光をみつめて

秦野 油彩

花粉のおかげでティッシュと目薬が手放せません、ナツメです。本日は水曜大人クラスより秦野さんの作品をご紹介します!
等々力で撮影された写真をもとに、公園の風景を描かれました。

まず目を引くのは、木々の緑のあいだからこぼれる光の粒です。ピンクやオレンジ、黄緑などさまざまな色が細かく入り混じりながら輝き、まるで揺れ動いているかのような印象を受けます。コントラストをしっかりとつけて描かれているため、自然と視線がそこへ集まり、この作品の中心となるモチーフが光であることが伝わってきます。

興味深いのは、光そのものだけでなくその周囲の色にも目を向けて描かれているところです。写真を拡大して観察した時に葉と光の境目の部分にほんのりとカラフルな色が現れている点に着目し、光が葉の縁に反射したり、空気の中でわずかに色を帯びたりすることで生まれる微妙な変化を丁寧に拾い上げ、多彩な色を重ねられました。そのため、ただ白い点を描写するのではなく、空気の中でふわりと広がるような奥行きのある輝きとして表現されています。

手前には一台の自転車が静かに置かれています。人の姿は描かれていませんが、この場所を訪れた誰かの時間がそっと残されているようで、公園の静かなひとときが思い浮かびます。

木々のあいだから差し込む光は、実際には一瞬ごとに揺れ動き、同じ形を保つことがありません。その移ろう光の印象を、色の重なりや筆致によって画面の中にとどめているところが大きな見どころです。何枚もの風景を描かれてきた秦野さんだからこそ捉えられる、光の一瞬の表情なのかもしれません。木漏れ日の下に立ったときのような、やわらかな空気が伝わってくる一枚です。

夢のような世界

きと 高1 油彩

夏波です。今回は学生クラスからきとの油彩を紹介します!
葉のない冬の木の枝に、果実のようなあかりが灯っている幻想的なモチーフです。背景は暗く星空のようで、非現実的な空間が作品の世界観を作り上げています。きとは初めて油絵に挑戦したのですが、写真を参考にしながら自由に制作しました。

この絵の主役である木には様々な色を使い、マチエール(盛り上げ)をつけていて目を惹きますね。木の幹は茶色のみで描くのではなく、ピンクや紫色をガサッと塗り重ねています。一見するとミスマッチに見える色の組み合わせが、画面に新鮮さや深みを生み出します。さらに、しっとりとした冷たい暗さ(奥に引っ込んで見える効果=後退色)のフラットな背景と、木のボコボコとした質感(物理的に吐出)の華やかな茶色(手前に飛び出して見える効果=進出色)のコントラストが良いです。そのぶつかり合いが緊張感を持たせつつ前後感を醸し出しています。

また、お花や果実のようなランプの黄色がアクセントになっていて魅力的ですね。背景の色は青をベースにしているため、補色に近い色の取り合わせである黄色がよく映えています。この黄色があることで落ち着きのある静けさの中に、暖かみを感じる夢の中のような雰囲気を生み出せたのです。

きとは穏やかで優しく誠実な人。もっとシャカリキになってもいいかな?と思う場面でも、歯がゆいほどに(笑)マイペースです。この油絵はまるで彼女自身のよう。試行錯誤の末、独自の世界をキャンバスに乗せて作品を完成させました。これから沢山の画材に挑戦して自分の思い描く世界をどんどん絵にしてみてしてくださいね!

美大合格しました

AN 鉛筆デッサン 女子美アート・デザイン表現学科合格

小原です。藝大の二次試験の発表はまだですが、私大の結果は全て出ています。ほとんどの美大受験生は高2の冬か遅くても高3の春までに美大受験専門の予備校へ追い出してしまうので、1年後に「合格しました」「浪人します」とあいさつに来る子は、ミオスでの勉強が必要だったと感じているし、報告に来ない子はミオスは基礎だけ教わった通過地点に過ぎないと思っているのでしょう。
関わりの深さはこちらが決める事ではありません。恩を押し付けるつもりもありません。だから、離れた学生を心配はしていますが、縁が切れたことを残念に思ったり悲しくなったりもしません。

最近は美大も推薦入学者を多く取るようになりました。本番に弱いタイプや、自信の持てないタイプは、早い時期に重荷を下ろす選択をします。一般入試組が極度のプレッシャーとストレスに晒される中、後ろめたさも感じますが、精神が崩壊する危機があるより安定が重要でしょう。
しかし画力の伸びを自ら止めてしまうリスクもあります。合格が決まった瞬間、多くの学生は解放感で意欲が急降下。一般入試組が3月まで必死にデッサン力を伸ばし続ける中、推薦合格者は11月で予備校を辞めます。高校卒業までに技術は良くて横ばい、悪くて低下。
ちゃんと最初に予告します。推薦を取るという子には、そうなるよと。
そして、そういう子は一般入試組を育てる予備校からは、士気が下がると嫌煙されるため、推薦入試直前までミオスで勉強します。今年は、多摩美工芸学科と女子美アート・デザイン表現学科と横浜美術デザイン学科と桜美林ビジュアル・アーツ専修に推薦で合格しました。おめでとう。

若者は判断基準が明確で、アプリやSNSを通じて情報の取捨選択に慣れています。受験スタイルの判断も「時間の無駄にならないか」「自分の価値観と合うか」をシビアに見極めているように感じます。情報過多な現代において、自分にとっての正解を最短距離で選べることも、「生存戦略」なのでしょう。先人の意見を聞くだけでは生き残れませんから。「無駄が嫌い」、これも彼らの真理です。

上の絵を描いたANは推薦で合格してからも、ミオスに通う日は週3回に減らしましたが、せっせとデッサンを続けています。珍しいタイプ。大抵横這い撤回、合格後も確実に技術を上げています。

黒を恐れずに

松尾k 透明水彩

サトルです。最近暖かくなり、暑がりの僕は暖房いらずです。 今回ご紹介するのは松尾さんの作品になります。まだ水彩画を初めて数枚目とは思えない程の迫力を感じる作品です!

槍を構えた騎馬兵を、燃え盛る戦場を背景に力強く描かれています。地を蹴り砂埃を立てながら走る馬の姿は真に迫るものがあり、実際に動いている姿を想像させる程。 炎を背景に描くのは逆光かつ暗い色をしっかり使わなければならず、暗さの作りづらい水彩絵の具と相性が悪いのですが、松尾さんは下描きのデッサンで鉛筆のトーンを強く塗っていた上、さらに黒で影面を厚く塗り重ねる事で逆光感と騎馬兵の立体感を両立させました。 よく絵の具を初めて使う方に、「黒を使うと色が濁って絵が潰れてしまう」と言うのですが、こちら作品のようにダークな世界観を作る場合でしたら、黒を使わないと狭い色幅で弱々しい表現になる上に、立体感を出すことも出来ません。影側の世界の中で、特に暗い部分には恐れずに最初から黒を使ってみましょう。

背景を炎の光と砂煙の様子を同時に表現するため、様々な色を薄塗りで重ねて描いており、さらには画面端を暗く、中央を明るくして主役の逆光感を引き立たせ、見事に絵全体のバランスを取りました。 背景が多種で難しい質感のモチーフの場合、個々を描こうと必死になってしまい全体のバランスを崩しがち。筆さばきによるタッチの使い分けは施しても、色を変えたり絵の具の厚みを変えないことを意識すると良いでしょう。自然と鑑賞者の目線が騎馬兵に集まるような手助けは、描き過ぎない事が重要なのです。

水彩画といえば明るくて美しい景色を表現する方が多いですが、松尾さんのように思い切った暗さを作れるようになると、さらにドラマチックな作品が描けるようになります。皆さんも是非チャレンジしてみてください!

筆で年月を描く

釘宮 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは釘宮さんの水彩作品です。

堂々と枝を伸ばした貫禄ある大樹。動かぬ植物でありながら、そのうねり伸びてく幹からは生命の流動を感じさせます。長い年月を重ねてきたことが幹の表情からも伝わってきますね。空いっぱいに広がる枝や、複雑に重なった樹皮の描写からは、この木が何十年、あるいはそれ以上の時間をこの場所で過ごしてきたのだろうと想像させられます。しかしそこに威圧感はなく、静かに町の営みを見守っているかのような、どこか神聖な佇まいがあります。側にある小さな祠もこの大樹を祀るものなのでしょうか。この木がただ自然の中に立っているのではなく、町の中で人々の生活と共に長い時間を過ごしてきた存在であることが伺えます。心静かに眺めていると、まるでこの木の前に立っているかのような気持ちになりますね。

逞しい幹から伸びる葉は、細やかな筆使いによって葉の擦れ合う音までもが聞こえてくるようです。光が当たる左側は薄く柔らかく、陰となる右側は葉の重なりも相まってより密度の高い画面となっています。水彩ならではの透明感が活かされていますね。
左下の道から祠、そして大樹から空へと視線が広がるように導かれる構成も美しく、場所の広がりや空気感が感じられます。遠くには淡く山並みも描かれており、行ったことのない場所なのにどこか懐かしさを感じさせる、まさに日本の原風景ですね。

最後まで粘り強く描き込まれました。筆使いの一つ一つから、制作姿勢が伝わってくるようです。今後の作品も楽しみにしております。

卒業の季節‐卒展のお知らせ

マユカです!今回は私の作品についての記事です。多摩美術大学で3月13日〜15日にかけて開催される、卒業展示(学内展)についてのお話をさせていただきます。

いつの間にやら四年生、私自身あっという間すぎてびっくりしています。この四年間は主にデジタルでイラストレーションの作品を作り続けてきたので、締めもイラストでの制作にしました。

私のイラスト制作のルーツが「ゲーム」なので、大学の卒業制作ではそのルーツを辿るようにゲームのコンセプトアートを想定した作品群によって世界観を伝えるような展示を目指しています。ゲームの内容がどう、と言うよりはキャラクターデザインや風景などのビジュアル面を押し出して見せる目的での描き方をしています。

舞台は中世ヨーロッパ、当時のカメラでは白黒にしか映らなかった世界をモノクロのままに冒険する、そんなイメージの世界観です。

卒業審査の際に撮ったものしか全体の写真がなく見辛いのですが…
これらの作品、実はデジタルだけでなく油彩でも一部作品を製作しています。

「よりゲームの世界観に浸ることのできるコンセプトアート」とは何かを考えた時、写真を使用すると生々しすぎてゲームっぽさが損なわれてしまう、デジタルでは印刷した時の質感があまりにも現代で世界観に浸れるかと言われたら怪しい…など様々試行錯誤した結果、油絵が「時代を表す目的」でも「生々しさを打ち消す目的」でもぴったりだと感じ、5枚ほどの油彩画を描き、うち2枚にはパネルに印刷したキャラクターを貼り付けてゲーム画面のような表現を施しました。

また、グラフィックデザイン学科は各々が一番得意な表現を用いて一つの大きな作品を作り上げる、という製作形態をとっているので、イラスト以外にも立体作品や服飾系の作品、平面作品など様々な作品を見ることができるのも魅力の一つです。ぜひ見にきていただけたら嬉しいです!

会期 : 2026年3月13日 – 3月15日 10:00~18:00(最終日15:00まで)
会場 : 多摩美術大学八王子キャンパス 東京都八王子市鑓水2-1723

学内展のホームページはこちら

凛と花開く

増井 岩絵具・和紙

体の芯から冷えるような寒さも去りつつあり、春の気配を感じています。ナツメです。

先週の水曜日も日本画を紹介しましたが、こちらの作品が正真正銘の大トリ、最後の完成者の増井さんです。去年日本画にトライされた方は100人程いらっしゃいましたので、ご本人も「こんなに長く掛かると思いませんでした!」と笑っていらっしゃいました。

描かれたのは凛と咲く白い牡丹。やわらかな花弁の重なりの中に、ほんのりと差し込まれた紅が印象的です。花びら同士がつながって見えてしまわないように注意を払いながら、花弁一枚一枚をとても丁寧に描写されました。繊細な描き込みが施されたおかげで牡丹ならではの層の厚みと奥行きが生まれていますね。また、陰影が入ることで中心へと視線がすっと導かれ、まるで集中線のように花の芯へ引き込まれていく感覚があります。

濃い緑の葉は、花のやわらかさと対照的にしっかりとした印象を受けます。緑も一色ではなく場所に応じて少しずつ色を重ねながら変化がつけられており、絵の具の乗せ方を変えることによって質感の差を巧みに表現しています。

牡丹は「百花の王」とも呼ばれる花。華やかさの象徴でありながら、派手さよりも凛とした芯の強さが感じられます。背景のやわらかな色合いが花そのものの存在をそっと引き立てているからかもしれません。堂々と咲き誇るその姿に力を分けてもらえるような、魅力を感じる一枚です。

思い出を描く

紗季 高1 冴妃

夏波です。今回は学生クラスから、さきの作品をご紹介します!
さきの小さい頃の写真を元に描いています。満開の桜を背に公園で遊んでいる所を両親が写真を撮ったのかな?と想像のできる一枚です。整頓された明度が、カメラのレンズ越しで見たかのようなを演出を与えていますね。
一筆一筆大切に描かれた人物は、明るい表情で柔らかや印象を受けます。平面的に処理された背景の桜は少々荒い描写ではありますが、人物との対比で距離感を出すことに成功しました。

唯一の人工物である赤い滑り台を含めた主役二人に強いコントラストをつけ、堂々と中心に置いた構成が印象的です。安定感のあるどっしりとした構図ながら、桜の枝たちが画面いっぱい自由に広がり、軽やかな動きを加えます。絵を描く上で、デッサン力や色彩の豊かさももちろん重要ですが、メリハリの効いた構図は見違えるように作品の質を高めてくれます。

一点集中型のさき。描きたいところとそうでもないところが顕著に現れてしまうのですが、今回はそれが上手いこと昇華しましたね。絵作りのための取捨選択が無意識であっても、安定した技術を持っているからこそ、ここまで魅力のある絵に仕上がったのだと思います。

美術系高校 全員 合格しました!

オバラです。先週の金曜日に公立高校の合格発表がありました。今年ミオスから美術系高校を受験した中学生は4人。
全員、第一志望も滑り止めも合格しました!

市立川崎総合科学高等学校デザイン科
県立白山高等学校美術コース
県立上矢部高等学校美術科
トキワ松学園高等学校美術デザインコース
橘学苑高等学校デザイン美術コース

今年は11月になってから入会した子や、勉強が危うくてミオスには週1しか通えない子などもおり、少ない時間でどこまでレベルを上げてあげられるか悩み苦労をしました。
またのんびりマイペース過ぎる子もいて、当日「練り消しゴムを忘れて普通のプラスチック消しゴムだけで勝負しちゃった。でも小原先生からもらったお守りは忘れませんでした!(笑)」なんていう恐ろしい事を言う輩も…。お守りは気休め、それじゃ受かんないから!ちゃんと武器を揃えて戦おうよ!(泣)
発表までの2週間、私がどれだけ悶々と過ごしていたか、分かって頂けるでしょうか?

毎年受験生にやらせている、『何も見ないで立方体、球体、円柱の想定デッサンを描く』、『形をとった後に光を設定して明暗をつける作業』、『出来るだけ綺麗に均一に塗る(もしくは濃淡をつける)練習』、『私が描いた様々な角度の立方体25個を30分で写す』、『岩田先生の作った自己評価表を毎回つける』、のようなハードな特訓は一切やりませんでした。今年の受験生には合わないと判断したからです。
「悪魔と取引してでも絵が上手くなりたい!」「命削っても長時間、絵を描いていたい!」「敵は自分自身!」というタイプの子達ではありませでしたので。(むしろ命を削ったのは講師の方。受験生を教えていた美大生のスタッフ全員で「終わったー!」と安堵しました。)

のらりくらりというか、他人事というか、クールと言うか、ポジティブに言えば落ち着いている人たち。そういうタイプの人に熱く接しても暖簾に腕押し、響きません。こちらが変わりました。
お陰でここまで上達したのかな?と思います。受験間際のデッサンをこうやってまとめて見ると、結構イイ線いってますね。うん、良かった!合格おめでとう!

桃源郷のよう

馬込 油彩

岩田です。ひと月に一度、最終土曜日に出講しています。

本日は、馬込さんの作品をご紹介します。こちら半年ほど掛けて完成させたF30号(910mm × 727mm)の大作。長い時間を経て、見事に完成に至った渾身の作です。
小原先生が是非参考にと、皆さんに見えるようにしばらく教室内の壁に飾っておいたので、実物をご覧になった方も多くいるのではと思います。

大きな池のある公園で、年の離れたお姉ちゃんとまだおむつをつけている妹が水遊びをしている写真を元に制作されました。ご自身で撮影された写真なのですが、年の差がある、見ず知らずの姉妹と推測される二人が佇んでいるその光景に、なんて素敵なんだろうとシャッターをきったであろうことが想像できます。

決して妥協しない、自分の描きたいイメージに対して貪欲な作者の心がストレートに表れています。
木々が惜しみなく茂り、深く清い水を湛える風景。奥へ奥へとどこまでも広がりを感じさせてくれるこの情景は、元の写真を知らなければ、公園内の一風景とは思えず、まるで桃源郷を描いたかのような豊かな世界が展開されています。
いつもの馬込さんの作品とは一線を画す、爽やかな絵だと思いきや、近づいて見ると作者らしい幾重にも重ねて描き込んだであろう筆致を確認することができ、「あぁやはり馬込作品ここにあり」と妙に腑に落ちてくるのです。完成に至る途中では、一度は暗い緑で描いていた葉をつぶし、ニュートラルな色調で霞ませました。そのそこはかとない追求心も、やはり作者だからこそでしょう。

馬込さんの作品には、私の吐く多くの言葉はなど必要ありません。ただただいつまでも見ていたくなる素晴らしい一枚です。