どうも幸介です!本日も油絵を紹介していきたいと思います。あいかわらず長文になりますが、どうぞもう少しお付き合いください!!

まずは左の莉子(りこ)の作品から。普段は物静かな彼女ですが、作品からは並々ならぬ意思を感じますね…!!主役の鳥もそうですが、燃えるロウソクの炎やそれに相反するような暗く深みのある背景、そして乱雑に散らばったモチーフ。水彩画が得意で、いつもは統率の取れた画面作り・作品作りをする性格でしたが、油絵を描くのは初めて。当然水彩と違って扱いの難しい画材ですから、いつものような「自分の思い描くような画面」になかなか近づけずに苦悩したんじゃないかなと思います。その苦悩があったおかげか、今までの殻を破った作品になりましたね!色彩もそうですが、構図や描写も統率を取ろうと思っても取れないアトリエのモチーフ。しかし持ち前の「頑固さ」で、なんとかモノにしてやろうという意思を感じます。普段の水彩画は彼女そのままの印象の作品でしたが、今回の油絵は彼女の内面深くにあるものが出て来て魅力になっています。彼女の性格からは想像出来ない、こんなダイナミックな作品も描けるんだ!!と、小原先生と感慨深く見入っていました。
そして右の作品は有紀(ゆき)の作品。女性的で色彩豊かで、華のある作品になりました!!モチーフの花や葉に立体感があまり無いんですが、それが逆に絵を「一枚の図版」として纏めていますね。画面のおさまりもすごく良いです。そして色彩ですが、黄色などの明るい色を使っているのに子供っぽくないし、少し青味の入った葉のグリーンが花や鳥などを引き立てています。この葉がもし、黄緑や深緑などの緑だったら、この絵はここまで纏まらなかったでしょう。この微妙な色彩感覚が素敵ですね!全部の色のバランスが「ここじゃなきゃダメ!」ってとこでしっかり着地出来ているこの色使い、絵画というよりもデザインですね。たまに授業を見ていると「子供にしてこの色彩感覚を持っているのか!?」と思わせるような生徒に出会います。有紀もそうですね。安易に原色は使わず、赤も黄色も青も全部、自分で混色して自分なりの色にするんです。この油絵もチューブそのままの色はどこにも無くて、黄色には白を混ぜてオフな印象に、ピンクには紫系統の渋みを与えて落ち着きを出しています。大人でもなかなか身につけるの難しい色彩感覚、このまま大事に育んで行ってほしいなと思いました!

次に紹介するのは上記画像の左の絵、帆花(ほのか)の作品です。いっつも自由な感じで制作している彼女ですが、毎回「あれ?あんなに自由に色々してたのに、いつのまにこんなにちゃんと絵を完成させてたんだ!!?」と驚かされます。今回も、想像以上の完成度で出来上がりましたね…!!描き込んでるモチーフの量は多くありませんが、ハッキリとした色合いの中に細かな陰影やグラデーションを多様し、ひとつひとつをちゃんと描ききっています。布までもしっかりと描かれていますね。初めての油絵でしっかりここまで描ければ文句はありませんね!!フランクですがちょっと大人びていて、どこか達観したような物言いをする子ですが(あんまり書くと本人に怒られそうですが…)、作品を「これでいいや」と妥協することは無く、自分で決めた完成まで持って行くスタイルは見習いたいくらいですね。前回の帽子の課題でもひときわ大きな花のコサージュを作っていましたが、実は内に秘める制作意欲は情熱的?なんて思ったりしました。
次に右の作品、こちらは花(はな)の油絵です。型にはまらない構成と色合いが素晴らしいですね!ハッキリとした画面構成と色合いがエネルギッシュです。背景に大きく入った自転車の黒がドラマチックです。可愛い色合いやモチーフではありませんが、本人も大満足な仕上がりになりました。油絵の良さをしっかり掴んでいますね!普段からわりと思った事はちゃんと言い誰とでも分け隔てなく接する、真っすぐした&しっかりした性格が絵にも出ていると思いませんか?ここまで真正面から制作した絵は見ていても気持ちが良いですね!ビンだろうが鳥だろうが自転車だろうが、しっかりと重みを持ってカタチを捉えています。しかもただ単純にハッキリ形を描いてるだけではなくて、ビンの透明感や鳥の止まり木の質感、スプーンの反射光や自転車のマットな陰影まで、余すところ無く描いています。油絵は「どこまで描いたら完成なのか」が難しい画材ですが、この絵は胸を張って「完成!!」と言えるんではないでしょうか。

そして上記画像の左の絵は、剛士(まさし)の作品。すごいですよねこの絵。じつはこの絵、グラスに鳥(インコ)がとまっているモチーフを描いていたんですが、インコの背中と足を大きく描きすぎたために、鳥の下半身とグラスの上の部分だけしか描き入れていないんです。今回の油絵の授業の中でも、僕の最も好きな作品のひとつです。授業ではなかなか本人の思うように行かずに途中ちょっとあきらめかけた時期もあったけど、最後の方はマンツーマンで頑張って追い上げ、最終的には本人も満足の仕上がりとなりました!ひとなつっこく自由奔放な彼は、しばし制作を忘れがちになります。しかしやるときの集中力はなかなかのもので、そのメリハリが利いたスタイル故に作品もいつも思いもよらぬものを作ったりします。この油絵も、最初と最後の授業の集中力はすごくて、毎週毎週の途中経過も見せたいくらいです。ムラのある制作なので作品も週ごとにガラッと雰囲気が変わります。それが彼の良いところでもありますので、体力の持つ限りなんとか彼の疾走についていかねば、と思います!
そして本日最後にご紹介するのは、右の翔馬(しょうま)の作品。彼もまた、思いもよらぬ疾走をする生徒です。ひとつのことにはまると気の済むまで他の事は考えられない性格故に、ピタっとハマると100%の確率で魅力的な作品ができますが、その「ハマる」ベストポジションを探すのもひと苦労。こっちがモタついていても彼は待ってはくれませんので、彼と向き合うのにはかなりの瞬発力を求められます。そんな翔馬の今回の作品ですが、みごとに彼にハマった作品となりました!油絵は自分の性に合っているのか、この作品は額に汗をかきながら黙々と制作していました。辞書の上にランプが置かれ、その横に小さな地球議が転がっているモチーフ。この不思議な場所を選んだのは彼ひとりだけでした。辞書の厚みの陰影やページ上の文字なども良い味を出していますね!!なんだかエキゾチックでもあり、哲学的でもあり、子供っぽくもあり、妙な雰囲気です。きっと彼本人を知っている人がこの絵を見たら、なんとも言いがたい、プラスとマイナスを織り交ぜてもゼロにならないこの不思議な彼らしさに納得していただけると思います。この危ういバランスは、彼の最大の魅力ですね!
というわけで長文になりました。彼らの絵から、大人達が学び取れる物は抱えきれないくらい多く、貴重です。しかもそれらは、決して大人がひとりで絵を描いていたのではたどり着けない要素です(たどり着けたのはピカソやマティスぐらいじゃないでしょうか)。これは子供も大人も通うミオスならではの事ですので、是非肉眼で作品を見て、常識にとらわれない彼らの絵に頭を悩ませて欲しいと思います。
田中幸介