祈りを込めて

福嶋 油彩

大竹です。今回ご紹介させていただくのは、福嶋さんの油彩作品です。
描かれているのはご両親の肖像画です。ご両親を偲び、遺影として制作されました。

穏やかな笑顔を浮かべるお二人は、こちらへ優しい眼差しを向けています。作者は幼い頃からこの笑顔に見守られ、励まされながら育ってこられたのだということが伝わってきます。肖像画でありながら、ひとつの家族の物語を見ているような温かさがありますね。
大切な人を亡くした直後は、悲しみが大きく、その姿を絵にしようという気持ちにはなかなかなれないものだと思います。しかし月日が経つにつれ、楽しかった思い出や何気ない会話、向けられた笑顔が少しずつ心の中によみがえり、きっと今だからこそ描いて残したいと思える時が訪れるのでしょう。

肌は黄色や赤、緑、青紫など様々な色が重ねられていますね。皮膚の表面だけではなく、その下を流れる血の温かさまで感じられるようです。年齢を重ねたからこその皺や陰影も丁寧に描かれており、お二人が歩んできた人生の時間までも画面の中に刻まれているように感じます。
背景は深く美しい青紫色でまとめられています。この色は寂しさや喪失感だけを表しているのではなく、お二人を静かに包み込む祈りや感謝の気持ちを象徴しているようにも見えます。背景をシンプルにすることで、見る人の視線は自然と表情へと導かれ、お二人の笑顔がより印象深く心に残りますね。
写真はその瞬間を記録してくれますが、絵画はそこへ描く人の記憶や感情を重ねることができます。どんな表情を残したいのか、どんな空気を思い出として伝えたいのか。その一筆一筆には、写真には映らない作者の思いが込められています。

この二枚は、ご両親の姿を写した肖像画であると同時に、作者がこれまで受け取ってきた愛情への感謝を描いた作品でもあるのでしょう。時間をかけて向き合ったからこそ生まれた、温もりあふれる作品です。

一筆一筆に込められた想い

香月 油彩

夏波です。今回ご紹介させていただくのは、香月さんの油彩画です。30号(910×727mm)と、かなり大きいサイズのキャンバスに描かれていますが、展覧会へ出品する為100号サイズ(1620mm × 1303mm)の作品も制作する香月さんにとっては、もはや小さく感じられているかもしれません。

まず上段の作品。愛猫が花瓶の近くでくつろぐ様子を描かれました。柔らかなベージュ色の毛並みと背景の深い色との対比が美しく、落ち着きのある空間が印象的です。奥のサイドボードのオリーブグリーンとバラの葉は色味が近く同化しやすいところですが、思い切って黒を混色したり、差し色としてコバルトブルーを取り入れたりすることで、画面全体が引き締まっています。また、この差し色のブルーは愛猫の瞳の色とも響き合っていて、自然と視線が猫へ向かうところも素敵ですね。細かな色の選択一つひとつから、画面全体をまとめ上げようという意識が伝わってきます。

下段左の作品は、歌舞伎の演目「日本振袖始」をモチーフに描かれました。左右に配置された人物を画面下部まで描き切らず、淡く自然に浮かび上がるように表現することで、まるで物語の一場面を覗き込んでいるような奥行きが生まれています。その空気感に負けないほど、主役は堂々とした存在感があり魅了されました。透ける布の表現や着物の繊細で緻密な模様まで丁寧に描き込まれており、生の絵を見る方は思わず近付いて釘付けなるに違いありません。一つひとつの描写が作品の世界観を支え、歌舞伎ならではの華やかさや力強さがより伝わってきます。

そして右の作品は、奥様をモデルに描かれた一枚です。衣装の布の流れが美しく、画面全体に優雅な躍動感が感じられます。特に手元の布の描き込みは見応えがあり、色味を手前と奥で丁寧に描き分けることで、しっかりとした前後感が表現されています。さらに、伏せた目の凛とした表情や背中に沿って流れる筋肉の捉え方も繊細で、エネルギッシュなワンシーンであるはずが、静かな息づかいまで感じられるようでした。奥様を見守る温かなまなざしまで伝わってくるところも、この作品の魅力だと思います。

私も油絵科に入学したばかりの頃は、30号のような大きなサイズのキャンバスに尻込みしていました。しかし、一度100号などの大きな作品に挑戦してみると、絵画に向き合う目線や体の使い方が変わり、以前よりものびのびと自由に描けるようになったことを覚えています。大きな画面だからこそ気付ける発見もたくさんありますので、皆様もぜひ一度、まずは15号(652×530mm)くらいのサイズに挑戦してみてはいかがでしょうか!

描写の強弱とその生命感

恵菜 高1 油彩

大志です。ここ1週間ほどで一気に暑くなり、いよいよ夏本番ですね!夏休みは外に出る機会も増えると思いますので、みなさんもこまめな水分補給を忘れずにお過ごしください。

さて、今回ご紹介するのは、学生クラスの恵菜が制作した油彩によるワンちゃんの肖像画です。
彼女は小学3年生からミオスに通い始め、今年でなんと8年目。小学5年生の頃にもリスを題材にした油彩作品を描いていました。(こちら)当時から毛並みの表現はとても上手でしたが、同じ「毛のある動物」を描いているからこそ、5年後の本作品ではその上達ぶりがより鮮明に伝わってきます。

大きく輝く瞳や、こちらに向かって微笑んでいるような表情は、見ている人まで思わず笑顔にしてくれます。一本一本の毛を丁寧に描き分けるだけでなく、暖色と寒色を巧みに重ねることで、柔らかくふんわりとした質感や立体感が見事に表現されていますね。さらに、耳や胸元など部位ごとに筆致や色味を変えることで、毛質の違いまで感じられるのが素晴らしい!顔以外にあえて大胆な筆致を残すことで、画面に心地よいリズムが生まれました。その粗密のコントラストによって自然と視線がワンちゃんの愛らしい表情へ導かれ、魅力をより一層引き立てています。

背景は細かな筆跡を重ね、毛色の補色となる深い緑色でまとめられています。主役を際立たせながらも自然な空気感を感じさせる、バランスの良い画面構成もお見事。
おばあちゃんのおうちで飼われていたこのワンちゃん、虹の橋を渡ってしまったとのことで、こちらの作品は遺影となるそうです。記憶の中にある優しく温かいワンちゃんとのエピソードを思い出しながら、彼女との絆の深さ、愛情を絵に認めることで、失ってしまった悲しみは徐々に昇華されていったのではないでしょうか?

魔法生物

空 中3 色鉛筆

ひとみです。前期の課題も終わり、もうすぐ夏休みに入ります!

今回空が描いたのは、空想の世界の架空の生物です。一見するとワニのような姿ですが、よく見ると鼻先にはツノがあり、体にはヒレがついています。水中を自由に泳ぎ回れるだけでなく、背中にはなんと鞍まで!「私たちが乗ると水中でも息ができるようになるのかな?」「もしかすると、水中で暮らす生き物たちの移動手段なのかも?」と、見ているだけで次々と物語が浮かんできます。

顔まわりは、目の下から上顎にかけての影や、下顎のふっくらとした丸みを丁寧なグラデーションで表現し、立体感を生み出しています。体の中央には血管のようにも見えるカラフルな模様が描かれ、お腹にはダイヤ形やカニの爪を思わせる不思議な模様も。架空の生物だからこそ生まれる自由な発想が詰まっていて、「尾びれはどんな形をしているんだろう?」と想像が膨らみます。

背景も見どころの一つです。ただ水中を描くだけではなく、紫や濃い青を使って放射状に広がる背景は、生物の周りを特に濃く描くことで自然と視線が集まり、主役である生き物がより印象的に見える工夫がされています。その姿はまるでオーラをまとっているようで、どこか神秘的な強さや威厳も感じられます。
それに加え気泡や文字、船のイラストなどを描き込むことで、まるで古代魔法生物図鑑の1ページを開いているような世界観に。こんな生き物が載っている本が本当にあったら、ぜひ読んでみたいと思いました。

これまで模写に取り組むことが多かった空ですが、今回は自分の想像力を存分に生かした作品になりました。生き物の設定や色彩、細かな模様まで一つひとつ考えながら制作することで、これまでとはまた違った表現力を身に付け、武器を増やしたように感じます。

高輪ゲートウェイ【ぐるぐる展】

稀にブログに出現するミオス卒業生(生徒としては8年間)&元ミオスのスタッフの杉本菜々子です。ご無沙汰しております。
皆様は山手線30番目の駅となる高輪ゲートウェイにはもう足を運ばれましたでしょうか?
高輪ゲートウェイシティにオープンしたMoN Takanawaという文化施設があるのですが、こちらのこけら落とし特別展をエスコートするキャラクターデザインを任され、メインのバルーンも制作しました。
9月まで開催していますので、ぜひ夏休みに遊びに来て頂ければ嬉しいです!

世界は、ぐるぐるでできている。
様々な物語をめぐり、体感しながら未来へのヒントに出会い、自分自身をアップデート。テクノロジーや文化、アイデアの渦に飛び込めば、世界の見え方がぐるりと変わるはず。知るほどに面白い、思わず誰かに話したくなる発見が待っています。
人と人、過去と未来、異なる分野が混ざり合いながら新しい文化が生まれていくことを展示する知的エンターテインメント。
あなたも“ぐるぐる”の世界へ飛び込んでみませんか?

開館記念特別展【ぐるぐる展ー進化しつづける人類の物語】
日程 2026年3月28日(土) ~ 2026年9月23日(水・祝) 10:00〜19:00(金土は21:00閉館)
会場 MoN Takanawa:The Museum of Narratives(モン タカナワ: ザ・ミュージアム・オブ・ナラティブズ) Box1500
料金 一般 2,500円/U25 1,500円/小中高生 800円/未就学児 無料
※全てのチケットで音声ガイドがご利用いただけます。(追加料金なし)

岩絵の具の研究

當山 岩絵具/和紙・パネル

聡です!今週から急激に暑くなりましたね。一気に気温が変わったので体調があまり良くありません、、、。皆さんも夏バテしない様お気を付けくたさい。今回は當山さんの日本画をご紹介致します!

當山さんは去年の展覧会に出品された作品から『恐怖』をテーマに日本画を描き続けておられます。ご自身で画材も揃えられていて、どんどん様々な技法を研究、発明されていて驚かされますし、僕もとても勉強になります。今回も前回描かれた『口裂け女』に続き、同じく怪談でお馴染みの『テケテケ』を描かれました。真っ二つに分かれた女性の浮かべる表情は、何とも言えない奇妙さがあり見ているだけで寒気がしてきます。背景を見ているとだんだん顔のような怨念が浮かびあがってきて、二重の恐ろしさを感じさせてくるような仕掛けも施されていますね、、、。
人物の形や内臓、画面構成は日本画である以前にイラストレーションとして見ても素晴らしいクオリティです。同じ下描きでペン画、油絵、水彩画など他の画材で描いていたとしても素晴らしい出来栄えになったでしょう。しかし岩絵具だからこその独特な質感がマッチし、テケテケの恐ろしい雰囲気が倍増しています。日本画を描かれたことのある方はお分かりだと思いますが、ただでさえ扱いの難しい岩絵具を使ってここまで精度の高い描写を行うのは至難の技。僕は小さい絵が苦手なので、堂山さんみたいに細かく描けたらなぁ、、、と羨ましい気持ちになっております。

細部を見ていきましょう。上半身の制服の部分をよく見てみると、服の皺に見える模様がありますね。これはあらかじめ和紙をぐちゃぐちゃに揉んでからパネルに張り込む事でマチエールを作る「揉み紙」という技法によるものです。揉む事で表面に皺が出来るので、普通に塗っても絵の具が引っかかり、独特の質感を出す事が出来きます。また、皺が出来るとツルツルの紙より破れづらくなるという利点もある便利な技法になります。
もちろん、絵の具を塗り込んでいくと紙の皺は見えなくなって行きますので、皺を残す所、絵の具で潰す所を描き分ける事も重要になってきますが、堂山さんは制服に残す事で上手くモチーフの質感に当てはめていますね。

堂山さんの作品に使われている技法で、もう一つ特徴的なのが、岩絵具と水干絵の具の使い分けです。背景をよく見てみると、粒子の荒い絵の具が沢山使われていますね。荒い絵の具は光を強く反射し、一粒一粒がキラキラとしていて、他の画材では出せない魅力を生み出す事が出来る反面、細かい描写には向きません。だからと言って細かい粒子の水干絵の具だけだ描いてしまうと、日本画らしい質感にならず、アクリル絵の具で描いた絵とあまり変わらなくなってしまいます。ですから當山さんの様に背景などの形のはっきりしない物や大きい物は荒い絵の具を使い、人物などの細かい表現をする部分は水干絵の具を使うのが良いでしょう。
また、荒い絵の具は透明感が強く深みのある色を作るのが難しいので、あらかじめ水干絵の具や細かい粒子の岩絵具で地塗りをする事をおすすめします。そうすると荒い絵の具が透けていても紙の地が見えてきませんから、抵抗感がありつつもキラキラとした質感の表現が出来ます。

僕は今まで油絵や水彩、アクリル、デジタルなど様々画材を使ってきましたが、日本画が一番難しく、絵の具が紙に定着しなかったり膠がシミになったりとトラブルが多いです。しかし、絵の具自体の発色の美しさは最も魅力的だと感じております。絵の具も筆も他と比べて高価ですが、それに見合う美しさのある画材だと思うので、興味のある方は是非、日本画科の僕にご相談ください!

ありのままの魅力

悠華 高2 油彩・彫塑

サヤカです!もう2026年も折り返しということで、時間の流れの速さに怯えています。

今日は、学生クラス悠華の作品を2つご紹介します。まず、ヒマワリを描いた油彩の作品です。花びら一枚一枚がまるでガラス細工のように艶やかに描かれています。ヒマワリといえば、夏の眩しい日差しの中で咲く姿を思い浮かべる方が多いかと思います。しかし、悠華の作品は、そんなイメージとは対照的に背景を黒にして、強いコントラストを生み出し、ヒマワリそのものの存在感を引き出しています。太陽を追いかけて咲くのびのびとした印象ではなく、自然の中で逞しく咲く力強い生命力を感じさせる作品です。

次に、彫塑を用いて作られた馬の作品です。前足を上げて今にも駆け出しそうな瞬間を切り取りました。写真では見えづらいですが、たてがみや尻尾は、一本づつ繊細に作られていて、それぞれが意思を持っているかのような躍動感を生んでいます。もう一つ注目したいのは、首から胸にかけての重厚な筋肉です。何度も粘土を重ねながら形を追求し、しなやかな馬らしい体つきが表現されています。参考にしたのは一枚の写真ですが、見えない部分まで想像し、緻密に制作したことで360度どこから見てもかっこいい作品になっています。

油彩と彫塑という異なる表現方法ですが、どちらもブレないかっこよさが伝わってきます!背景の効果に頼るのではなく、内から溢れる魅力を引き出すようにモチーフをよく観察することで、生き物が持つ存在感や生命力まで表現され、説得力が生まれているのだと思います。ありのままの姿がもつ魅力を再確認させてくれる作品たちでした!

窓辺に映る温もり

小山 色鉛筆

夏波です。学校の制作でてんてこ舞いになり、早くも夏休みが待ち遠しいです…。本日は小山さんの色鉛筆画をご紹介します!

色鉛筆で娘さんの成長描いています。電車の窓から外を見つめる楽しげな笑顔から、旅行のワクワクが伝わってきますね!前回の『初めて行った美容室で髪をカットされ、緊張する眼差しで鏡を見つめている作品(こちら)』は、展覧会に出品されていたので、覚えている方も多いかもしれません。期待に胸膨らむ横顔と、不安で眉をしかめる対照的な気持ちを描いています。

色鉛筆の優しい線を丁寧に重ねて描いています。そのおかげで柔らかな雰囲気が生まれ、愛らしい印象に仕上がり、卓越した技巧をお持ちと感じます。 とは言え今回の作品は、小山さんが今まで描いてきた娘さんの絵の中でも、1番と言っていいほど難易度の高い絵だったのではないでしょうか?細かなギンガムチェックのワンピースに、結んだ髪の毛の流れ、電車の窓の反射とパース…など、一筋縄ではいかない様々な要素が盛り込まれています。
その中でも、洋服のチェック模様は特によく観察され、リアルに美しく描かれています。チェックは無彩色の濃淡だけの表現のため、色に頼らず立体感や柄のリズムを描き分けることに苦労されたと推測します。それに比べると、やわらかな髪の毛にさまざまな色を細かなハッチングで重ねる方が、むしろ容易だったかもしれません。

色鉛筆は絵の具やクレパスと比べて誤魔化しが効きにくい画材です。その分、積み重ねられた描写の密度が、人を惹きつける魅力を放ちます。まるで服の繊維一本一本まで観察したかのような丁寧な描写から、小山さんの根気強い誠実な仕事ぶりが伝わってきますね。

窓に反射して映る娘さんと、手前にいる実際の娘さんとで表情の見え方が異なるのも、この作品の魅力です。窓の外を眺める楽しそうな様子が伝わり、鑑賞者までつられて笑顔にしてくれます。娘さんの成長を見守り続けてきたお父さんだからこそ表現出来る、温かな眼差しが感じられる作品でした!

穏やかな鴨の親子

山本 油彩

大志です!もう7月ですが、夜は意外と涼しくて過ごしやすいですね!それでも、土曜に聡先生も書いていたように、「蒸し暑くて蝉の鳴き声が響く本格的な夏が、早く来ないかな〜」なんて思っています。笑

さて今回ご紹介する作品は、鴨の家族の油彩画です。まず第一印象はなんと言っても優しく穏やかな雰囲気。見ているだけで心が落ち着くような作品です。色彩による遠近感の表現も見事で、奥へ進むにつれて色彩が淡く薄く溶け込むように変化し、自然な空間の広がりを感じさせます。対して手前の草むらは、黄色や白を織り交ぜた筆致によって春に咲く花を抽象的に表現されており、写実的に描き込みすぎないことで、作品全体にどこかほのぼのとした温かい空気感を生み出しています。

鴨たちの表現は言うまでもありませんが、特に目を引く親ガモは繊細な筆使いによって羽一枚一枚、さらには羽毛の一本一本まで丁寧に描き込まれており、お腹のふっくらとした丸みも見事な立体感で表現されています。模様のある羽のような情報量の多いモチーフで自然な立体感を出すのは簡単なことではなく、鋭い観察力と高い技術が感じられます。

さらに、親の後ろを一生懸命ついて歩く子ガモたちの姿もとても愛らしいですね。小さな足でちょこちょこと歩く様子が伝わってくるだけでなく、親と子の毛並みの柔らかさや細かさの違いまで描き分けられており、水をはじく親ガモのシュッとした風切り羽に対し、飛ぶことができないふわふわの羽毛のやわらかさ、また距離感による5羽の描き分けなど、細部へのこだわりが作品全体のストーリーをより一層深めています。

実は山本さん、この絵の前に剥製の鴨とネギなどの鍋具材を構成したデザイン的な油絵を描いていらっしゃいましたが、未完成で止めています。そこから多くの学びを得て、この癒しの作風になったということは、前作は決して無駄ではなく必要なプロセスだったのだろうと思いました。

力強い色

悠樹 中1 色鉛筆

ひとみです。もうすぐ、私が在籍している武蔵野美術大学でオープンキャンパスが開催される為、今はみんな準備で大忙しです。私も大志先生も案内の手伝いをしていますので、興味のある高校生は事前に声を掛けてくださいね!

中学1年生の悠樹の作品、画面中央にどんと居座るオニオオハシ。ぱっと見ただけでも目を引くほど黒く塗りつぶした胸の羽は、白い部分との対比を意識するように、ぐっと強い色を乗せています。オニオオハシのチャームポイントでもある黄色いくちばしは、上くちばしの影をオレンジで表現し、大胆に色を分けているのが印象的。黒に負けないよう滑らかで均一な色を作り出すことで、それぞれの色がしっかりと主張し、注目を集める仕上がりになっています。

つかまっている木の枝も、茶色一色で塗るのではなく、赤や黄色、緑、黄土色など、画面の中にある色を取り入れて描いています。背景の緑やくちばしの黄色などから色を拾って枝にも取り入れることで、画面全体のカラフルな雰囲気を壊さない工夫が感じられます。

悠樹はこれまでずっと大好きな電車の絵を描いていましたが、今回は初めて生き物に挑戦しました。全てが鉄でできた無機物のモチーフと打って変わり、筆圧や鉛筆の角度で濃淡や太さを調整し、まるでそこにいるかのような存在感を丁寧に表現できました。その表情からは何を考えているのか想像したくなるほどです。今回は描き方のバリエーションを広げることができた、良い挑戦だったのではないでしょうか。

今はまだ不足しているふんわりしたタッチから精巧でリアルな表現まで幅広く対応できるよう、グラデーションや重ね塗りの基礎を練習し、今後の作品制作に挑んでもらいたいと思います。