進化するミオス遠足

満開の桜咲く3月のパーフェクトデイ、小学生を連れて僕らは遠足に出たのでありました。(南澤)

目的地は動物園と美術館。もちろん、絵描きまくり&鑑賞しまくりを目論む美術学校ならではの文化的遠足であります。
それにしても、晴れ渡る春の日差しに満開の桜。言うこと無しのご機嫌な陽気に足取りも軽い出発です。
さて何度か参加させていただいているミオスの遠足ですが、年々完成度があがっているようです。まず児童3~4人ずつに割り当てられた、中学生から高校生のミオス在籍者による小隊長システム。先生達はその何組かを統括するだけでよいのですから、もう満州帝国の関東軍顔負けの組織力です。横浜の街を士気高く行進して、たどり着いたのが、最初の目的地、野毛山公園。

この陽気と桜のせいでしょう、かなりの混雑。記念撮影ポイントも、海兵隊の上陸作戦を彷彿とさせる奪い合いです。(写真はミオス師団)
お絵描きのほうはといえば、(ゴージャスな虎とかライオン描きたいタイプ班)と(ワニとか爬虫類好きのタイプ班)に分かれて行なわれました。
僕はライオン組に参加いたしましたが、肝心のライオン君は気候にやられたのか情緒不安定で、モデルには失格。ここではオバラ師団長の迅速な英断により、(でもホントはキリンとかフラミンゴみたいな優しい動物と触れ合いたかったタイプ班)に衣替えして事なきを得るのでありました。

お絵描き中、実にいろいろな団体とも遭遇いたしました。揃いのバンダナも可愛い(子ども英会話学校チーム)なんてのもキリンを囲んでおりましたが、最前線で強力な陣地を形成している我が師団の前に、戦意喪失気味に退散してゆきました。ご免あそばせ~です。
それにしても、満開の桜を背景に闊歩するキリンの姿は、どことなくシュールな趣きで悪くありません。

絵の内容のほうは続く先生方にお譲りするとして、次はお待ちかねの昼ご飯を食べに、園外の原っぱへ。
恒例の食後のおやつ交換では、「タカミ先生にはこれだろうなーと思って」と女生徒に羊羹を渡されますw 駄菓子にいささか閉口気味であった僕は涙を流しました。
さて通常ですと、ここで恒例の「地獄のフィジカル消耗作戦」で騒ぐ生徒の生気を一網打尽にしてからの美術館鑑賞なのですが、都合の良いことに、ここから向かう横浜美術館へはかなりの道のり。街中を強行行軍することで其れに換えました。一石二鳥、ここも進化しております。

美術館では、気鋭現代美術家石田尚志による大規模個展を鑑賞です。僕は思わず解説も放り投げて作品鑑賞に没頭してしまいました。複雑な線や陰の織りなす映像作品群はとても美しく、前回の地味な木版画に比べて子供達にも刺激になったのではないかと思われます。ちゃんと引率してくれた小隊長さん達に感謝!

すべての目的を終え、帰路につく頃でも学生ボランティア達の奮闘は続きます。子供達の話題や悪戯にも上手に対処している彼らの成長ぶりを観ていると、調子のわるい児童をおぶっているはずの僕の足取りも、なんだか行きよりも軽くなったような気がするのが不思議な春うららな一日なのでありましたー。

美大受験ガイダンス

美術系に進学を希望している学生や親御様向けに、美大受験についてのガイダンスを行いました。
20名もの方にご参加頂き、お忙しい中お時間を頂けましたこと、心より御礼申し上げます。
次にお詫びです。参加お申し込みされずに当日直接おいで頂いた方が数人いらっしゃり、予備の資料が足りなくなって私達講師の分を差し上げた為、実はかなりアバウトな進行になってしまいました。期待されていたことが聞けずに無駄な時間を過ごされたと感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか?心よりお詫び申し上げます。
言い忘れてしまいました。『美術系の専門学校は桑沢以外はお勧めしません。(一般大学の中の美術学部や、五美術大学に入らない美術大学もあまり…)』上京したいだけ、お遊び程度に絵が好きなだけ、という学生が多くそういう類の人間と一緒にいると、志が低くなっていきます。「人気のある先生は課題を出さない先生」と平気で口にするような学友の中では切磋琢磨は期待できません。

しかし進行表がなかったからこそ私達の本音が出てきたと申しますか、絵画教室でありながら美術系進学を推奨しないということが伝わったのではないかと思います。普通の予備校なら「美術は楽しいからぜひうちの研究所に入って一緒に頑張ろう!」となるでしょうが、それは目先の楽しさで惑わし厳しい現実を見せない卑怯な商売の仕方ではないかと疑問を感じます。

ガイダンスで展示していたデッサンや着彩・デザインは、どれも講師陣の受験生時代の作品でした。美大受験予備校に入り、学校帰りに毎日通い、何百枚も練習に練習を重ねてようやくたどり着いた作品です。「合格」という結果を出すため、朝から晩まで”趣味”ではなく”仕事”に近い感覚で絵と向き合う毎日です。努力しても結果が出なければ、それは努力のうちに入らないと言われ、報われない事の多い世界です。正解が不透明な土俵で勝負するにはそれ相応の覚悟が必要です。それを背負って生きていけるかを伝えたかったのが、ご理解頂けていれば幸いです。

しかしガイダンスを通して、受験や将来について希望のあるような話では無かったのは非常に申し訳なく感じておりますが、絵を描くことが勉強・絵を描くことが仕事というのは、どんなに幸せなことでしょうか。数学の問題集に五時間向かい合うより、画用紙の前で黙々と描き続ける五時間の方が、よっぽど楽しいと思います。美大受験を志す皆には、自分がどれだけ恵まれた環境にいるのか辛い時に思い出し、また学費が高いのに反比例して将来性は低い美術などに大枚をはたいて応援してくれる親御さんに感謝してほしいと思います。
世の中に、自分の好きなことをしてお金をもらっている人が何人いるでしょうか?楽しくて大好きな美術でお金をもらえ、他人から尊敬される幸せは、何物にも代えがたいことです。自分がデザインしたものがこの世に製品として出た時は、全ての苦労がチャラになる瞬間です。何度味わっても興奮する麻薬のような魅力です。そんな楽しい経験をする為に、限界まで頑張ってみる価値があるとは思いませんか?
もしも話を聞いた生徒の中に「覚悟を決めて、美術の道に進みたい」という人がれば、その際は講師陣が全力でバックアップをしたいと思います。受験生本人でも親御様でも、受験について質問があれば随時お答えしますので、どうぞいつでもご質問いただければと思います。

田中幸介 小原京美

訪れたことのない風景

 大澤 油彩

こちらの作品は水曜夜間クラスの大澤さんが旅行されたベルギーの風景ですが、大澤さんが撮られた写真ではなく、新聞から切り抜いた写真を元に制作されました。
少々季節外れの完成になってしまいましたが、秋になりつつある川べりの風景を楽しみながらそぞろ歩く恋人達が、夕暮れ時の日差しに照らされている絵です。
それにしても素敵な風景ですね。秋の紅葉の中で恋人同士が寄り添っているなんて演出もバッチリです。まさに「絵」にするには申し分ない写真です!
真ん中に流れる川の表情にまず目が惹かれます。日差しを浴びて川面がキラキラ光っているところなどとても巧みに表現されています。
橋の影が投影されている部分を見ても絶妙な色合いで描かれています。結構川や海って描こうとすると難しいんですよね。何かが反射している水面と水中が透けて見えているところ。その辺りの描き分けが水を描く上でのポイントとなりますが大澤さんとても的確に表現されていると思います。川のちょっと淀んだ感じも上手いです!

斜め上から俯瞰している風景なので掴みづらいところもありますが建物、地面といった関係が少しままなら無いところがありますね。静物などでもそうですが平らな面にものが置かれている状態を正確に表現することはとても重要です。セットしたモチーフであれば自分でその状況を把握しているものですがこうした写真を絵にする場合、描いている場所が行ったことの無い場所であることも多いです。
例えば今回の絵で言えば、橋とそのたもとにある建物の関係がちょっと近すぎるのかな?といった印象を受けます。こちら側と橋を挟んだ向こう側の繋がりが更に自然になってくると絵にも安定感がでてくると思います。

とは言え、自分が訪れたことのない風景を絵にするのは色々な想像力も働き、とても面白いものですよね。描く前にちょっとだけその写真を良く観察してそこがどういう状況になっているのか出来るだけ客観的に理解することが出来ると良いかもしれません。

岩田でした。

木漏れ日のロープウェイ

出町 パステル

暖かくなり、道行く人の格好も軽装になってきました。

本日ご紹介するのは日曜大人クラスより出町さんのパステル画です。出町さんは今回、奥多摩湖ロープウェイのみとうさんぐち駅という廃墟を描かれました。この駅は、廃墟マニアにはたまらない場所の一つのようです。私は知らなかったのですが、出町さんに写真を見せていただいて廃墟好きとしてグッときました。昭和30年代に運営されていたロープウェイらしいのですが、時を経て朽ち果てた建物や道具が木漏れ日に照らされてなんとも美しいのです。

そんな題材ですので、今回はカラメルで茶の下地を作り、その上にパステルをのせていきました。カラメルの滲みやムラが味を出しています。その御蔭で廃墟のノスタルジックな感じがより感じられる画面になったと思います。

木漏れ日の光も白いパステルでのせて美しく光っています。ほぼセピアの同系色で描かれましたが、影と光の表現が豊かで、時間の流れを感じさせる美しい一枚に仕上がりましたね。

こんな場所に立って、在りし日に想いを馳せながらぼーっとしてみたいものです…。と浸ってしまいました、庄司でした。

参加してきました


幼児クラス 現学年最後のお絵描き
上段:年長児
下段:年少児

今日は作品紹介ではなく私個人的な内容です。
先月今月と幼児美術教育の造形ワークショップに参加してきました。
ミオスのスタッフになって何年も経ちますが、久々に外部研修に参加して新たな刺激を受けてきたところです。
参加した研修では、普段講師であるはずの自分がその日ばかりは制作する側の幼児になりきって造形活動をするという内容。

例えば、10メートル四方もありそうな模造紙の上を大勢で裸足になって絵の具でお絵描きする
小麦粉粘土を作る時に足で粘土を踏みつけて材料を混ぜてみる
幼稚園生が画用紙1枚渡されてクレヨンでお絵描きする時に経験する解放感と緊張感を体感するなど、制作内容としてはいろいろとありましたが、どれも絵を描く・ものを作ることを教えることの指導というよりは、もっと大切な役割が美術教室にはあることを考えさせられる体験でした。
もちろん授業では、技術的な指導やものづくりの楽しさを伝えることも大切な事です。
ミオス講師陣の間でも常日頃話していることですが、こども達が生きていく為に重要な自分で物事を解決していく柔軟な心を育むことがミオスのお役目であると再確認したワークショップでした。
作品を制作する過程でどのような考えがあってどう進行していったか、親御さんは完成した作品からはなかなか汲み取れないので、授業中のエピソードや成長の様子など幼児クラスでは随時講評時間にお伝えしていければと思います。

伊藤絵里

はじめまして。


他の先生方も何度かアップされているので、もう皆さんご存知かとは思いますが、小学生クラスのカリキュラム、絵本と紙粘土工作[水曜クラスver.]でございます!
と、その前に。
みなさんはじめまして。
現在水曜日の午前大人クラス、幼児クラス、小学生クラス、夜間大人クラスを担当させていただいております、磯辺弥月(いそべみつき)と申します。
この春、多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻を卒業して、ミオスには1月からお世話になっております。
まだまだ至らない点が多いかと思いますが、よろしくお願いいたします。
私の詳しい自己紹介は今後小出しにしていくとして、作品の紹介に移りたいと思います!

上の画像が男子の作品、下の画像が女子の作品をあつめたものとなっています。
おおまかに分類すると、ロマン派とファンタジー派、といった感じでしょうか(笑)
色使いなんかも、なんとなく男子はピンクを、女子はグレーを使わない傾向があるのかな?といったように分けて撮影することで、いろいろ見えてきて面白いなと思いました。
さて、ここからは私の気になっちゃった5作品を絵本とともにピックアップして、紹介していきたいと思います!


まずはこちらの画像の左の作品。そうです。りんごです。
りんご人間になってしまった自分、森で暮らしていると、怪物たちに食べられそうになってしまいます。
さあ大変!しかし、最後はなんと巨大化して、怪物たちはびっくり仰天!間一髪なのでありました。
という物語。
紙粘土は巨大化したシーンの自分。顔も手足も真っ赤っか!それだけでもうインパクトがありますね。
集合写真の中でも、ひときわ存在感を放っております。
 
続いて真ん中の作品。
スキーをしていたら、悪い人にうしろから突き飛ばされてごろごろごろ・・・最後には雪だるまになってしまう。という物語です。
この画像の左のページが裏表紙で、右ページが表紙になっているんですが、注目したのはこの表紙。
スキーをしてるところをなにもみないで描くだけでも結構難しいものだと思うのですが、それに加えてこの構図、躍動感!
しっかりと描き込まれていて目を奪われました。

そして右の作品。
墓場から恐竜の骨がよみがえり、それを武士の自分が退治すると、骨の中から小判がざっくざく!なんてこったい!
紙粘土の方は、ちょうど小判が出てきているシーンです。
恐竜の骨から小判という発想はなかなか斬新でした。

最後にこちらの2つの作品。最後といいながら2つあります。
まず、右の作品。これはしんのすけという名前のわんちゃんに小屋を造ってあげている自分。最後に小屋は見事に完成するのですが・・・
なりたい職業でも、空想の世界の自分でもなんでもいいよ!という中、小屋を造る自分。
ピピーンときました。しかもこの作品、絵本のなかでは描かれていないのですが、紙粘土の方ではなんと、わんちゃんのごはんまでつくってあるんです。
このキングオブザ現実世界な作品。つい、何度もみてしまう魅力を持っています・・・。

そして本当のラストを飾るのは左の作品。
実はこれ、ブログを書くことが決まったときからずっとアップしたいと思っていた作品です。
小原先生も、この作品が一番好きなのだとか!
アイスクリームやさんになった自分が、アイスが好きすぎてどんどんどんどん積み上げてしまう。すると、宇宙まで届いてしまい、宇宙人たちが発見!アイスをぱくぱく食べながらついに地球までおりてきてしまった宇宙人と仲良くなって、めでたしめでたし☆
という物語です。
まずこの絵からはみでんばかりのアイスクリーム(はみでてますね)。たいへんカラフルに塗られております。書いている途中ずっとにこにこしながら「これね、いろんな色ぬれてたのしいんだけどすっっごくたいへんなの!」と話してくれました。
そして宇宙まで届かせてしまうストーリー展開。紙粘土でも、物理的に可能な限りアイスを積み上げております。
とことんやりきる魂のとっても魅力的な作品に仕上がりました。

・・・と、こんなかんじで初めてブログに挑戦してみましたがいかがでしたでしょうか?
みなさま、これからよろしくお願いいたします。

磯辺

作り込むこと


先週の安本先生の記事から引き続き、木曜日小学生クラス・後編です!

自分で考えた起承転結のストーリーに基づき、立体作品に落とし込んだこの課題。
自分でマンガは描いてみても、それを元にフィギュアを製作するところまではなかなか至らないはず!
とても貴重な体験です。


低学年は、画家になって東京タワーを描いている明るい作品もあれば、真逆のホラー作品もありましたが、ホラー作品でも最後にはお化けと友達になったりと、オチは楽しい気分で見ることができる作品が多くありました!
おどろおどろしい作品を作ってみてもカラッとした明るさが出てしまうのは、やはり描き手の人柄でしょう。みんなハイテンションで描いたのがバレバレですね!
中学年は、宇宙を題材にしたものや、先生や家族を巻き込むコメディ作品など、全体的に明るいお話が中心でした。お話のドタバタさのおかげで、生き生きとしたポージングの作品が出来上がりました!(躍動感溢れるポーズであるが故に、奇跡のバランスで自立しているものもあり…講師陣は泣きました)
高学年では、人をキノコに変えてしまったり、殺人鬼になってしまったりと、過激でミステリアスな作品や、未来でテニスをするというエキサイティングなお話など、バラエティに富んだ作品が並びました!
中でも食べられたアイス(自分)が腹を突き破り弾け出てくるお話には、驚くよりも先に最高にロックな発想に感動しました。立体にするとなおインパクトが増し、見応えのあるフィギュアに昇華できました。

今回、起承転結のお話を完成させてから製作したため、フィギュアの表情や動きに味が出て、とても楽しい作品が出来上がりました。
バックストーリーを「作り込んでから」立体にかかるという所がミソですね!
この課題に限ったことではなく、みんなに作品一つ一つを作り込む大切さを教えていけるよう精進していきたいと思います!

菅原

思春期って感じです。


火曜学生クラス ペン/パステル画

どうも幸介です!小学生クラスの1月の課題は、起承転結の絵でした。『せっかく見本もあるんだし、学生クラスでもやろう!』ということで中高生達も「動きのある人物」をテーマに、ペン画を描いています。もともと中高生ぐらいはイラストが好きな生徒も多いですし、けっこうノリノリでみんな描いています。

小学生に比べて中高生にもなると、ちょっとダークな(グロい・キモい)モチーフを描きたがるのは何故なんでしょうか。不思議ですね。火曜クラスでも、男子女子に関わらず、壊れたものや生と死に関係するようなモチーフが目立ちます。クロッキー帳にも、ガイコツとかガスマスクとか脳みそとか、そんなのを描いているようですね!まさに思春期って感じです!!

そして小学生との違いは、なんと言っても「ストーリーよりも見た目重視!」ということ!小学生達は設定や面白いお話を考え、空想することを楽しんで制作しているようでしたが、学生達は『この色を使いたい』とか『今こういうモチーフにハマってるから描きたい』とか、ビジュアル面先行で制作は進んでいきます。

イラストというと、どうしてもデッサンや油彩に比べて低俗っぽいイメージもあるかと思います。実際、他の芸術活動に比べて敷居は低いです。しかし、デッサンやデザインセンス・油彩やファインアートの技術をダイレクトに落としこめるのがイラストレーションの良いところ。学生の皆には、手軽なイラストで満足せず、しっかりと作品として仕上がったイラストを描いて欲しいと思いました!!

田中幸介

スキロス島風景

 矢作 油彩

土曜・大人クラス担当の京谷です。春分も過ぎ、これからまさに花盛りの季節となりますね。とはいえ、花粉症でお悩みの方々も多く見受けられます。どうぞいましばらく辛抱、お大事にしてくださいませ。

さて、今回は私の担当曜日でないのでなかなかお会いできない方なのですが、昨年の展覧会のおり、その力強い表現で一際注目を集めていらしたこちらの狼の油絵の作者、矢作さんの近作をご紹介したいと思います。今回の作品は、狼の鋭い迫力のある眼差しを描かれた時とは全く違って、光に満ち、ゆったりとした自然のなかで二頭の馬が佇み、また草を食む、本当に美しい風景画です。モチーフは、小原先生が以前に旅行したギリシャのスキロス島-アトリエ・ミオスの名前の由来ともなった『アルテ・ミオス教会(ギリシャ語のスペルはアトリエ・ミオスとほぼ一緒)』という、山奥の天然の洞窟に聖人を奉ってある教会(祠?)がある、人口3,000人の島-の写真なのだそうです。人口より家畜の方が数が多く、観光客は全く来ないのどかな島だとのこと。描かれた馬たちの、この堂々たる無防備感にも頷けますね。アトリエにて実際の作品を拝見いたしましたが、矢作さんの色彩感覚の素晴らしさ、センスの良さを特に感じました。筆のタッチなどは印象派を彷彿とさせますね。遠景の山並みや地中海地方独特の乾いた陽光が降り注ぐ石灰岩を多く含む大地の煌めきや、赤毛と白馬、全ての色に艶があり、ハーモニーを奏でています。隣り合う色と色、色面同士が呼応し合って、それぞれに高め合っている・・・ちょっと抽象的な表現になってしまいましたね。例えば、複数の色が重なり合って作り出された遠景の山並みの色彩に、赤毛馬の「赤茶色」の肌合いがぴったりマッチしているところ。その赤毛馬が中景・近景を橋渡しして、地面のベージュと淡いペパーミントへと続きますが、手前の白馬の「白」が、絶妙な配置で画面全体を引き締めています。大変バランスの良い構図であり、「ホッとするような安心感」を感じます。オリジナルはお写真ですので一度切り取られた風景なのに、矢作さんの作品には窮屈さがなく、むしろ描かれた空間に広がりを感じるのです。

矢作さんの作品を拝見してから、私も行ってみたくなりました。アルテ・ミオス教会のある、スキロス島!

色づく木々と花

長沼 油彩

落としてしまった時計がひょんなところから見つかり、拾ってくださった方に感謝感激…な庄司です。

本日ご紹介するのは水曜午前大人クラスより、長沼さんの油彩画2作品です。長沼さんは精力的に油絵に取り組んでおり、製作ペースも早いので2作品同時にご紹介しますね。

まず上の作品が今週完成した一枚です。三ツ池公園の黄葉綺麗な景色を描かれました。今回のメインは水に映った景色。水面の表現は苦心して描いただけあります!長沼さんは以前にも水面には挑戦されていましたが、それらの作品と比べてみるとかなりの差があり、腕を上げられたなぁと唸ってしまいます。実像の方の木々もナイフで払うようにのせたり、点々とのせたりとタッチを使いこなしています。また背景の省略が素晴らしく、御本人はたまたまうまくいっただけよとおっしゃっていましたが、今までの成果がこっそりと現れている箇所のように感じます。

そして下の作品が前作。暗いバックにクチナシの花を描かれました。花の数や位置も気を配り、白い花の中にも沢山の色があることに注目して、黄味がかった白やピンクを混ぜたり…と、色々な白を作りました。白い花はとても難しいですが、よくぞここまで描き切った!というくらい素晴らしい出来ではないでしょうか。緑の色やバックの赤紫も白い花を引き立てています。サインも遊び心が感じられ、堂々とした一枚です!

こうしてみても、どちらも力作ですね!長沼さんの作品に取り組む姿勢は真摯そのもので、いつも同じクラスの仲間の生徒さんたちを楽しく盛り上げつつ、ご自身の作品作りも手を抜かない、素晴らしいことと存じます!これからの作品がますます楽しみになりますね。