この少女の未来は?


野中 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは野中さんの油彩作品です。

灰色の雲が青い空を覆い、遠景の草木は少女を囲むように生えており、ひそひそと囁くように揺れています。いびつに伸びた葉のない木は片側が切り落とされ、その木には白いワンピースを着た少女がしがみつき、見る人の心の底の不安を掘り起こすような不穏な雰囲気が漂っています。
絵画や映像では基本的に右が過去、左が未来というように画面上に時間軸があり、左から右へ時間が流れていきます。今回はこの法則を野中さんの作品に当てはめ、この少女に想いを巡らせてみましょう。

大きな木は画面の右側、過去に置かれています。更に切り落とされた太い幹も右を向いており、過去にあった何か大きな出来事が忘れられているか、断ち切られたのでしょうか。過去のものである木に少女はしがみつき、身を預けています。少女にとって大切なものか、頼りにしているものの象徴なのかもしれません。少女の白いワンピースも右にたなびいており、彼女の気持ちも過去に向いているのでしょう。白いワンピースは純粋無垢、子供らしさを感じさせます。
少女がしがみつく先の木の枝は葉もなく頼りなさげですが、左側の未来の方向へ伸びています。怪しげな雲行きも、よく見ると左側はチラリと青空が覗いていますね。もしかしたら、この少女の未来には明るいものが待っているのかもしれません。少女はまだ過去を向いていますが、枝の指す方へ振り返り駆け出していけば、きっと画面の先に広がっている青空を見る事が出来るのでしょう。

不穏な絵に見えて、実はすぐそこにある明るい未来を予感させる一枚なのかもしれませんね。一枚の絵の美しさや絵の具の表情を楽しむ他に、描いてあるものが何を表しているのかを考えるのも鑑賞の楽しさの一つでしょう。(要は妄想ですね)みなさんには、この少女はどのように見えましたか?