
佐藤K 透明水彩
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは佐藤さんの水彩の作品です。
前回の観光客の賑わいが聞こえてくるような鮮やかな街並みの作品から一転、静かで荘厳な雰囲気の作品になっていますね。
実際にトルコに行かれたそうで、朝陽の光に照らされるモスクの風景が描かれています。こうした光を感じさせたい時は、光源そのものの色も大切ですが、照らされる物(この作品では建物ですね)に出来る影が重要になってきます。強い光源または近くに光源がある時は影は濃く現れます。こちらの作品でも建物に出来る影がしっかり描写されていることで、光を強く感じさせ全体にメリハリを作ってくれています。4つの柱もおそらく全て同じ色のものなのでしょうが、立っている位置によってそれぞれ色を変えて描く事により絵の中に奥行きを生み出しています。
モスクの下半分がほぼ緑で隠れている姿をチョイスして描かれているのも面白いですね。隠れている部分にも細々とした建物があるのでしょうが、ごちゃごちゃしたものが省かれている事によりメインとなるモスクの存在感が際立っています。木々の部分も暗くする事で、建物のオレンジの壁や柱がより鮮やかに見えてきます。視線を上に向け、空の方を見てみますと青空に雲がふんわりとかかっています。紙の白を活かしながら、雲の細かい輪郭と厚みの変化を手を抜く事なく描き切っておられるのが分かります。
実際にその場所に行ったという経験は作品にする上で強みになりますね。その場所の色、音、匂い、自分の感情など…描きたい物をどう表現したいかのイメージも掴みやすいと思います。