デザイン演習


火曜小学生クラスにお手伝いに来ているカナホです。多くの皆さんは美術系の高校では絵画やデザインを制作する授業がある事は分かっても、他にはどのような勉強をしているか知らないと思います。今回は私が通っている高校での面白かった授業を紹介します。
デザイン演習の授業でこんな課題が出されました。
「とある駅前商店街では迷惑駐輪にいつも悩まされていました。店先など駐輪禁止場所に自転車がいつも止まっています。迷惑駐輪を解消するスマートな解決方法を考えてみましょう。(一部抜粋)」
グループワークで1グループ4人、合計10班で解決策を考えていきます。

私達の班は、路面に絵が描かれていればそこに駐輪しようと考えないのでは?と考え、駐輪されてしまう場所にトリックアートを描き、駐輪防止×街興し(インスタ映え)をテーマに発表しました。講評では、美大生と協力などアプローチがあるともっと面白くなりそうだね。とまた新しい発見がありました。
他の班の発表では、「こちらに置いている自転車はご自由にお持ち帰り頂けます!」と張り紙を貼る、という面白案や、チームラボのように歩くと水面や葉っぱが出てくるといった近未来を想定した案などがありました。どれもユニークで実際に実現したらどうなるんだろう…と考えさせられました。

デザイン的思考は、様々な角度から「問題発見」と「問題解決(策を創造する)」を繰り返し、成果を出すための行動を展開します。社会をより良い方向へ変化させる為に常に新しい発想が求められますが、アプローチ方法は1つではないことが今回の授業で分かりました。これからの時代を生き抜く上で、絵を描く事だけでなく自分がどのような価値を提案・提供できるのだろう?と、将来働くのが今から楽しみになりました!

小学校受験 制作キット販売

春休みワークショップのチラシに記載してございました『4月9日の小学校受験指導者講座』ですが、学校を媒介とした地域社会への新型コロナウィルス感染拡大の懸念から始業式を延期する幼稚園が増えております為、お子様を連れてのご参加ができないこちらの講座を中止することに決定致しました。
開催を楽しみにして頂いた皆様には大変ご迷惑をお掛けしますことをお詫び申し上げます。

この講座では、新発売する制作キットを先行して割引価格で販売し、制作方法を交えながら自由で発想力豊かな作品に発展させる方法を勉強して頂く予定でおりましたが、生憎と中止となりましたので、写真にあります制作キットのネット販売を開始します。

今まで『工作がうまくなる本(3,000円+税)』をご購入頂いた方から「すぐに作れるキットが欲しい」とご要望を頂く事が多々あり、テキストの中でご紹介しているテーマ別に、分かりやすい展開図のペーパークラフト+折り紙やモールなどの材料+今年の初等部の試験でも使われた粘土も入れたセットを作りました。
シンプルな展開図は、印刷が無くても一人で・しかも短時間で作れるようになることを目標にしていますので、応用が利きオリジナルの展開に発展しやすくなっています。
ミオスでは「好きな材料を使って自由に作って下さい。」という課題に「任せて!」と自信を持って言えるお子様がたくさんいます。その理由が分かるこちらの制作キット。長い春休みに、ぜひお父様お母様と一緒に楽しい制作の時間をお過ごしください。
(下記の写真はテキストに載っているテーマから進化した作品)

ご購入方法
■連絡先
以下のメールアドレスにお申し込みください。
mios@ace.ocn.ne.jp

お名前・配送先住所・電話番号・お子様の年齢・『工作がうまくなる本』所持・非所持を明記しご連絡ください。
※工作テキストにキットの制作方法が記載されていますので、過去にテキストをご購入頂いていない方には販売しておりません。お持ちでない方はテキストとご一緒にご注文お願いします。
振込先等の入金方法など確認の返信を3日以内に致します。もし返信がない場合お手数をお掛けしますが、再度ご連絡頂けますと幸いです。ご入金確認後、配送致します。

■お支払金額
①制作キット4,000円(+消費税)+送料710円
②工作テキスト3,000円(+消費税)+送料360円

これから受験シーズンになる人へ

学生クラスの懐かしい写真の数々(自分が制作している写真は1枚も撮られていませんでしたw)

木曜日にお手伝いをしています、4月から大学一年生のコウセイです。
小学生クラスの子供達に「なんで手伝いにきてるのー?」など時々言われるので、アトリエミオスで手伝い始めた経緯と、進路を決めるまでのことについて話します。これからの受験生やその親御さんに参考にでもなればなと思っています。

高校生活はテニス部の活動で忙しく、将来のことについて何も考えずに過ごしていました。(お陰で?関東大会出場まで行けました!)その代わりどのような進路を選んでも良いよう指定校推薦なども視野に入れ、3年間高い成績を維持する努力は重ねてきました。また推薦は欠席・遅刻をほとんどしない人が初めて取れるので、社会に出て目標を持って何かを継続してやり遂げる自信も身に付くのでは?と感じていました。日々コツコツ頑張ってきた結果が出るというのは、運動部で培ったものとも同じだと思います。

いよいよ3年生。しっかりと進路と向き合い始めたのは新学期が始まった辺りです。ですが将来の夢などと言われてすぐに出てくるわけでもなく、すごく悩みました。自信を持って出来ることや得意なことを考えて、自分は人に何かを教えたりすることが好きなのではないか?と思い付きました。きっかけはミオス学生クラスの時ワークショップのボランティアで子供達に教えた体験と、部活動で後輩たちにテニスを教えていたことです。それらは自分の中でとても刺激的だったので、その経験も生かせる教員を目指そうと決めました。

大学選びは基本自分一人で探しました。今はスマホもあるので簡単に調べられます。将来、自分がその仕事をする時に社会や職場がどうなっているかも想像しました。また、就職の時に幅を広げるため教育免許以外に、特別支援の免許(障害を持っている子供達に勉強など教えられる)の資格も取れる大学を選びました。教育関係の仕事に就くためにアトリエミオスの手伝いをしながら、日々勉強させていただいています!

今の状況が続くと外に出る機会が少なくなってしまうように思いますが、色々と経験をしていないと「こんなことしたいな」など思いつかないでしょう。「大好き」や「運命を感じた」などの強い感情ではなくても、「面白そう」という軽い気持ちで沢山のことにチャレンジしてみてください。

一人歩道を歩く


麻場 油彩

本日は、思いもかけぬ雪景色を見ました。岩田です。

今回は土曜午前クラス、麻場さんの作品をご紹介します。
最近になって、描く力がぐんと向上し、尚且つご自身がどういう絵を描いていこうかという指針のようなものが見えてきています。

昨年夏前にアップした孫が川べりを歩いている絵も素晴らしい作品でしたが、今回の手前から奥へと続く道を中央に這わせ、そこに投影される陰影を美しく描き出すという構造は同様のものがあるとはいえ、「見せ方」に於いては、数段的を得た感があります。

非常に丁寧且つ、油絵具の風合いを大切にしながら、陰の中にも美しい光を感じさせるその色合いは大変美しく、陰の移ろいもとても自然で、奥へと延びる歩道の平面性も気持ちよいほどです。

前回の孫の絵と対照的に、道上には一人の老人が。青々しい木立の中を行くその背中と歩道の色も相まって、何とも意味深な絵とも取れます。
作品の完成度が高いだけに、そんな想像もつい膨らんでしまうのです。

徒然ですが

初めましてではないですが、久し振りのマアヤです^_^。 美術系高校に通う高1です。
のり先生にブログ書いてって言われたので頑張りたいと思います。
最近は学校の課題以外、これといった作品は制作してません。まーもし制作してたとしても、最近は人に見せませんが。だから今回絵は載せません^_^。(って言ってるのに、のり先生が勝手に中3受験間際のデッサンを載せてしまいました。)


自分は自分の過去言ったことにいつも縛られます。
今回も此処で、自分の絵に対しての考えとかを語るとするじゃないですか。でも私がその考えでいられる期間は多分短いんですよ。
大分前のブログに書いた考えの通りに、自分なりのこだわりを持っていきたいと思っていましたが、それに縛られる生き方は自分には向いてなくて、むしろ自分で言った事にすら反抗的。まじで根っからの天邪鬼。初め否定から入ったもの好きになりがち。


だから最近は色々保険掛けながら喋ります。それに人を見てあーそういう人もいるんだーって思えるぐらい客観的に生きていた方が楽しいし^_^。
本当の自分、みたいなのがこの年になるとテーマに成りがちですが、別に脳味噌変えない限り自分でしょって思うからわざわざ考えません。
それは逃げてるって思われがちだけど考えを上手く傾けただけだって思います。


それでも討論したい人が考えて答え出してくれればいんじゃないの?ぐらいラフな方が楽しい。
こんなこと言って何かあった?ってなるかも知れないけど、びっくりするぐらい何もないです。
開き直ったとかじゃ無くて、最初に言ったようにただ単に考えが変わっただけです。次ブログ書くときはまた変わってるかも知れませんしねー。(まじで全然変わってたら消してくださいね、のり先生^_^)


でも楽に楽しくって1番理想です。楽って言うのは悪い意味じゃ無くて、自分にあってるってこと。
そうやって色々把握して、自分を楽な思考に導くのって大切だなぁと思います。
人生楽しく生きたもん勝ちとか全然思ってないし、恵まれてるからこそできる考えだと思うけど、深く考える時があったとしても、根本的なところに「まーいっか」みたいなのがあった方が自分的楽、みたいな。
否定するのも、肯定するのもふらふらしてるのも、人に流されるのも、合わせるのも、別に自分は悪くないと思います。
矛盾もカオスも人間である限り綺麗に紐解くことは出来なさそうですし。
まだ全然理想じゃないけどその理由はまたの機会に^_^。


後、ブログ書くの大変ですね。2時間かかりましたこんな文章に^_^。
^_^←このマーク好きです。
これ将来見たらくっせぇって思うのかな。まーなんでも良いけど。

粘土の生き物


春休みの予定が次々潰れて悲しいアサヒです。コロナめ。
気を取り直して幼児クラスのご紹介です!アトリエに来てくださる生徒さんたちがかなり減っていく中で、先週の幼児クラスは半分以下の6人となってしまいましたが、彼らは元気いっぱいでした。
スケッチブックに描いた自分の考える空想生物を、紙粘土と小麦粉粘土、スチレンボードや針金などで立体化していきます。ペガサスとユニコーンを融合させた生物がイニシアチブを取る中、クワガタとカブトムシ、チョウチョ、はたまたアリスに羽が生えたキメラ生物など多種多様でした。
コロナのせいで友達とお話しする時間が減ったからか、手より口をせっせと動かしていた印象だった皆さんでしたが、ノリ先生による武力行使により、どうにか完成に漕ぎ着けました。お家に篭りがちになってしまわざるを得ない今日この頃ですが、皆さんのストレスが少しでも解消されたなら幸いです。

アトリエの門戸はいつでも開いておりますので(ノリ先生の驚異的な免疫力により)、絵の勉強はもちろんのことですが、お話がしたい方も、是非いらしてくださいね。
来週はいよいよ『春休みワークショップ第一弾・ファッションショー』です!手洗いうがい・早寝早起きして、どうか予約している子どもたちが全員元気に参加できますように!

積み重ねることの大切さ


マユカ 高1 左2枚 自分の部屋の鳥瞰図 / 右2枚 小学校受験テキストのイラスト

皆さんお久しぶりです!月、水小学生クラスのマユカです。突如学校がお休みになり大量に出た課題に追われています!!さて今回は、岩田先生と小原先生が書いた美術系高校のブログに続き、私が受験生だった頃のお話をしたいと思います。
私は中学3年生になるまでデッサンというものに触れずに過ごしてきました。ただ絵を描くのは好きだったため、デザインをメインに学べる学校に行きたいと考えていました。
デッサンを始めた当初、物の形もろくに取れず陰影のつけ方すらままならず…。今も特に上手い訳では無いですが、かなり酷いデッサンでした。が、私には危機感が欠けておりました。一枚に長い時間をかけているにも関わらず描き込まれていないデッサンを量産し続け、小原先生からも厳しい言葉を毎回頂いておりました。

そんな中、私に転機が!夏休みが終わってしばらくした後にデッサン付きの模試があったのです。
結果はお察しの通りボロボロでした。特にデッサンが。合格判定はCでこのまま行けば到底受かることができない状態でした。この結果を持って小原先生と話し、穏やかに諭され、それからはかなり真面目にデッサンに取り組んだような気がします。また、ミオスに同年代ですごく上手いデッサンを描く人がいたことも私に危機感を与えてくれました。できるだけ毎日デッサンを描き、ミオスだけでなく中学の美術の先生にもご指導頂いたりしました。

この一連の受験期間で学んだことは《常に積み重ねを忘れず努力を怠ってはいけない》という教訓でした。私には昔から追い詰められないと取り組まないという悪い癖があります。(夏休みの宿題を最終日に全部終わらせるタイプの人間です。)
私と同じタイプの人はまず自分の実力を数値化して把握する事が大切です。なるべく早い時期に模試だったり簡単なテストを受けてみたりすると良いのではないでしょうか。とにかく自分の実力に危機感を持つことで「よし、やろう!」という気持ちになると思います。このままで大丈夫と思うことが無いようにしていくことが大切です。
今回の長い春休みで出された課題も計画性を持って取り組もうと思います!

川崎総合科学高校デザイン科2020年 合格再現作品

オバラです。先週岩田先生が美術系高校受験の合格者をご紹介しましたが、続けて川総デザイン科を合格した3人の『合格再現作品』をお見せします。
今年の試験は90分の制作で、立方体の木材・20㎝程の白い紙テープ(切ったり折ったりの加工をして構わない)、オレンジのピンポンボールがモチーフとして与えられました。3人の中での最高得点は86点でしたが「合格すればいいってもんじゃないよね?なんで86点しか取れなかったと思う?」と問うと返ってきた答えが「モチーフを渡された時『え?こんな初歩的な物だけ?ヤッタ!勝った!』と安心してしまったのが敗因です。」とのこと。「それ私に対して『ずっと難しいモチーフばかり出題して脅してくるから』っていうクレーム?」と聞くと、慌てて否定していましたが、そこまで受験を侮れるとは、偉くなったもんだな、オイ!(笑)

まだまだ形の甘さや描き込み不足は気になりますが、デッサンをする上で口酸っぱく言って来たことが、3人共しっかり反映できていたのは、本当に素晴らしいことです。
・構図は画面の上方へ配置し、物が実物より小さくならないように
・自分との距離感を3つ全て変える(手前・中間・奥)
・素材の特徴を活かすセットをする(透明の物は重ねる、小さい物は手前に置く、軽いものはふわっとetc)
・同系色が多い場合、中でも一番暗いものは少し大げさに黒くし、メリハリを利かせる
・光と影が分かりにくくても、しっかり色幅を付ける
以上の事を十分理解し、身に付いていると感じました。途中、私や岩田先生に頭ごなしに「やる気が見えん!ヘタクソ!一度言われた事は必ず覚えろ!メモしろ!復習しろ!上手く描けない原因を考えろ!」と言われ、凹んだ時もあるでしょう。自分の限界と戦いながら逃げずに挑戦し続け、よくここまで描けるようになったと思います。

受験で失敗するリスクを恐れて、推薦やAO受験という安パイを選択する学生が増えています。恐怖からの回避です。失敗することで自分の価値が現状よりも下がると考えてしまうのでしょう。
受験における優柔不断は、これまでの人生で必死になる経験を避けてきたことと、欲のなさが大きく影響していると思います。15年間自分の限界を知るまでのチャレンジをした経験がない人が多いのかもしれません。穏便に平和にと願い他人との勝負を避けるあまり、自分との戦いも拒絶して成長を妨げているのに気付いていないのです。

枚数を重ねるほど興味が沸き、もっと描きたくなるはずです。学ぶにつれ「自分の手で上達を実感できる」と自信も持つようになります。このチャレンジは、他人の目を気にしてよい点数を取るためのものではなく、自分の好きなものを極める為の手段であり、本当に楽しいものです。
自分の一歩を踏み続けていたら、知らないうちに絵が上手くなっていた。でもやっぱり合格できるか不安、自信消失。試されるのが怖い。才能の無い自分を知るのがイヤ。なにくそ描くしかない、限界までチャレンジだ!自分の力で合格を掴み取った…そんな経験をしてくれた3人に拍手!

受験悲喜こもごも


ハヤト 中3 左 / 鉛筆  中央 / 水彩  右 / コンテ

岩田です。3月に入り受験生も悲喜こもごも、4月からの身の振り方を決める時期となりました。

今回ご紹介するのは、中学3年生のハヤトの作品。
目指したのは大阪府立港南造形高等学校と、大阪商業大学高等学校デザイン美術コースの2校。大阪という場所故、情報も少ない中で、両校合格という結果を残したことは称賛すべきことです。

左手は大阪商業大学高等学校デザイン美術コースの受験再現作品ですが、正直まだ未熟といった感が否めません。
本人にとっては、第2志望の学校だったとはいえ、将来、クリエイターになることを目指すのであればデッサンは描けた方が良いですし、更なる努力が必要です。

本命の大阪府立港南造形高等学校はうって変わってお題を与えられ自由に創造し絵の具で描くという受験スタイル。
残念ながら再現作品の画像はありませんが、「季節」というテーマを与えられ人をモチーフに描いてきたとのこと。掲載している他2つの画像を見ると分かるように、彼の描く人物は不思議なリアリティーがあり、良い結果をだしたのも頷ける気がします。

話は変わって、受験と言えば私の卒業校である東京藝術大学の試験も始まっています。
各専攻、一次試験の発表もある程度終え、今頃は皆二次試験の課題に勤しんでいることでしょう。
アトリエの生徒ではないのですが、現在私が個人的にしばしばアドバイスをしている藝大受験生がいます。彼は残念ながら今年は一次試験で落ちてしまいました。私としても大変悔しい思いで一杯です。

あくまでも私の拙い経験からの言葉ですが、藝大の受験は本当にシビアです。一般的に「とても良く描けているなあ」という作品でもあっさり落とされてしまうことは良くあります。
専攻によって求められる資質の違いはあれど、デッサンに於いては、徹底して目の前のモノを観察した上で、そのモノに心を震わせ、自分が体現したそれを一枚の紙に真摯に再現しようとしているのかを高い次元で問われているのだと思います。
なまじ描画材の扱いに長けていると手が先行して動いてしまい、観察を怠ってしまったり、「合格したい」という気持ちが強すぎると、その意気込みから肩に力が入って視野が狭くなり、あたかも盲目となってしまうことがあります。

「デッサンをデッサンしてしまう」という言葉が時に使われます。
受験会場近くでは、各予備校が自校の宣伝用のパンフレットを配布しています。そこには前年の合格者が描いた参考作品などの優秀な作品画像が所狭しと掲載されています。
とかく受験生は「こう描けば受かるのか」といった思考で、そうした作品を目標にしようとする故、それらを表面的に真似したくなることがあります。
それは言わば、目の前のモノをデッサンしているのではなく、デッサンをデッサンしてしまっているのです。
そうした作品は、一見良く描けているのですが、やはりどこかうさん臭いものとなってしまいます。

とにもかくにも、そうした二次的な思考や概念といった障壁を全て取り払い、目の前のモノと一体になった時にこそ、真のリアリティが現出してくるのですね。
問われているのは「描き方」ではなく「見方」です。

多年の一瞬


鈴木 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、鈴木さんの油彩です。熊川哲也のカルメンのポスターを見て制作された30号の大作です!美術館や大学では見慣れた大きさでしたが、アトリエで見るとより大きく感じますねー!

 動きを感じられるポーズや服の皺の表情すばらしいですね。描いては消し直しては消しを何度も繰り返してここまで辿り着かれています。時間と共に重ねられたさまざまな色により、一目で12週間で作られた画面ではないと分かります。暗い部分は美しい深みが感じられ、それに引き立てられるスポットライトの光がドラマチックに舞台の二人を際立たせます。映像では一瞬のシーンでも、絵画になるとその一瞬を沢山の時間をかけて再現、作り上げていける事が面白いですよね。ただ、納得する形が見えて来ずに時間だけが過ぎていくと、その絵に向かう事自体が嫌になってしまうものですが、鈴木さんは辛くなろうともこの絵に向き合い続けておられました。その姿勢にはもはや拍手よりも畏怖の念から思わず手を合わせてしまいます。私は上手くいかない絵があると、別の絵に逃げたり投げ出したりしてしまう学生でしたから…)完成された時も、完成というよりも開放という感覚を感じられていたのではないでしょうか?

開放後の鈴木さんが次はどんな作品に囚われてしまうのか、講師側としては楽しみでもあります。作品から気持ち良く開放されるよう、少しでもお手伝いできましたら幸いです。