愛車を描く

高橋 油彩

大竹です。今回ご紹介させていただくのは、高橋さんの油彩作品です。今回で三作目となりますが、回を重ねるごとに絵の具の扱いにも慣れ、画面全体に落ち着きと余裕が感じられるようになってきましたね。(前作はコチラ

こちらの作品では、ご自宅の車庫から少し顔を出した愛車の姿が描かれています。車種はフォルクスワーゲンのニュービートル・カブリオレ。2003〜2010年頃に販売されていたオープンカーで、丸みを帯びたフォルムがどこか愛嬌を感じさせます。
長く大切に乗られてきた車ですが、そろそろ新しい車へ…という節目を迎え、「最後にこの姿を残しておきたい」という思いから制作されました。

淡いクリーム色の車体に、コンクリートの無機質なグレー、そして紅葉のシェンナや赤褐色が重なり、全体としてとても心地よい色のバランスが生まれています。コンクリート部分には、単なるグレーではなく、薄く緑や青の色味を重ねることで、周囲の植物や車体の色と自然に馴染むよう工夫されています。そのため、硬質になりすぎず、全体の柔らかいイメージを損なわずに仕上げられています。
油絵具は乾くまでに時間がかかる分、グラデーションが作りやすい画材ですが、その特性がニュービートルの丸みを帯びたフォルムと相性よく活かされています。淡いクリーム色のボディには、硬い反射ではなく、やわらかく空気を含んだような光沢が与えられていますね。何度も繰り返し絵の具の層を重ねていく事で、新車のように均一で完璧な輝きではなく、長年家族の一員として使われてきた年季が滲んでいるのも魅力的です。

紅葉が色づく秋は、華やかさと同時に、これから訪れる冬への静けさや寂しさを含んだ季節です。そんな季節の空気と重なり、お別れ前の車への哀愁や名残惜しさが伝わってきますね。長年寄り添ってきた愛車を描くという行為そのものが、ひとつの感謝であり、区切りであり、次へ進むための儀式のようにも感じられます。