今回ご紹介しますのは土曜日午前クラスに通われています松尾さんの油彩です。
松尾さんの作品は比較的、物語り性を帯びた作品(前作・前々作)が多いですが今回もそんな物語りの一部を切り取ったかのような美しい情景を描かれました。
この作品は、女性が合掌造りの建物の屋根裏に鎮座している聖母像を拝んでいるというシーンを描いたものですがこういったモチーフを選ぶのも松尾さんならではです。
主に女性を主役に画面を構成することの多い松尾さんですがその作品に登場する女性達はどこか影を感じるといった印象が強いです。こちらの作品の女性も何かを切に願う後ろ姿に哀愁を感じますね。そういった意味でも松尾さんの描く女性には見ている側が想像をかき立てられる魅力があります。
今回の作品に於いて私が今までの作品と比べて良くなったと感じたところは色使いです。私が見る限り、前回までの作品はどちらかというと絵具の生っぽい色が多いと感じていましたが特に今回、建物に使っている色の工夫が大変良い効果を上げているのです。一見すると茶系の色で統一された室内ですが古びた屋根裏の木材の質感を出す為に実に様々な色を使っているのです。近くで絵を見るとそれらの色は若干浮いているように感じるのですが遠くで離れて見た時に色同士が混然一体となって美しい色調で目に飛び込んできます。
そして今回私が感心したのは何と言っても作品に対しての作者の姿勢です。こちらの作品、制作期間は半年以上掛かっています。その間ご自分のペースで地道に描かれていました。今までの作品に比べると画面が大きいということもあるのですがやはりその真摯な姿勢というか作品を長い時間を掛けてコツコツと描かれていくその胆力というか、中々真似のできるものでは無いと感じてしまいます。それだけ一枚の作品に対しての思いや愛情を人一倍持っていらっしゃるのでしょう。
何でもスピードが求められる反面、色んなものが薄っぺらくなってしまったと感じる世の中ですが松尾さんのようにじっくり一枚の作品と対峙し、納得のいくまで描き切るということは素晴らしいことだと思います。
