躍動の瞬間

佐々木 透明水彩

雨が続き少し憂鬱になっているひとみです。今回は大人クラスの佐々木さんの透明水彩の作品を紹介していきます。

モデルになっているのは、なんと息子さんです。もともとはこのモデルの息子さんのお兄さんを描かれていましたが、こちらの弟さんが生まれてからは作品の主役になることが増えました。ミオスに19年通われていて絵の完成度の高さはもちろんですが、長年の積み重ねによって確立されたご自身の画風を感じられます。

今回の2作品は、どちらも透明水彩とは思えない程力強く、描き込みの深さが印象的です。左側の作品は、パワフルなピッチングの瞬間を描いたものです。今にも豪速球が飛んできそうな迫力があり、人体の動きをよく観察してデッサンされていることが伝わってきます。左足を軸にして右足を浮かせたフォームは、輪郭線のシルエットだけで見ると不思議な動きにも見えますが、陰影や前後感を感じられる色使いによって、一瞬の動きが捉えられています。上半身の捻りや日差し当たり方によって生まれる光と影のコントラストが、躍動感をより一層引き立てています。
また表情にも目を引かれます。目線、そして歯を食いしばる表情から、この1球にかける強い思いがひしひしと伝わり、子を知る親だからこそ理解できる、その瞬間ならではの感情を追求して描かれたのではないかと感じました。

右側の作品は運動会でソーラン節を踊る姿を描いたものです。この踊り特有の腰を落として踏ん張るエネルギッシュな勢いがよく出ています。また主役の息子さんだけではなく、周りの子たちの動きまでにも細かな工夫がされており、1人1人異なるポーズや重心の違いが描き分けられて、見比べるのが楽しくなりますね。応援している後輩たちの自由な配置も低学年ならではの奔放さで、まるでホームビデオを見ているかのようなリアリティが生まれています。

特筆すべきは、透明水彩の特徴を最大限に生かした背景の表現です。主役から遠ざかっていくにつれて色味を淡くし、描写を柔らかくすることで自然な奥行きを出しています。メリハリをつけ描き分けることで主役の存在感を際立たせました。
特に運動会の絵では、後列の子たちを徐々に淡くふわっと表現し、こんなに大勢の児童たちをなんなく描き切る佐々木さんのテクニックを感じます。校庭の広さがよく分かります。

どちらの作品からも息子を温かく見守る父親の気持ちが伝わります。何事も全力で取り組む姿が生き生きと描かれており、見ているこちらまでエールを送りたくなりました。

動物の生態・地球の神秘

佐藤K 透明水彩

大志です!今日は台風が東京に直撃しましたが、きちんと朝から学校に行き、びちょびちょになりながらも無事学校に辿り着けました。こんな日は休むべきだったかな?

気を取り直して、今回は佐藤さんの水彩画をご紹介します!こちらの3枚は、どれもアフリカの風景をモチーフに描かれた作品です。同じテーマでありながら、それぞれ異なる色彩や光の表現が用いられており、まるで時間や季節が移り変わっていく様子を見ているように感じられました。

1枚目(一番上)の作品では、夕日に照らされたサバンナを背景に、インパラの家族が描かれています。オレンジや黄色を中心とした温かな色彩が印象的で、木々の柔らかなにじみと、手前のインパラの力強いシルエットとの対比が見事です。背景をあえてぼかしながら描くことで奥行きが生まれ、インパラたちの存在感がより際立っています。

2枚目(左下)の作品は、川(湖?)のほとりに集うさまざまな動物たちが描かれています。キリンやゾウをはじめとした動物たちが一本の地平線上に並び、その向こうには鮮やかな空が広がります。黄色や緑、紫、青といった多彩な色が重なり合い、水彩ならではの透明感が感じられます。水面に映り込む景色も美しく、爽やかで心地よい朝日のようにも感じます。

そして3枚目(右下)の作品では、同じく川を前景にした構図の中で、主役がゾウの群れへと移り変わっています。親ゾウに寄り添う小さなゾウの姿も見られ、群れの温かさや生命の営みが感じられます。暗い空には力強い光が描かれ、その光が水面へ反射することで幻想的な雰囲気を生み出しています。2枚目と似た構図に挑戦しながらも、色彩やモチーフの変化によってまったく異なる印象に仕上がっているのが興味深いです。

3作品を通して感じたのは、アフリカの雄大な自然と、多様な動物たちが共存する風景の魅力です。短時間で制作したことによる、粗く大胆なにじみや重なりの表現が思い切りよく、かの地の空気や光を想像させます。事実を記録するだけでなく、佐藤さんのトリミングや構成によって、ドキュメンタリー映画を見ているような感情を揺さぶる連作になりました!

記憶と重なる絵画

成松 透明水彩

本日が誕生日の大志です。昨年二十歳になったと思ってから、あっという間の1年でした。今年も頑張りますのでよろしくお願いします!

今回ご紹介する成松さんの透明水彩作品は、前回、4ヶ月前に描いた絵の続きのような一枚。(前回の絵はこちら)イギリスでのピクニック風景でしょうか?広がる草原の中を歩く三人の姿が描かれていて、鮮やかな緑の風景に対して空には重たそうに広がる雲。その合間から覗く青空が印象的で、天気が移り変わる直前のような、少し湿度を含んだ空気感まで伝わってくる作品です。

草原部分には細かな筆致が重ねられており、水彩特有の滲みや色の混ざりによって、風に揺れる草の柔らかさが表現できています。一方で空は、筆に水をたっぷり含ませた大胆なにじみを活かし、雲の厚みや風の流れを感じさせます。濃く色を置く部分と、あえて白い紙を透かしたり残している部分とのメリハリが美しいですね。またにじみと対比する、水彩の約束の一つ「乾く前に触らない」という場所も作り、瑞々しい透明感を活かした魅力が画面全体に広がっています。

前作同様に人物の描き方も印象的で、表情を細かく描き込まず、見る人それぞれが物語を想像できる余白が生まれています。家族での散歩なのか、旅の途中なのか、それとも休日の何気ない時間なのか、、、静かな風景の中に、小さな会話や足音まで聞こえてきそうです。

どこかヨーロッパののどかな丘陵地帯や田園風景のようでもあり、同時に、昔どこかで見た記憶の景色のようにも感じられ、懐かしさや愛おしさを覚えます。見る人自身の心の中の風景を投影させて、思い出と重なりながら穏やかな時間を運んでくれる作品。心に直接語りかけてくるようです。

グレートーンの響き合い

田 透明水彩・ペン

サトルです!今回は田さんの水彩画をご紹介いたします!
イタリア旅行の中で訪れた、ポンペイ遺跡を描かれました。ポンペイ遺跡は西暦79年に起こったヴェスビオ火山の大噴火により、灰に埋もれた町の遺跡です。一晩のうちに町全体が完全に埋もれたため、その時の生活が生々しく残っています。火山灰に埋もれていたため建物や屋内の美術品がほぼ完全な状態で残っていて、考古学的にとても価値のある遺跡との事。

今回、田さんは先にペンで形を描写し、水彩で色を塗っていくスタイルで制作されました。よく見てみると、輪郭や石のひび割れなどがペンで描かれていますね。黒い線で細かく描いてから彩色するのは日本画と通じるところがあります。日本画は元を辿ると中国壁画に行き着く描き方ですので、同じく中国や台湾でもペンで描いてから水彩で描く手法が流行っています。

水彩絵の具の塗り重ねが、ポンペイ遺跡の石造りの質感をよく出し、少し脱色した様な色味からは、大噴火で亡くなった人々の悲しみが伝わってくる様な気がしますね。
光の表現も見事です。左上から差し込む光を出すために、屋根の下や奥の廊下に強い暗さを乗せたおかげで、イタリアのカラッとした光の雰囲気がよく出ています。水彩絵の具は暗い色のコントールが難しいのですが、ペンであらかじめ形を描いていたおかげで、ぼやけない様にしっかりと塗り分けられました。
ペンで描いたメリットは他の部分からも感じられます。特に手前の石造りの浴槽の様な構造物を見てみると、少し苔むした様な石の質感がとてもリアル。絵の具で塗り込んだ部分を水で洗って作った質感ですが、ペンで描いた輪郭が残るので、石の硬さと、ざらっとした質感が上手く両立出来ています。

ただ写実的に写真を模写するだけではなく、作品としての雰囲気作りも魅力的。正面の壁に目が行く様に彩度をコントロールしてあり、とても見やすい画面構成が作られています。空に関しては特に演出が上手くいっていますね。鮮やかな青を塗ってしまうと、遺跡のグレートーンが負けてしまいますから、彩度を下げて少し曇りっぽい雰囲気に描いています。よく見てみると、雲に茶色が入っていたりして、味があります。

作品を見る時、絵が上手いな!と感じるポイントの一つに、グレートーンを上手く使えることがあります。彩度の高い綺麗な色は魅力的ですが、全体を鮮やかな色で描いてしまうと目が痛くなる様な絵になってしまいますよね。夜ご飯がトンカツだけだと胃もたれ不可避。やはり千切りキャベツがないと苦しいのです。鮮やかな色だけでなく、それを補助するグレートーンが大切。田さんの作品は明るいグレーも暗いグレーも上手く扱えていますから、非常に参考になると思います。

色鮮やかな

大城 透明水彩

大志です!大学の課題講評まで残り1週間となり、追い込みの時期に入りました。最近は一日のほとんどを学校で過ごしていて、気づけば12時間以上制作している日も増えてきています!

今回は、大城さんが旅先で撮影した写真を元に描かれた水彩画をご紹介します。ツヤのある緑のトレーに乗せられたスイーツとアイスコーヒー、上に添えられたドライオレンジが目を引く、とても爽やかなモチーフです。

まず印象的なのは、画面全体に広がる鮮やかな色彩です。ウィンドウ越しの青い背景や緑のトレーなど、一見強い色同士の組み合わせですが、水彩絵具特有の透明感によって軽やかにまとまっています。特にドライオレンジと、白いソーサーに落ちる電球色の黄色味がかった光が、暖かい色味の差し色となり画面の中心で存在感を放ち、その影の部分では補色の青を利用し、洗練された陰影が作られています。
この配色はお互いを引き立て合う効果があるので、影の色として補色を利用するテクニックを覚えると、深みを出す幅もますます増えていきますよ!

また、水彩ならではのにじみや筆跡も魅力的です。窓辺から差し込む柔らかな青や、テーブルに反射する明るさがラフに表現され、作品全体に心地よいリズムを与えています。対照的に見切れたコーヒーグラスの透明感や、金属のスプーンのさりげない反射、ドライオレンジの少し乾いた表面などは丁寧に描き、モチーフごとに描き分けられた質感の違いにも惹かれます。

旅先で過ごしたゆったりとした時間を切り取り、記憶を作品の中に閉じ込めたように感じます。風景そのものではなく、ふとしたテーブルの一場面を描くところにも、女性らしい視点の面白さが表れているのではないでしょうか?見ているこちらまで、カフェでひと休みしている気分になってきました。

積み重ねること

菊地 透明水彩

サトルです!最近暖かくなりましたね。先日寒いと思って厚着して外に出たら汗だくになりました、、、。あちこちで桜が咲いていて、薄着で外に出かけたくなります。今回は少し前の季節『梅』を描いた菊池さんの水彩画をご紹介いたします!

同じ場所からの景色を4枚も描かれました!一枚描いても納得せず、反省点を改善しながら描かれたのでしょう、それぞれで違った魅力が出ていますね。
後半に描かれた下段2枚は風景の魅力だけでなく、絵画としての魅力まで出す事が出来ていますので、詳しく見ていきましょう!

梅の色を美しい発色を保ったまま絵の具で再現するのは中々難しく、よくグレーに沈んでしまったり、ピンクが強すぎて見えたりと、中々美しい色になりません。それに加えて例え正確な色で塗れたとしても、そもそもの色が薄いので絵の主役になるほどの派手さが無く、中々見応えのある絵になりにくいのです。菊池さんもおそらくそこに苦戦されたのでしょう。1〜3枚目は梅よりも周りの草や土・奥の森の色が強く、そちらに目が行ってしまいます。それに対して、4枚目(右下)では背景の緑を抑えて、中心にある梅の周りだけ青みがかった緑にする事で、自然と目が行くように設計されていますよね。これは花に限らず、明るいモチーフを描く時全てに応用できるテクニックで、主役の周りの背景を暗めにする事でコントラストを高め、周りよりも目立たせる事ができます。

3枚目の作品(左下)ではもう一工夫されており、手前を紅梅に変え、奥行きを感じるような作品になりました。
部分的に赤い花に変えることは、良いアクセントになります。これは遠近感を出すためでもありますが、もう一つ「絵の充実感」を出すという重要な役目を担っています。他の3枚と比べると明らかに賑やかに感じますし、明るい春の雰囲気をより強く感じますよね。

こちらの新作は菜の花畑。梅の長文を書いた後に小原先生から届けられた画像の為、解説は割愛させていただきますが、日付を見ると短い期間で4枚描かれていることが分かります。
同じモチーフを何度も描くことは根気が入りますし、何より絵を描く楽しさが枚数を重ねる事に薄れていきます。しかし、一番絵が上手くなる方法でもあります。予備校で同じ石膏像を何度も描いたり、人物を繰り返し描いたりと、地道に練習を重ねる事が大切なのは、勉強やスポーツに近いものなのでしょう。諦めずに積み重ねた4枚の作品は、菊池さんの強い忍耐力を物語っています。

細部へのこだわり

川上 透明水彩

サトルです!本日3月14日は東京芸大の合格発表日。発表される前の極度の緊張を今でも思い出します…..。今回ご紹介するのは、川上さんの水彩画です。

ツーリングの旅先の風景を爽やかな青で描いていて、海風の涼しさを感じる作品に仕上がっています。手前のバイクから道路、海、対岸までの距離の表現は非常に丁寧で、奥にかけて小さくなる雲の流れはもちろんのこと、ガードレールを暗くして手前のバイクのカゴがはっきりと見える様に対比をつけるなど、遠近感に関しての様々な工夫を感じますね。

濃淡がハッキリとした水彩画を描くには、水の量と塗る順番、そして絵の具の濃度を意識的にコントロールする必要があります。淡いぼかしの表現よりも、鮮やかさや力強さを強調したスタイルにする為に、絵の具の原色に近い色を選択し、思い切って乗せていきます。ただしこの技法は難易度が高い為、克服した川上さんの実力は相当なものと言えるでしょう。

また水彩絵具でバイクの様な複雑なモチーフを描くのはかなり難しいのですが、川上さんは以前から野球スタジアムなどの細かい風景を描いていますからお手のもの。バイクの下描きも1時間程度であっという間に完成していましたし、絵の具もはみ出したりせず細部まで非常に高い完成度となっています。

全体の空気感と精密な描写の両立は、風景絵画としての完成系でしょう。空気感は練習である程度身につけることが出来ますが、川上さんレベルの正確なデッサンは、ただ練習するでけでは身につきません。モチーフに対する愛が無ければここまで辿り着けないと思います。ただ何となくモチーフを選んで描くのを続けてると中々身が入りませんし、作品に対するこだわりが無くなってしまいますから、自分が好きなものを描き続けることが、上達する最大の秘訣だと思います。

黒を恐れずに

松尾k 透明水彩

サトルです。最近暖かくなり、暑がりの僕は暖房いらずです。 今回ご紹介するのは松尾さんの作品になります。まだ水彩画を初めて数枚目とは思えない程の迫力を感じる作品です!

槍を構えた騎馬兵を、燃え盛る戦場を背景に力強く描かれています。地を蹴り砂埃を立てながら走る馬の姿は真に迫るものがあり、実際に動いている姿を想像させる程。 炎を背景に描くのは逆光かつ暗い色をしっかり使わなければならず、暗さの作りづらい水彩絵の具と相性が悪いのですが、松尾さんは下描きのデッサンで鉛筆のトーンを強く塗っていた上、さらに黒で影面を厚く塗り重ねる事で逆光感と騎馬兵の立体感を両立させました。 よく絵の具を初めて使う方に、「黒を使うと色が濁って絵が潰れてしまう」と言うのですが、こちら作品のようにダークな世界観を作る場合でしたら、黒を使わないと狭い色幅で弱々しい表現になる上に、立体感を出すことも出来ません。影側の世界の中で、特に暗い部分には恐れずに最初から黒を使ってみましょう。

背景を炎の光と砂煙の様子を同時に表現するため、様々な色を薄塗りで重ねて描いており、さらには画面端を暗く、中央を明るくして主役の逆光感を引き立たせ、見事に絵全体のバランスを取りました。 背景が多種で難しい質感のモチーフの場合、個々を描こうと必死になってしまい全体のバランスを崩しがち。筆さばきによるタッチの使い分けは施しても、色を変えたり絵の具の厚みを変えないことを意識すると良いでしょう。自然と鑑賞者の目線が騎馬兵に集まるような手助けは、描き過ぎない事が重要なのです。

水彩画といえば明るくて美しい景色を表現する方が多いですが、松尾さんのように思い切った暗さを作れるようになると、さらにドラマチックな作品が描けるようになります。皆さんも是非チャレンジしてみてください!

筆で年月を描く

釘宮 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは釘宮さんの水彩作品です。

堂々と枝を伸ばした貫禄ある大樹。動かぬ植物でありながら、そのうねり伸びてく幹からは生命の流動を感じさせます。長い年月を重ねてきたことが幹の表情からも伝わってきますね。空いっぱいに広がる枝や、複雑に重なった樹皮の描写からは、この木が何十年、あるいはそれ以上の時間をこの場所で過ごしてきたのだろうと想像させられます。しかしそこに威圧感はなく、静かに町の営みを見守っているかのような、どこか神聖な佇まいがあります。側にある小さな祠もこの大樹を祀るものなのでしょうか。この木がただ自然の中に立っているのではなく、町の中で人々の生活と共に長い時間を過ごしてきた存在であることが伺えます。心静かに眺めていると、まるでこの木の前に立っているかのような気持ちになりますね。

逞しい幹から伸びる葉は、細やかな筆使いによって葉の擦れ合う音までもが聞こえてくるようです。光が当たる左側は薄く柔らかく、陰となる右側は葉の重なりも相まってより密度の高い画面となっています。水彩ならではの透明感が活かされていますね。
左下の道から祠、そして大樹から空へと視線が広がるように導かれる構成も美しく、場所の広がりや空気感が感じられます。遠くには淡く山並みも描かれており、行ったことのない場所なのにどこか懐かしさを感じさせる、まさに日本の原風景ですね。

最後まで粘り強く描き込まれました。筆使いの一つ一つから、制作姿勢が伝わってくるようです。今後の作品も楽しみにしております。

移り行く景色

豊嶋 透明水彩

1月は海外に留学している兄の所に遊びに行っていたせいでお休み頂いており、お久し振りとなりました大志です。
今回は豊嶋さんの透明水彩による風景画をご紹介します。水辺に映り込む木々と、色づいた季節の移ろいを描いた作品です。

画面いっぱいに広がる木々の鮮やかな色彩が印象的で、赤やオレンジ、緑といった複数の色が重なり合いながら、豊かな季節感を生み出しています。水面にはその風景が反射するように描かれ、現実の景色と、その揺らぎを含んだもうひとつの世界が同時に存在しているような、不思議な奥行きを感じさせます。

透明水彩ならではのにじみや重なりを生かしながら、色を大胆に置きつつも全体の調和が崩れていない点に、豊嶋さんの色彩感覚の確かさが伺えます。特に水面部分では、形を細かく描き込みすぎず、彩度を落とした暗い色と水平にひく荒い筆致によって反射の印象を表現しており、水のゆったりと流れるさまや静けさが自然に伝わってきますね。

水彩を始めたばかりの豊嶋さんは、最初に静物画を制作していました。モチーフを一つひとつ丁寧に捉える作品と、こうした風景画とではアプローチは異なりますが、色の選び方や画面全体のバランス感覚といった点では共通する部分も多く見られます。それぞれの制作で培われた感覚を行き来しながら、表現の幅を少しずつ広げていってください。
そうしている内に、自分がどんな色や構図・モチーフに惹かれているも見えてくると思います。いつも新しい発見を楽しみながら制作していらっしゃる豊嶋さん。そんな姿勢も作品の魅力となっていくでしょう。