小学生の日本画5

ハルです。真結花先生に続き、小学生クラスの日本画について今日もお話しさせて頂きます。日本画特有のマットな色合いも素晴らしいのですが、私は子どもの線描が面白く大好きです。下書きも愛らしいものばかりでした。私が褒めるからか、よく子どもたちからコピー用紙の裏紙に描いた絵をもらいます。お陰で私の大学の作業机の上は子どもの絵であふれています。小原先生が「藝大に飾られちゃってるらしいよ!」と嘯くので、どんどん増えてしまいます。(笑)

日本画の授業が始まる前に、水干絵具を溶く準備を毎回していました。(基本的に子どもが自分で使いたい色を選んで絵具を作りますが、人気がありそうな色合いは大量に使うので事前に先生たちで用意しました。)が、それはそれは大変でした。描く前にこんなに時間の掛かる作業があり、ミオスでは膠の代わりにアートグルーという媒体を使いましたが、日本画家は更に膠まで作る(一晩水でふやかして煮て薄めて、冷蔵庫に入れて使う度に出して湯煎して溶かして、1週間で腐るのでまた作って)なんて、私には耐えられません。デザイン科で良かったです。
ちなみに藝大の日本画科は、現役合格は皆無です。(デザイン科は毎年2~5人位はいます。)世界でも有数のハイレベルな絵画達人たちですが、それに加えこんな地味な作業を黙々とこなせる根性を持ち合わせているなんて、友達になれる気がしない(なってもらえる気がしない、の方が正しいかも?)と思ってしまいました。(笑)

小学生の日本画4

マユカです。今回は引き続き、小学生の日本画をご紹介していきたいと思います。

日本画のようななかなか触れる機会のない画材を使用するカリキュラムの時は、普段の授業に比べて子供たちのやる気を感じます。おそらくですが画材が宝石からできてたり、チューブから出した絵具を塗るだけではなく、自分の手で絵具を作ることが出来るということが新鮮だったり、「描く」作業が続き飽きた脳みそに、絵具を「作る」行動を挟むことで変化を与え集中力が上がっていたのかもしれません。

また、「欲しい色を他の子が使っていたら一緒に使ってね~」とお願いしていたので、席を移動しての生徒同士の交流も多く、「上手だね」「その動物かわいい!」なんて声が聞こえることもしばしば。年の離れた者同士で作品を見る機会が出来るというのは、小さな子たちの無邪気な色使いが見れたり、高学年の子たちが描く上手な作品が見れたりと、どの学年の子にも影響を与え合い良い刺激になったのかな?としみじみ感じました。

水張り→下書き→墨で清書→薄墨で影→泥絵具→もう一度墨描き→下塗り→本塗り→金箔…と、工程が非常に多かった今回の授業、2ヶ月とは思えない濃さがあったと思います。私も中学生の頃に一度日本画にチャレンジしましたが、慣れない画材と工程の多さに目を回しながら日本庭園を描いたことを思い出します。当時描きあがった時の達成感は今でも覚えているくらいです。今回の授業が子供たちの記憶に残るような体験になっていたらいいな、なんて思います。

次回も引き続き日本画の様子をお伝えしていきますよ!どうぞお楽しみに~!

小学生の日本画3

だいぶ日が長くなってきましたね、ナツメです。引き続き、小学生クラスの日本画をご紹介します!
彩色では、主に水干絵具を使いました。水干は、顔料に胡粉や土を混ぜて一度乾燥させたもの。固まっているため、まず石皿や乳鉢
で細かくすり潰して粉状にし、そこへ膠を加えて絵具として使います。少しでも丁寧さを欠くと塗ったときに粉の粒が目立ち、ブツブツとした仕上がりになってしまうため、みんな根気よく時間をかけて潰していました。

本来、水干は混色可能なのですが(岩絵具は石の種類により比重が異なるので混色はできません)、なにしろ70色以上の微妙な色合いが揃っています。今回は絵具を混ぜることは禁止にし、それぞれ単色で塗るようにさせました。その為できあがった色をシェアして使うスタイルに。自分では思いつかなかった色味を取り入れてみたり、他の人の色づかいに影響を受けたりと、普段とはまた違う彩色の面白さが生まれていました。

私自身も小学生のときに、この日本画の授業を体験しました。最初は「粉から絵の具が作れるんだ!?」と驚いたのをよく覚えています。水彩や油絵のように色を混ぜることもできず、思ったようにいかないことも多かったですが、完成したときの喜びはひとしおでした。
ザラザラした絵具の質感や、絵具が紙の上に“乗る”感触も新鮮で、「塗る」というより「置く」ような感覚が面白く、今でも印象に残っている制作のひとつです。

数年に一度の特別なカリキュラムなので、今回取り組んだ子どもたちにとっても、そんなふうに心に残る経験になっていたらうれしいです。明日も引き続き、日本画の授業の様子をお届けします。どうぞお楽しみに!

小学生の日本画2

サヤカです!今回は、昨日のブログに引き続き小学生クラスの日本画について紹介します。
描き出しから泥絵の具でメインにボリュームを出す工程、下地作りまでは、小原先生のブログをご覧ください。一番最初は、サトル先生のブログにもあったように、和紙を水貼りしました。日本画特有の『袋張り』については、ホノカ先生が3年前に書いたこちらのブログを。

さて、泥絵の具の工程が終わると、いよいよメインの着彩に入ります。岩絵具は、濡れている状態と乾いた状態では発色が違う(濡れると濃くなります)ので、乗せた時に下の色が透けて見え、あまり発色していないように感じたり、想像した色と違ったりするところが難しい!混色もカラフルな水干と胡粉の割合によって色の濃度も変わり、チューブに入っている絵の具よりも調整がしづらく、普段使っている画材との違いに苦戦していました。しかし、子どもたちの適応力と思い切りは素晴らしいですね!動物の細かな毛並みや、陰影、月明かりなど細かな表現もお手のものです。

仕上げとして金箔、銀箔を貼り付けましたが、その作業に子どもたちは大興奮!小原先生が、「指先で触ると、くっついて指がお金持ちになっちゃうよ」と言うと、子どもたちも「お金持ちの指になった!」「ゴールデンフィンガー!」と楽しんでいたのが印象的でした(笑)

次回も引き続き小学生クラスの日本画についてご紹介します。お楽しみに!

小学生の日本画1

オバラです。今ミオスは空前の日本画ブーム!(未完成ですが大人・学生クラスの日本画紹介はこちら)大人・学生・小学生の日本画を全部合わせたら250枚くらいになるのではないかと思いますが、多過ぎて正確に数えられません…

春休みから描き始めた小学生たちは、一足お先に完成しました!小学生はお題をこちらで決めて題材を選んでもらいましたが、見てすぐお分かりいただけますね。【月夜】です。月夜に合わせるのは『動物』だけでなく自由だったので、昆虫や空想の生き物、植物、電車、大仏などもあり、楽しく見ていました。箔を貼った月が美しく輝き、月明かりが反射したシルエットの色も考え、丁寧に絵具を重ねていきました。

日本画の描き方の説明は続く先生たちに任せ、私は泥絵具の作り方を解説します。
農家の方に畑の土を分けてもらってきて、ストークスの法則を使った選別方法を使いました。小難しく言うと、粒子の沈降速度は粒径の2乗に反比例するので、上澄み的に流した粒子の小さい方を最終的に沈殿させて均一になった粒子を泥絵の具とします。

子ども達への説明は「大きい粒と小さい粒はどちらが早く沈むか?」と聞きました。(1年生でもちゃんと答えてくれます。)
具体的にどのように選別するかと言うと、泥水をかき混ぜて5秒数え、重い(荒い)土を先に沈ませ、浮いている小さい(軽い)泥だけを絵具として使います。

手順
・土の入ったカップに水を注ぐ
①良くかき混ぜ、5秒数えてから、透明(っぽく)なっている上澄みの部分のみバケツに捨てる(勢いよく傾けると下に溜まった泥まで流れてしまうので、そっと流す。かと言ってもたもたしていると小さな粒子まで沈んでしまうので注意!)
②③残った泥水を、下の方の荒く重い土を残すように、コーヒーフィルターに注ぐ
・水が濾されるまで待つ
④⑤事前に鳥の手羽先を15羽煮て、浮いた油分を取り除いたゼラチン(膠)を糊にする(正式な日本画で使う膠はウサギや鹿)
※最初に私がスープを飲んで見せると、食べ物で描く(接着剤になる)事に興奮していました

泥絵具を作って一気に塗るところまで行かなかった子達は翌週の作業となる為、一度泥を乾燥させました。乳棒でつぶして粉にしてから鳥ガラスープ(膠)を入れて絵具にします。「昔はこうやって薬を作ったんでしょ?」「毒薬も作れるね!」とワクワク話が弾みます。

墨で骨描きをした後、メインの部分にだけ泥絵の具をぼってり塗り、ボリュームを出します。アースカラーはナチュラルで優しい色合いですね。墨との相性も抜群。

泥絵具で塗ると、線描きが消えてしまうので、下描きを見ながらもう一度中の線を描き起こします。
その後、夜をつまらない黒にはしたくありませんので、鮮やかな色で下地を塗ります。あたたかい夜?冷たい夜?怖い夜?楽しい夜?イメージカラーは本人にお任せ。 続きはまた明日!