
大竹です。今回ご紹介させていただくのは、福嶋さんの油彩作品です。
描かれているのはご両親の肖像画です。ご両親を偲び、遺影として制作されました。
穏やかな笑顔を浮かべるお二人は、こちらへ優しい眼差しを向けています。作者は幼い頃からこの笑顔に見守られ、励まされながら育ってこられたのだということが伝わってきます。肖像画でありながら、ひとつの家族の物語を見ているような温かさがありますね。
大切な人を亡くした直後は、悲しみが大きく、その姿を絵にしようという気持ちにはなかなかなれないものだと思います。しかし月日が経つにつれ、楽しかった思い出や何気ない会話、向けられた笑顔が少しずつ心の中によみがえり、きっと今だからこそ描いて残したいと思える時が訪れるのでしょう。
肌は黄色や赤、緑、青紫など様々な色が重ねられていますね。皮膚の表面だけではなく、その下を流れる血の温かさまで感じられるようです。年齢を重ねたからこその皺や陰影も丁寧に描かれており、お二人が歩んできた人生の時間までも画面の中に刻まれているように感じます。
背景は深く美しい青紫色でまとめられています。この色は寂しさや喪失感だけを表しているのではなく、お二人を静かに包み込む祈りや感謝の気持ちを象徴しているようにも見えます。背景をシンプルにすることで、見る人の視線は自然と表情へと導かれ、お二人の笑顔がより印象深く心に残りますね。
写真はその瞬間を記録してくれますが、絵画はそこへ描く人の記憶や感情を重ねることができます。どんな表情を残したいのか、どんな空気を思い出として伝えたいのか。その一筆一筆には、写真には映らない作者の思いが込められています。
この二枚は、ご両親の姿を写した肖像画であると同時に、作者がこれまで受け取ってきた愛情への感謝を描いた作品でもあるのでしょう。時間をかけて向き合ったからこそ生まれた、温もりあふれる作品です。










