
大竹です。今回ご紹介させていただくのは、釘宮さんの透明水彩作品です。
様々なパンがずらりと並ぶパン屋さんの棚が描かれています。眺めていると、パン屋さんに入ったときのあの楽しい気持ちが蘇ってきますね。作者もパン屋さんがお好きなのでしょうか? パン棚を前にした時のワクワクとときめきが、絵の中に込められているように思います。きっと、ただパンをたくさん描くのではなく、まるで実際のパン屋さんのように、一つひとつを大切に陳列するような感覚で描かれているからなのでしょう。
同じような種類のパンであっても、少しずつ形が違い、焼き色にも濃淡があります。表面のこんがりとした色や、焼き上がった生地の質感まで細かく観察し、それぞれを描き分けられています。(よく見ると、奥の部分は鏡になっているのですね!)
全体を見渡すと、黄色から茶色、オレンジ系の色が中心となっており、使われている色数は決して多くありません。それでも、パンの種類や焼き加減によって微妙に色を変えたり、透明水彩ならではの透き通った色の重なりを活かしたりすることで、単調になることなく豊かな画面になっています。水彩絵具の柔らかな発色が、パンの持つ温かさとよく合っていますね。小麦がふんわりと焼けた香りまで伝わってくるようです。
並べられたパンや値札の、ちょっとしたズレもまた味があって良いですね。人の手によって並べられていることが感じられるといいますか、機械によって正確に整えられたものにはない、温かみや親しみが感じられます。
絵を描くとき、目の前にあるものを正確に描写することももちろん大切ですが、その場所で自分が何を感じたのか、そして観る人に何を感じてもらいたいのかを考えることも大切です。こちらの作品から伝わってくるのは、パンの形や色だけではありません。作品を眺めていると、鑑賞者はいつの間にかパン屋さんの棚の前に立ち、パンを眺め、どれにしようか迷いながら選ぶ、その時間そのものの楽しさまで思い起こされます。さて、皆さんはこの中からどのパンを選びますか?