息づく山

菊地 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させていただくのは、菊地さんの水彩画作品です。
モチーフは四国・吉野川の山桜。山肌を覆うように咲く花々の香りが、画面からふわりと漂ってくるようです。

手前・中間・奥と、それぞれに距離の異なる山々が丁寧に描き分けられ、空気の層までも感じさせます。淡くにじむ桜の色合いと、重なり合う緑のグラデーションは、春のやわらかな光に包まれた山の息づかいを伝えてくれます。
陽光を受けて輝く草花は、まるで山そのものが光を放っているかのよう。透明水彩ならではの優しい発色と透けるような色の重なりが、こうした穏やかな風景によく馴染み、柔らかい時間の流れを感じさせます。
そして何より、ひと筆ひと筆を誠実に重ねていくその仕事ぶりに、菊地さんの制作姿勢が表れていますね。普段から同じ写真を何枚も繰り返し描き、納得のいくまで粘り強く取り組まれており、そうした積み重ねが、静けさの中にも確かな生命力を宿した画面を生み出しています。

こちらは菊地さんにゆかりのある風景なのでしょうか?穏やかな情景の中に、静かな郷愁がにじむようにも思います。こちらの作品は展覧会にて展示予定です。ぜひ会場で、実物の繊細な絵の具の重なりと空気感をご覧ください。