願いを込めて

室橋 油彩

大竹です。今回ご紹介させていただくのは、室橋さんの油彩作品です。お孫さんの七五三の晴れ姿を描かれています。以前も油彩でお孫さんを描かれていましたが、今回は女の子の七五三。華やかな着物に身を包み、少し照れたような表情がなんとも愛らく、成長の一瞬が大切に切り取られています。

制作にあたっては、子供らしい顔のラインやバランスを捉えるのに苦労され、何度も描き直しては丁重に整えていきました。温かみのある柔らかな肌の色合いと、黒く艶やかな髪の質感もよく表現されています。

厚みのある着物の質感は、皺の入り方をよく観察し、絵の具の層を重ねる事で布の重みを出しています。ほのかに光沢感も感じさせる上品な描写ですね。黒い地に金糸を織り込んだ帯の表現も美しく、作品全体を引き締めています。
油彩では金属の様な光沢を表現する際、明暗をハッキリと描写する必要があります。暗い部分はこちらの作品の様に思い切って色を乗せる事で、輝きがより際立ちます。

背景には、着物や髪飾りの赤色を引き立てるためにグリーンを選ばれています。顔周りはスポットライトが当たっているかのように明るく、着物周りは落ち着いたトーンにする事で、鑑賞者の視線が主役へ導かれるようになっています。

七五三は子供の健やかな成長と幸せを祈願する行事です。こちらの作品の一筆一筆にも、お孫さんへの祈りが込められているのでしょう。写真とはまた違う、描く事でしか残せない願いの形が感じられる一枚です。

指先で語る

野中 油彩

2日続けて大竹です。2025年最後にご紹介させていただくのは、野中さんの油彩作品です。
富山県富山市・八尾町で毎年9月1日から3日にわたり開催される、おわら風の盆を描かれています。約300年の歴史を持つ伝統行事で、編み笠を深くかぶり顔を隠した踊り手たちが、ゆったりとした所作で歌い踊り歩く情緒豊かな祭だそうです。

こちらの作品は、参考にされた写真よりも明暗のコントラストを少し強めて描かれています。それにより、二人の踊り手が夜の闇からほのかに浮かび上がるような印象が生まれ、一目で何が主役なのか分かるようになっています。背景には大勢の観客が描かれているものの、主張しすぎない筆致によって舞台の空気だけが静かに残り、あくまで踊り手たちの美しいシルエットに目が導かれます。
画像では見えにくいかもしれませんが、編み笠には網目の密度を出すために、油彩の表面をボールペンで引っ掻くように線を重ねたり、絵の具を削って質感を際立たせるなど、細かな技術が施されているのがお分かりになるでしょうか?厚みのある着物には絵の具をたっぷりのせ、絵の具の厚みで踊り手の二人がより前に出てくるように工夫しています。
紺一色の股引に法被姿の男性の腕はしっかりと太く、逞しい存在感を放つ一方で、白い着物の女性の指は、しなやかで柔らかく、わずかな動きに宿る情緒が描かれています。顔の見えない踊り手の感情が、指先で表現されているのでしょう。踊りという絶えず動き続けるものを留めた画面からは、鑑賞時の余韻から三味線や草履が地面を擦るかすかな音さえ聞こえてくるようです。

野中さんはご多忙な中、月に1〜2回という限られた時間で制作を進められていました。限られた時間だからこそ、その着実な一筆が、深く抒情に満ちた一枚につながっているのだと思います。

今年も1年間、大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願い致します。

強烈な色彩・不安定なリズム

坂井 油彩

いよいよ年の瀬が迫ってきましたね。今日と明日、2日続けて大竹が作品紹介をさせて頂きます。
こちらの油絵は、大学の課題として提出するために描いていました。白い陶器のものを明暗または色彩を重視して絵画制作するというもので、キャンバスも30号とかなり大きなものとなっております。

カナコさんは色彩に対する感受能力に優れているので、今回は色彩を重視した構図で制作することになりました。エネルギッシュな暖色の配色の中に影として寒色が使われているのがなんとも魅力的で強烈な印象を与えます。

一定ではない筆使いもまた面白いですね。それぞれ物として形を与えられていながらも、その色彩だけを見ていると別の景色が見えてきそうです。テーブルや陶器は細かい色の変化と筆使いに対して、背景は単調な平面に仕上げて対比となっており、全体のバランスが取られています。この背景の色幅も一定ではなく、歪みを持って描かれています。力強い色彩と、この不安定にさえ見えてくるようなリズムの組み合わせが不思議と調和しています。

今後も色彩をテーマに制作を続けていく予定ですので、来年はどのような作品が出来上がっていくのか楽しみです。 

大迫力!ゴジラ上陸

林 油彩

年末ですが通常運転のマユカです!今回は林さんの作品をご紹介していきたいと思います。
大迫力のアングルでゴジラを描かれました。炎によって照らされた表皮と、真っ黒に輝く影が生み出したコントラストがハッキリとした力強い印象を与え、ゴウゴウと燃え盛る炎によって逆光になることで「大怪獣」というモチーフのなんとも言えない怖さとかっこよさを際立たせています。映画のワンシーンのような迫力は、背中側、さらには下から映したアオリの構図を用いているからこそ出るもので、あえて目立つ正面をメインにしなかった林さんの思い切りの良さがとてもいい方向に作用しました。どうしても「メインは顔」と思ってしまいがちな気持ちを抑えて、描きたいものをより魅力的に表現するために一番いいアングルを選ぶ…それはモチーフを多面的に捉えている証拠だと思います。

ちなみにこちら、なんと林さん初めての油彩です。ペインティングナイフを多用し、大胆なマチエールを付け、ごつごつした表皮や炎の勢いを表現しました。「描き方を教わっていないから分からない」といった指示待ちの姿勢ではなく「まずはやってみよう!」という前向きな度胸がないとできない技法です。油彩特有の、失敗しても上から何度だってやり直せるという特徴と林さんのチャレンジ精神が合っていたのかもしれません。

アトリエ内で乾燥中のこの作品を最初見た時、私は「かなり絵を描き慣れた人が制作しているのだろう」と思っていたのですが、まさか初挑戦の画材だったとは驚きでした。初めてでここまでのびのびとした書き方ができるのであれば、使い慣れてきた時にきっととんでもない作品を生み出してくれるのではないか…と、今からワクワクが止まりません。これから林さんが制作する油彩画はどう進化していくのか、目が離せませんね。

センス光る初油絵

山本 油彩

大志です!みなさんはクリスマスをどのように過ごされましたか?気づけば今年もあっという間の一年でしたね。

私がブログを書かせて頂く今年最後の方は月曜クラスの山本さん、こちらの油絵作品をご紹介します!
実は山本さん、今回が初めての油絵制作。それにもかかわらず、画面からは迷いのない筆運びと落ち着いた完成度が伝わってきて、「本当に初めて?」と疑ってしまうほどの玄人感があります。描くこと(絵具を置いていくこと)を楽しんでいる様子が、そのまま作品に表れていますね。

日本の住宅街の一角を切り取ったこの作品は、画面の約7割を占める緑豊かな植物と、3割ほど覗く空や雲のバランスがとても心地よく、季節や時間帯、そしてその街特有の空気感まで感じさせてくれます。単なる写実にとどまらず、描き進めながらさまざまなタッチを試し、自分に合った表現を早い段階で掴めているからこそ、こんなにも自然で優しい雰囲気が生まれているのだと思います。この空気感は、まさに山本さんならではの個性ですね。

細部に目を向けると、カーブミラーに映り込んだ風景がとても丁寧に描かれているのも印象的です。目の前の景色(実像)とミラーの中の景色(虚像)とで、描き方やタッチをさりげなく変えています。鏡に描き込まれた小さな看板の数々も含めて、見どころ満載の仕上がりです。

また、画面中央右に描かれた果実が一つひとつ微妙に表情を変えていたり、遠景の木々と手前の植物とで情報量をコントロールしていたりと、初制作とは思えないほどバランス感覚の良さが光ります。油絵具の扱いのコツを掴んでからは、見るたびにぐんぐん完成へと近づいていく様子が感動的でした。お見事です!
現在制作中の花瓶の油絵も、すでに完成形が見え始めています。これからも期待しています!

はやさの中にある確かさ

置田 油彩

冬の時期は3倍眠気を感じます、ナツメです。本日は水曜大人クラスより、置田さんの作品を3枚ご紹介します!いつも映画のポスターやご自身で撮影された写真などを元に人物を描かれています。

置田さんの作品を語るうえで欠かせないポイントは、制作のスピード感です。過去のブログで一度に数枚ご紹介しているほどの早描きですが、決してどこかをおざなりにしているわけではありません。描いている最中にお話ししていると、「髪の毛はあとで調整する」「ここが終わったら次はここ」と、次に手を入れる場所がはっきり決まっていることが多くあります。完成の形が頭の中にあるので、迷いなく手が動くのでしょう。今回の作品たちも、人物の佇まいを見事に描写しつつも省略する部分と書き込む部分の塩梅が巧みです。

そしてさらに、毎回何かしらの挑戦をされています。一番上のバーでの楽し気なショットは、二人の関係性を距離で表現する為、背景の壁に形のリズムを作り遠近感を出しました。この空間の濃淡がなければ、殺風景で面白味のない絵になってしまった事でしょう。左下の横顔の作品では髪の毛の絵の具を厚めに盛り、マチエールを使って情報の幅を広げたり、右下の女性の作品では、背景に緑の絵の具が掠れたような表現を取り入れて画面に軽やかな空気感をつくったりと、人物の佇まいに合わせて、絵ごとにタッチや描き方を変えているのです。貪欲に表現を追求する姿勢が、完成作品から伝わってきます。

3枚すべてに共通しているのは、描かれている人物への視線のやさしさです。ただ似せて描くのではなく、それぞれが持つ雰囲気や存在感を丁寧に拾い上げているからこそ、どの作品も落ち着いた説得力のある表現になっています。
早描きという制作スタイルの中でも、人物への向き合い方がぶれないところが、置田さんのいちばんの魅力だと思います。今回の3枚も、その積み重ねがしっかりと感じられる作品でした。

クリスマスのときめき

御影 油彩・ジュエリーシール

メリークリスマス!お久しぶりです、サヤカです。本日は大人クラスの御影さんの作品をご紹介します。

クリスマスイヴの今日にぴったりな作品ですね!煌びやかなツリーに心が躍ります。かなりマチエールを付け絵の具を盛って、飾りをボリュームたっぷりに描かれています。少し視点を下げローアングルで描いていることで、臨場感が生まれ、ツリーを見上げた時のワクワクが引き立てられますね。パースに合わせて、オーナメントも丁寧に描かれており、細部へのこだわりを感じます。

特筆すべきは、最後に装飾した『ネイル ジュエリーシール』。小原先生のアイデアだそうですが、配置や見せ方には、ご自身の感性が存分に発揮されています。縦のラインがイルミネーションのようにも見えて光が動いているよう。静止画でありながら、キラキラとした動きが加わり、作品全体が一層華やかさになっています。また、背景の色彩を暗くすることで、ツリーの賑やかさをより際立ち、寒空のなかで煌めくツリーの雰囲気が見事に表現されています。

子供の頃に感じていたクリスマスへのときめきを思い出させてくれるような作品でした。みなさんも素敵なクリスマスをお過ごしください!

日常に宿る美

大澤 油彩

じりじりと年末が近づいて焦っています、夏波です!今回は水曜夜間クラスの大澤さんの作品をご紹介します。こちらの作品はご自身で取られた写真を元に描かれました。ご自宅近所の、失礼ながらさしてこれといった特徴のない街角ですが、作者がここに暮らしているのだな…と思わせるスナップです。

しかし「今日も一日頑張ったなぁ」「帰ったらビール飲もう」のような現実的な生活感が強く出過ぎていないのは何故でしょう?大澤さんが日常で大切にされているときめき・小さな発見でも心を動かせられる繊細な心を持たれているからではないでしょうか?
鮮やかな色彩と油絵具の大胆なマチエールから、その感情が伝わります。落ち着いた雰囲気でありながら、ザクザクと置かれた絵の具がこの絵の魅力になっているのです。空気感がとても自然でありながら写真では感じることのできない暖かみや哀愁が素晴らしいですね。
夕暮れ景色の中にチラチラと見える青空が良いアクセントとなり、画面全体の完成度をより一層あげて味わい深い作品になっています。雲の描き方もただぼかして描くのではなく、見ていて気持ちの良い形を選びしっかりと絵の具を乗せているところがとても好印象です。
逆に建物の描写は少ないですが、建物は黒でベッタリと描かずに夕暮れのオレンジの反射を丁寧に観察されていて描かれている所にこだわりを感じます。メインである空を目立たせるために建物は少ない手数で確実に決めています。夕暮れ空を描きたいという素直な絵が見ている側にも好印象を与えるのでしょう。

単調な構図の絵ではありますが、日常の一部をパチッと切り離したような視点が伺えます。鑑賞者全てに身近な風景と思わせるような作品で、キャンバスの外にも風景が続いてると想像ができる完成度ですね。
私も夕暮れを眺めたり日差しを観察するのが好きなのですが、大澤さんのこの絵には素直に美しいと思った様子が画面から感じられ、共感ができる魅力的な絵になりました!

溢れる生命力

小川 油彩

ひとみです。今回は大人クラスの小川さんの油絵をご紹介しようと思います。

森の中で薪の上に座り込む猫。木漏れ日のような暖かな光が差し込み、薪や緑に柔らかな明るさが宿り、画面全体が穏やかな空気に包まれているのが印象的ですね。深い緑から鮮やかな黄緑まで使うことで森の木々の奥行き感を表現されています。油絵ならではの重ね塗りの魅力が最大限生かされています。画面の下半分には薪が密集していて、重い色が集まる構図ですが、小川さんは固有色に囚われずに様々な色を乗せることで、重たさより木の柔らかさを感じられるようになっています。生命力がみなぎるような木の断面も素晴らしいですね。小川さんのセンスが、この色彩感覚が軽やかさ・リズム感を生み出したといえるでしょう。

中央に座り込む猫の目は背景と同じ緑でありながら、その鋭い眼差しや輝きを持ち、画面を引き締めています。まるでなにかを捉えて狙っているかのような緊張感があり、今にも飛びかかってきそうですね。「一体何を狙っているのだろう?」と想像を掻き立てさせられます。

全体的に派手な表現ではないのですが、光感や緑の生き生きとした美しさ、そして何かを狙う猫の鋭い視線が生み出す静かな緊張感、それらが総合的に積み重ねられ魅力的な作品となっていると思います。

境目の風景

秦野 油彩

大竹です。秦野さんはご自身で撮影された風景写真をもとに描かれていますが、実際の風景はここまで紫ではありません。作者の目と思考を通じ、キャンバスの上で再構成された風景と言えるでしょう。
画面全体を支配するのは、青紫と赤紫が溶け合うような色調です。黄昏時という、昼と夜の境目の時間を描きながらも、その空気はどこか夢のような静けさを帯びています。見慣れたはずの日常の風景が、この絵を通して見ると、不思議な感覚を呼び起こされるようです。そこには哀愁や不安、そして望郷のような想いまでもが滲み出ています。

夕陽に照らされた家々の黄色が、青紫の中で印象的なアクセントとして輝いています。空はほとんど描かれていませんが、川面へ反射して白く輝いており、手前の堀の陰とのコントラストが画面に奥行きを生み出しています。
また、奥へ注目してみると、山々が赤みを帯びて描かれています。通常、遠景は青く霞ませて空気の層を表現(空気遠近法)しますが、ここではあえて赤を用いる大胆な選択が、作品全体の独特な空気感を形づくっています。元のお写真の風景がどのようなものだったのか、気になってきますね!

展覧会では色彩の美しさにほれぼれと立ち止まっているお客様を何人も見かけました。見るたびに異なる感情が立ち上がるような、穏やかな余韻を残す1枚です。