メイキングではありません

菊地 透明水彩

大竹です。皆様、シルバーウィークはいかがお過ごしになりましたか?こちらも一週間ブログをお休みさせていただき、ありがとうございました。本日からまた、皆さんの作品をご紹介していきたいと思います。

今回ご紹介させていただくのは、菊地さんの透明水彩作品です。こちらは制作のメイキングではなく、同じ風景を描いた六枚の水彩画です。(左上が最初に描かれたもので、右下が最も新しい作品です)
菊池さんは毎回、同じ風景を一度描いて終わりにするのではなく、「次はここをもう少しこうしたい」と、納得のいくまで何度も同じ場所を描き続けていらっしゃいます。(以前の作品はコチラ)六枚をこうして並べてみると、その変化がとてもよく分かりますね。
前の制作で感じた課題を次の作品で修正し、さらにその結果を踏まえてまた描き直す。その積み重ねによって、少しずつ作者が目指している風景へ近づいていく様子が見えてきます。
例えば、水の流れひとつをとっても、白く泡立つ部分や水面の青の入れ方が少しずつ変化しています。最初の作品から比べると、後の作品になるほど水の勢いや量感が強く感じられるようになっていますね。一方で、周囲の木々や岩についても、ただ形を描くのではなく、陽の光を受けた葉の明るさや、木陰の深い緑など、光によって変化する色を捉えようとしていることが伝わってきます。
水彩は、一度置いた色を油彩のように完全に覆い隠してしまうことが難しい画材です。そのためどこを残し、どこに色を重ねるかという判断が重要になります。回を重ねるごとに色の重なり方や明暗のつけ方が変化しているのを見ると、風景だけでなく、水彩という画材そのものへの理解も深まっているように感じます。

ちなみに小原先生によると、こうして納得できるまで同じ絵を何度も描くという制作をされるのは殆どが男性なのだとか。思えば、私も同じモチーフを連続して何枚も描き続けた記憶はありません。性別だけで制作傾向を語ることはもちろんできませんが、一つのことを突き詰めていくという姿勢には、作者のそれぞれの個性が表れていて面白いですね。
六枚を並べて見ることで、その行錯誤そのものが一つの作品のようにも感じられます。左上から右下へと視線を移しながら、作者の理想の風景へ近づいていく過程も、ぜひ楽しんでご覧ください。

不透明水彩ならではのタッチ

桂吾 不透明水彩

晴れたのは月曜のみ、また雨続きで嫌になってしまいますね、大志です。
今回ご紹介させて頂くのは、桂吾くんが豪雨の中の歓楽街、怪しいネオンの光る大きなビルを空想で描いた、迫力ある不透明水彩の作品です。

桂吾とは、私が小学生から中学生の頃にミオスへ通っていた時に、同じクラスで絵を描いており、その頃からの友達です。同級生でありながら、私が美大に行ったということで、一般大学生の桂吾の作品についてコメントを書くということは、なんだか非常に不思議な気持ちで感慨深いです!

画面全体に雨が激しく降り注ぐ様子が表現されており、上の方はもやまで掛かっています。雨の線は太さや長さ、間隔がそれぞれ異なり、手前から奥まで何層にも雨が降っているように感じられます。ザーザーという雨音まで聞こえてきそうな勢いですね!

そして何といっても目を引くのが、画面いっぱいにそびえ立つ迫力のある不夜城です。建物を構成する線にはあえて揺らぎや歪みがあり、それぞれの階や看板、壁面が複雑に重なり合っています。画面の外まで街が続いているようにも見え、建物に囲まれた都市特有の圧迫感や密集感が伝わってきます。

色使いにも注目です。黒やグレーを中心とした薄暗い街並みの中に、黄色、ピンク、赤、青緑などの鮮やかな色が散りばめられています。特にネオンや看板の色は周囲の暗さに埋もれることなく、雨の中でもギラギラと存在感を放っています。この少し毒々しくも鮮やかな色彩が、華やかさをたたえる響きと、眠らない異様さとして混沌と交じり合っています。

また、不透明水彩の特徴を生かした絵具の重なりも面白いところです。暗い色の上から明るい色を重ねたり、そのさらに上から雨の線を描いたりすることで、建物、光、雨という異なる要素が重なって見えます。細かな部分では絵具のかすれや筆跡も残されており、それが雨によって霞んだ街の空気感にもつながっているように感じました。

一つひとつの窓や看板を細かく見ていく楽しさがありながら、少し離れて全体を見ると巨大な一つの街として迫ってくる。細部の描き込みと大胆な構図の両方が楽しめる作品ですね!豪雨という自然の激しさと、それでも消えることなく光り続ける街のエネルギーが一枚の画面の中に詰め込まれた、昔から憧れを形にする事が上手かった桂吾らしい作品だと思いました!

生き方を映し出す

黒木 透明水彩

サトルです。最近急に寒くなりましたね。インフルエンザも流行っているみたいですから、皆様も体調に気をつけてくださいね。今回は黒木さんの水彩画を2点ご紹介します。猫科の動物を描いた2枚の作品。描き方が全く違い、それぞれ別の魅力があります。

虎を描いた作品は、見せ場となる顔周りを描いたのち、無理に描き込まないでバランスよく仕上げられています。顔から段々と薄くなり背景へ溶け込む様に描いたおかげで、寝転びながらこちらを見つめる虎の、力強くも可愛らしい様子が生命力と共に伝わってきます。毛並みの質感も非常に魅力的で、短いけど柔らかい絶妙な毛の触り心地が視覚だけではなく触覚まで伝わってくる様です。
薄く描かれているので目立ちませんが、手前に出ている大きな手の表現が秀逸で、かなり少ない手数で虎らしい量感と毛並みの質感が捉えられています。よく見てみると絵の具の滲みを巧みにコントロールして毛の質感を表現しており、水彩絵の具への造詣の深さが見て取れます。

虎に対して猫の作品は画面端まで描き込まれており、階段や壁面は水彩絵の具とは思えない程の抵抗感。触れそうに思えてくるほど石の重さと肌触りが克明に描かれており、さらには苔が生えた濡れている場所の様子まで伝わってくる程です。猫の描写もかなり緻密で、毛を細い筆で丁寧に描きながら、模様の描き分けまで丁寧な仕事ぶり。虎に比べてかなり小さく描かれていますが、同じくらい細かい所まで描くことには驚きです。背景の重厚感のある質感表現と、猫の緻密ながらも柔らかさを感じる表現の対比からは、周りの事を気にしない自由な猫の生き方が想像できますね。

2枚が別の良さがありますが、どちらにも共通していることは、主役となる動物のイメージがよく伝わる構図と描き方をしている所でしょう。寝転がりながらも周りに注意を払う虎と、都会の中でのんびり中に暮らす猫。同じ猫科ですが生きている場所も生き方も全く違います。それらを無理やり同じ描き方で描くよりも、それぞれの魅力を引き出すために違った描き方をする事で、どちらも素晴らしい作品になったのだと思います。これは簡単な事ではありません。画像から見える表面的な事だけではなく、しっかりとその向こう側まで想像していなければ、ここまで生き物の魅力を引き出すことは出来なかったでしょう。モチーフと対話する事が、絵を描く上で重要なのかも知れません。

同じモチーフでも時間次第で、、

坂本 透明水彩

大志です!最近は大雨が続き、涼しくなったり、暑くなったりと、安定しない天気が続きますね。僕も大学が始まったので、体調管理には気をつけたいと思いますー!皆様も体調にはお気をつけください!

今回ご紹介する作品は、坂本さんの「藤」の花を描いた透明水彩画2作品でございます!
左が最初に描かれた作品で、右はスケッチのような描き方を練習すべく、2時間という限られた時間の中でササッと描き上げられた作品。見ての通り、左と右では明らかにタッチや色使いに違いがあり、どちらもそれぞれ魅力的ですね!!

左の作品は、優しく繊細なタッチ&丁寧な描き込みで、花びら一枚一枚に固有色を強く出しながら描写されており、ふんわりとした立体感が感じられます。全体としても広く枝を伸ばした奥行きある藤棚が非常に見事で、遠近感のある表現ですね。
透明水彩ならではの水の滲みを生かし、あえて曖昧にしている部分も心地よく、藤の花に包まれているような印象を与えています。

右の作品は、花びら一枚一枚を描き込むというよりも、一房ごとの立体感・まとまりを強く感じさせ、全体の光の関係性が分かりやすいです。しかるべきところにきちんと暗い色を乗せ、その一方で、花の隙間から差し込む光もしっかりと紙の白として残す。その明暗のメリハリによって、花が密集したボリューム感が生まれ、短時間で描かれた作品でありながら、藤が垂れ下がる重みまで感じることができるのです。

下書きを含め、すべてを2時間のうちに収めるのはなかなか難しかったのではないかと思います。ただ、こうして短いスパンでたくさん描くというやり方は、観察したものを素早く捉える力を身につける上でも、とても良い練習になります。描いたことのない素材や質感にチャレンジも良いですが、制作時間も思い通りに決められるようになると、ますますレベルアップできるでしょう!

白を生かして

月曜大人クラスの大城さんの水彩画作品2点を紹介します。どちらの作品も白くしたいところを意図的に塗り残していますので、先に透明水彩の白についてお話しします。

透明水彩では白い場所(明度の高い=明るい所)に白い絵具は使いません。それどころか、透明水彩では混色としても白は使わないのが基本なのです。明度が高い色をつくるには、水で絵具を薄めて作り透明感を生かします。
白くしたい部分は絵具を塗らないで、紙の白を残しておきましょう。筆で塗り残しができればそれに越したことはありませんが、白くしたい部分の形が複雑な時や、背景を一気に塗りたいときは、マスキングという方法もあります。ゴム状に固まる液体で、アトリエにもありますので、使ってみたい方はお声がけください。

淡い色を使いたい時は、先ほど水で薄めると書きましたが、実は薄めて作った色は、塗りムラや重ね塗り時の境界線が出てしまうことが多いので、そんな時は白を少し混ぜて作ってみてください。美しく塗れます。

白くしたい部分が小さな面積の場合、白い絵具をたっぷり使います。ただ透明水彩の白は、少し透け感があるので、真っ白にしたい時は不透明水彩の白や、アクリルガッシュの白をお勧めします。

大城 透明水彩

お待たせしました。大城さんのご紹介です!湖にかかる橋から見た風景、遠近感が伝わってくる作品です。まず目に映るのは、眩しいくらいに感じられる光の表現です。紙の白さを活かした、見事な表現技法ですね。ここまで美しく白さを残すのは、あらかじめしっかりと計画していないとなかなかできないことです。お見事です!!

また、光の表現だけでなく、木々の特徴も丁寧に描き込まれており、木の種類の違いまで読み取ることができます。幹の逞しさや木が折れ曲がっている様子も力強い色使いで、薄塗りの光との関係も相まって、色の強弱にメリハリがあります。見ていて飽きることのない作品となっていると感じました。

1つアドバイスを。眩しさを活かす為には、塗り残す以外に必要な事があります。湖の中にはググッと暗くなる影の部分もありましたよね。引き立て役の影にフォーカスしてあげると、より光を感じられるようになると思います!

続いては、白い孔雀(クジャク)。下書きの際には、首の角度や体の位置など、構図について悩まれていました。結果として、足を描かずに画面下半分へ胴体を配置し、迫力のある構図になったと思います!独特な羽の模様や色味が非常によく伝わりますね。
少し下から見上げるようなこの構図も、白い孔雀が持つ神々しさをより引き立てる要因となっているように感じました。

白い羽の影には、黄色や青・グレーなどの多色が使われており、動物ならではの自然な表現ができていると思います!羽のタッチも見事に描かれていて、一枚一枚の羽の存在感とともに、体の形に沿って描かれた毛並みが立体感を生み出しているのでしょう!

大城さんは、今回の作品全体を通して、透明水彩画における「白」の扱いが非常に上手だなと感じました!今取り組まれている油絵は夜景ですが、「白」同様に描き過ぎないという長所も生かして、素晴らしい作品にしましょう!楽しみにしています!

旅の再構成

川上 透明水彩

夏休み終盤に駆け込み旅行を満喫しました、夏波です!

前回の作品(こちら)ツーリングの絵については聡先生がご紹介していましたが、こちらも旅先のワンシーンなのでしょうか?澄み切った海を高台から見渡す様子と、ツバメたちが仲良く休憩する姿を描きました。どちらの作品も、画面の切り取り方が旅の断片を見ているような構図ですね!何気なく目にした風景を一枚の絵として記録に残したような雰囲気があり、見ていると私も実際にその場所を訪れたような気分になります。

左側の作品は、コントラストを強く設定しながらも、色鮮やかな箇所を残すことで爽快な印象に仕上げています。紙の白色の残し方がお上手で、空や海が眩しく輝いているように見えます。さらに手前の森や家々を、紫を多用した濃淡で細かく描いたことで、奥の軽やかな描写がより映えていて素敵ですね。遠くに広がる海と、手前の濃い緑との対比も気持ちよく、眺めているとすっと風が通り抜けるような爽やかさを感じます。

右側の作品は、下から見上げた自然な視点で、木彫りのウミガメの上で羽をひと休みしている様子を描いています。ちょこんと並ぶツバメたちが可愛らしく、思わず目を留めてしまいますね。
大胆な色差をつけた固有色と差し色の使い方が目を楽しませてくれますが、反発しあう色を巧みに扱うテクニックはデザイン的。エメラルドグリーン・クリムゾンレーキ(赤)・イエローオーカーに分けられた色面の中に、それぞれ周囲の色を拾い散りばめると、全体として統一感が出てきます。また、画面の周囲に残した抜け(白)の割合も良く、描き込みすぎないことで、フレーム外に空間が広がり流れが生まれています。
羽を休める穏やかな時間であろう写真を、ビビットな色使いに変化させることによって、これからツバメたちの冒険がはじまりそうな、ワクワクする作品になりました。

淡い色調が売りの透明水彩を使いながら、フィルターを掛けたような独自の色味を追加した、川上さんらしい水彩表現。こんな作品を見ていると、夏休みが終わったばかりなのに、またどこかへ旅に出たくなってしまいます!

私はベーコンエピを♬

釘宮 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させていただくのは、釘宮さんの透明水彩作品です。

様々なパンがずらりと並ぶパン屋さんの棚が描かれています。眺めていると、パン屋さんに入ったときのあの楽しい気持ちが蘇ってきますね。作者もパン屋さんがお好きなのでしょうか? パン棚を前にした時のワクワクとときめきが、絵の中に込められているように思います。きっと、ただパンをたくさん描くのではなく、まるで実際のパン屋さんのように、一つひとつを大切に陳列するような感覚で描かれているからなのでしょう。
同じような種類のパンであっても、少しずつ形が違い、焼き色にも濃淡があります。表面のこんがりとした色や、焼き上がった生地の質感まで細かく観察し、それぞれを描き分けられています。(よく見ると、奥の部分は鏡になっているのですね!)
全体を見渡すと、黄色から茶色、オレンジ系の色が中心となっており、使われている色数は決して多くありません。それでも、パンの種類や焼き加減によって微妙に色を変えたり、透明水彩ならではの透き通った色の重なりを活かしたりすることで、単調になることなく豊かな画面になっています。水彩絵具の柔らかな発色が、パンの持つ温かさとよく合っていますね。小麦がふんわりと焼けた香りまで伝わってくるようです。
並べられたパンや値札の、ちょっとしたズレもまた味があって良いですね。人の手によって並べられていることが感じられるといいますか、機械によって正確に整えられたものにはない、温かみや親しみが感じられます。

絵を描くとき、目の前にあるものを正確に描写することももちろん大切ですが、その場所で自分が何を感じたのか、そして観る人に何を感じてもらいたいのかを考えることも大切です。こちらの作品から伝わってくるのは、パンの形や色だけではありません。作品を眺めていると、鑑賞者はいつの間にかパン屋さんの棚の前に立ち、パンを眺め、どれにしようか迷いながら選ぶ、その時間そのものの楽しさまで思い起こされます。さて、皆さんはこの中からどのパンを選びますか?

初めての着彩

日吉 透明水彩

アップが半日遅れとなってしまいすみません、大志です。今回は日吉さんが、入会後に基礎デッサンを終えて、初めての着彩に挑戦された作品をご紹介します!

透明水彩で愛犬を描かれました。印象的な瞳でこちらをじっと見つめ、前脚を折りたたんで休んでいる姿がよく伝わってきます。形を正確に捉えているだけでなく、モチーフの大きさや画面の中での配置もバランスよく、安定した構図に仕上がっています。

これまでの静物デッサンとは違い、今回のように「生き物」をモチーフにした作品は、かなり難しかったのではないかと思います。特に愛犬を描くとなると、少しの形の違いでも印象が変わり、目や鼻、口の位置関係、わずかなズレが「うちの子」とは似ていない違和感につながるため、細かな部分までよく観察して描く必要があります。
ワンちゃんの表情に注目すると、大きな瞳や少し立った耳、こちらをじっと見つめる視線から、単に「犬の形」を描くだけではなく、普段一緒に過ごしている愛犬の雰囲気までしっかりと捉えようとしていることが感じられます。

また難易度が高い黒い毛の表現。一見すると黒一色に見える部分にも、よく見ると青や紫、茶色などさまざまな色が重なっています。黒をそのまま塗るのではなく、周囲の色や光の影響まで観察しながら色を重ねることで、透明水彩ならではのしなやかな毛並みが表現されています。

これからさらに透明水彩ならではの「にじみ」や「色の重なり」、そして紙の白を生かしつつ、色や質感を表現する力を身につけていくことで、より豊かな作品になっていきそうですね!今後どんな水彩画に挑戦されていくのか、とても楽しみです!

感情を描く

夏波です。今回は藤木さんの作品をご紹介します!

まずは水彩画です。滲みと柔らかな筆致が調和し、優しく穏やかな雰囲気を作り上げていますね。絵の中から作者の大切な思い出が伝わってくるような、記憶の一場面を覗いているような懐かしさを感じます。
アメリカの雑誌『サタデー・イブニング・ポスト』の表紙を担当したノーマン・ロックウェルを思い出しました。日常のちょっとした出来事やクスッと笑える瞬間を切り取り、顔やしぐさで感情を細やかに伝える画家です。

わんちゃんが2匹仲良くクッションに伏せていますが、特につまらなそうな犬の表情がとても良く、目だけが左側を見ていることで、「早く帰りたいのかな?」「少しは興味がある何かを見つけたのかな?」と、思わずその先を想像してしまいます。犬の毛並みやクッションの柔らかさ、ウッドデッキの木目、質感の描き分けや手数の加減も素晴らしく、心地よいですね。

藤木 透明水彩

下段の作品は、小さなお子さんとわんちゃん二人の視線が揃うことで、画面の中に自然と物語が生まれています。画用紙の白を残した部分もとても綺麗で、全体的に落ち着いた色合いの中に、緑やオレンジがアクセントのように入っているのも素敵ですね。色の組み合わせが作品を引き締めながら、温かみのある雰囲気を作り出しています。 

藤木 オイルパステル

続いて、こちらはオイルパステルで模写をされた作品です。水彩画の柔らかさとは対照的に、力強い色彩が画面いっぱいに広がり、思わず圧倒されるような迫力があります。しっかりとした色の重なりや伸びやかなタッチからも、作品の持つエネルギーが伝わってきますね。 

左側はジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの「ボレアス」、右側はジョン・メイラー・コリアの「犯行後のクリュタイムネストラ」から顔の部分を切り取り、それぞれ模写をされた作品です。中でも「犯行後のクリュタイムネストラ」の模写は、表情に込められた緊張感まで伝わってくるようで、血が熱く沸き立つような心情を感じさせます。オイルパステルならではの少し乾いたような、ざらりとした質感も作品の味わいになっていて、絵の具とはまた違った表現が楽しめますね。 

同じ作者なのに画材が変わることで、こんなにも違った表現になるのが面白いですね。それぞれの画材の良さを生かしながら楽しめるのも、これまでコツコツと積み重ねてこられた藤木さんの技術があってこそだと感じました!

美しい石とその額縁は、、

豊嶋 透明水彩(額は紙製・アクリル)

大志です。大学の夏休みが始まってからあっという間に8月半ばに突入、時間が経つのは本当に早いですね、9月から授業スタートなのでぐーたらしていられません!

本日ご紹介する作品は、水彩画とアクリルペイント(額縁)を組み合わせた作品です。
中の作品は艶感のあるカラフルなストーン。石というモチーフは、豊嶋さんがこれまで多く描かれてきた植物や動物とはまた異なる、硬質で重量感のある無機物。オレンジや黄色、ピンク、紫、スカイブルーなど多彩な色を用いながらも、石特有の「硬さ」や「ずっしりとした存在感」を感じさせることが重要でした。水彩ならではの透明感やにじみ、絵具の濃淡や筆の跡を生かすことで、自然な模様や光沢のある鮮やかさを感じさせ、一つひとつ異なる石の複雑な表情が感じられます。

実は石が魅力的に見えるのには理由があります。それは石と石の隙間に入れられた緑みの暗いトーン。明るい石の色彩を引き立てながら、隙間の影を丁寧に描き込むことで、それぞれの石が重なり合っている様子がはっきりと伝わってきます。影の部分をしっかりと締めているため、画面全体がぼやけることなく、深みのある仕上がりになったのです。

そして注目したいのが、作品の周囲に描かれた木の額縁!実際の木材を使っているように見えますよね!?『ワトソン紙』という厚手の紙にアクリル絵具を何度も塗り重ね木の質感を描き、実際の額縁のように中央をくり抜いて、後ろから石の絵をはめ込みました。
実際の額縁を用意するのではなく、それ自体を描いて製作しまうとは、なんて柔軟な思考でしょう!鮮やかな石と、落ち着いた木の質感。その異なる表現を組み合わせることで、独自の世界感を生み出していると感じました。

こちらは過去に描かれた豊島さんの水彩画です。毎回ササッと描かれていてあっという間に一枚が完成していきます。迷いがなく軽やかに様々な素材を描写できるという点も、豊嶋さんの素晴らしいところだと思います!