全てはそこにあるように

Abikokun安彦文平 『自然への感謝』 2010 ホキ美術館蔵

オバラです。大人クラスの佐藤さんと神宮さんから「二人でホキ美術館行って来ました。すっごくよかったですよ!武蔵小杉からJR横須賀・総武線・上総一ノ宮行なら直通で1時間半くらいで行けちゃうし、土気駅からは歩いて15分くらいです。先生もぜひ行ってみて下さい!私たちが行った時は館長の保木さんも入り口にいらして、挨拶してきちゃいましたよ!」と絶賛されたので早く行こうと思っていたら、芸大で非常勤講師をやっている友人の作品も土曜日から飾られていると連絡を受け早速行って来ました。
作品もすばらしかったですが、美術館もステキでした。自然光を取り入れた明るい部屋や、空中に浮いている階段や、真っ黒な部屋、森が見える大きな窓など、居心地がいい優雅な時間が過ごせます。地方の美術館は大抵あまり大きくなく、贅沢な作りが施してありいいですね。
ため息のでるような作品たちは、もう見て頂くほうがいいので語りませんが、よく写真家が「このショットを撮影する為に何時間も待った」など言いますが、画家がこつこつと緻密につくりあげた作品は、何十日も掛かっています。カメラマンがチャンスを待つのも大変ですが、画家が時間を積み重ねる努力はまたすさまじく、労いたくなりました。

写実画について…芸術とは方向性の問題であって優劣のあるものではないので、写実だから最も優れているという訳ではなく、精密さにおいての方向性が強い作品であると言えます。写真のようにリアルに表現する手段を、画材の発明や透視図法などの技法の開発、理論を追求してきた歴史があります。

スプリンター!!

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田邉 日本画

どうも幸介です!!本日は大人クラスより作品をご紹介。今年の月曜大人クラスは、年始とともに日本画を開始した生徒さんが多数いらっしゃいますが、その中でもダントツのスピードで日本画を完成させた田邉さん!!なんと、田邉さん以外の皆さんは未だ大作を制作中でして、アトリエでも随一の速筆の田邉さんは他の皆様よりも数ヶ月も先にアッという間に描き上げてしまったのでした。ちなみに本日の上記画像の背景等は、「一番乗り得点サービス」として僕が合成&補正した特別仕様背景です。

もともと、今回のモチーフである桜は春の短かな期間しか咲かない儚く短命な花です。じっくり花びら一枚一枚、繊細に大切に描くのもいいけど、バババッと桜の散る前に描き上げてしまうことでひとつの魅力になっているんだと思います。なにより田邉さんの「もうここで終わり!!次!!」という姿勢が、見ていてすごく気持ちがいい!!月曜大人クラスは石橋を叩きまくるクラスですので(叩きすぎて橋を壊して、もうひとつ橋を造っちゃうくらいです)田邉さんの制作スタイルがよりいっそう際立ちます。

そして今、田邉さんは水彩画の猛特訓中で、毎週2枚のペースでスケッチブックを埋めていっております。この調子ですと、買ったばっかりのスケッチブックが夏前にはページが無くなってしまいそうです。

不思議なんですが、枚数とスピードがハンパ無いせいか、なんだか上達のスピードも小学生の皆の成長スピードに負けないくらいのレベルアップっぷり!!毎週目に見えて変化があるので、なんだか見ている僕まで気分が良くなってしまいます。スラムダンクで例えるなら田邉さんは桜木花道タイプですね。ちなみに他の生徒さんは努力を惜しまない赤木タイプ、小原先生は自分の意のままに周囲を動かす宮城タイプ、僕はスタミナは無いが火事場での執念は凄い三井タイプといったところでしょうか……この例え、30前後の男性にしか分からないかな……

…というわけで、すんごいペースでスケッチブックを埋める田邉さんの水彩画に期待です!
↓オマケに一枚田邉さんの習作を載せますが、すごく光が美しいです。これはまだまだ伸びそうですね…
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田中幸介

良い意味で「裏をかく」こと

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「交差するイメージ」  ゆりえ  高3

今日は初めて午前の大人クラスに行かせて頂きました、酒井です。描いているモチーフへの思い入れやイメージなど、いろんなお話をさせて頂いて、とても楽しかったです。今度はどこのクラスに入るかわかりませんが、皆様宜しくお願い致します!

今日紹介するのは、高3で美大受験の勉強真っ最中、ゆりえの作品です。与えられた課題をどんな風に解釈し絵にするのか。今回この「交差するイメージ」では、糸と手で繋がったりすれ違ったり、結ばれたりこんがらがったりする「人の繋がり」を表現しようというゆりえの意図がわかりやすく伝わってきます。

デザイン科の課題は特に、「自分だけでなく誰にでもわかること」「それでいて独自の新しい発想であること」が求められます。課題文の裏を読み、出題者の考えの斜め上をいくような絶妙なラインを狙うため、デザイン科を受験する人はは皆この最初のコンセプトの部分で悪戦苦闘していることと思いますが、ゆりえは最近なんだか自分なりの面白い絵を描こうとしている感じが伝わってきます。あとは絵作り!描写力もどんどん上げていって欲しいところ。これからどんな作品を見せてくれるのか、楽しみにしています!頑張れ受験生!!!

日本画はクッキング?!

チノです。日々日本画人口が増えていくアトリエ。土曜午後クラスはついに8人中6人が日本画という、ほぼ「日本画クラス」状態になりました!
きゃ~(嬉しい悲鳴)

日本画で使う岩絵具の扱い方、溶き方を説明していると、「なんだか料理してるみたい」との声がちらほら聞こえます。

・・・そうなんです。日本画はまさに料理しているみたいなんです!!実際調理器具も結構使っていたりします。

アトリエでは、保存の問題や、扱いにくさから使っていませんが、日本画では岩絵具の定着材として「にかわ(ゼラチン)」を使用します。すぐ腐ってしまうので、冷蔵庫にて保管するのですが、取り出した状態が写真左。
リンゴゼリーのようでとてもおいしそうです!
Nikawa
これを電熱器で溶かし、岩絵具と混ぜます。(アトリエではアートグルーを使っています)
さじを使っているので、これまた料理のような、実験のような感覚です。

あと、絵具を「焼く」ということもします。(天然顔料のみ)
例えば「くじゃく石」を粉砕してつくられている「緑青(ろくしょう)」という緑色があるのですが、これもミルクパンなどに入れて電熱器で長い時間焼いていると、だんだんと色が黒くなっていきます。黒にこだわる作家さんは、黒の顔料を使わず、緑青や群青を焼いて、味のある黒を作ったりしています。Iwaenoguyaki
ただし、天然顔料はかなり高額なので、ここぞ!というときにしか私も焼いたことはありません。
群青は「アズライト」という岩石を砕いたもので、15g(これが岩絵具の量り売りの単位で1両目という)で「3000円」します。卵(約60gとして)1つ分で、「12000円」ということになります!ぞぞっとなりますね。

あとは胡粉を溶くときにも白玉団子をつくるとき同様に形づくっていくことなどでしょうか。

準備、片付けに時間がかかる日本画ですが、その間にも作品の構想を練っていたり、精神統一の作業として気持を高めていったりするといいのではないでしょうか!(精神論でしめちゃいました♪)

初めての立っち

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オバラです。続々と小学生の油絵が完成してきました!
親御様には高価な画材を揃えて頂いているにも関わらず、一年に1枚しか描かない油絵なので、その分こちらも指導に熱が入ります。
「もう完成でいいでしょ?」と言われてから、「まだまだぁ!」と3時間くらい(小学生クラスは1時間半の授業なので、2日間)は引き伸ばして完成度を上げるので、お互いクタクタです。ませた子に「これ絶対パワハラだよ!」なんて言われる、まさに体育会系のノリ。美術が文科系なんて、誰が言ったんだ?
でも厳しくされるのに慣れてくると、「ここの色は引き締まってすごくいいんだけど、うーん、えっとねー、なんて言うか…」「のり先生今から言いにくい事を言おうとしてるな?お世辞はいらねぇ、覚悟決めたからバッサリ言ってくれ!」なんて、逞しくなっちゃうんです。頼もすうぃー♪
ま、1.2年生でもこの出来となりゃあスパルタにもなるってもんです。

現在、小学校では2年生の途中から水彩絵具の使い方を学ぶので、この8枚は水彩すら危うい子ども達の作品。
「下書きの線は見えなくなっちゃうし、絵具ははみ出すし、グチャグチャ塗りづらいし、乾かないし、汚れるし…もー、なんだかこの絵具遊び楽しぃーーー!」という気持ちが前面に出ています。
油絵をやると、世の中に光と影があること知ります。立体物には色だけじゃなくて、明るいと暗いがあるということ、人生で初めて気付いた瞬間が納められた作品。
這いはいしてた子が初めて立ち上がった瞬間は、本人にとってより親が嬉しいように、本人達は作品が完成してただよかったで終わりでしょうが、私にとっては愛おしい記念すべき一枚です。
お父さん、お母さん、大事にして飾ってあげて下さいね!

一足お先に!

Mina_2

幼児クラス 年長

伊藤です。
アトリエ内の壁ぎっしりと展示されている小学生油絵作品がぞくぞくと完成してきましたね。4月から油絵制作が始まりましたが完成間近まで、どのクラスの生徒さんもその制作過程が気になっているはず!
そちらの作品は、各クラスの先生方からきっと作品の写真がアップされると思うので、私は同じモチーフを描いた幼児クラスの作品を一足お先にご紹介しますね!

赤いポット、グリーンの入った透明な瓶、油絵木箱、布、ワイン瓶といったアカデミックなモチーフを幼稚園年長さんとは思えないほどの鋭い観察眼でじっくりと描きあげた一枚です。
おしゃべり好きな幼児クラスの中では珍しく、彼女はいつも真摯な姿勢で制作していて、時々はにかんだ笑顔で話しかけてくれたり、描きかたを聞いてくる女の子です。

誰よりも時間をかけて。
誰よりも緻密に。
誰よりも丁寧に。
そんな彼女の性格や熱意がストレートに伝わってくる作品です。
ハードルの高いモチーフになればなるほど、力を発揮してくれる彼女にはいつも感心すると同時にドキッとしますね。

幼稚園生の作品は、クレヨン画(背景は水彩)なので一日で仕上げてしまいますが、もうここまでの完成度ならば、水彩画による静物画もぜひ描いてもらいたい!です!!
小学生油絵展示の横に、幼児作品も展示すれば良かった!と反省・・・。
今度何かの機会に幼児作品を展示しよう!っと。

にじみを生かした風景

Photo佐々木 水彩
息子さんの成長の様子を描き続けている佐々木さん。
いつもは人物をアップで描くことが多いのですが、今回は大きめのサイズに水張りをし、公園の中で遊んでいる姿を描かれました。
背景を入れることで絵本の1ページのような、物語を感じるような作品に。
絵の具のにじみを大胆に使った影が美しく、しっかり描き込まれた人物との対比になっています。人物の周りを中心に描写し、あとは必要以上に手を入れないことで、広い背景の中でも息子さんに焦点が行くよう空間づくりにも工夫をされています。
佐々木さんのような淡い色調の水彩画を描きたい方は、ぜひ絵の具のにじみも絵づくりに利用していただきたいです。
水をたっぷり使った絵の具の自然な流れは、筆だけでは表せない柔らかさや混じり合った色を作ることができます。
色鉛筆も使い密度を上げてひきしめる部分、必要以上に描きすぎない部分を使い分けることで大きな画面にもメリハリが生まれます。

息子さんのシリーズも枚数が増え、お持ちになる写真もどんどん成長されています。
お仕事の合間を縫ってこつこつと制作されるお父さんによる息子さんの成長過程は展覧会でもみなさんに注目されていました。
これからもマイペースに、息子さんが大きくなるまでぜひ作品づくりを続けていただきたいです! 赤尾
 

自分史に添える自画像

Yoshiakijigazou
慶昭 『自画像』 鉛筆・顔彩

今、就活真っ最中の彼。大人のスケッチ遠足の時もスーツ姿で参上したので記憶にある方も多いのでは?

そんな忙しい最中に地震、大学も面接もなんにもなくなる空白の1ヶ月ができたそう。
そこで己を見詰め直す為にも「自分史作り」を思い付き、小さい時からの経験を記憶を頼りに書き連ね、現在の自分を形作った経緯(ルーツ)を探すことにしたそうです。
「だったら、自画像も添えようよ!!」とそそのかし、鏡を見たり、女装して写真を撮ったりして色々描き始めました。次は油絵で自画像に進む予定です。
自画像は似てる似てないなど表面的な技術うんぬんではなく、己と対話し充実した時間を持つ事ができたかどうかで満足度が変わります。
どうですこの自画像?他人の我々から見ても密度の濃い時間を過ごしたんじゃないかと思われる顔になっていると思いませんか?

集団面接で「あなたは肉食ですか?草食ですか?」の質問に皆がこぞって「肉食です。なぜなら目の前に与えられた仕事だけでなく、自ら…」など言う中で「私は強いて言えば雑食です。」と答えることができるユニークな男。採用通知もすでに何社からか届き始めたと聞きました。
アバウトに見えて、実は石橋を叩き割っちゃう慎重派(叩きすぎて割っちゃうところが大雑把なのか?)なので、彼の未来も、自画像の行く末も目が離せません!   オバラ

目覚めた!?

2011050231麻実 高3 デッサン

どうも幸介です!本日は学生クラスより、高校3年生のデッサンをご紹介します。このデッサン、僕の高校時代に描いたアトリエに置いてあるデッサンを模写した作品です。当時の僕が全身全霊を込めて、通っていたアトリエの頂点に立ってやる!!ぐうの音も出ないほど他の生徒をコテンパンにしてやる!俺はそれが出来る人間だ!!と思いながら血反吐を吐きつつ描いたデッサンです。はたして麻実に当時の僕の鬼のような気持ちが伝わるかどうか…まずは彼女の感想から↓

「物の1つ1つの描きかた(まとまった縄やトマトの細かい描写とか)がとても勉強になったと思います。一番光りがあたっているタルの上の方とかをあまり描きこまずに表現しなければいけないのが、まだまだだなと思いました。あとやっぱ先生はすごいなと、心が折れそうになりました」

この絵の僕の描いた方の説明はたしか4年前くらいに一度ブログに載せたようなような気がしますので割愛しますが、どうだ麻実!!デッサンは奥が深いだろう!!描けば描くほど上手くなる楽しさを麻実はすでに知っているから何の心配もないけど、麻実はデッサンを描くときについつい部分で見てしまう(例えば縄を描いているときは縄しか見ないし、木目を描いているときは木目しか見ていない)癖があるから、そこだけ注意してください!縄もタルも、一緒に置かれているすべてまとまった「ひとつ」のモチーフであって、全体を描いて一枚の作品にするということを忘れないで欲しいです。ようは「モチーフの物体」を描くのではなく「モチーフのあるその場所」を絵にする、ということですね。麻実の絵に魅力はあります。あとは研ぎすませていくだけです!!

そんな麻実の次回作は50号の油絵。アトリエの旧モチーフ棚ゾーンの窓辺にある、あのデカいキャンバス。あれが彼女の次回作です。もともとはデザイン科志望でしたが、今回の油絵制作で何か目覚めた模様。もしかしたらファイン科なのかもしれない!?とにかく油絵には要注目ですね…!!

田中幸介

201105232

美大生の日常!

酒井です。今日は、私が学校で今制作している作品をちょっと紹介させて頂こうと思います!美大生ってどんなことやってるの?と聞かれることが時々ありますが、学科によってやることは様々で、一日のうち半分は講義の授業もあります。一日中絵を描いているばかりでは無いんですよ!私は普段、工芸工業デザインという学科で主に木を使った家具などをデザイン、制作しています。

作品を作るとき、まずやることははアイデアスケッチ!絵を描く時も、「どんな構図にしようかな?」と裏紙にスケッチしてみたりしますよね。とにかく既製の家具で気に入ったもの、ふと思いついた形など、とりあえずざくざく描きながらどんなものを作るかイメージを膨らませます。今回の課題は「収納家具」。箪笥、本棚、クローゼット、テレビボードなど、どんな収納家具を作るかは自由です。

Aida

大体のイメージが固まったら、今度は立体のイメージを自分の中でしっかりもつために、実物の5分の1スケールのモデルを作ります。 このときは模型などを作るのによく使われるバルサ材を使っています。しっかり作ればミニチュアの家具のようで可愛いですよ!作りながら、どんな木材を使おうか考えたり組み立てる手順を想定してみたり。今回作る棚は色の濃い木を使うイメージだったのですが、黒木は値段が高すぎるので(桁が違います・・・)塗装で色を変えることにしました。

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モデルが出来たら実寸の製図を描き、寸法を正確に決めていきます。全体の高さや幅などは勿論、板状の木からどんなふうに材料を切りだしていくかも考えます。ここからやっと、直接作品に使う木を触って制作をしていくことになるんです!が・・・・、残念ながら現在この課題の進行状況はここまでなのでした!まだ木材を切りだして機械や鉋で綺麗にしている最中なんです・・・。完成写真が無いのもあんまりなので、代わりに去年作った作品をを載せさせて頂きます↓

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「対になる机と椅子」でした。基本的に手順は同じ。子供用家具のような丸みのある可愛らしい形を意識して作りました。手作りでしっかり作った家具は丈夫なので、家でちゃんと使っています!大きなものを道具を駆使して作るのも、なかなか楽しい作業なんですよ。それではこの続きはまた、作品が出来上がった時にでも!