構図が生み出す空間

黒木 岩絵具/和紙・パネル

マユカです。今回は黒木さんの日本画をご紹介したいと思います。
下がった枝に薄桃の花。枝垂れ桜を描かれました。手前の桜は大きくはっきりと、奥に見える小さな花の群れは手前を邪魔しないように、遠近感を強調して描写されているため、桜の木の大きさを感じるようなダイナミックな構図になっていますね。

桜の作品を作るぞ、描くぞとなると、当たり前ですが花にフォーカスした作品になります。木の幹や枝自体は季節関係なく見ることができますし、桜の花が咲いていなければ桜の木だともわからない場合が往々にしてありますからね。ですが、今回黒木さんの作品ではその脇役でしかない木が、桜の壮大さを伝えるための舞台装置となっているため、準主役のような役割を果たしています。黒い幹が背景にあるからこそ、手前の花を目立たせて描き込むことができますし、奥の緑の風景も同時に進めることが可能になります。立派な幹がこの風景に臨場感を生んでいるのです。枝垂れ桜特有のカーテンの中のようなあの空間を平面上にうまく落とし込み、まるで木漏れ日の中にいるかのような錯覚すら覚える画面に仕上がりました。枝の色も手前と奥で色を変えて描かれているところから、題材を丁寧に観察されていることが伝わってきますね。

色使いや描き方もそうですが、構図の選び方も絵を構成する大事な要素です。空間という3次元を、2次元に落とし込むために奥行きを感じさせる写真を撮る、もしくはトリミングを加える、ここからすでに絵作りが始まっているのです。画面をより良く見せるコツを、黒木さんはしっかり考えられていると感じました。