のどかな時間

服部 油彩

春休みにかまけて昼夜逆転生活を送っています、ナツメです。本日は大人クラスより服部さんの作品をご紹介します!

ドイツ・フランクフルトのマイン川にかかる橋の上からの景色を描かれました。画面の半分以上を空が占めており、開放感のある構図が印象的です。画面手前には川幅の広いマイン川がゆったりと流れ、大きな教会や木々が並ぶ岸の右奥には橋や高層ビルの姿も見えてきます。視線が自然と奥へと導かれる構成で、実際にこの場所で風景全体をゆっくりと眺めていくような構成になっています。

川の表現も見どころのひとつです。濃い青や緑、黒に近い色を幾重にも重ねて、川の流れや波の様子が丁寧に描かれています。全てを均一に塗るのではなく、手前は細かく波の形を追い、遠くになるにつれ簡潔になるよう色味や筆致に変化をつけることで、空間の奥行きもうまく表現されています。

全体を通して、特定のモチーフを主役にするというよりも、その場に流れている空気や時間を留めるような描写が印象に残ります。街並みも細部を描き込みすぎず、形と色のまとまりで捉えられています。輪郭を強く主張しないことで空気を含んだようなやわらかさが生まれ、旅の途中でふと立ち止まり、景色を眺めながら深呼吸をしているような気分になります。遠い場所の風景でありながらもどこか身近に感じられる、そんな魅力を持った作品です。

確かな技術と楽しむ心

陽南 高1 油彩

日曜の選挙公報に『衆議院小選挙区選出議員選挙の投票用紙あさぎ色』と書いてあり、浅葱色が薄い青緑色だと皆さんご存じなのか?と疑問に思っている夏波です。今回は学生クラスから陽南の油彩をご紹介します。

カエルやアヒルのおもちゃたちがお風呂にふよふよと浮かんでいる様子を描いています。可愛らしい画面でありながら少々毒々しい色をしたお風呂のお湯に目を奪われることでしょう。バスボムからアヒルたちが逃げているのか、もしくはカエルがアヒル達を引き連れているのか、鑑賞者の想像力を掻き立てますね。

主役であるカエルに光を当て、その周辺のお湯を暗く深い色にした甲斐あって強いコントラストが生まれ、見やすい画面に仕上がっています。色が持つ明度差をよく理解していて固有色に依存しない色彩がこの絵の魅力ですね。鮮やかな緑と紫の間に暗い青が入ることで影の表現として自然かつ、画面が引き締まり緊張感を保っています。

また大胆に斜めに切った構図の工夫が見事です!窮屈な印象にならないように画面に対して浴槽を斜めに入れているお陰で視線誘導が働いており、この絵の物語性を強く感じられます。さらに手前のアヒルを大きく見切れさせて描くことでモチーフの大小や間隔に抑揚がつき、リズムの良いまとまりのある画面構成になりました。

構図や明暗から陽南の技術の高さが伺えますが、それ以上に可愛らしいモチーフと色彩は、絵を楽しむ気持ちを視覚的にキャンバスに乗せていると感じさせます。
楽しみながら自由に絵を描くと言っても、技術や知識が伴うことで表現の幅が広がり、一方通行な作品から脱却することができます。説得力のある絵画は言葉の介入を必要とせず、心惹き込まれるものとなるのです。

小学校受験の絵画対策

新1年生(現在年長児)

こちらの作者は4月から小学生になる年長さん達。本年度の小学校受験で慶應義塾横浜初等部・慶應義塾幼稚舎・早稲田実業学校初等部・青山学院初等部に合格したお子様達の絵画です。

上段左  お母さんに折り紙を教わる
上段中央 お友達と折り紙で遊ぶ
上段右  冬休みの思い出『スキー』
下段左  はじめての一眼レフカメラでの撮影
下段中央 夏休みの思い出『マンタと泳いだ』
下段右  ジャングルで何をしたい?『シーラカンス釣り』

上段左と上段中央は、同じ折り紙の絵です。当校は少人数制を活かして、同じテーマでも、違う構図・シチュエーションを教えていきます。どんなに上手に描けても、似たような絵では個性も感じず、目立つ(アピールする)こともできません。
また、珍しい体験や奇抜な発想に画力が追いつかなくては、説得力が生まれないでしょう。

こちらは、グループレッスンのカリキュラムの抜粋です。
・ 果物をできるだけたくさん描き、それぞれを切り取り紙皿の上に並べる
・ 「果物を使った好きな食べ物」を考える
観察画の課題ですが、ただ上手に写せるだけでは意味がありません。プレゼンでは、家庭の味にエピソードを添えて披露できることが望ましいでしょう。

「果物が使われている食べ物で好きなものを教えて下さい。」過去の発表で素晴らしかったものをご紹介します。
「お母さんが隠し味で入れるリンゴの入ったカレーは、いつもおかわりします。」
「おばあちゃんの家でとれた夏みかんをジャムにしてヨーグルトに掛けたのが好きです。」「たまにお父さんが焼いてくれるピザにはパイナップルが乗っていて、甘酸っぱくてピザに合います。」
「風邪をひくと柚子とハチミツのお茶を作ってくれます。おいしくて、風邪じゃなくても飲みたい位です。」
手作りの家庭の味が、料理名だけではなく自分の気持ちまで入った文章として披露され記憶に残っています。もちろん果物がのったケーキやフルーツパフェなどでも正解ですが、突然の質問でも愛情が伝わる家庭の味がすぐに思い付くようになれるとステキですね!

評価に対して

箕輪 アクリル

岩田です。今日は久しぶりに土曜日の教室へ。皆さんの作品に対する意気込みは変わりませんね。
本日は、箕輪さんの作品をご紹介します。蜂をテーマに描いたこちらの絵。ハチの絵コンクールにて佳作に入賞したたものの、ご本人は、もしかしたらちょっと悔しい思いをされているかもしれません。

養蜂場に咲くあざみの花畑で飛び回る蜂。そんな自然の中で養蜂家が蜂蜜を採取している様子です。緑と紫の色を主体に、全体的にも良くまとまっていて、とても美しい作品に仕上がっています。
確かにコンクールで賞を取ることは、ある意味認められると感じられると共に、描き続ける上でも自信にも繋がると思います。箕輪さんの作品は、今回のコンクールで目立った賞ではありませんでしたが、輝かしい賞を獲得した作品に対して決して引けをとることはない、素晴らしい作品であることを最初に述べておきたいと思います。

様々なコンクールにおける審査員によって、作品の見方、捉え方が異なり、それによる評価の仕方も変わってくることが実際のところです。人によっては、先ず審査員を調べ、その審査員がどのような絵を描いているかを調べ、評価を受けやすい絵を描いて応募するといった方も少なくないでしょう。しかしながら、そんなことをして評価を得ても自分自身が腹落ちするような経験はできませんね。

賞を取る取らぬというよりも絶対的に大事なのは、前述の通り、自分にとって、その時に腹落ちする作品が描けたかどうかということです。確かにコンクール等の出品に向けて描くことはモチベーションを維持する上でも積極的にやって欲しいし、評価を得たいと思うことも当然と言えますが、それよりも、忙しい中で頑張って、ここまでの作品を描いた自分を先ずは褒めて欲しいのです。「私って偉い」と。
でも後で見れば、ああすれば良かった、こうすれば良かったと重箱の隅をつつくがごとく、様々な後悔や反省が立ち現れてくることでしょう。例え描いた時に腹落ちしていなかったとしても、逆に「ああ、ここは自分で凄く好きだなぁ。」とか「絵の具でこんな綺麗な効果が引き出せたんだなぁ。」といった見方をしてあげることです。そういうところを更に自分でどんどん伸ばし広げていってみて欲しいのです。
そして自分で心の底から腑に落ちる絵が描けた時、どんな評価も気にならなくなっているかもしれませんよ。

土曜午後クラスの生徒さん達に誘われて、小原先生と新年会に参加させて頂きました。土曜午後クラスの方達は、他人の評価を重要視しない人、己の納得できる絵をひたすら追求している方達です。それゆえ私がどんなに褒め称えても、自分が納得しない作品は価値がないと考える強さ・潔さがあります。4時間の宴会を楽しませて頂きました!ありがとうございました。

愛車を描く

高橋 油彩

大竹です。今回ご紹介させていただくのは、高橋さんの油彩作品です。今回で三作目となりますが、回を重ねるごとに絵の具の扱いにも慣れ、画面全体に落ち着きと余裕が感じられるようになってきましたね。(前作はコチラ

こちらの作品では、ご自宅の車庫から少し顔を出した愛車の姿が描かれています。車種はフォルクスワーゲンのニュービートル・カブリオレ。2003〜2010年頃に販売されていたオープンカーで、丸みを帯びたフォルムがどこか愛嬌を感じさせます。
長く大切に乗られてきた車ですが、そろそろ新しい車へ…という節目を迎え、「最後にこの姿を残しておきたい」という思いから制作されました。

淡いクリーム色の車体に、コンクリートの無機質なグレー、そして紅葉のシェンナや赤褐色が重なり、全体としてとても心地よい色のバランスが生まれています。コンクリート部分には、単なるグレーではなく、薄く緑や青の色味を重ねることで、周囲の植物や車体の色と自然に馴染むよう工夫されています。そのため、硬質になりすぎず、全体の柔らかいイメージを損なわずに仕上げられています。
油絵具は乾くまでに時間がかかる分、グラデーションが作りやすい画材ですが、その特性がニュービートルの丸みを帯びたフォルムと相性よく活かされています。淡いクリーム色のボディには、硬い反射ではなく、やわらかく空気を含んだような光沢が与えられていますね。何度も繰り返し絵の具の層を重ねていく事で、新車のように均一で完璧な輝きではなく、長年家族の一員として使われてきた年季が滲んでいるのも魅力的です。

紅葉が色づく秋は、華やかさと同時に、これから訪れる冬への静けさや寂しさを含んだ季節です。そんな季節の空気と重なり、お別れ前の車への哀愁や名残惜しさが伝わってきますね。長年寄り添ってきた愛車を描くという行為そのものが、ひとつの感謝であり、区切りであり、次へ進むための儀式のようにも感じられます。

恐ろしくも幻想的

明美 高1 油彩

マユカです!今回は明美の油彩画をご紹介します。

深海を思わせるブルーが、うすく光るクラゲをより幻想的に見せているこの作品。奥に見える大きなクラゲはエチゼンクラゲを元にしているのでしょうか、赤く毒々しい触腕があり、近づいてはいけない雰囲気と、深海魚のような不気味さが作品に面白みをプラスしています。気ままに揺蕩うクラゲたちは、手前の触腕の緑と合わせて見ると、どこか花のようにも見えてきますね。

自然な様相でぼんやりと薄く光るクラゲの様子を描写していますが、よく見ると真っ白な箇所があり、明るい手前と奥の暗い場所の明度の幅がとても広いことがわかります。これだけ明るさに差があると、目がチカチカとしてしまうことが多いのですが、間に挟まれたグラデーションが丁寧に処理されており、全く違和感になっていないのが素晴らしいですね。目立たせたい手前のクラゲと、奥のクラゲとでコントラストに差をつけ、暗い面積が広くなりがちなモチーフで、鮮やかで明るい色を使いつつも深く暗い印象を与えるという難しいことをやってのけました。

暗い画面は、恐ろしい、未知、高級という印象を与えやすく、逆に明るい画面は清潔感や、緊張感、安心感を与えやすいです。これらが同居すると、迫力のある画面になったり、幻想的な印象になります。明美の油彩画は暗い画面でありながら、明るい面積が広かったため、クラゲに幻想的な印象を与えるような仕上がりになったのでしょう。色彩が与える印象をうまく使いこなし、素敵な作品に仕上がりました!

見え方のリアリティ

黒木 透明水彩

ナツメです。本日は大人クラスより、黒木さんの作品を二点ご紹介します!

一枚目は牧場にいるアルパカを描いた作品です。横顔を捉えた構図で、どこか眠たげにも感じられる、落ち着いた表情が印象に残ります。毛量が多いことで知られるアルパカですが、特に顔まわりの毛のボリュームが丁寧に捉えられており質感が伝わってきます。

光の表現も印象的で、顔などの白い部分にもためらわずに影を入れることで立体感だけでなく朝のやわらかな日差しや澄んだ空気感まで感じられます。明暗を強いコントラストではなく、あくまで穏やかな明暗でまとめられているため、牧場の静かな時間がそのまま絵の中に留められているようです。

そして二枚目は、草むらの中に咲く一輪の花を描いた作品です。周囲を占める緑の中に淡いピンク色が置かれ、自然と視線が中心へと導かれます。花びらの輪郭や色の移り変わりが丁寧に捉えられており、触れたときの厚みに加えて水分を含んだ手触りまで想像させます。

葉の表現は比較的シンプルですが、単調にならないよう水彩特有のにじみや色の重なりが活かされています。そのおかげで、ざらりとした葉の質感や草むらの広がりも自然に感じられます。

アルパカの顔や花といった主役部分がよく観察され、はっきりと描かれている一方で、その周囲は描き込みすぎず、空気感を大切にしながら色が置かれています。その対比によって遠近感が生まれるだけでなく、視線が自然と一点に集まり、周囲はやわらかく捉えられるという人の見え方に近い感覚が表現されているように感じました。対象をよく見つめ、その場の空気を大切にしていることが伝わってくる作品たちです。

洗練された美しさ

高山 油彩

ひとみです。今回は大人クラスの高山さんの作品のご紹介。なんとこちらの作品の2枚目の油絵です。
2つ並べられたものと手前に置かれた断面の見える梨。この奥、真ん中、手前という明快な構図がシンプルでありながらも計算された配置が心地良いリズムを与えています。通常、逆光はモチーフの色味が暗くなり、魅力が失われがちなため避けられがちですが、あえて光源を左上に設定したことにより、オレンジ色が影の暗さに馴染み、違和感のない色彩に落とし込まれています。そして背景の紫。上に乗る薄い紫の布を奥側にすることで光のふんわりとした柔らかさを演出し、下に重ねられた明快な紫を手前にすることで画面を引き締める効果を発揮しています。

また梨のへたの部分や影面の一部分には青色が差し込まれている点から、梨を暖色に偏らせないということを丁寧に意識していることが伺えます。質感の違いを見せ描きわけようとするこだわりも感じました。それぞれの色が独立せず画面の中で調和しているのはこの細かな知覚が生きているからと言えるでしょう。

色彩の配置によって画面の密度や奥行きをコントロールした構図と色彩。計算された要素の積み重ねが、この洗練された美しさを成立させているのです。

小学校受験の勉強法

小原です。皆様こちらの絵を見て、どのように思われるでしょうか?園児が描いたとは到底信じられないでしょう。人体の描き方の基礎を、時間を掛けて何度も同じことを繰り返し叩き込むと、頭の中で「あの場面を描くには、どこの位置にどのくらいの頭部の大きさで描いたら、全身が入りそう!」「足は見切ってしまった方が、言いたいことが伝わるかな?」と構図が組み立てられるようになります。
より迫力のある構図や、見栄えのするトリミングなどは、年長さんの夏休み前後から、こちらで誘導していきます。

上段左  夏休みの思い出『海の生け簀で鯛釣り』
上段中央 最近頑張っている事『うんてい』
上段右  夏休みの思い出『タイで象に乗って川下り』
下段左  変身したい生き物『虹色クワガタマントを着ると光の反射で見えなくなる』
上段中央 変身グッズの制作『虹色クワガタ玉虫色のマントと二重になったアゴの冠』
上段右  便利な魔法の生き物『小さな妹も寝ながら運んでくれる大きな鶴』

試験時間は7分から10分と短く、悩んでいるだけで時間切れになってしまいます。課題から自分らしさをアピールできる答えを導き出し、瞬発的にザっと構図を決める決断力を持って、他の子とは異なる画力を披露しなければ、テスターの先生は話し掛けてくれません。
やるべきことが山積みですが、一朝一夕で身に付く事ではありませんので、小学校受験の絵画・制作は早目に取り組むようになさってください。

圧倒的エネルギー感じる油彩

真大 中1 油彩

大寒を過ぎた後、突然の寒波到来に驚いています夏波です!今回は学生クラスから中学1年生のマサヒロの作品をご紹介します。

題材に選んだのは彼が旅行で訪れた鹿児島県の霧島山。マサヒロは初めて油絵に挑戦したのですが、そんなことを感じさせないゴツゴツとした大胆なマチエールの絵肌が素晴らしいですね! 山と空の対比が美しく、自然の中の澄んだ空気を感じることのできる油彩です。山には緑以外の多くの色が使われていて、力強さを感じることができます。
マサヒロの少し飽きっぽくその場しのぎのやっつけな性格が功を成し、山肌に大胆なマチエールを与え、魅力的な仕上がりになっています。(悪口に聞こえるかもしれませんが誉めています。)ただの緑色の山として描くのではなく、下の層に赤黄青などの色を置いてから緑を置くことで、生き生きと見せることに成功しました。豊かな色使いに加えて印象的なテクスチャから、山と作者、両方の生命力を感じますね。

几帳面なタイプであればモチーフを写真通り寸分違わずキャンバスに描き起すことができますし、逆に短期集中型であったり物怖じしないタイプであれば力強い現場感のある作品を作ることができます。たとえ同じモチーフであっても作者の性質によって全く違う印象を与える絵を描く事が出来るのが絵画の面白さですね。

やはりこの絵の魅力は、潔の良い青空と何層にも塗り重ねられた力強い山とのコントラストと言えるでしょう。山と比較して、真っ青な空が強いインパクトを与えています。雲の書き方も白を1色を重ねているように見せて青の混ざったグレーを使い、爽快な絵作りとして大成功です!

初めての油絵だったからこそ「分からないけどとりあえずやってみよう!」の気持ちで取り組めたのかもしれませんね。先週いらして頂いた漫画家さんの「とりあえず試してみよう!ダメだったら、また違う道を探せばいいじゃない。」の言葉を体現したような油絵です。マサヒロの性格ならではの、技術にとらわれない豪快な油絵具の使い方が、存在感のある絵肌になったのではないでしょうか。そういう絵は、鑑賞者を圧倒するエネルギーを感じることができます。