓でしょ?そんなはずないよ!大顔面じゃん!?もう一回測り直すよ。あれ?やっぱり2㎝しか違わない。」と、ここから赤ちゃんの頭と体の比率、子供と大人の比率、と順に絵に描いて説明していくと、頭は子供の時から異常に大きいことが判明しました。「大人と同じ身長で赤ちゃん描くと、湯婆場の坊みたいで気持ち悪いね。」と皆、興味津々。
「じゃあ、大人も子供も同じ顔なのかと思うよね?ノンノン、顔の中のパーツの位置が違うんだな!」と同じ縦長丸の中に、ギュッと下にパーツが寄ったイラスト・バランス良く配置したイラスト、2枚を描いて比べさせます。
「あ、なんか可愛い!」「赤ちゃんぽいね」「こっちは大人っぽい」「なんかイケメン」と、大きさではなく、バランスの違いで子供と大人を認識していることを確認させました。
こうなれば理解は早い。もちろん技術の差で似てる似てないは出て来ますが、頭で理解しているので低学年でも人物画として、かなり高度な技術が見られたように思います。なんとなく描かないで、よく考えて手を動かしているからでしょう。頭で描くのも楽しいですね!

雰囲気を作ることと描きこむこと


立野 油彩

岩田です。

本日は、土曜午前クラス立野さんの作品をご紹介します。

自身で撮影した画像を元に、一言では言い表せぬ雰囲気や佇まいがいつも独特で、どこか切なさのようなものを感じさせる美しい作品を生み出しています。今回は橋の欄干に等間隔で休む海鳥を主役に、雪舞う少し寒々しい情景を絵にしました。

がっつり派手な色を盛って、果たしてどんな絵にしたいのだろうと考えさせつつも、その最初のアプローチが秀逸で、アブストラクトペインティングのような様は、モチーフを具体的に描かねども既に成立している感を漂わせます。
それは絵を描くというより、先ずは油絵具という物質とキャンバスの上で戯れ、やり取りを楽しむという感覚であり、その行為が立野さんの頭の中に様々なアイデアや方向性を起草させる大事な事柄になっているんだと感じます。

立野さんの絵は、どちらかというとものを描いて見せるというより、絵の世界観を重視する作品と言えるでしょうが、今回は海鳥の中にも緻密な描写が入ってきており、雰囲気作りと描きこ込むことのバランスを意識しているのだと感じています。
相互のウイングを更に大きく開いていくことができれば、より深く広い作品へと昇華していくことでしょう。

正面?横顔?


 火曜クラス

大竹です。今回は小学生クラスの自画像完成後、集合写真を撮りましたのでご紹介させて頂きます。火曜クラスは撮影する間も無くダッシュで帰ってしまった高学年男子が多いので、少し少なく感じますね。(その逃げ足の速さを、制作にも生かして欲しい所)
手に掲げる自画像は、横顔と正面のどちらか上手く描けたと思う方を選んで貰いました。全体的に横顔の方が多い様ですね。真正面の顔というのは大人でも難しく、立体感を出しにくいものであります。(昔の肖像画も、少し斜めを向いていますね)横顔の方が形を掴みやすかったのか、はたまた自分の顔を正面から見つめるのは恥ずかしかったのか…なんにせよ、魅力的な作品が出来上がりましたね!


水曜クラス

こちらは水曜日クラス。途中「なんかゾンビみたいなトンデモない肌の色になっちゃった!」といったトラブル?がちょくちょく発生していたクラスでしたが、化粧をする様に改めて肌の色を塗り重ねて軌道修正し事なきを得ました。失敗したらしたで、修正方法を学べるので良しとします!
正面と横顔の2枚完成には間に合わなかった子は、1枚はデッサンでもOKにしました。線だけでもこれはこれで雰囲気がありますね!

理想の自分になりたい!

外に出る日に限って雨なので辛いです。ホノカです!小学生クラスの自画像も続々と新作が上がりブログのサムネイルも賑やかになってきています!

横顔はあらかじめ撮影した写真を見ながら描くので第三者視点でしっかり観察して描けますが、正面は鏡を見ながら描くので常に視点が変わってしまいがちです。ですが今回はこのような時勢ということで口や鼻を描くためにマスクを外す時は時間を決め、その時間内で描いたため集中して描けたのではないでしょうか。

前回の一平先生のブログでは自身が小学生の時は自画像が小っ恥ずかしいというお話もありましたが私もまさしくそうでした大学生になった今でこそ自分の顔を見ることには慣れましたが小学生の時は自身の顔をまじまじと見る機会など無かったので写真といえど(私の時は写真を見ながら描きました)自分と見つめ合うことは恥ずかしく、さらに自分の顔はもっと目が大きくて顔が小さくてなど邪念を抱き始めたら止まりません。ですがそこで自分の想像で描いてしまっては自画像とは言えないので、心を鬼にして私が小学生クラスの頃に受けた仕打ち()を思い出しながら自分に厳しく描いてもらいました!

その甲斐あってかどれも妥協の無いいい作品になっています!小学生のみんなは作品を持ち帰ったらしっかり親御さんに見せびらかしてくださいね?

 

ちなみに私が小学生の時に描いた自画像はこちらです。肌は白い方がいいとか目は大きくといったいった理想が見え隠れしていますね…今見ると懐かしさやら恥ずかしさで一周回って面白いです。

自画像はほぼアルバム!

暑くなってきましたね一平です!本日は小学生クラスの自画像をご紹介します!

ズラッと並ぶとかなり壮観ですね。僕としては1人も笑顔の絵がないのがかなりツボです。(作業中はあんなにゲラゲラ笑いながら描いてるくせにと思いながら今ブログを書いています)さて、こう見てみるとだいぶいい仕上がりでは?!という思いです。というのも肌や髪の毛、服の色を一色のベタ塗りで終わらせるなんて事はもちろん我々が絶対的に許さないのですが、そんな立体感を出すための技法以外の部分、言葉にするのが難しい「よく分からないけどなんだか良いな」と思わせる雰囲気をどの絵も纏っています。小説の表紙だったら手に取ってしまいそうなものや、そのまま次のページから絵本が始まりそうなものなどそれぞれに人に気にならせる魅力があります。

そして個人的に子供の頃の自画像は残しておいた方が良いと強く思います。というのも自分ではどんなに下手だと思っていても後で見返した時になんだかんだ笑えますし、僕の場合どんな形であっても父方、母方の両方の祖父母が大喜びで家に飾ってくれていたりといい思い出が結構残っているからです。そんな作品としても自分自身のアルバムとしても「子供の頃の自画像」というのはかなりいい媒体なのでは?!と思っていたりします。

余談ですが僕は小学生の頃自画像を描くのがかなり苦手でした。というのも自分の顔を鏡で見ながら描くというのがなんだか小っ恥ずかしいという感覚があったのでしょう。ですが今回のみんなの絵からはそんな感情は感じず素直な色彩で素晴らしい!小学生の頃の僕に突きつけてやりたいですね!

自分の肌の色は?

暑い日も増えてきましたね、ナツメです。

小学生の自画像について、先日も途中段階をご報告しましたが、今度はホノカ先生に引き続き完成形を紹介していきます!さて、着色された自画像はいかがでしょうか?初めの段階の鉛筆画とは打って変わって、グッと個性も増しましたね!

髪の毛には黒、肌色にはペールオレンジ、と絵の具のチューブから出した色をそのまま塗るのではなく、例えば髪の黒には青や茶色を混ぜることで単調な画面になるのを防ぎ、一枚一枚の表情もとても豊かになります。色合いに留まらず水の量を変えて濃淡を調節したり、同じ箇所でも筆の太さを変えて塗ってみたりなどの工夫も見られました。今回は特に自分の肌の色を絵の具で作るのに苦戦していて、作った色にどうしても納得のいかない子は、鏡に直接塗って映っている顔の色と比較していました。か、賢い

絵を描くときはつい目に見えるものを描きがちですが、今回自分をモチーフとすることで描く時の選択肢が増えたのではないでしょうか。写真のように一瞬で撮るようなものではなく、自分で時間をかけて描いたからこそ思い出深いものになったと思いますよ!

華やかさと素朴さと。


奥 油彩

心地よい気候が続きます。岩田です。

本日は、土曜日午前にいらっしゃっている奥さんの作品をご紹介致します。

奥さんの作品はルール無用。感覚的に色や形を自由に操るエンターテナーです。
静物も風景も、「これを描きたい!」というその時の衝動に非常に正直なのです。

今回は人を描いたものと動物のもの2点。どちらも幻想的且つ、見る者の想像を掻き立てる作品です。
描くにあたり、雑誌の切り抜きといった元ネタを常に眼前に掲げ描いつつも、目の前のそれとはまったく違う世界観を展開し、いつしか奥ワールドが画面から浮かび上がってくるのです。

アップした作品も絵の具というより、まるでクレヨンかチョークで描いたかと思うような質感を帯びていますね。
そのザラっとした何とも言えない絵肌から受ける印象は、華やかでありながらも屈託のない子供のような素朴さかもしれません。

そんな様々な要素を併せ持った奥さんの作品を是非実際にご覧になって下さい。

 

第44回 ヨコハマ日曜画家展
会期 2021年5月26日(水)~5月30日(日) 10時~18時 (最終日15:30時まで)
会場 横浜市民ギャラリー(横浜市西区宮崎町26-1)  入場無料

光の演出


加瀬 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、加瀬さんの油彩作品です。
ローマ法王に小さな女の子がキスをする瞬間を描いています。女の子の西洋人らしい薄い色素の肌からは血の赤色が透けており、子供の少し暖かい体温まで感じられます。光を受けるブロンドの髪からはふんわりと柔らかな質感が表現されており、触ったときの感触まで伝わってきそうです。金髪を表現する為に、ただ黄色を塗るのではなく、こげ茶や緑・黄土色など暗い色をふんだんに使う事で、光の当たった部分をより明るく見せています。洋服の青色も画面に心地よい安定を与えていますね。画面全体の雰囲気にあった美しい青色だと思います。丸みを帯びた横顔の輪郭、目や耳などのパーツの大きさと位置も何度も修正を重ねる事により、大人とは違った子供らしい形を作り出しています。
法王の俯いた顔も少し難しい角度だったと思いますが、こちらもしっかりと顔の立体感を感じられる仕上がりとなっていますね。肌の色の深みも、歳を重ねた大人の質感となっており幼い女の子と対比になっています。暗い影になっている中で、額や鼻、頬に明るい色を入れる事で強い明暗のコントラストが鑑賞者の目を引きます。
背景はほぼ黒に塗りつぶし、主役の二人に当たる光をより強調させる事でドラマチックな画面となっています。主役やテーマを際立たせる為にどのような演出が必要なのかを考える事は、物を正しく描写するのと同等に重要になってきます。背景やライティングなどは主役を演出する上で、特に影響が大きい要素だと思います。映画のワンシーンを参考にしたり、好きな作家の作品を資料として用意して置くとイメージも掴みやすくなりますよ!

作品制作の際は、皆さんそれぞれ自分の課題や悩みがあるかと思います。それに苦心し、落ち込むことも少なくはないでしょう。しかし、課題があるという事は、言い換えれば成長の伸び代があるという事になります。制作の上での悩みは、一歩前に進むためのチャンスと思って取り組めば、苦しみも少しは和らぐのではないでしょうか。我々講師も、制作上の悩みを解決する手助けをさせて頂く為におりますのでいつでも遠慮なくご相談下さい。

今だけの自分

運動会シーズンなのか外で体操服の学生を見る機会が増えました、ホノカです!
今回は小学生クラスにて自画像が続々と完成しているのでご紹介させていただきます。先日のノリ先生の自画像が載っているブログナツメ先生のブログでは鉛筆での下書きの様子が紹介されているのでぜひそちらも合わせてどうぞ!

まずは画用紙に自分と同じ大きさの顔をにらめっこしながら描いていきます。そして下書きを完成させたらいよいよ絵の具で色をつけていきますが、肌はペールオレンジをチューブから出したまま使うのではなく赤・黄・白を混ぜて自身の肌の色に近くなるよう調整。また首の下や耳の中など影になっている部分は、黒の絵具で塗りたくなる気持ちを抑えて緑や青の色を使い自然な色にしていきましょう。緑や青は肌に透ける血管の色でもあるのでこれによって影が模様のように浮いてしまうことを防ぎます。

鉛筆だけの状態ではまだ似ていない〜という声も多く聞こえましたが、色をつけることでグッと本人らしさが出てきましたね!また色を塗る筆さばきにも本人の性格が表れています。普段からよく喋っている子は塗りも大胆で元気さが滲んでいて、いつも綺麗な姿勢で椅子に座っている子は鉛筆の線に忠実に塗る丁寧さがありました。意外にも高学年の子は普段おちゃらけていても丁寧な塗りしていたりとギャップも垣間見えました!

そして髪を塗る時も横向きに描くのではなく頭のてっぺんから生えている様に描く、上唇は影になっているので下唇より少しだけ暗くする、瞳や鼻の頭や唇は濡れているようにするため白い絵の具でハイライトを入れてあげて自画像の完成です。

自画像はその時の自分がその時の自分の顔を見ながら描くので時が立ってしまうと同じモチーフを描くことは出来ず、今しか描けない絵です。なので少し経ってから完成したものを見てみるとその時の自分自身の見え方がわかって面白いですよ!

自分の中のアツイものを探そう!


健一郎 高2 左/パステル  右/透明水彩  どちらも模写

ジメジメしてきましたね一平です!本日は火曜学生クラスの健一郎のパステル画と透明水彩画をご紹介します!

水辺の美しい街の風景と異国情緒溢れる商店街のような空間の2枚ですが、まず僕が久しぶりに健一郎の絵を見た感想として「めちゃくちゃ上手くなってる!」というの素直な感想と「もう高2?!」という親戚のおじさんマインドの2つです…。時の流れの速さ…。
さて、元々勉強がかなり出来る彼ですが、やはり勉強が出来る人は絵が上手くなるスピードもとても早いですね。
ボートや奥に見える街並みが水面に反射している様であったり、商店街のパースの捉え方など、かなりのレベルで描写されています。
左の絵の水面をただ青だけで描くのではなく、映り込んでいる草や建物の色味を加える事で、より深みのある色彩になっています。手前の方が水面などで大きく面積を取ると絵がスカスカに見えてしまいがちですがそんな危険なところもしっかりと自分でカバーできています。
右の商店街の絵は、左の絵と比べるとぱっと見あまり色がないように見えますが、全然物足りなくありません。キチンと塗っているところとあえて塗らない部分のバランスがとても上手いですね。

さらに素晴らしいのがテクニックがドンドン身に付いていっているのはもちろんのことですが、小手先ではなくその場の流れている空気感、文化、生活を感じること。ただ上手いだけでは出せない味が出ています。

と、ここまでベタ褒めでしたが、立体作品でも水彩でもなんでもそつなくこなす健一郎には、何か自分が狂うほど好きなもの、これだけは誰にも負けないというアツいものを見つけ、それを自分の今まで培ってきたもので表現して欲しいです!そうすると自分の絵の描き方だけじゃなく、身の回りのものや人の見え方が変わってきますよ〜!